クーデター (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (560ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043765041

作品紹介・あらすじ

日本海沿岸の原発を謎の武装軍団が狙う。米原潜の頭上でロシア船が爆発。東京では米国大使館と警視庁に同時多発テロ。日本を襲う未曾有の危機。”朝倉恭介vs川瀬雅彦”シリーズ第2弾!

感想・レビュー・書評

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  • 【感想】
    この本を読んで、日本の社会全体の危機管理能力の脆弱さが露わになった気がする。
    「戦後50余年にわたって平和という名の安逸を貪り続けてきたこの国の人々にとって、いま身に迫りつつある危機は、あまりにも非現実的な出来事だった。すべての人々が普段と同じ生活を続ける以外、何の方法も思いつかなかった。」
    作中でこのような一文があったが、あれだけ大規模なテロが起きているにも関わらず対岸の火事かのように日常生活を続けるのは何かかなりリアルだな~と思った。
    実際、国内で有事が起きた際、自分はどのような行動を取るのだろうか?
    まぁ、少なくとも作中にあるように、「普段と変わらず仕事をする」という選択肢は取らないだろうが・・・笑

    あとは、能登のテロリスト達の最期が呆気ないというかアホすぎて笑えた。
    あれだけ長期にわたって計画的にプロジェクトを進めてきたというのに、あんなにもアホな結末を迎えちゃうかね?と。(笑)
    まぁ、あのアクシデントがなければクーデターを抑える事は出来なかっただろうけども・・・間抜けすぎるミスでクーデターが治まったのが、何とも言えないね。
    600ページ近い長編だったのに、全体的に中身がスカスカだった気がする・・・・・

    「Cの福音」に次ぐ「朝倉恭介VS川瀬雅彦シリーズ第2弾」という前置きの元で読んでいたが、結局最後まで恭介は出てこず。
    シリーズについて調べてみたが、直接2人がバッティングするのは最終作のみとのこと。
    なにそれ(笑)

    色んな面で肩すかし感が残る作品でした。
    とりあえずシリーズ全作品購入したので、頑張って読むかぁ。


    【あらすじ】
    日本海の北朝鮮領海付近でロシア船が爆発炎上。
    その動きを窺っていた米海軍原子力潜俳艦が巻き込まれ航行不能となった。
    漂流する原潜を挟み、「北」と日米韓の緊張が一挙に高まるなか、謎の武装集団が能登に上陸、機動隊を殲滅してしまった。
    報道カメラマン川瀬雅彦は現場に急行するが、折しも米国大使館と警視庁で同時爆破テロが勃発。
    これは戦争なのか!?

    日本を襲う未曾有の危機。「朝倉恭介VS川瀬雅彦」シリーズ第2弾。


    【メモ】
    クーデター

    日本の危機管理能力の脆弱さ
    能登のテロリスト達の最期が呆気ないというかアホすぎて笑えた。


    p15
    そのオーダーはあまりにも日本の現状から遊離したメッセージと言わざるを得ない。
    RPG(対戦車用のミサイル)どころか、携帯用地対空ミサイルの「スティンガー」、対人用地雷の「クレイモア」、それに900キロものプラスチック爆弾「C-4」。
    どう考えてもこれらが日本に渡る物お思えなかった。


    p149
    この国は病み、腐り切っている・・・
    そうした思いは、やがて本来教団を護るために信者であることを隠して社会の中に入り込んでいる御護者を使い、この国を救済することを決意させるに至った。
    半世紀にわたってはびこった毒をすべて排除し、新世を造りあげるのだ。かなりの荒療治になるが、それはそれで致し方あるまい。


    p165
    写真の中に写っている二人の日本人。
    それが龍陽教副教主の篠原龍厳と武上であることに北代が気付いていれば、その後に起きる事件は未然に防ぐことができたのかもしれなかった。
    しかしこのとき、仮に気づいたとしても、彼らが何故ロシアにいたこか。その本当の目的など想像だにできないことには違いなかった。


    p396
    どうして由紀が死ななければならなかったのだ。あそこで一体なにが起きているというのだ。しかも、これ見よがしな殺され方で・・・
    「これ見よがし」
    そうだ、すべてがこれ見よがし・・・つまり、意図的にショウアップされているのだ。
    日本の人々、いや恐らく当事国となっている国の人々の思考が一つの方向に向かうように誘導されている。

    この間由紀が雅彦に言った言葉が脳裏に蘇った。
    「もしもあなたが死んでも、どうしても報じなければならない仕事の最中ならば、私はそれが終わるまでは絶対に駆けつけたりしないわ。その代わり、それが終わったら真っ先に駆けつけて、たとえあなたがどんな姿であろうとも、あなたにすがり、誰よりも大きな声で泣いてあげる」
    それは初めて雅彦が自覚した、真の意味での真実への探究心であったのかもしれない。
    自分の目で確かめるのだ。あの地で何が起きているのか。一体やつらが何者で、なにが目的なのかを。


    p418
    首都圏の交通は、すべてがスケジュール通りに運行されていた。
    朝刊はどれも一面どころかほとんどのスペースが、この戦後始まって以来の武力攻撃の記事で埋め尽くされていた。それにもかかわらず、この国の人々の日常に些かの変化も見られなかった。
    同じ陸続きの国の中で、軍事侵攻、つまり戦争にも発展しかねない状況が進行しているという危機感からは、それはあまりにかけ離れた光景だった。

    戦後50余年にわたって平和という名の安逸を貪り続けてきたこの国の人々にとって、いま身に迫りつつある危機は、あまりにも非現実的な出来事だった。
    すべての人々が普段と同じ生活を続ける以外、何の方法も思いつかなかった。


    p502
    ついに正体を突き止めた。やはり北朝鮮の軍事侵攻などではなかったのだ。
    この教団が何らかの明確な意図を持って一連のテロ行為を行なっていたことになる。
    この能登で警察、機動隊車両を襲ったのも、東京でアメリカ大使館や警視庁を襲ったのも、そして由紀を襲ったのも。
    すべては完全に計算し尽くされて行われてきたことに違いない。

  • 再読。

    楡作品の中で最もな好きなシリーズ。
    久々に読み返したが、時の流れを感じた。所謂戦闘シーンや報道の場面が数多く描かれているが、今現在のデジタル情報社会とは大分解離しているのが素人でもわかる。
    もちろんとても興奮して面白いが、大袈裟かもしれないけれど文章というのはこうして古典になっていくんだと別の角度から作品を感じることができて新鮮だった。

  • 「Cの福音」に続く第2弾。
    今回は、オウム真理教をモデル(?)とする宗教団体の
    クーデターを取り扱った小説。

    普段、平和な日本にいる僕たちには
    考えもよらないようなテロが金沢・東京で勃発。
    国・自衛隊・警察は後手後手の対応しか取れない中、
    一人のカメラマンが立ち上がる。。

    結末が偶然の幸福からなるところが、
    ちょっと残念ですが、それでも面白くて家に篭ってしまった。
    楡さんの麻薬症状からは、当分解放されそうにはありません。

  • まず、書かれている年が1998年であり、時の北朝鮮体制は金日成から金正日の頃の時代が背景である。当時の北朝鮮は現代のように核もICBMを始めとした中長距離ミサイルも持っていない時代であることを念頭に、もし当時の北朝鮮が南進を行うという想定で米国の反撃を最小限に行うために在日米軍基地の動きを止めるためにどのように動くかを想定、模倣し日本国内でクーデターを起こしたらが本書のはテーマである。
    本書が書かれた数年前にオウム真理教は、サリンという化学兵器によるテロを実行したけれど、ロシアにヘリコプターなどの武器を買い付けに行っており、本書の書いたストーリーがあながち空想の世界だけではないことを図らずも証明している。
    本書が上梓されてから20年経っており、日本の危機管理に対する考え方もさぞや強固なものになっているだろうと考えてしまうが、北朝鮮の核爆弾の小型化やらSLBMの射程と練度からみて攻撃されたら日本の国土と国民をしっかりと守る状況になっているのであろうか不安である。韓国が左傾化して北朝鮮に併呑されそうな状況であり、もはや38度線は自由経済社会と共産主義との対峙線ではなくなるかもしれない。
    令和の時代の元寇に備える必要があると思う。

  • 「朝倉恭介」Vs「川瀬雅彦」シリーズ第2段。
    日本の国防についてメッセージ性が強い物語です。

    朝倉恭介が出てくるかと思いきや、出演はありませんでした。
    ただ、朝倉恭介が起こした事件がちょっと紹介されており、かろうじてリンクが保たれている感じ。
    シリーズということで、朝倉が悪の主人公なら、川瀬は善の主人公になると勝手に思っていたので、川瀬は警察側の人間なのかと思っていたら、カメラマン(ジャーナリスト)でした。
    なので、ジャーナリストとの戦いになるんですね。

    それはさておき、本書のストーリは、表題のとおり、クーデターを企てるストーリ。その首謀者が新興宗教団体。
    その武装集団が織り成す攻撃にあたふた対応する日本政府といった構造です。
    新興宗教団体が企てるクーデター、テロというとあの事件を思い出します。
    なので、ある意味リアリティがある物語と感じました。

    麻生幾さんの「宣戦布告」や安生正さんの「ゼロの迎撃」同様、有事の際の自衛隊の課題、日本政府の課題を浮き彫りにします。やはり、国防について考えさせられる強いメッセージを含んでいる物語です。

    しかし、本書ではその事案が発生するまでが長い(笑)
    物語の後半まで引っ張られます。
    そして、その事案のクローズがまたあっけない。ちょっと尻すぼみ間があります。

    後半あれよあれよと手仕舞いになってしまい、そこはちょっと残念。

    ま、それはそれとして、とても楽しめた(?)物語でした。

    おりしも、沖縄問題や憲法の問題、中国軍艦の領海侵犯など、今そこにある危機が現実実を帯びています。さらには、アメリカ大統領選挙の行く末は?
    今まで見ようとしてこなかった問題に本気で取り組む必要があると強く感じます。

  • 日本人の平和ボケした危機感のなさと、政治に対する強い批判。リーダーシップがなく、目標と明確な期限が決められていないということ。国家に対する批判のような気がした。

  • スケールが大きい。と感じた。

    ロシア、アメリカ、能登、東京、、、
    色々な場面に飛びながらそれぞれがつながっていき、
    読みながらハラハラする。

    読後の余韻よりも、
    読中のドキドキを楽しむ本だと思った。

  • ・あらすじ
    日本人は頭ン中お花畑。意識低い。
    ・かんそう
    なんだこれ。なんの話?シリーズにしなくていいんじゃね。

  • 飛ばし読み 映画化は無理か

  • 前作では麻薬、本作では宗教…
    日常に潜んでいて、牙を剥いてくる狂気
    本当に恐ろしい。
    自分のすぐ近くに実際あるのではと思えて
    外の世界コワイ。コワイです。

    コワイけど読みやすくて面白くて読んじゃう…

    自分の国を守る為に出来ることとして
    自衛隊の在り方の変更や核の保有を主張すると
    日本では 戦争やりたいのか!戦争反対だ!
    と非難されると思う。
    日本で義務教育を受けていれば、そう思うのはわかる。
    でも、その一辺倒じゃ1番平和は遠いのかな。
    某首相が言ってたように
    それらについて議論することを放棄してはいけないのかな、と思った。
    国という概念がある限り、その微妙な均衡を保つ為には、出来ることをアップデートしていかなきゃいけないのかもしれない。

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著者プロフィール

1957年生まれ。米国系企業に勤務中の96年、30万部を超えるベストセラーになった『Cの福音』で衝撃のデビューを飾る。翌年から作家業に専念、日本の地方創生の在り方を描き、政財界に多大な影響を及ぼした『プラチナタウン』をはじめ、経済小説、法廷ミステリーなど、綿密な取材に基づく作品で読者を魅了し続ける。著書に『介護退職』『国士』『和僑』『食王』(以上、祥伝社刊)他多数。

「2023年 『日本ゲートウェイ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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