ホルモー六景 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 481
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043939022

感想・レビュー・書評

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  • 確かにこれは「鴨川ホルモー」のスピンオフで、ホルモー本編を読んだ人ならぜひとも読んでほしい短編集で、ホルモー本編を読んでいない人には少し理解がしづらいものかもしれませんが、それにしたって、素晴らしい短編集ではございませんか。再読ですが、初読みの時よりさらにそう感じます。その壮大な奇想天外さの割には本編では少し物足りなく感じたホルモーを、もっともっと深く感じられます。本編では、主人公安部視点で、安部の身の回りのことがほとんどだったので、安部の知らないところでこんなことがあっていたのね、と、よりホルモーを軸とした背景が過去に現在に広がります。しかししかし、こういう本を読むと自分の歴史の知識のなさに愕然とします。「サツマ」という言葉から「さつま芋」しか連想できず、シンガポールからの留学生に「薩摩藩」のことではないかと指摘された巴を笑うことは、私にはできません。どうにかこうにか目の前のテストを乗り切ることだけを考えて一夜漬けのように勉強し(たつもりになり)、長く知識を保てるようなちゃんとした勉強をしてこなかったことを後悔するのはやはり読書の時ですね。余談は続きますが、大人になってから、「あぁ、今なら、日本史・世界史・地理、いや数学でさえ大変な興味をもって授業を受けられるのに・・・」と思うことはありませんか?(余談終わり)

    本書に収められているのは以下の六景。
    ・鴨川小ホルモー
    ・ローマ風の休日
    ・もっちゃん
    ・同志社大学黄竜陣
    ・丸の内サミット
    ・長持の恋

    みなさんのレビューにザーと目を通したところ、「ローマ風の休日」と「長持の恋」が人気のようですが、私が好きだったのもやはりその二つでした。あぁ、でもどれも本当にいいのですよ。
    本書を読みながら思い起こすと、私も遠い昔、京都の私大に行く可能性があったのですが、結局関東の大学を選んだのは他でもなく自分だったのに、なぜあの時、京都に住むということを選択しなかったのか、と大学に行くという最大にして最優先の目的を忘れて、ほんのちょっと後悔することがたまにあります。あの日あの時あの場所で、京都に住む選択をしていたら私もホルモーをしていたかもしれない。(実際にホルモーをやってみたいかと言われれば、結構過酷そうなので微妙ですが。「ホルモー」と叫びたくないし。)人生に「たられば」がないことはわかっていてもそう考えずにはいられません。と言いつつ、「丸の内サミット」では、関東でもどうやらホルモーが行われているという事実が判明し、私の「もしも京都に住んでいたならば」の考えは、一瞬にして泡のように消え去りました。というか、この短編「丸の内サミット」自体は面白いですが、ホルモーはやっぱ京都でしょ、と思ってしまったりもします。「はいはい、さすが京都ですね」と言われないための作品だったのか、万人に夢(?)を見てもらうための作品だったのか。

    ホルモー本編を読んでから本書を読んだ方が良いというのは絶対ですが、「こっちの方が好き!」と言えそうなほどこのスピンオフは良かったです。いやぁ、凡ちゃんの良さがわかる少年、いいなぁ。芦屋、ホントにダメ男だなぁ。ホルモー、めっちゃ歴史あるなぁ。そして、ラストの「長持の恋」はもう全然ホルモー関係なしに、素晴らしかったです。泣きました。(え、なべ丸、実在の人物なんですか。)

    ひとつひとつがいとおしい、可愛い作品です。

  • この物語は「鴨川ホルモー」の"外伝"です。京大青竜会の安倍くんたちの怒涛の活躍を描いた前作が"正伝"。
    続編ではなく、『安倍くんたちの見えないところで、こんな事がありました』というお話になっている所がミソ。

    第1話「鴨川(小)ホルモー」
    主人公は京都産業大学玄武組のエース、『二人静』。その名も"定子"(さだこ)と"彰子"(しょうこ)。式神を呼び出して対戦する『ホルモー』の遣い手は一様にヘンな人ばかり。この二人の美女も御多分に漏れずやっぱりヘンです。何しろ"車懸りの陣"の様に繰り出す攻撃に"夢想花アタッキング"とネーミングするセンスでは、そりゃあ男も引くわ(笑)

    第2話「ローマ風の休日」
    京大青竜会で安倍くんが思い煩っていた時期に、凡ちゃん(髪型とメガネが大木凡人似)こと楠木ふみが初めてのデートをする物語。
    同じレストランでアルバイトをしている少年に一目置かれる存在になった楠木さん。数学の宿題を解く為に少年に同行する。その途中、六道珍皇寺の井戸に少年が腕を挿し入れる場面があって、そこがタイトルの由来です。本の表紙絵もそのパロディ。
    (どれだけの人がわかるんだ?)

    第3話「もっちゃん」
    この話だけちょっとヒネリ方が他と違う。
    安倍くんの下宿の隣人が「もっちゃん」。安倍くんは京大青竜会に所属してホルモーをやっている。もっちゃんが恋をした。ラブレターを書く材料を買いに行った本屋で、直前に買ったレモンを棚に置く…辺りで?となった。もっちゃんは英語に堪能で楽譜を読めて…え?どこかで聞いたような…。正伝をきちんと読んでいれば、納得のいくオチがちゃんとついてます。

    第4話「同志社大学黄竜陣」
    主人公、山吹巴は高校からの恋人と共に同志社大を受験する。だが失敗。その恋人にとって同志社大は滑り止めで、京大に進学する。男は大学サークルで別の娘と付き合い始め、巴は振られた。恋人の名は芦屋満という(京大青竜会のエースにして安倍くんの天敵)そんな巴が同志社大で、廃止されていた"黄竜陣"の遺物を見つけてしまったことから、芦屋くんに天罰が下る事になる。

    第5話「丸の内サミット」
    この話には青竜会メンバーは一切出てこない。しかし、ホルモーの新たな側面も垣間見える話です。
    中心になるのは京都産業大学玄武組OBの榊原くんと龍谷大学OBの井伊さん。二人は東京の同僚主催の合コンで再会する。二人はそれぞれの大学でリーダーだった為に面識があった。その二人が、合コン終了後に丸の内で異様なものを目撃する。二人の同僚は、それぞれ一橋大とお茶の水女子大出身だけど、もしかして…。

    第6話「長持の恋」
    立命館大学白虎隊リーダーの細川珠実は超貧乏。それなのに運転免許がほしくなって教習所通いを始める。教習所で会ったのが京大青竜会の高村くん。(何とこの男はちょんまげを結っている)バイト代稼ぎで始めたのは料理旅館の仲居。蔵から旅館の物品出しの最中に見つけた長持に、不思議な性質がある事に珠実は気付く…。

    どの話もよく出来ていて、前作との整合性もきちんと取れていて心地よい。物語同士の関連性もあって、それに気付いた時はニンマリしてしまいました。ただ、それだけに前作をしっかりと読み込んだ"上級者向け"とも言えるでしょう。
    青春グラフィティであり、ちょっとヘンなファンタジーでもある。
    若いって、いいなぁ。好き(笑)

    • 青格子さん
      "外伝“www、スピンオフですね。うん、若いっていいな、という世代ですものね。
      "外伝“www、スピンオフですね。うん、若いっていいな、という世代ですものね。
      2024/04/16
  • 鴨川ホルモーを最近読んで、面白かったな〜と思っていたところ、他の方の本棚で「ホルモー六景」を見つけ、早速図書館で借りました!

    「鴨川ホルモー」のそれぞれの人の恋愛模様と、歴史の絡みが面白かったです。
    どの話も面白かったけど、私のお気に入りは「ローマ風の休日」と「丸の内サミット」。

    ぼんちゃんの能力の高さと自分に足りないことを克服しようとまっすぐに努力する姿が素敵だなと思いました。

    東京での合コンで集まった4人がみんなホルモーに関わる人だったというオチに笑ってしまった。
    あんなに隠してたのに…笑

  • ホルモーの世界の奥行を感じさせてくれる。また他の万城目作品との繋がりもよい。『ホルモー』を読んだらこちらも必ず読みたい。続編にして、世界観の輪郭を示すという意味で必須のコマ。

  • あぁ読み終わってしまった!とにかくとにかくとにかく面白かった‼ 鴨川ホルモーのスピンオフだと思っていたので、高村や安倍、楠木さんが出てきて嬉しかったし、東京でのホルモーや昔のホルモー、芦屋の元カノなどほんとに楽しかった‼ 中でも長持の恋ですよ☆泣いた泣いた!切なくて笑えてほんとにもう… ぜひまだ読んでないかた、万城目作品を読んでほしい‼ 鹿男⇒鴨川ホルモー⇒ホルモー六景の順番で☆これはもうオススメだなぁ‼

  • 「鴨川ホルモー」を読んだ時にも思ったが、有りもしない事を、
    よくもまあここまで具体的かつ真に迫る描写が出来るものだと只々感服。

    全編通して爽やかでかわいいお話だが、
    「もっちゃん」と「長持ちの恋」は切なさが溢れていて秀逸。

    特に過去の人との一風変わった文通という、
    歴史ミステリー的な要素も織り交ぜられた「長持ちの恋」は極上のラブストーリーだ。
    ハラハラしながら食い入る様に読んだ。

  • その名の通り短編集6作品です。
    個人的には「ローマ風の休日」がお勧めです。
    素直じゃないし、無愛想だけど可愛らしい・・・楠木さんの恋心が素敵でした。
    何より、京都在住なので、知っている地名もたくさん出てきて、親近感わきまくりでした(^∇^)

  • 鴨川ホルモーの続きかと期待したらスピンオフでがっかり。。
    が、それぞれの小話が良すぎる!
    けっこう泣いてしまった。。
    もっちゃんもヤバかったけど、長持の恋、ヤバすぎる。涙止まらない。。

    もともと信長好き。戦国好き。本能寺の変関連好き。明智いまいちだけど気になる。

    本能寺に付き従っていたお小姓たちの最後まで殿を守った逸話はよくあるが、なべ丸とのやり取り、せつない。

    このせつなさが高村くんのチョンマゲにつながり、頭頂部に印をつけるなんて!しかも琵琶湖!笑いながら泣けた。

    私も本能寺に行ったことないから、ぜひ行って石碑を見たい。

    丸の内サミットは、ぜひあってほしい^^
    ホルモーシリーズはもう書いてくれないのだろうか。
    同志社大学の復活、東京バージョン、ぜひ執筆して欲しい〜!

  • 一つ一つの話がいとおしかった。「鴨川ホルモー」の登場人物がますます好きになった。

  • 鴨川ホルモーを読んでから、映画を見て、ホルモー六景を読んだ。キャラがたって、とても面白い。あの話の裏には、実はこんな事があった的な話って興味そそるのかな。今までで一番短く感じた帰りの通勤だった。

著者プロフィール

万城目学(まきめ・まなぶ)
1976年生まれ、大阪府出身。京都大学法学部卒。
2006年、『鴨川ホルモー』(第4回ボイルドエッグズ新人賞受賞)でデビュー。主な作品に『鹿男あをによし』、『プリンセス・トヨトミ』、『偉大なる、しゅららぼん』などがあり、いずれも文学賞ノミネート、映像化等など、大きな話題を呼ぶ。また、エッセイ集に『ザ・万歩計』、『ザ・万遊記』、対談本に『ぼくらの近代建築デラックス!』がある。

「2013年 『ザ・万字固め』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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