ホテルジューシー (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043943845

作品紹介・あらすじ

大家族の長女に生まれた天下無敵のしっかり娘ヒロちゃん。ところがバイトにやってきた那覇のゲストハウス・ホテルジューシーはいつもと相当勝手が違う。昼夜二重人格のオーナー(代理)や、沖縄的テーゲー(アバウト)を体現するような双子の老ハウスキーパーなど規格外の職場仲間、さらにはワケありのお客さんたちにも翻弄されながら、ヒロちゃんの夏は過ぎてゆく-南風が運ぶ青春成長ミステリ、待望の文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • 沖縄の夏。
    言葉だけで眩しくて、ワクワクしてしまう。
    いいなぁ。
    また沖縄に行きたい。

    主人公のヒロちゃんは夏休みに沖縄の宿でバイトをして過ごすことにする。
    いいチョイスですねぇ…とにっこり。
    大変そうだけど楽しそう。
    でもしっかり者で他人を放っておけないヒロちゃんは苛立ったり、ハラハラしたり、傷付きながら自分の信じてきた「正しさ」に当てはまらない生き方を知っていく。

    「人生はたまに、他人の手でかき混ぜれた方が面白い。」という言葉が印象的。
    他人に振り回されていると思ったり、迷惑をかけられていると思ったり、理不尽だと感じたり、それらは全て「自分は正しい」という立場からの結論なのかもしれない。
    ヒロちゃんがオーナー代理にお客さんの知らなかった一面を教えてもらうことで、それまでとは全く違う顔が見えてきたように「自分は正しい」を捨てないと判らないことなんて本当にたくさんある。
    この小説を読んでいてすごく素直に自分のことを振り返ることが出来た。
    それはきっと、まっすぐで優しくて男前なヒロちゃんが一人一人と向き合う姿を見せてくれたから。

    世間は夏。
    うだるような暑さとジリジリと肌を焼く日光に嫌気がさしてきたら、秋が来て冬が来たらこの暑さが恋しくなることを思い出してみる。
    夏の終わりはいつも淋しい。
    長い夏休みがなくなってしまっても、やっぱり夏は特別な季節みたいだ。
    沖縄に今すぐ飛んでいくことは出来ないけど、秋が来るまえに夏を満喫しておこう。

  • どうしても夏の間に読みたかったホテルジューシー。

    ヒロちゃんは夏休みを有効に埋めるため、石垣島の宿のバイトをすることに。ここならやっていけるかも!と思えた矢先、ヘルプとして那覇のホテルに行くことに。そこが今回の舞台、ホテルジューシー。

    常にオーナーは不在。二重人格のオーナー代理と料理上手な比嘉さん、双子の清掃係のクメばあとセンばあ。それから訳ありだらけのお客たち。

    大切にしたい言葉がゴロゴロと出てきた。
    「君がいなくても世界は回ってるってこと」にグサッときた。確かにそうだ。総理大臣でも大規模会社の社長でも替えがきく世界なのだ。私なんかいなくても、世界は回ってきたし時代は進んでいく。でもきっとどこかに私がいたら楽しいなと思ってくれる人がいるから、私は私がいなくてもいい世界でまだまだ生きていきたいと思う。
    自分の正義は全員の正義にはならないと思い知らされる。〜するべき、〜じゃなきゃいけない、は自分のエゴでしかないんだな。そこに気付かせてくれた沖縄(主にオーナー代理)に出会えたヒロちゃんは幸せ者。そして読者の私たちも。

    美味しそうな沖縄料理もたくさん出てきて幸せ!知らないものばかりだったのでいつか挑戦してみたい。知らないと言えば、今までの人生で沖縄特有の方言に全く触れてこなかった私だが、今作でも方言は出てくるもののヒロちゃんが他県から来ている+お客たちも他県から来ているので、絶妙なバランスが取られていて読みやすかった。関西住みなのに関西弁の本が苦手な私でも読めたので、方言に苦手意識ある人でも読めるかな。

    大学に戻っても親友のサキと話してても、頭のどこかで沖縄のみんなが出てきてしまうヒロちゃん。今までのどんな夏よりも大きく成長したんだろうな。いつか本当にサキを連れてホテルジューシーに行ってほしい。

    昼夜逆転生活しているオーナー代理。いい加減すぎて責任者としてどうなの!?!!と思う昼の姿と、スマートで何でもお見通しなしっかり者の夜の姿のギャップがいい。大好き。



    で、オーナー代理って何者だったんだろう。

  • もう一度 沖縄に行きたくなりました。

    十数年前 社員旅行で 行ってきました。

    沖縄料理は そうきそば ぐらいしか 印象にありませんでしたが。

    今度 行く機会があったら ぜひ いろいろなものを 食べてみたいです。

    もちろん 国際通りの ちょっと 入った 裏道も 行きます。

    この本の姉妹版 「シンデレラ・ティース」を 先に 読んでいたので 時々出てくる サキの 近況報告が すごく 懐かしくて もう一度 読んでみたくなりました。

    作品中に 度々出てくる ヒロの 心の 叫びが つっこみかも 最高ですね。

    坂木作品 次は どの辺を 狙うか 今から 楽しみです。

  • 困ったなあ…正義感を振りかざすヒロのこの感じは、私にそっくり。長い年月、てーげーな生き方を人にも自分にも許せなかった時代が、確かにあったもんなあ。

    なぜそんなことをするのか、どうしてちゃんとしないのか。その徹底的な原因究明ってやつを求めずにはいられない体質。。。そのわりに、自分の半端な人生経験の中で手に入れた、たいしたこともない価値観に照らし合わせて事の善悪を手前勝手に決めてしまうんだよなあ。挙句に…勝手に熱くなって、あとになれば顔から火が出るほどの勘違いの末、まるっきり見当はずれなアドバイスや行動で、正義の味方の使命を果たした達成感に酔いしれる。。一緒やわあ。

    だから人生50年を過ぎてようやく、自分がいなくても世界は回ることに気づかされ、沖縄に強く惹かれている。てーげーでゆるい時間に浸りたい。そうして生きることがとても大切なことだと思うのだ。

    作者は作品の中で、あるひとつの職業に焦点を当てて描くことが多い。職業は人の拠り所なのだそう。その拠り所を捨てたいと思う私には耳が痛い。

    それにしても坂木司さんは食べ物をおいしく描くのがうまいなあ。ポーク、いわゆるスパムが何度も登場するけど、あれくらい凄い食材ってないんだよなあ。シンプルで体には良くなさそうだけど、スパムにぎりなんてもう、やみつきだもの。

    なんだかスピリチュアルな視点からの沖縄を描く作家さんが多いのに、「初めての取材旅行に行けるかも!」って動機で沖縄を舞台に選んだ作者のゆるさが、この作品の楽しさと味わいなんだと思う。

    シンデレラ・ティースも読まなくちゃ、ね。

  • 「自由」って難しいね。

  • この夏、ヒロちゃんと一緒に沖縄で過ごしたような不思議な気分になった。
    私も長女なので、つい手を差し伸べてしまったり、ひとりで頑張りすぎてしまったり、暇を持て余したり…わかる‼︎と頷く場面も多数。

    クメばあとセンばあ、比嘉さん、そしてオーナー代理にホテルで出会った人たち。賑やかで爽やかな、素敵な一冊だった。坂木司さんの本、好きだなぁ…

  • 『切れない糸』ではクリーニング店、『和菓子のアン』ではデパ地下の和菓子屋、『ワーキング・ホリデー』をはじめとする“ホリデーシリーズ”では配送会社と、いわゆるお仕事小説を多く書いている坂木司。そこに「日常の謎」をからめた作品がいつも楽しい。

    大学2年生のヒロちゃんは、大家族の長女に生まれたしっかり者。弟妹の面倒をみなければならないため、これまで彼女には夏休みというものが存在しなかったが、そろそろみんな手がかからなくなり、親から「今年は自由にすればいい」と言われる。喜んだのもつかの間、何をしていいのかわからない。親友のサキと来年旅行にでも行く資金を貯めようかと、アルバイトをすることに。サキとは正反対の性格だから、同じバイトをするのは無理だろう。夏休み中はお別れすることにしてそれぞれ夏のバイト先を探したところ、ヒロちゃんにこのうえなくピッタリと思えたのは沖縄・石垣島の宿。予想どおり、大家族の世話を思えば宿泊客の世話なんて朝飯前。このまま石垣島で暮らしてもいいなぁなどと思っていたころに、那覇への異動を命じられる。系列の宿でもなんでもないのに、よく知る宿のバイトが急に辞めて困っているから行ってやってくれだなんて。断れずに那覇に行ってみれば名前からして怪しげなホテル・ジューシー。オーナーは常に不在、隣の喫茶店に常駐するオーナー代理はものすごくいい加減。調理担当はおおらかすぎるおばちゃん、ハウスキーパーは双子の婆ちゃん。だらしないことが大嫌いなヒロちゃんははたしてやっていけるのか。

    客はワケありの人ばかりで、なんやらかやらトラブルが発生します。それを解決してみせるのはヒロちゃんではなく、だらしなくいい加減に見える人。物事は正義感だけでは片づけられないし片づけるべきでもないことを思い知らされます。たまに説教臭いけど、鬱陶しいと感じるところと紙一重でいい話のほうに振れています。登場する数々の沖縄料理がとてつもなく美味しそうで、その部分でも興味大。

    本作と対になっているというべき作品が同著者の『シンデレラ・ティース』。ヒロちゃんの親友・サキの夏休みバイトの話だそうで、これを読めばまちがいなくそちらも読みたくなるでしょう。

  • ホテルジューシーの従業員たちのキャラクターが素敵。料理上手の比嘉さんに、清掃係のセンばあクメばあ、結局謎の多いままだったオーナー代理。読み終わった後、私も一緒にひと夏のバイトをしていたような気持ちになりました。
    沖縄の南国的なところだけでなく、夢見て沖縄にやってくる若者の理想と現実も描かれてて良かったです。

  • 大学2年生のヒロちゃんは、夏休みのバイト先として、沖縄のホテルを選択。
    最初は石垣島のリゾートでバイト生活を満喫していたが、そんな生活もすぐ終わり、那覇にある「ホテルジューシー」に移ることに。
    そこには変わり者で、二重人格の「オーナー代理」や、「てーげー」な清掃係の双子のおばあちゃんなど、個性豊かな人たちが働いていた。
    石垣島から、突然国際通りの路地に入ったボロいホテルの勤務になったことで、ヒロちゃんの気持ちはいったん下がるが、時間が経つに連れ、どんどんお客様のプライベートにも首を突っ込むことに。
    大学生の割には、大家族の長女と言うことで、いろいろ口うるさいし、考え方が年寄りみたいで、主人公に感情移入出来ず、たかがバイトの分際で他人のことに首を突っ込み過ぎるところもイラついてしまった。
    個人的に沖縄に思い入れもないのが、良くなかったのかも。
    なかなかバイトを辞めることを伝えられない姿も、本当にイラついて、世の中の社会生活はほとんどがその人がいなくなっても回るように出来ている。「自分がいなくなったら・・・」と考えること自体、私から見れば「何様」と言う感じで、このシリーズは合わないのもしれない・・・
    ま、大学生のバイトで人生のいろんな経験が出来たと言う態で読めば、いい話なのかもしれないけど、そう読み取るには私が年を重ね過ぎたかも。

  • 沖縄にいきたいなーと思えるのほほんとした物語でした。
    いろいろな人との出会いの大切さをしみじみ感じて、読み終えたらスッキリしました!

    友達のサキさんの夏を舞台にした、姉妹作のシンデレラティースも読んでみたい。

    2021年5月30日

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著者プロフィール

一九六九年、東京都生まれ。二〇〇二年『青空の卵』で〈覆面作家〉としてデビュー。一三年『和菓子のアン』で第二回静岡書店大賞・映像化したい文庫部門大賞を受賞。主な著書に『ワーキング・ホリデー』『ホテルジューシー』『大きな音が聞こえるか』『肉小説集』『鶏小説集』『女子的生活』など。

「2022年 『おいしい旅 初めて編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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