瑠璃の雫 (角川文庫 い 64-3)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
3.49
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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043897032

作品紹介・あらすじ

深い喪失感を抱える少女・美緒。謎めいた過去を持つ老人・丈太郎。世代を超えた二人は互いに何かを見いだそうとした……家族とは何か。赦しとは何か。感涙必至のミステリ巨編。

感想・レビュー・書評

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  • 3部作からなるミステリー。

    今日今現在、伊岡瞬作品でコレイチと言えるほど読み応えのある作品だった。

    誰かに傷つけられたとき、苦しめられたとき、怒と哀を抱く中で、相手を【許す】ことの難しさ、大切さを教えられ、しっかりと私の感情を揺さぶってくれた名作であった。

  • 単純に面白い、面白くないと感想を言えない話だったかな…と思います
    このお話は
    【どうにもならなかったことを、どう許すか、どう忘れるか…そしてどう進むか…】って事がテーマなのかな…
    個人的に薫さんが、とても人として魅力的な人だと思いました

    それと自分に【許す力】があまりないなと実感した作品でした

  • 重い
    テーマは「赦し」、赦すことができるのか..
    なんとも、哀しくなる物語

    三部構成からなる物語で
    第一部はアルコール依存の母と弟と三人で暮らす小学6年生の美緒の目線で語られます。
    そんな美緒は母の従妹の薫の店で元検事の永瀬と知り合います。
    しかし、永瀬も過去に娘を失うという暗い過去が..

    第二部ではその永瀬が検事時代の物語。
    永瀬が大きな事件を追っている中、娘の瑠璃が何者かに誘拐され、事件は迷宮入りに..

    そして第三部では、美緒が社会人となり、美緒が探る永瀬の娘の事件。
    そこで、明らかになる真相
    といった展開です。

    哀しい真実が明らかになります。
    それぞれが重いものを持っていながら、それを「赦す」ということ

    全体的に哀しい物語ですが、お勧めです

  • ★3.5



    母と弟の3人で暮らす小学6年生の杉原美緒。母のアルコール依存によって、親類に引き取られた美緒は心を閉ざしていく。そんな折、元検事の永瀬丈太郎という初老の男と出会う。美緒は永瀬の人柄に心を開いていくが、彼はひとり娘を誘拐されており、大きな心の傷を抱えていた。数年後、美緒は事件を調べ始め、あまりにも哀しい真実を知る。家族とは何か。赦しとは何か。


    重かった。
    読んでいて悲しくて辛い気持ちに押し潰されそうに何度もなりました。
    後半色んな事が繋がっていくにしたがい、色々考えさせられました。
    ケンジさんの気持ちを思うと、切ないな

  • 自分の子供が、誘拐されて、それっきりやったらどうする?
    幼い弟が、赤ん坊の弟を誤って殺してしまったらどうする?
    そういう境遇の親子以上に歳の離れた2人が出会い、多少なりとも前向きにしていく。
    でもなぁ〜そうは言っても、こんな事を経験したら、自分なら立ち直れんな…一生…
    許すと言ってもそう簡単にはね…
    恨みだけで生きてても、ただの生き地獄。
    それぞれの事件の次第に真相は分かって来るんやけど、心は晴れんわ。
    少しでも前向きに、少しでも明るく生きて欲しいと願うしかない。

  • 伊岡さんは8冊目となり、私の本棚登録も1位になっておりました^^
    読んだ中では1番読解が難しく(特に2章の政権?がらみ?のあだこだ)、、そして最後まで悲しい寂しい感情が残ります。

    『赦せるか』
    私は赦せない性格の方が強いのかもしれません。
    いつもまあいっか〜と流す方ですが、
    なんだろ、、この話のどことも赦せない、、

    不幸の連続で気持ち辛いが、
    どうかひと時の幸せを感じてほしいな、美緒さん。
    薫さん、こんな良い人います?素敵だわ。

    伊岡さんの積読本は、あと2、3冊
    次の休みでまた読もう

  • 第一部は母と弟の充と三人で暮らす、小学校6年生の杉原美緒目線。
    母はアルコール依存で、何度も入退院を繰り返していた。
    美緒には充以外にもう一人弟が居たが、乳幼児の時に死亡している。
    弟の充が誤って死亡させてしまったと、幼い記憶に刷り込まれていた。

    母が何度目かのアルコール依存症で入院した時、
    母の従妹である薫に美緒と充は引き取られる。
    そこで、元検事の永瀬丈太郎という初老の人物と出会う。
    この出会いが、美緒の心に火を灯す。


    第二部は永瀬丈太郎目線。
    永瀬は長野県勤務の時、ひとり娘を誘拐され、大きな傷を抱えていた。
    その時間軸で物語は語られる。
    検事は転勤があるが、永瀬の妻はひとり娘の誘拐から気持ちが塞ぎ、長野県に一人残ることになった。
    妻は画家である竹本多美雄という人物に出会い、少しずつ心を取り戻していった。

    永瀬も過去の事件を引きずったままだったが、もう一度長野へ飛び、事件について調査する。


    第三部は時間軸が進み、社会人になった美緒目線。
    丈太郎は火事に巻き込まれ瀕死の状態だった。

    美緒は丈太郎との過去を回想し、真実を追及する。



    このところ、伊岡先生の本には大嵌り♪
    ハズレが無い!
    この本も未来屋書店さんに、装丁を表にして、大量に積まれていた。
    私を伊岡さんに初めて出会わせてくれたのも、未来屋書店さんだったなぁ~と、期待大で読み始めた。


    一部は、何だろうなぁ~?
    この先どうなるのかなぁ~?
    ちょっと不安な(面白くないような予感www)がしたのだが、
    読み進めるとどんどん物語に嵌っていく。
    美緒の人となりが何となく好みではなかったので、一部はちょっと苦痛に感じられた。

    二部は、丈太郎目線。丈太郎の人となりは超好み。
    目が離せなくなり、後半は一気読み。

    そこからの第三部。
    後半は畳みかけて真実が明らかになってくる。
    丈太郎の過去の事件、そして現在の美緒。

    ワクワクドキドキ感、面白かった~。
    さすが伊岡先生。やっぱりハズレ無し♪

  • 母と弟の3人で暮らす小6の少女・杉原 美緒。
    そして、元検事の永瀬 丈太郎。

    アルコール中毒の母、少し知恵遅れの弟。
    幼い頃、事故で亡くなったとされる弟・譲。
    若い頃、一人娘を誘拐された永瀬。
    登場人物は、それぞれ過去の苦悩を抱えて生きる。

    そして、美緒と承太郎の出逢いが、2人の過去と未来を変えていく。

    全体を通して、暗い雰囲気が漂い、胸が苦しくなります。
    特に、知恵遅れの弟が川に沈み、丈太郎の家が火事になる『第一部』の最後は、今後の大きな展開を予想させます。

    第一部、第二部、第三部と、それぞれ時間軸が変化するのも、興味深いですね。
    最後、これまで隠れていた謎が明らかになりますが、真実とは悲しいものですね。

    表紙と内容のイメージが合っていると思います。

  • 取り返しのつかないことをどう許すか。

    程度の差はあれど、世の中には取り返しのつかないことがたくさんある。
    それとどうやって折り合いをつけるかが、生きていくうえで大切なのかもしれない。うまく折り合いをつけていかないと、いつまでもつらいまま。生きていけなくなってしまう。
    でも、許すってかなり難しい。
    結局、美緒は小学生のころからずっと長い間、嘘に悩まされて苦しめられてきたことになる。充もずっとつらかった。それを全部忘れる、許すって簡単にできるもんじゃない。ひどいよお母さん。

    重たい内容だけど、美緒を支えてくれた永瀬の存在もあってか、全体的に静かで穏やかに物語がすすむ。その永瀬も心に大きな傷を負っているのがまたつらいけれども。
    時間軸がずらされていたり登場人物がうまく隠されていたり、展開が気になって一気に読んでしまった。


    「ただわたしが知りたかったのは、丈太郎が何を知っていて、自分の中でどう折り合いをつけたのか、ということだった。
    これから対峙しようとしている現実を、わたしは受け入れることができるのか。それを計る物差しとして、どうしても丈太郎の過去をのぞいてみたかった。」

  • 伊岡瞬『瑠璃の雫』角川文庫。

    古本屋で偶然見付けた伊岡瞬の初期作品。三部構成のミステリー。『代償』や『痣』のレベルではないが、なかなか読ませる。但し、後味は悪い。

    冒頭からやりきれない雰囲気の中でストーリーが展開する。人間というのは産まれた時から大小様々な業を背負って生きているのかも知れない。同時に進行する2つのミステリー……どちらにも救いは無く……哀しみだけが……

    父親が家族を捨てて失踪して以来、母親と小学3年生の弟、充と3人で暮らす小学6年生の杉原美緒。母親が何度目かのアルコール依存症で入院して、叔母の薫に引き取られると、次第に追い詰められて行く美緒は頑なに心を閉ざし、行き場の無い怒りを弟の充に向ける。そんな充には赤ん坊の弟、穣を謝って殺した過去が……

    そんな中、薫の知人である元検事の永瀬丈太郎と知り合った美緒は少しずつ心を開いていく。そして、永瀬の娘、瑠璃は過去に叔母の薫の目の前で何者かに誘拐されており、以来、永瀬は心に大きな傷を負っていた。数年後、社会人になった美緒は瑠璃の誘拐事件について調べ始めるのだが……

    『七月のクリスマスカード』を改題。

    本体価格781円(古本515円)
    ★★★★

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。2005年『いつか、虹の向こうへ』(『約束』を改題)で、第25回「横溝正史ミステリ大賞」と「テレビ東京賞」をW受賞し、作家デビュー。16年『代償』で「啓文堂書店文庫大賞」を受賞し、50万部超えのベストセラーとなった。19年『悪寒』で、またも「啓文堂書店文庫大賞」を受賞し、30万部超えのベストセラーとなる。その他著書に、『奔流の海』『仮面』『朽ちゆく庭』『白い闇の獣』『残像』等がある。

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