ジョーカー・ゲーム (角川文庫)

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著者 : 柳広司
  • KADOKAWA/角川書店 (2011年6月23日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043829064

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ジョーカー・ゲーム (角川文庫)の感想・レビュー・書評

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  • D機関という陸軍のスパイ養成所を舞台に、主人公の結城中佐と周囲の関係者の視点から描いた連作短編。

    ちょっと荒唐無稽な感じもするが、娯楽と割り切れば本当に面白くて知的なエンターテインメントにあふれた作品だと思う。

    スパイ同士の人間関係の希薄さや孤独感などは時代設定が戦時下であるのに現代にも通じているようで考えさせられる。

  • ”魔王”と呼ばれる結城中佐の発案で、陸軍内に極秘裏に設立されたスパイ養成学校”D機関”。
    D機関に入った後は各人に偽名、さらには偽の経歴が与えられる。任務に入ればまた別の名前と経歴が。彼らは見事にその仮面を被り次々と任務を成功させていく。

    彼らのスマートさに憧れつつ実は優しい心も持っているのではと考えるが、今のところは手に負えぬほどの自尊心を持つ化け物ばかり(笑)人間らしさは命取り。誰よりも厳しく誰よりも優しい結城中佐の最後の言葉が胸に響く。

  • アニメがあまりにスタイリッシュだったので、耐えられなくなって原作も。
    やっぱり、アニメ化されたり映画化されたりしたものは、アニメ(映画)→原作の順だと、そこまで失望もしないので安心して読めますね。逆だと、がっかりすることも多いので。

    アニメでは説明しきれなかった箇所を丁寧に読めたのが、一番の収穫だったかもしれません。全体的に抑えたトーンが流れる文章で、普段は読まない時代の、普段はおつきあいのない方々が主人公の話だったのですが、そんなことを微塵も感じさせない文章で、すごくすごく楽しかったです。
    読みやすい文章=平易な文章、という図式は必ずしもあてはまらないと思うのですが、柳氏の文章は、読みやすい文章=リードされていることを気付かせない巧妙な文章であって、なんといえばいいのか、人間的にとてもできた大人に包まれて移動させられているような。そんな絶対的な安心感を覚えました。

    しかし、スパイは本当に本当に孤独な職業ですね。ひと嫌いとはまた違うレベルでの、断絶と隔離を自ら選び続けるのは、精神性がかなり訓練されていないとダメなんだろうなと思いました。
    「幽霊」でのラストは、なんだかやるせなくなる感じ。年単位で利用できる可能性をじっと脳に温め続けるのって、冷酷という言葉では片付けられない、なにかとても非人間的なものを覚えます。

  • 17年5月に読了した『秘録・陸軍中野学校』のレビューで知った本。そのためD機関が軍内部で理解されない存在であること、卒業生は孤独の中で敵地での活動を余儀なくされること等をすんなり理解できる。「ロビンソン」は、その敵地で捉えられた伊沢が脱走するまでの短編として、非常にスリリングに描かれていて面白い。D機関の敵地潜入を象徴する物語は「魔都」だろう。潜入者が主役にならず、上海憲兵隊分隊長の腐敗を暴く後ろ盾として登場する。前編でミステリーとしても通用する展開が小気味好い。

  • 結城中佐が D機関を創設。
    スパイとは何かの原理原則を明確にする。
    陸軍の中では、『スパイとは姑息な手段であり、
    日本古来の武士道に反する』という意見があった。
    『軍人でなければ人に非ず』という風潮があった。
    そのなかで 『地方人』といわれる 軍人以外の民間人を採用する。
    自らの体験も強烈で、スパイとはどうあるべきかを実践の中で教える。
    佐久間陸軍中尉は D機関に 派遣された。
    日本オタクのアメリカ人ゴードンは、スパイの容疑がかかった。
    『スパイは疑われた時点で終わりだ。疑われているスパイに一体何の意味がある』
    と結城は言う。
    ゴードンのスパイの証拠を探すために、憲兵として家宅捜査をする。
    その証拠は、あるところに 隠されていた。

    スパイとして摘発された時には 自決することは、最悪の選択だ
    と、結城中佐は言う。
    『武士道とは死ぬことと見つけたり。名を惜しめ。
    みごとに花と散ることこそ、武人の誉れ。』ということが
    軍には 徹底して叩き込まれていた。
    軍人とスパイの違いを明確にする中で、スパイの身の処し方を明らかにする。
    『国家への忠誠心』それは 虚構だとさえ言い切る。
    スパイ(諜報員)のイメージを大きく替える。それは当たり前のことだと思う。
    本来のあり方としての スパイを 明確化する中で 物語はすすめられていくので、
    じつに 興味が深い。このようなスパイたちが 実際 いたなら 
    日本はもう少し変わっていたかもしれない。

    ロビンソンが 実におもしろかった。
    結城は、『ロビンソンクルーソー』の本を渡すだけで、仕事をさせる。
    その 読みの深さが すばらしい。
    これは、よっぽど アタマを使わないと切り抜けられないね。
    結城中佐は、『死ぬことなど誰でもできる』という。

    スパイ蒲生は チェスがうまい。
    それで、チェス好きのグラハムにうまく取り込む。
    あたかも、グラハムが チェスに誘ったように仕掛ける。

    魔都。上海でのスパイ活動 本間。
    上海語などはそもそも存在しない という指摘が 驚き。
    北京語、寧波語、蘇州語、江北語が使われていたと言う。
    やはり、上海は 麻薬だよ。それをめぐって、欲にまみれる。

    二重スパイ。そして 捕まって、その後の対処。
    じつに きちんとした リスク管理が できている。
    想定される あらゆる 場面を 見通すことで、
    危険と失敗を避けることができる。
    このスパイストーリーは よく組み立てられて、
    コンセプトがしっかりしていて、したたかである。

  • 「死ぬな、殺すな、とらわれるな」
    軍隊組織の信条を真っ向から否定する「D機関」
    偽の名前、経歴、外見迄も変え周囲の人間を欺いて
    迄も1人で生きていける人間離れした化者の様な集団。

    華々しい活躍はなく、全て影に徹するスパイ小説
    なのに引き込まれる。

  • 陸軍内に極秘裏に設立されたスパイ養成学校“D機関”。発案者・結城中佐とその生徒たる諜報員は、当時の軍人の信条を真っ向から否定し、神であった天皇の不可侵をものともせず、ひたすら合理的、論理的に第二次世界大戦前夜の混沌とした世界で欧米列強をむこうに諜報戦を挑んでゆく。

    参謀本部とのあいだの連絡係として機関に出向する佐久間中尉は、上官である武藤大佐の指示により、スパイ容疑が浮かぶアメリカ人・ゴードン邸の家宅捜査を行う。容疑を立証する証拠が見つからなければ、中尉はその場で腹を切ることになるが――。“D機関”が擁する諜報員の、時代のなかでの異端、軍隊のなかでの鬼子、そしてスパイとしての化け物ぶりを印象深く見せつける表題作『ジョーカー・ゲーム』。
    皇紀二千六百年記念式典における要人暗殺計画が露見。その首謀者として名前があがった英国総領事。彼は、シロかクロか。スパイの本来の仕事を読者にまざまざと示した『幽霊』。
    ロンドン。スパイ容疑で拘束された写真館を営む日本人青年。十重二十重に、互いに張り巡らされた数々の罠のなかを彼はどうやって脱出するのか。異国の地で、たったひとりで……『ロビンソン』ほか、上海の租界を舞台にした『魔都』、ドイツ人スパイの自殺の謎を追う『XX ダブル・クロス』など、5編を収録。

    これまで人気を博し、長く読まれてきたヒギンズやル・カレ、高村薫のスパイ小説とは全く違う、過去を切り捨て、情愛も憎悪もなく、悲嘆することもない“D機関”の物語は、フレミングの007シリーズが持つゲーム性を思い出させる。
    ジョーカー・ゲーム。この盤面で、プレイヤーは誰もが“顔のない名無しの男”で完結する。過去を、情を捨てきれないものは本来の名前と顔を取り戻して、一人の青年に戻っていく。
    名誉のためでなく、まして愛国心のためでもなく、しかし国際政治の裏で命がけの危険なゲームに身を賭す理由は、己の優秀さを十分に知った青年のもつ強烈な矜持所以だ。

    完璧なスパイの完璧な仕事を描く、今までにないエンターティメント性の高いスパイ小説。シリーズの第一巻。

  • またまたAudibleで朗読版を堪能。
    これはかなり以前に紙版で読了済でしたが、
    そのときはそれほど面白いとは思えませんでした。
    ところが今回の朗読版は声優さんの解釈も
    自分にフィットしたのかとても楽しめました。

    ちょうどサポメのテーマが正直、誠実であったので
    その対極にある、この物語に出てくる
    嘘だらけのスパイたちの生き様が
    私の頭の中で逆にくっきりと浮かび上がってきました。
    そのことに関連した投稿はこちら。

    舞台は昭和13年の日本、過去に優秀なスパイだった
    結城中佐という男がスパイを養成する学校のようなものを、
    反発されながらも陸軍内に作るわけです。
    そこに集まったものたちは飛び抜けて優秀な若者たち。
    その若者たちが卒業にあたっての試験として
    任務を与えられたり卒業後、海外へスパイとして活動している様子を
    連作短編として描いている作品です。
    ベテランのスパイではないので、
    能力はずば抜けていながら
    まだスパイとしてなり切れていないという
    キャラクターも多く、
    その点、嘘と正直、理想と現実の
    葛藤を描いているとも言えます。
    そして、二転三転するストーリーの展開も見事ですね。
    初めて読むとしたら、どの作品を読んでも
    結末は予想できないのではないかと思います。
    その点エンタメ要素にあふれた
    ミステリ作品としても一級品だなあ、
    と朗読版を聴いて思いました。
    2017/02/20 08:14

  • 20世紀の日本の状況をスパイという点からみると、違ったように思えてきました。
    また、私の思っているスパイの認識とは違いとても面白かったです。

  • 面白かった!短編で読みやすく勢いがあって鋭い。続きも読みたい。

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ジョーカー・ゲーム (角川文庫)の作品紹介

結城中佐の発案で陸軍内に極秘裏に設立されたスパイ養成学校"D機関"。「死ぬな、殺すな、とらわれるな」。この戒律を若き精鋭達に叩き込み、軍隊組織の信条を真っ向から否定する"D機関"の存在は、当然、猛反発を招いた。だが、頭脳明晰、実行力でも群を抜く結城は、魔術師の如き手さばきで諜報戦の成果を上げてゆく…。吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞に輝く究極のスパイ・ミステリー。

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