雷の季節の終わりに (角川ホラー文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 1922
感想 : 165
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043892020

作品紹介・あらすじ

雷の季節に起こることは、誰にもわかりはしない-。地図にも載っていない隠れ里「穏」で暮らす少年・賢也には、ある秘密があった-。異界の渡り鳥、外界との境界を守る闇番、不死身の怪物・トバムネキなどが跋扈する壮大で叙情的な世界観と、静謐で透明感のある筆致で、読者を"ここではないどこか"へ連れ去る鬼才・恒川光太郎、入魂の長編ホラーファンタジー。文庫化にあたり新たに1章を加筆した完全版。

感想・レビュー・書評

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  • 前回は「夜市」を読み、もうひとつ読んでみようかと思いこれを手に取った。そして面白かった。

    何がどうと説明は出来ないけど、出だしのプロローグがとてもいい。すぐに引き込まれていった。

    もう少ししたら、他の作品も読まずにいられない。

  • 地図に載っていない隠れ里「穏」で暮らす賢也が、命を狙われたことをきっかけに「穏」から逃げることで物語が広がっていく。

    おもしろい!
    賢也が「穏」から出ていくことで話は広がっていくけれど、そんなに展開しすぎずにまとまっていて、閉鎖的な雰囲気が良い。広がっていくのにどこか閉鎖的なのが不思議。恒川光太郎作品って感じ!この世界観本当好きだなぁ

    「穏」と、いわゆる「こちらの世界」の交差に加えて、登場人物も交差していく。
    登場人物はみんなキャラが立っていて読んでいて楽しかった。
    特に好きなのはツガ。ちょっとしか出てこないけれど・・・
    やさしくて穏やかで可愛らしい!(おじさんなのに笑)
    「穏」から旅立つ茜をツガが送ってくれる場面、のんびりしていて、透明感が良いなと思う。
    「油揚げが載っているラーメンもあるよね?」
    「茜ちゃん死んだら俺、泣くよ」

    「穏」と墓町の境で幽霊を追い返している大渡さんも好きだな。渋くて良い。
    この「穏」と墓町の境界で幽霊がこちらに歩いてくる場面の、おどろおどろしい不気味な描写、やっぱりすごく上手。得体のしれない感じがすごくゾワッとして静かに怖い。

    物語のラストもとても静かで寂しい。
    え、そうなるの?と思うけれど、物語は淡々と進んでいく。そもそも物語全体が静かで、クライマックスの戦いの場面もやっぱり静か。スローモーションで見ているかのような、ゆっくりとした感じ。この静かさが独特な味で良いですね。


    「きっと人はみな死にかけていて、生とは要するに、死にかけているものが、死なないように足掻くその行動の全てを指すのだ」

  • 異世界のような、すぐ隣にあるような、不思議な、とても良い雰囲気で好きです。「夜市」も良かったけどこちらも良いです。

  • 筆者の得意な別世界と現実の話。
    ホラー感は薄いが不思議なファンタジーで、読みやすく面白い。
    最近立て続けに筆者の小説を読んだがはずれはなかった。

    賢也はこれからどんな日常を送るのだろうか…

  • 読み終わったらしばらく動けなくなる。

  • ファンタジー要素がある本だった。
    数ページ開くだけで一気に引き込まれるのは流石です。やっぱ好きだなぁ。この作者。
    これを期にこの作者流しで次行ってみよう…(๑•̀ㅂ•́)و✧

  • 「穏」(おん)という異界。雷の季節に人が攫われる風習。幽霊の溜まり場「墓町」。人に取りつく「風わいわい」という魔物。

    物語はいい感じ始まったのだけれど、途中から、主人公賢也が穏を追われる話となり、トバムネキという不死の暗殺者との戦いの話に変質してしまった。穏を舞台とした妖しい話を期待していたので、ちょっと残念。

  • ◆単行本読了後、加筆された文庫本と読み比べ。◆本作の感想は単行本にUP。◆思いの外、読点が増えていたり削られていたり。◆加筆部分は、第11章後半部分から登場する赤いカードを渡すメッセンジャーの存在と第13章「〈賢也〉〈茜〉待ち合わせ」。単行本になかった茜の「雷の季節」以降の行動が書き表されている。獣の正体も。◆個人的には単行本の方が好み。トバムネキとの決闘の際、思いがけない茜の援護がとても嬉しかった(生きていた!)から。章の追加によって単行本でのもやもやが腑に落ちた感は特になかった。【2013/08/29】
    ◆「風わいわい」勝手にハシビロコウのビジュアルに脳内変換。

    • はこちゃんさん
      ふみえさん、やっほ~(*^_^*) どちらも読んだのね、スゴイ♪ 私も両方読んだけれど、単行本は発売後すぐに図書館で、文庫本はずいぶん経って...
      ふみえさん、やっほ~(*^_^*) どちらも読んだのね、スゴイ♪ 私も両方読んだけれど、単行本は発売後すぐに図書館で、文庫本はずいぶん経ってから読んだから、違いがわかりませんでした~┐(´ー`)┌
      2013/09/05
    • lttrsさん
      はこちゃん(^▽^)♪ 皆さんのレビューのおかげで文庫に加筆があることを知り、文庫購入して単行本図書館で用意したのです(*^艸^*)グフフ...
      はこちゃん(^▽^)♪ 皆さんのレビューのおかげで文庫に加筆があることを知り、文庫購入して単行本図書館で用意したのです(*^艸^*)グフフ これでコメント返信になってるとよいのですが。まだまだ手さぐりで。でもブクログ、管理上できそうなこといっぱいで面白いです♪ 
      2013/09/05
  • 日本古来の「村」の風土、風習を継承しつつ現実の世界から隔絶された異郷「穏」。そこに住む一人の少年の数奇な運命を巡る物語は死霊やあやかしの跋扈する幻想の世界でありながら、子どもの頃に感じ見た懐かしい憧憬に似た優しい雰囲気を持つ世界観の中で綴られてゆく。
    主人公の逃避行と彼を取り巻く人々の姿を通して語られる「人が生きる道筋」をドラマとしてキッチリと描き上げた技量、独特の語呂とリズム、優しく語りかける文脈は幻想小説家、恒川光太郎の作家として類稀なセンスを感ぜずにはいられない。優しくも不思議な読了感は心地よい。

  •  冬と春の間に神の季節である雷季が存在し、現実世界とはずれた場所にある地図にも載っていない「穏」という場所。情緒豊かな田舎でありながら、秘匿された土地であるが故の闇を孕んでいて、世界観に浸れた。
     雷の季節に姉を失い「風わいわい」に憑かれた賢也が闇番と打ち解け、夜な夜な「墓町」に通うところは、ちょっぴり悪いことをしているようで、同時に他人に誇れるような秘密で、冒険心をくすぐられた。
     正当防衛としてナギヒサを刺殺してしまった賢也が「穏」を追われて物語は茜という少女視点に移る。二人の関係性は、分かりやすく仄めかされていたが「雷の季節に攫われた姉」という部分が謎として残り続けたので楽しめた。
     現実世界に渡る際には、「穏」と「現実」との調和がとれていて、あたかも「穏」が当たり前に存在しているような感覚になった。
     「風わいわい」がなんとも癖になる響きで、一度は憑かれてみたくなる。ことによると、もう飛び去ってしまった後かもしれない。

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著者プロフィール

1973年東京都生まれ。2005年、「夜市」で日本ホラー小説大賞を受賞してデビュー。直木賞候補となる。さらに『雷の季節の終わりに』『草祭』『金色の獣、彼方に向かう』(後に『異神千夜』に改題)は山本周五郎賞候補、『秋の牢獄』『金色機械』は吉川英治文学新人賞候補、『滅びの園』は山田風太郎賞候補となる。14年『金色機械』で日本推理作家協会賞を受賞。その他の作品に、『南の子供が夜いくところ』『月夜の島渡り』『スタープレイヤー』『ヘブンメイカー』『無貌の神』『白昼夢の森の少女』『真夜中のたずねびと』『化物園』など。

「2022年 『箱庭の巡礼者たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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