退出ゲーム (角川文庫)

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著者 : 初野晴
  • 角川書店 (2010年7月24日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043943715

退出ゲーム (角川文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 単なる「学園ミステリ」の系譜の一つくらいに思っていたが、これはもっと正当に評価されるべき。

    硫酸銅の結晶、ルービックキューブ、ケニーG、アイガモロボット。
    「学園ミステリ」で扱う題材としては絶妙に外したこのアイテム。
    ここから予測不能の軌道を描いて「10.0」の着地を決める魔法のストーリーテリング。
    連作短篇四篇。三話目の表題作『退出ゲーム』で一気にテンションは揚がり、とどめの『エレファンツ・ブレス』で★★★★★。

    音楽担当の若手男性教師・草壁ひきいる弱小高校吹奏楽部。
    ホルン担当、上条春太(ハルタ)と、幼なじみで中学女子バレーからいきなり高校でフルートに転身した穂村千夏(チカ)をめぐる事件。通称ハルチカシリーズ。

    『結晶泥棒』 文化祭の中止が危ぶまれる、化学部の劇薬・硫酸銅盗難事件。

    『クロスキューブ』 六面全てが「真っ白」のルービックキューブの謎。

    『退出ゲーム』
    吹奏楽部VS演劇部の、威信を賭けた即興劇対決。
    制限時間内に与えられた設定から誰か一人が自然に「退出」できれば、そのチームの勝利。
    「ト、トイレに行ってもいいですか?」
    この一言であっけなく終了できるはずもなく、いかに相手チームを劇中に引き止めつつ、自分たちが「退出」できるシチュエーションに持っていけるかの攻防が熱い。学園ミステリにおける心理戦、コンゲーム的展開の傑作。
    演劇ならではのバカトリックの後に波状攻撃で来る感動。凄い。

    『エレファンツ・ブレス』
    アイガモロボットコンテストの生中継で、放送事故すれすれの問題行動を起こした発明部の萩本兄弟。この二人が今度は学校のホームページを利用して、ドラえもんの秘密道具まがいの発明品を無断で売買した。被害者は二人。生徒会長は秘密裏に返金を行い、事件をもみ消そうとするのだが......
    予測不能の着地が最も美しく決まるのがこの作品。意外なところに張られたさりげない伏線も憎い。

    吹奏楽、化学、生物学、数学パズル、色彩学、美術、神話、演劇、禅、国際政治、ジャズ、近代科学、臨床心理学、歴史、文学、etc...
    作者の抽き出しの多さに驚くとともに、衒学的な押し付けがましさを感じさせずに、必然として物語にさらりと絡ませている懐の深さに感心する。

    ライトで脱力感あふれる導入から重厚な物語へと誘う才能。米澤穂信とも伊坂幸太郎とも違う新たな語り部を発見した幸せ。

    各話ごとにRPGのように吹奏楽部の新メンバーが増えていき、以降の話でしっかり機能しているのも嬉しい。次回作『初恋ソムリエ』も評判がいいので楽しみだ。

    (ここまで書いても、やはり明るく楽しい「学園ミステリ」の側面しか伝えきれていないのが我ながら悲しい。あとは実際に読んで体感して頂きたい。)

  • 5 

    これは素晴らしい。高校という日常を舞台にしながらも提示される謎の意外性。巧みに張り巡らされた伏線。無理なく展開していく筋立て。説得力を持って徐々に明かされる謎の解かれ方。そこから導き出される予想外の真相。ちりばめられた蘊蓄。奇人変人とも言える個性的なキャラクター。エネルギッシュな軽口合戦。スライディング土下座。新入部員が一人また一人と加わる期待感(初期ドカベンを彷彿とさせる)。そしてコミカルからシリアスへ一変するダイナミズム。読後感も清々しく、とても好感が持てる。続編にも期待。

  • ハルチカシリーズ第1作目。
    前々から気になっていてようやく読むことができた。

    日常の謎を取り扱った作品。坂木司さんのように 軽い感じのミステリーかと思いきや、PTSDやら、枯葉剤など・・濃い内容のもあった。
    全体的に さくさくと読めて面白かったし、個性的なキャラクターが魅力的です。

    表題の「退出ゲーム」と「クロスキューブ」がよかった。

  • なんとなく本屋にて、ふらふらと呼ばれたように。
    高校を舞台とした、日常系ミステリー。

    主人公は一組の男女、ハルとチカ、
    幼馴染でもあるこの2人、部活も同じ吹奏楽部。

    この吹奏楽部、部員不足で廃部の危機にあり、
    それを回避するための部員集めが軸、なのでしょうか。

    その集まることになる部員たちも、
    どこか変わっていて、なんとも楽しそうな学園生活。

    そんな中、2人の目標は、吹奏楽の甲子園「普門館」、
    廃部寸前の部で、果たしてそれは叶うのかどうか。

    硬軟織り交ぜながらの展開が、とこか心地よく。
    ちなみに本作は高校1年の時の物語となります。

    続編もでているとのことで続きが気になりますね~。。
    と、そうそう、劇中で三角関係もあるのですが、、

    確かにこういう関係は、斬新かもです、なんて。

  • 4つの短編で構成される高校の吹奏楽部メンバーを中心とした
    青春ミステリー「ハルチカシリーズ」の第一作目。

    国産RPGや少年ジャンプのように、新しい章に移ると
    是非とも吹奏楽部メンバーに加えたい
    新しいキャラクターが登場するが
    問題を抱えたりしていて、
    なかなか一筋縄では仲間になってくれない。

    そこでメンバー勧誘を目的とした謎解きがあり
    その謎を解決するとめでたくメンバーが心を開き、
    仲間になるという構成がゲーム・漫画ファンには馴染み深く
    一連のシークエンスが癖になるというか、
    どんどん先が読みたくなる仕掛けがよくできている。

    学園ミステリーの場合、日常の謎が主題になるので
    どうしても地味になりがちで、それを埋めるために
    キャラクターの魅力を押し出していく必要があるのだけど
    マイナー文化部に所属する癖の強い奇人変人キャラクターの
    造形がうまくて、高校の時こういう変な奴いたなあという
    懐かしい気持ちにさせてしまう。

    このシリーズ好きだなあと思う一番の理由は
    読後感がものすごくいいこと。

    エレファントブレスとか重い話も時にはあるのだけど、
    優しい気持ちになれるというか少し前向きな気持ちになって
    読み終えることができる。

  • 吹奏楽部に入部し、甲子園を目指すという学園もの。吹奏楽というが、音楽の要素は少なく、校内で起こった日常の謎解きものなので、軽く読めてしまうが、内容は重めで、高校生とは思えない大人顔負けの推理に関しての知識を披露する場面や、ハルチカや吹奏楽部の部員、顧問たちとの関わり合いや謎解きをきちんと完遂する姿が良かったと思う。推理は高校生らしからぬキレの良さを発揮しているが、性格や先生に惚れ込むのは高校生らしいと感じる。演劇部員との即興劇は面白く、青春らしいと感じる。アニメは見ていないが楽しめる。次巻以降も期待。

  • 弱小吹奏楽部のフルート奏者チカちゃんとホルン奏者ハルタをメインにしたお話。複雑な三角関係も初々しくて好感度大。あんまり吹奏楽部の活動自体のことは出てこないのがちょっとあれれ?だけども謎解きを経てだんだん増えていく吹奏楽部員たちがみんな個性的で魅力的。指導者の草壁先生の過去とかも気になる。
    最初は何でか読みづらいなぁなんて思ってしまったけど次第にぐいぐいと引き込まれていった。切ないような哀しいような想いがいっぱい詰まった謎解きだけど、どのお話も最後はしっかり気持ちに区切りがついていて高校生らしく解決している。

  • チカのキャラクターに好感が持てる。
    男に媚びず女に媚びず。普通の女の子を描くのは意外に難しいのではなかろうか。

  • カバーを担当されている山中ヒコさんのイラストが好きで思わず手に取った一冊。
    学園+青春ミステリ+部活ものですが、子供たちだけで世界が完結していない=顧問の先生や親御さんが重要人物として登場しているのが印象的でした。
    六面全部が白いルービックキューブの謎、演劇部との即興劇対決など、題材が面白くて個性的なキャラクター同士のコミカルな掛け合いが良かったです。
    しかしミステリとしてはいまひとつパンチがないというか、もうちょっと捻ってほしいというか…全体的に浅くて物足りない感が残ります。
    コミカライズされたら買おうかな、と頭の片隅で予約。

  • 「日常の謎」としては、いまいちだった。「日常の謎」の解決は、日常的な常識の範囲内で論理的に解決されるべきだと考えるが、ハルタの超人的な博覧強記の引き出しが解決をもたらす組み立てはいかがなものか。むしろ、登場人物たちの高校生らしい奇矯な行動・キャラクタ、1エピソードに一人ずつ吹奏楽部員が増えていくところが、梁山泊みたいで楽しい。ミステリとしてではなく、青春ものとして続巻も読んでみるだろう。もっともおもしろかったのはやはり「退出ゲーム」。

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退出ゲーム (角川文庫)の作品紹介

「わたしはこんな三角関係をぜったいに認めない」-穂村チカ、廃部寸前の弱小吹奏楽部のフルート奏者。上条ハルタ、チカの幼なじみのホルン奏者。音楽教師・草壁先生の指導のもと、吹奏楽の"甲子園"普門館を夢見る2人に、難題がふりかかる。化学部から盗まれた劇薬の行方、六面全部が白いルービックキューブの謎、演劇部との即興劇対決…。2人の推理が冴える、青春ミステリの決定版、"ハルチカ"シリーズ第1弾。

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