- Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
- / ISBN・EAN: 9784043943098
作品紹介・あらすじ
外資系投資ファンド会社勤務の野上妙子が休暇明けに出社すると、所属部署がなくなっていた。ただ1人クビを免れた妙子は、支店長から「日本地熱開発」の再生を指示される。なぜ私だけが?その上、原発の陰で見捨てられ続けてきた地熱発電所をなぜ今になって-?政治家、研究者、様々な思惑が錯綜する中、妙子は奔走する。世界のエネルギー情勢が急激に変化する今、地熱は救世主となれるか!?次代を占う、大型経済情報小説。
感想・レビュー・書評
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地熱発電に興味が湧いた
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真山仁さんの初めて本。経済小説がメインであり敬遠しておりましたが傑作でした。
主人公が休み明けに会社に行ったら、自分のデスクどころか部署自体がなくなっていたという、衝撃的な場面からストーリーは始まります。そして主人公は支店長に呼ばれ、九州の山奥の会社の立て直しを命じられ…
2006年に書かれた本。今まで知らなかった地熱発電ですが、わかりやすい説明で読ませてもらいます。その後2011年の東日本大震災で、まさか日本の原発がすべて止まる日が来るとは。そして夢の発電方式でありながら、進まないのは、なぜなのでしょうか?
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面白かった。政治と金とリアルな感じが楽しい。政治と金とパワー合戦はドロドロとヘビーでハードでも、清々しく美しい九州の景色や品のある光景が挟まっていて気持ちが良い。
ラストは感動どころも多く涙、涙でよかったけれど、その祖父でそんな性格の孫には育たないでしょう、という現実味のなさが少し残念でした。 -
この小説が、3.11原発事故よりも前に書かれていたことに、著者の先見性の確かさを見る。
『ハゲタカ』シリーズの著者が、火山大国である日本で地熱発電がなぜ発達してこなかったのかを明かし、原発という禁断の火を手に入れてしまった我々は後戻りできないのだろうか、そんな問いかけを迫る経済情報小説。
ファンド会社の上司から地熱発電会社の再生を指示された主人公野上妙子。
彼女が、地熱発電研究の第一人者者や日本地熱開発社長とともに、再建を果たすまでを描く。
小説内で、地熱発電の問題点として3つあげられている。一つは、コスト的ハンディが大きく、事業として魅力がないこと。二つ目は、政府の温暖化対策である助成措置の対象外であること。三つ目は、国立公園の制約。
一方、原発については、利権構造と権力構造が生んだ悪魔の選択だとし、莫大な国の補助金がつぎ込まれながら、使用済みの核燃料の処理方法も確定せず、老朽化した原発の処理問題も未定のまま、地球温暖化対策の切り札としてベースロード電源に位置づけている現状を、小説内の人物に告発させている。
ロシアによるウクライナ侵略での資源危機から、原発推進に拍車がかかるいま、気象に左右される太陽光発電や風力発電より、気象の影響を受けない地熱発電に再度注目する必要があるのでは。
利権が絡み、電力業界の負け犬とされる地熱発電を、抵抗勢力などの様々な障害を乗り越えながら、事業として軌道に乗せようとする主人公たちの活躍に、称賛しながら読み終える。
「大枚をドブに捨ててでも、子孫のため、地球のために便利さに背を向ける選択をする勇気を持つ人間がどれくらいいるか」、そんな問いかけに「自分たちが果たすべき責任」を意識しなければならないだろう。 -
2006年時点の電力に対する一般的なイメージを理解するのに役立った。
原子力が環境に悪いという考えを抱く理由が分からなかった。環境に良い地熱、との対比のために仕方無いとは思うものの。
産業が政治にコロコロ転がされる様子が、現実の通りで、うっ、という気持ちになった。
ストーリーとしては、謎をほとんど解決してくれるのでスッキリしていて良い。 -
再生可能エネルギーの一つとしての地熱発電について学ぶために八丈原地熱発電所に見学に行った際に、この本を知りました。この作品が書かれたのは2006年。2023年の現在は、原発の全停止を経て、電力自由化、再生可能エネルギーへのシフトが進む一方で、脱炭素と資源高への切札として政府と電力会社が原発再稼働を進めている。そして地熱発電の発電能力は2006年当時と変わっていない‥。地熱発電や原発のあるべき位置付けはどこなのか……。いろいろ考えました。
物語的には、ラストに向けて展開を少し急ぎ過ぎた感じが。
電力業界の10数年の環境変化を踏まえて、続編が出ないかな。
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ハゲタカシリーズの真山仁さんの著書。
地熱発電を運営する会社の再建を任される外資系ファンドの女性が主人公。
電力、原発問題や地熱発電という至極興味深いテーマが素人にも分かりやすく書かれており、
この本を通して地熱発電に興味を持った。
好きなシーンは御室と千歳の後半のシーン。
2人と一緒に涙が出ました。 -
地熱発電を中心に動き回る、投資銀行での出世争いや企業買収、政治絡みの利権争い、そうした泥臭いところまで描かれた本作。
地熱発電の仕組みやその意義、一方で普及の難しさも理解ができ、また電力という人間にとって今や必要不可欠なエネルギーにまつわる様々な利権についても、全てではないものの記載がされており勉強になった。
電力は太陽光以外、水蒸気がタービンを動かすことで発電するという仕組みが共通している。火力や原子力、地熱、風力、いずれもエネルギーの始点は異なるものの、水蒸気がタービンを動かしている。
個人的には黒木亮と似ている作風ながら、端々の表現において、黒木亮の方が好きなため、個人的嗜好により星を一つ減らして星3つ。 -
「マグマ」真山仁さん
1.2021年の今
スターバックス。店舗電力を再生エネルギーへ。
https://www.starbucks.co.jp/press_release/pr2021-4077.php
2.マグマ=再生エネルギーの物語
真山さんの執筆は2005年です。
東日本大震災よりも前に執筆しています。
内容は、原子力中心の電力供給と、中々発展しない再生エネルギーの現状と課題です。
小説は「地熱電力」を中軸に据えて展開します。
執筆から15年の月日を数えて、1.の流れに行き着いているというのも現実です。
3.地熱電力の課題とは?
小説より
①電源=マグマに辿りつくまでの時間と投資金額。
②売買価格が高い。
※①のため、消費側の負担額が原子力と比較して高い。
③マグマの在り処=国管轄自然公園下
※自然保護を理由に開発が進めづらい。
4.地熱電力を買い取りした「ハゲタカ」の戦略とは?
電力業界の規制/ルールを破壊します。
その戦術として、ハゲタカのグローバルネットワークを駆使します。
①先進国のエネルギー談話会議における日本政府への圧力
②環境系ファンドの日本企業への電力供給元の見直しの示唆。
5.真山さんの小説の面白さ
ハゲタカの視点よりも、昨今の日本の政治、民間、そして学術が課題とするテーマへの切り込みです。
読者として、巻末の参考文献と取材からの積み上げの物語に、ただ感謝です。
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展開が楽しくて一気に読めてしまった。
地熱発電の仕組みや政策、原発との関係や利権など、どこまで現実通りなのかは分からないが、とても楽しめた。実際に国立公園での地熱発電建設に関する規制が緩和されたりしたなど、時代を先取りしていたようだ。