テロリストのパラソル (角川文庫 ふ 20-1)

著者 :
  • 角川書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043847013

作品紹介・あらすじ

新宿に店を構えるバーテンの島村。ある日、島村の目の前で犠牲者19人の爆弾テロが起こる。現場から逃げ出した島村だったが、その時置き忘れてきたウイスキー瓶には、彼の指紋がくっきりと残されていた……。

感想・レビュー・書評

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  • 淡々と話が進んでく中に皮肉と格好良さもあって海外小説のような雰囲気でした。他の作品も読んでみます。

  • 面白いんやけど、読むの時間かかる…たまにあるな。こんな感じ。
    ミステリー要素もあるけど、ハードボイルドって感じやな。

     主人公:アル中のバーテンダー
    紅一点:ツンデレ(元同士の娘)
    もと警察官のヤクザ
    学生運動からの同士の爆弾魔
      その他色々…

    それぞれ個性的な登場人物。
    解説ではキャラ立ちしてるって。

    学生運動って言っても、今の人は分からんな。という私もあんまり分かってないけど。

    その頃にやってもうた事で、姿を隠して20年、酒飲んで、のんびり公園で寝てたら、爆弾がボ〜ン!
    爆弾テロやん!犠牲者には、昔の馴染みが何人も!
    おかしい!犯人探すで!物語スタート!
    ヤクザとは思えん浅井。主人公島村との会話は知的な感じで良い。この2人のタッグはなかなかでした。
    でも、直木賞と江戸川乱歩賞の同時受賞の作品なんで、少し期待値高過ぎたかもしれん…

  •  '95,'96の乱歩賞&直木賞W受賞作! 
    評価に違わぬ、素晴らしい小説でした。

     本書は、世間一般でいうところのハードボイルドの位置付けのようですが、特定感情に流されず、精神的・肉体的にも強靭で、時に冷酷非情とも言えるような、所謂〝カッコいい〟主人公とは趣きが違います。
     中年でくたびれたアル中のバーテンの主人公を始め、他の登場人物も個性が際立っていて、その設定にも感心します。
     ストーリーも、客観的で簡潔な描写が淡々と展開され、どんどん引き込まれます。ミステリーを超越し、他のハードボイルドからも一線を画している気がします。
     最後は怒涛の驚愕の連続でしたが、破滅の道へ進んだ友人と主人公の想いを中心に、多くの登場人物へ感情移入しながら、哀愁漂う主人公のカッコよさに酔いしれました。
     素晴らしい読後感で、しばらく余韻を引きずりそうです。

  • 雫井脩介著「犯人に告ぐ」を読んだ後、ちょっとハードボイルドな物語に魅力を感じて手に取った本作。
    主人公がアル中のバーテンという「え?大丈夫?」と思ってしまうような設定にも関わらず、どんどん惹かれていき……
    最後には「アル中でも構わない!かっこいい!」なんて感じてしまいました(笑)

  • この『テロリストのパラソル』の冒頭数ページを読んだだけで「ああ、これは好きな小説だ」となりました。

    アル中の中年バーテンダーの島村は朝起きると、いつも通り公園に行きウイスキーをいれたカップを傾ける。そんな島村を見つめる一人の女の子。会話の流れから、女の子がバイオリニストを目指していることが分かり「わたし、バイオリニストになれると思う?」とその子は問う。「なれるかもしれない。ツキに恵まれたなら」と島村は返し、そして女の子は……

    昼間からアルコールの臭いを漂わせているため、世間の人からは白い目で見られることの多い島村。そんな島村が無垢な女の子との会話から思った世界のこと。そして淡々と無骨ながら、どこか色気やリズム感のある島村の語り口と、彼の視点から描かれる日常世界。そして最初の少女とのやり取りで浮かんでくる、彼の人間性や人生観。

    派手ではないけれど、文章や場面、人のやり取りや会話、思考、すべてがいいふうに自分の中で受け入れられた最初の場面。後は流れに任せて、一気に読むだけだった気がします。

    女の子との会話は静かなシーンでしたが、そこから一転、物語は一気にギアがかかります。その直後、公園で起こった死者19名の爆破事件。そして島村の元に現われるヤクザに、元交際相手の娘。そして死者の中にいたのは、大学時代の島村の友人。そして警察は島村の過去から、爆破事件と島村の関係を疑い……

    爆弾事件の犯人捜しの物語の本筋はもちろん、そこにヤクザや警察からの逃走劇というサスペンスも加わります。そして事件の展開も読ませる。事件は徐々に闇社会の奥深くに入っていく一方で、島村個人の過去とも密接に関わってきます。

    島村以外の登場人物たちも魅力的です。なぜか島村を気に入り、事件に入れ込むヤクザの浅井。事情があり、カタギからヤクザへ鞍替えした彼の矜持。一方で島村との関係性は、立場や損得関係を越えたバディものの雰囲気があって、しかし一方でこの浅井もまた事件と密接に関わってきて、この関係性はもちろん、先が読めない展開も面白かった。

    作中に登場し、島村に協力するホームレスたちもよかったなあ。それぞれ詳しく書かれるわけではないけど、会話などのやり取り、そして事件や物語の展開で、彼らにもそれぞれの人生、プライド、矜持といったものを抱えて、泥臭く生きていること、そして人生の哀愁も感じさせます。

    島村と友人の桑野の回想の場面も良かったです。時代背景もあって、彼らの青春はかなり特殊なのですが、お互いがお互いに一目を置き、そして構築された唯一無二の友人関係が魅力的。完全に理解しきれるか、といえば微妙なのですが、その描写のみずみずしさは、なにか懐かしい気持ちにさせる力があるような気がします。

    そして真犯人もなんだか憎み切れない。カリスマ性というか、彼の抱えた闇と空白、社会の不合理や矛盾、そして嫉妬。改めて設定を考えると、なかなかのとんでも設定ですが、それを無理と感じさせない、スケールの大きなキャラでした。それがなんだか惹かれる理由なのかもしれません。

    粋な会話や文章、なかば世間から隔絶しているような男主人公、ヤクザや闇社会、男の友情、そしてなぜか主人公はモテる(笑)と話や設定、キャラは今から見ると古さを感じます。ただその古さは、アンティークのようなもので、古さを感じるからといって、まったく出来に影響するものではないと思います。

    そして良い意味で男くさい、男のロマンが詰まったハードボイルドだった気もします。本格ミステリや最近のキャラミステリも面白いけど、こういう良い古さと、男くさいロマンが詰まった話も面白いのだなあ、と改めて感じました。

    第114回直木賞
    第41回江戸川乱歩賞
    1996年版このミステリーがすごい! 6位

  • 図書館で借りて読んだのはかなり昔のこと。
    こんなにおもしろそうで、直木賞と江戸川乱歩賞の両方を獲っていて、でも、印象に残っていない?
    なぜだ……自分に問いたい。
     
    最近読んだ本の中では「犯罪者」に似てるかな。

  • 全共闘世代、団塊の世代の学生運動を背景に持つハードボイルド小説。

    東大卒かつアマボクサーで、とある特定の電子機器に強く、しかもアル中でいて素敵な女性達、男性達にモテるというてんこ盛りキャラクターだけど、現状は独りで都内の狭いカウンターバーを切り盛りする一介のバーテンダーに過ぎず、店では酒とホットドッグしか出さないという主人公。
    脇を固める登場人物たちもかっこいい。

    乱歩賞新刊、数ヶ月後に受賞する直木賞は発表前という段階で読んで以来ずっと、本棚のお気に入りスペースに鎮座ましましている名作です。

    昭和と平成初期のハードボイルドを感じてみたい方は是非。

  • 【2023年22冊目】
    読んでる途中から「いや、これもうよっぽどのことがない限り★5です、満点です」って思ってたんですけど、めっちゃ面白かった〜!

    江戸川乱歩賞と直木賞ダブル受賞ね、ふーんて思いながら読み始めましたが、ダブル受賞伊達じゃなかった。

    のどかな公園からスタートする物語が、どんどんと複雑化していき、途中で相関図書いて整理しつつ、結末がどうなるか全然わからなかったので、最後までドキドキしながら読み切りました。

    「私」の受け答えがいちいちかっこよすぎる、あと頭が切れるのと同じくらいダメっぷりが光る人間味が良すぎました。

    あと、あの、浅井ー!浅井かっこよすぎるでしょー!途中から浅井が出てくるたびに「浅井!!」って思いながら拍手してました。

    学生闘争の頃とかについて、少し前知識入れておくとより楽しめると思いますが、やー本当面白かったです。

  • 面白かった。アル中でバーテンダーの主人公島村と奇妙なヤクザ浅井のキャラクターと関係性が魅力的。読み応えのあるハードボイルドミステリー。

  • 一気読み
    久しぶりの活字だったけど先が気になってするする読めた!
    ちょっと難しい
    完全には理解して無さそう
    おもしろい
    登場人物がみんな魅力的!
    頭が良いから会話がおもしろい

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著者プロフィール

1948年大阪府生まれ。東京大学仏文科卒。85年「ダックスフントのワープ」ですばる文学賞を受賞。95年「テロリストのパラソル」で江戸川乱歩賞、同作品で翌年直木賞を受賞。洗練されたハードボイルドの書き手として多くの読者を惹きつけた。2007年5月17日逝去。

「2023年 『ダナエ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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