パンク侍、斬られて候 (角川文庫 ま 24-3)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043777037

作品紹介・あらすじ

江戸時代、ある晴天の日、街道沿いの茶店に腰かけていた浪人は、そこにいた、盲目の娘を連れた巡礼の老人を、抜く手も見せずに太刀を振りかざし、ずば、と切り捨てた。居合わせた藩士に理由を問われたその浪人・掛十之進は、かの老人が「腹ふり党」の一員であり、この土地に恐るべき災厄をもたらすに違いないから事前にそれを防止した、と言うのだった…。圧倒的な才能で描かれる諧謔と風刺に満ちた傑作時代小説。

感想・レビュー・書評

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  • 2020年3冊目。
    おれは何を読まされていたのか。ずっともやもやしたままだ。読んでいた時も読み終えた後も。時代劇のようで現代社会の風刺でもある。しかも鋭い。まさにパンク侍。その侍も最後には斬られて候。後に残るは朽ちた屍。。
    笑えたのに笑えなくなる。スラスラ読んでいたはずが、読み飛ばせなくなる、一度本を置いてしまう。そんな怖さが潜む。日本のホラー映画みたいに、生きていればいずれ出会う恐怖であり、死ぬまでに静かに必ずやってくる畏怖。
    歯に物が挟まったみたいな、そんな人生の糞の詰まりまで味わえる小説。腹を振ってみようか、という気にさせるからまたこわい。

  • 江戸時代。街道沿いのある茶屋で、牢人が盲目の娘を連れた巡礼の老人を切り捨てた。居合わせた藩士に理由を問われた牢人・掛は、その老人が「腹ふり党」という世を乱す宗教団体の一員であるというのだが……。


    映画化もされた時代小説。……時代小説?
    裏表紙のあらすじには、「江戸時代」を舞台にした「時代小説」であると明記されているのですが、そこを期待して読むものではないと思いました。
    とにかくバンバン出てくる外来語に、荒唐無稽、出鱈目で無茶苦茶なストーリー展開。スパン、と断ち切られるようなラスト。私は今何を読んでるのかと疑問に思いながらも、小説って勢いだけでここまで読ませられるんだなと感心しました。わけがわからないんですが、何だか続きが読みたくなる。

    時代小説の形を借りた風刺なんでしょうか。社会情勢、使えない部下、融通の利かない上司や内容のない電話まで、ありとあらゆるものに対する不満であふれた小説でした。
    音楽は詳しくないのですが、パンクって確か反社会・反体制的なメッセージが込められた音楽だというお話なので、そういう意味ではこの本は紛れもなく純粋なパンクと言えるのかもしれません。

  • 告白に続き、こちらも会社の方からお借りした一冊。

    独特の文体なのだが、語彙は多く、表現力も豊かで、とても不思議(笑)

    凄いのに、ヘンテコで、賢そうなのに、下品で、何なのコレ?(笑)

    掛十之進は、先日読んでいた告白の熊太郎と重なる部分が多く、想像するとどちらも同じ人物になってしまう。

    物語は面白いのか面白くないのか!?兎に角変!(笑)

    この作家さんの文章、嫌いではないけど好きではない(笑)

    貸してもらえば読むかもしれないが、自分からは購入しないかな??

    何とも不思議な読後感(笑)

  • 学生時代、高い学費を払っているにもかかわらず講義中に小説ばかり読んでいる友人がいました。

    ある日、いつものように教科書で隠して読み耽っていると、うしろからやってきた教授に見つかってしまいました。

    運悪く気性のはげしい教授だったので、友人はその場に立たされ、ひどい詰問を受けました。

    はじめは黙ってうつむいていたのですが、あまりに執拗な責苦に業を煮やした友人は教授の顔をきっと睨み、

    「あなたのつまらない講義を受けるより、この小説をさいごまで読んだほうがどれだけ有意義かわからない」

    と言って、教室をあとにしました。

    友人はもちろん単位をおとしました。


    私にはそれが良いことか悪いことか、それならはじめから受講しなければいいのにと思いながらも判断をつけかねているのですが、そのときその友人が読んでいたのがこの本だったのです。

    なんだか回りくどくてすいません。

  • パンクロックが自由であるように、文学だって形ばかりにこだわる必要はない

    この本を読んで立ち上がろう!!

  • さっっっっっっっっぱり分からなかったから、あと4回は読みたい。

  • 映画化の話を知ってから読んだこともあり、予めクドカン脚本での映画化を前提に書かれたのでは、と思うほど映像が想像できる。

    全然違うんだけど、なぜかロードス島戦記を思い出した。

  • (ややネタバレあり注意)

    やばかった。僕が彼の本を手に取るのは、彼の適当かつセンスに満ち溢れた文章をボケーッとした表情で味わいたい時で、今回もそういうつもりだったのだけど、ちょっと内容が予想外だった。

    彼の小説でよくあるパターンはダメ男が主人公で、そいつがダメな状況に陥っており、そのダメ状況を脱するためにアイディアを練って行動に移すのだが、いかんせんダメ男なので、ダメ状況を脱するどころかダメが雪だるま式に増えて余計にダメになる、みたいなのが多い。というか僕が読んだことがあるものは全部そう。

    そうなんだけど、今回のは主人公が必ずしもダメじゃなかった。時代小説なのだが、剣術の達人だし、頭もキレる。マヌケなところはあるし、完璧ではないのだけど、彼の他の小説の主人公に比べてダメ臭がしない。

    で、ともかく時代小説なんだけど、実際読んでみたら全然時代小説らしくなくて、カタカナ用語は沢山出てくるわ、しゃべり方が現代語調だし、ストーリーも展開もわけわかんない。

    特に後半のいくさ(?)のシーンからラストにかけて。
    ざっくり言うとB級映画的なスラップスティックていうか、いやスプラッターっていうか、とにかくめちゃくちゃで、ちゃんと完結しないし、わけわかんないんだけど、でもまぁなんかわけわかんなさに説得力があるというか。

    腹振り党の連中は馬鹿げているが、しかしそれに対する藩の役人にだって正義も思想もなにもない。そして茶番な世界がその「茶番性」をむき出しにして崩壊する。なんてバカげた世界と思うかもしれない。しかし、私たちの世界だって、物理的に崩壊しないだけで、本質的にはこんなもんなんではあるまいか?

    だからこそ、一番ラストのろんのセリフ、「こんな世界だからこそ絶対に譲れないものがあるのよ」が説得力を持つ。「ああ、そうかも」ってね。


    ちなみに、一つ解説っぽいこと書いておくと、「この小説自体が、町田康の小説に出てくるダメ主人公が、一発逆転で現状打破のために書いた作品」みたいに考えると、このメチャクチャな展開も、登場人物たちのやたら現代的で社会批評的なセリフなんかが出てくる理由もスッキリするかも。だから、町田康の小説によく出てくるダメ男は、この作品においていっこうに姿を表さないにも関わらず、一貫してこの物語に存在している、なんてことが言えるのかも、ね。


    ※ところで最近、園子温監督の「TOKYO TRIBE」というB級映画を映画館で観まして、その直後ぐらいにこの小説を読んだのだけど、ノリがかなり近いのではないかなと思った。カオス。

  • ピース又吉さんのエッセイにて知った作品。歴史小説的なやつか…と思って読み始めたら、全く違った。想像の斜め上のぶっ飛び設定で繰り広げられるファンタジー時代劇!!

    言葉使いはかたいのに(時代劇だから?)口語は今風の言葉が混じるし、文章の勢いがすごいのに、何故かとても文学的な感じがする。どういう頭脳だと、こんな魅力的な文章が書けるんだろう!ステキ!と素直に思ってしまった。
    好き嫌いが別れるタイプかもしれないけど、私はとても好みで読みやすかった。敬服。

    物語が広がりすぎて、最後にどう着地するのかなと思ってたけど、キレイに収まって不思議と読後感も悪くない。最後に、あー楽しかった!と終われる作品だった。
    これはいい作家さんを知ったなぁ、こういう人を鬼才と言うんかなぁ、と思わせる作家さん。ハマるかハマらないかは読者次第だけど、一読の価値はある作家さんだと思いました。

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    江戸時代、ある晴天の日、街道沿いの茶店に腰かけていた浪人は、そこにいた、盲目の娘を連れた巡礼の老人を、抜く手も見せずに太刀を振りかざし、ずば、と切り捨てた。居合わせた藩士に理由を問われたその浪人・掛十之進は、かの老人が「腹ふり党」の一員であり、この土地に恐るべき災厄をもたらすに違いないから事前にそれを防止した、と言うのだった…。圧倒的な才能で描かれる諧謔と風刺に満ちた傑作時代小説。

  • 舞台は江戸時代。
    「腹ふり党」という新興宗教のような組織をめぐる話。

    町田康にかかれば時代小説もパンクになってしまう。
    猿はしゃべるわ超能力者は出てくるわの奇想天外時代劇。

    めちゃくちゃな展開で掻き回した後に待っていた物語のオチにはかなり鳥肌が立った。

    ほとんど意味不明なのになんでこんなに面白いんじゃろ?

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著者プロフィール

町田 康(まちだ・こう)
一九六二年大阪府生まれ。作家。九六年、初小説「くっすん大黒」でドゥマゴ文学賞・野間文芸新人賞を受賞。二〇〇〇年「きれぎれ」で芥川賞、〇五年『告白』で谷崎潤一郎賞など受賞多数。

「2022年 『男の愛 たびだちの詩』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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