塩の街 (角川文庫 あ 48-3)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
3.89
  • (2387)
  • (2947)
  • (2064)
  • (421)
  • (116)
本棚登録 : 29406
感想 : 2098
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043898039

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 『塩の街』有川浩著
    【印象に残る言葉】
    「女は本来男よりも度胸あり図太い。男は理屈を越えられないが女は軽く越えちゃう。」
    「世界のルールが変わって、人間は初めて何に守られていたかがわかる。そして何を守りたいか?」

    【著者との出会いからこれまで】
    これまで植物図鑑、阪急電車、レインツリーの国、クジラの彼、ストーリーセラーと読了してきました。
    そして、次がこの塩の街でした。
    過去読了していた小説とは毛色の違う始まりに戸惑いを覚えながら進みました。

    【物語】
    タイトルのとおり、世界が塩の街になり、人々が存在できなくなる極限の物語です。
    その物語を通じで
    親子
    年齢が10離れた男女
    高校からの幼なじみの男組
    塩害を機会に命を無くす若い男女
    らの関係をたどります。

    【季節と物語】
    始まりは冬。どんよりとした厚い雲に覆われた感じです。
    さらに雪が少し積もり、足元がふらつきます。
    でも、少しずつ少しずつ薄日が差し込み、春の訪れです。
    物語の終わりには、満開少し手前の桜の風景が目に浮かぶ感じです。

    有川浩さんの小説。
    今回の塩の街でさらに好きになったようです。

    #読書好きな人と繋がりたい。


  • 三部作の中で1番好きで何回も読みました。
    主人公も好きだし、登場人物それぞれに物語があるのも良かったです。
    でも恋愛小説として楽しめる人は合うかもしれないですが、SFが読みたかった人にとっては物足りないかもしれないですね。

  • 大きな塩の結晶が落ちてきたせいで、世界が塩害にあい人々が塩化していくというお話。
    パニック/サバイバル系だけど、恋愛要素も人間ドラマもあって最高におもしろい本でした!
    サバイバルするための知識が身についた気がするし、自衛隊や米軍が使っている車や飛行機など、勉強になりました。

    読書をして楽しいな〜と思うところは、自分の好きな俳優さん・女優さんをキャスティングできちゃうとこ(笑)
    個人的には入江さんがおもしろい登場人物だと思いました。もし実写化されたら、堺雅人さんがこの役演じるところ観たいな〜。( *´艸`)
    トモヤもなかなか印象に残る登場人物でしたし、トモヤが登場する章では、悪い人間ってどう言う人のことを言うんだろうかとハッとさせられるものがありました。

  • 秋庭のわかりにくいけど、その分愛情深い言葉や行動がカッコ良かった。

    色んなことが起こる中での、ふたりがお互いを想う気持ちの描写も好きなところ。

    世界を救う為の危険な任務を果たした自衛官の秋庭。
    『でもそれは使命感ではない。
    彼が世界を救ったとしたら彼女のためだけに救ったのだ。彼女がその世界にいるから。その他の僕らは、きっとおまけで救われたのだ。』
    印象深い本文。
    全てはすぐそばにある小さな想いから始まる。



  • この3部作では、これが一番面白かった。

    相変わらずSFちっくだけど、「潮の街」に至る塩の柱も、聖書から発想したんだと納得出来たから読みやすかったのかな。

    緊急事態になると人は動物化していく。人が人らしく生きるには平和が不可欠なんだと思った。

  • 有川浩さんのデビュー作。
    夢中で読んだ。

    空から飛来した塩の巨大な結晶。
    それが来てから人は塩の柱になって死んでいく。

    無秩序なゴーストタウンになった東京で
    身寄りを亡くした高校生、真奈と自衛官の秋庭が
    ともに暮らしていた。

    恋。

    ただそのひとつに命を賭けて、二人は生き残ろうと
    するのだが…。

    というお話。

    で…もう。読んでいて胸が痛くて。
    限界値のある世界でないと、何故人は素直に
    なれないのか。

    私の愛している人が、塩の柱になると
    言われたら。どんなに貶められても
    どんなに困難でも、そのひとといる。

    きっと相手は私と同じには、してくれないと
    解っていても。きっと私は。

    だからこのお話は…。

    ほんとうの最愛だからこそ、成り立ったお話。

    素晴らしい恋物語だけど、同時にすごく優れた
    パニック小説、サバイバルSFでもあって。

    入江という秋庭の友人が、悪辣だけど
    すごく良かった。塩害という事態をどうする?

    という事や、起きた事態に対して架空の中での
    リアリティをしっかり持たせてくれたので。

    明日も知れない中で、どの人物も
    ああ、こういうことあるなと思わせるのがいいし
    やはり組織の中での作戦遂行というものを
    この人が書くとうまい。

    有川浩はこうじゃなきゃ!って思う作品だった。

    ちなみに、電撃文庫や角川の単行本より
    角川文庫をお読みになるのが、今からなら
    いいと思う。

    後日譚などもちゃんと収めてあるし
    これが完成版のよう。

  • 率直で語彙力皆無の感想だが、非常に面白かった。
    寝る間も惜しんで読み進めてしまったほどだ。


    この本は友人から勧められた。
    彼女曰く「プロローグで毎回泣いてしまう」らしい。
    ざっとあらすじを聞いて面白そうだったので拝借した。
    有川浩という名前を本屋ではよく見かけるが、実際に作品を読むのは初めてだ。


    泣いた、というプロローグの結末は事前説明の段階で聞いてしまっていたので(友人には悪いが)読み終えた時の感動は薄いものだった。

    しかし、“塩でできた謎の巨大物体が世界各地に落ち、人体が次々と塩となり朽ちてゆく(本作では「塩害」と名付けられている)"という世界観に、読者である私を引き摺り込むのには充分だった。

    人が塩の柱になるなんて、その想像力は一体どこからくるのやら…。
    ざっとした世界観の説明と、それに引き込む力、そして誰が主人公なのかが読み終えてから分かるのも、プロローグらしくて面白い。



    個人的にこの物語を良いなと思えたのは、物語の中心的人物である真奈と秋庭をはじめとしたその他の登場人物が、最終的には好ましいなと思える人たちだからだろう。
    たとえ出会い方がどうであれ、何をされたとて。
    (しかしそれは真奈が強く、聡明な女性であり、そんな彼女の視点越しに物語を見るから好感を持てるのであって、実際に自分が真奈の立場になったら敵意を持つ自信しかない者もいた。)


    この真奈が非常に共感できる人物というか、私自身の考えを言語化してくれた存在というか。
    とても感情移入してしまった。


    「女の子はいやなんです。かわいいとか、要らないんです」


    真奈はそう言った。

    "かわいい"は即ち、"頼れない"だと。
    足手まといにしかなれず、相手の背中どころか自分自身も守れないと。


    特に共感し、心に刺さった。
    かわいいには様々な種類があるが、もちろん、それらを全て否定するつもりは到底ない。
    (時と場合、また相手にもよるが)可愛いと言われて嫌な気はしないし、私自身、人であれ物であれ、かわいいものは大好きだ。


    しかし、真奈がここで言う「かわいい」は、私が嫌悪する部類の「かわいい」ではないかと私は捉えた。

    女の子らしい、かわいいからは遠い側の人間であると自覚はあるのでただの負け惜しみのようなものではあるが、勝手に値踏みされて消費されるためだけの「かわいい」に、一体何の価値があるのか。
    (そういう捻くれた性格をしているから"かわいくない"のだが。)

    女性というだけで常に何かを警戒して、嫌悪するようなことが日常生活に頻繁にあることも、守られなければどうにもならない時があるのも知っている。
    だから、私自身が女の子らしくしないのは、自分自身を守るための鎧なのだ。
    (あと世間一般でいう男の子っぽい髪型や服装が単純に好き。)


    話が少し逸れたが、もしも現実世界が塩害に侵され、作中のような荒れ果てた世の中になるのだとしたら、私は真っ先に「女らしさ」を捨てるだろう。

    それを捨てる理由として、加えて真奈には守りたいものがあった。
    守られる側、重い荷物でありたくなかったのだ。
    自分の力で、彼を守りたかった。

    秋庭である。

    本作は、塩害の謎の追求の他に、真奈と秋庭の不器用な愛も読みどころである。

    周りがどうなろうが、世界がどうなろうが知ったことではない。
    ただ、相手が無事でさえいればそれでいい。

    そう思うことは簡単だが、実際に行動に移して体現するのは至難の業だ。
    しかし、二人は各々のやり方でそれを体現し、ついでに世界を救う。
    「ついで」というのは、自分に関わりのある物(者)以外、結局はどうでもいいからだ。
    自分の知らないところで何をしようが、何になろうが、どうでもいい。
    突き放すような考えだが、実際そうである。

    塩害という正体不明の現象に彼らが戦いを挑めたのは、二人自身の強さと、偶然の再会、お互いへの絶対的な信頼と、そういった不器用な愛があったからだ。

    と、私は思った。



    現実世界に本作で出てくる塩害はないが、簡単に人が死に、明日がくるという保証がないのは同じだ。
    そんな世界で、誰と過ごし、何を守るのか。
    是非そんなことを考えながら読んでみてほしい。



    余談だが、
    秋庭に対して「不器用」とは良く言ったもので、正直だいぶめんどくさすぎるおっさんである。
    しかし、真奈を守ろうとする気持ちとか行動とか、大事に想う感じが個人的に理想的で好みだ。
    推せる。

  • いつ読んだか忘れたくらいの再読。

    デビュー作ということを思うと、やっぱりオソロシイ。
    少し大人になった自分が再び読んでも、ふわふわ出来る。
    若くないからこそ、文章の端々から感じる、作家の「感じて欲しい意思」みたいなものが、甘酸っぱさを含んでスゴク伝わってくる。
    だから、いつまでも好きなんだろうと思う。


    自分の関わった人さえ不幸にならなければそれでいい。
    自分の見る部分さえ綺麗ならそれで。
    知らないところにどれほど汚く、醜く、残酷な部分があったとしても、それを直視することがなければ知らなかったことに対して穏やかでいられる。

    世界が美しいなんて嘘を信じたままで。

    -P184-

    この容赦のない入江という登場人物が大好きだ。
    理不尽で耳を塞ぎたくなるセリフを言い続ける入江という人を書いている、そんな有川さんを想像するだけで、もうそれだけで楽しくなってくる。

    この塩対応するキャラのお陰で、この一冊は完成していると思った。

  • 有川浩のデビュー作。重いテーマも軽やかなテンポで描かれて、楽しく読めます。オススメ!

  • 図書館戦争が好きなら絶対好き。個人的にはこっちの方が主人公謙虚で好ましかった。退廃的な雰囲気も非常に良い。有川さんの恋愛小説特有の激甘っぷりに胸が躍った。

    ☆勝手にイメソン
    あなた(宇多田ヒカル)

著者プロフィール

高知県生まれ。2004年『塩の街』で「電撃小説大賞」大賞を受賞し、デビュー。同作と『空の中』『海の底』の「自衛隊』3部作、その他、「図書館戦争」シリーズをはじめ、『阪急電車』『旅猫リポート』『明日の子供たち』『アンマーとぼくら』等がある。

有川浩の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×