世界屠畜紀行 THE WORLD’S SLAUGHTERHOUSE TOUR (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043943951

作品紹介・あらすじ

「食べるために動物を殺すことをかわいそうと思ったり、屠畜に従事する人を残酷と感じるのは、日本だけなの?他の国は違うなら、彼らと私たちでは何がどう違うの?」アメリカ、インド、エジプト、チェコ、モンゴル、バリ、韓国、東京、沖縄。世界の屠畜現場を徹底取材!いつも「肉」を食べているのに、なぜか考えない「肉になるまで」の営み。そこはとても面白い世界だった。イラストルポルタージュの傑作、遂に文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • 内容(「BOOK」データベースより)
    「食べるために動物を殺すことをかわいそうと思ったり、屠畜に従事する人を残酷と感じるのは、日本だけなの?他の国は違うなら、彼らと私たちでは何がどう違うの?」アメリカ、インド、エジプト、チェコ、モンゴル、バリ、韓国、東京、沖縄。世界の屠畜現場を徹底取材!いつも「肉」を食べているのに、なぜか考えない「肉になるまで」の営み。そこはとても面白い世界だった。イラストルポルタージュの傑作、遂に文庫化。

    肉が好きです。特に焼肉が大好き。出来る事なら毎日食べたい。カルビにホルモンにタン。どれもこれも家畜とお肉にしてくれるひとが居て初めて成立する事です。でもそこはかとなく流れる屠畜への蔑視。それが世界共通なのか日本だけのものなのか。とことん潜入取材をしている稀有な本だと思います。「飼い喰い」を先に読みましたがその手前にある世界の屠畜事情のルポです。自分自身目の当りにしたらきっとしばらく肉食えなくなるであろう光景のオンパレードですが、屠畜蔑視ではなく逆に尊敬してしまいます。速やかに裁かれで美味しく安全なお肉として皆の食卓に上るその大変さ。その為に変化進化してきた食肉業界。未だに結婚差別や就職差別があると言います。そういう人は肉食わないのかと声を大きくして言いたい。おちょぼ口でかわいそうなどと言いながら肉を口に運ぶ人々。自分の手を汚さないままに批判だけで恩恵を享受する人がどれだけ多いことか。
    と、堅い話はあるものの、実際世界中のお肉の現場をイラスト付きで解説する本書は、興味津々で是非読んでいただきたいです。読み終わった時にはパックのお肉の手前の姿が思い浮かぶはず。それをありがたく思いながら今日もおいしく頂きましょう。

  • 屠畜っていうと、牛や豚などを「殺して肉にする」エグいと思われるテーマです。獣医師にとっても、と畜検査員になりたい!と免許取得後の第一選択にしていることはまずないんじゃないかと個人的には思うわけですが、本意・不本意の別なく、と畜検査員になられた方にはぜひ一度お手にとって眺めていただけると良いのではないかと思います。

    僕はこの本を読んで、自分の仕事であると畜検査がより一層好きになりました。

  • 生き物がどう殺されていくのか知りたくて読んだ。
    主題としては「なぜ日本では屠殺業を営む人が差別されているのか、他の国でもそうなのか」というルポ。
    私自身は「人間に殺されて可哀想だな、でも私も肉好きだしな…」という想いはあり、ただ屠殺業に従事する人に対して残酷だとか感じたことは一度もない。本書が書かれてからだいぶ時間も経っているから、差別意識も少しずつ無くなってきているのではないかと思うけど。

    家畜がどういう風に私たちの目の前に肉として運ばれてくるのか全然知らなかったので、本書はイラスト付きでわかりやすく解説されているためとてもイメージしやすかった。自分が読んできた本の中でも珍しいジャンルなのでとても勉強になった。正直動画とか写真で見られるかというとなんとも言えない…ので、イラストという点もありがたい。血とか苦手な人でも大丈夫そう。

    日本だけじゃなく各国の屠殺文化まで綿密に取材されていて面白かった。
    同じ仏教国でも生きるために必要だからと、差別意識などがない国、完全に汚れた仕事だと思われている国…国の数だけ価値観が多様で面白い。

    私はお肉が好きだから、しっかり家畜に感謝をして残さずお肉を食べ続けたい。可哀想と思うなら食べないのではなく、命に感謝してちゃんと頂くことが大事だと思う。

    ちなみにこの本自体は良い内容だと思うが、著者に関してはちょっと行きすぎというか、殺されるところをワクワクしながら見たりちょっとサイコみを感じてしまう。個人的には家畜を「つぶす」という表現も好きじゃない。

  • テーマは良い。中身も好き。
    時系列順に書いてるようでそうでもない(のか後から振り返ってごちゃ混ぜに比較して書いてるのか)のでわかりにくいところがある。一番最初に日本を載せたほうがいいのでは。もしくは●ページに後述してますが、と書いてほしい。消化不良で全部読むの不快。
    実際のメインの説明よりも通訳さんとか案内してくれる人の感想が多く感じるのもちょっと微妙。

  • PCで「屠殺」と一発変換できますか?
    ある種の言葉は、大概の環境では一発変換されないように設定されています。差別に関わるとされる言葉は、変換候補リストから意図的に外されているのが現状です。
    日本(特に西日本)では、屠畜や皮革加工業に携わる人間は長らく差別の対象となっていた歴史があります。
    本書はもともと解放出版社の雑誌連載をまとめて同社から出版されたものなので、どうしても差別に関わる著述部分が入りますが、決してそれがメインではなく、筆はむしろ軽妙なので、そっち系が嫌いな方も、それを理由に敬遠するにはもったいない内容です。

    食肉は動物を殺さない限り決して手に入らない。当たり前のことですが、日本ではその部分が依然として意図的にスポイルされている(魚でさえ、切り身以外の状態を見たことのない親も珍しくない)状況です。
    しかし屠畜・食肉加工の現場には、いかにして健康状態を見抜き、苦痛を与えずに殺し、無駄を出さずに切り捌くかという、感嘆を禁じ得ない職人技や魂が息づいています。
    それを詳細な取材と、実に細かいイラストで紹介してあり、飽きさせません。
    「命をいただく」というぶれない視点を持ったうえで、「それはそうとお肉おいしそう」という食いしん坊の目が常にあるので、文章自体は実に軽やかで、説教臭さはそんなに感じないのがいいです。というか食べたくなる。
    国が違えば好まれる肉も、その家畜が尊ばれる理由も、料理法も違う。そして差別もあったりなかったりする。面白いです。

  • 好奇心が知らない世界を身近にする。私たちも疑問は投げ掛けて、食わず嫌いを無くそう!

    続編が待ち遠しいです。その次は革製品に関する本も書(描)いてくださらないかなぁ?と密かに期待しています。

    「世界屠畜紀行 THE WORLD’S SLAUGHTERHOUSE TOUR」内澤旬子 [角川文庫] - KADOKAWA
    https://www.kadokawa.co.jp/product/200906000469/

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      一部の人に押しつけて考えないようにしていないか? なぜか日本人が知らない世界の「屠畜事情」 - ニュース|BOOKSTAND(ブックスタンド...
      一部の人に押しつけて考えないようにしていないか? なぜか日本人が知らない世界の「屠畜事情」 - ニュース|BOOKSTAND(ブックスタンド)
      https://bookstand.webdoku.jp/news/2023/04/17/190000.html
      2023/04/21
  • 筆者がモンゴルにて、羊を目の前で解体され振る舞われたことをきっかけに「屠畜」に興味を持ち、海外と国内の屠畜の現場を回ったルポです。文庫で450P以上と長いですが、各国の屠畜を通じて文化人類学、歴史、動物の情動、宗教観、日本特有の差別の構造にも触れ、興味が途切れることなく読めました。

    オリジナルの単行本は2007年に発表されてますが、それ以前にも屠畜・屠殺を題材にした本は多く出版されています。しかし屠畜をこのようなポップな装丁、感性、文体で本にしたことは凄いと思います。当時話題になりましたし、多くの人の価値観への見事なカウンターとなったのではないかと想像します。

    文体および文中の著者の振る舞いは、よく言えば天真爛漫、悪く言えば(著者ご本人も文中で書いてますが)不躾で、著者の素直なリアクションが伝わってきます。素直ということは当然、著者のバイアスもそのまま文中に現れるので、動物愛護の気持ちの強い人などからしたらケンカを売られているように感じる物言いも見られます。そのあたりは読者の好みによりますね。

    基本的には、動物が気絶させられたり、ノドを捌かれ吊るされたり、皮を剥がされたりする場面においても終始ネガティブな反応はほぼなく、ワクワク!な筆者ですが、文中で一箇所だけ著者が「かわいそう」と思う場面があります。それは肉の需要量に応えるため、人工授精によって牛を増やしている現実に触れた時です。人間の都合で自然な繁殖である「交尾」をせずして生涯を終える牛がいるということを知った時の筆者の心情はワクワク!の時と対照的で印象に残っています。

    日本の食肉文化の歴史は世界的に比べて浅く、そのうえ現代は家畜を飼う一般家庭も少ない。「動物を殺して生きている」という感覚は極限まで薄められています。ベジタリアンではないわたしとしては、動物がどういう風に肉へと加工されていくのかを見ずして美味しい思いだけするのはフェアではないと思ったので(フェアにはなり得ないとも思っていますが)、屠畜の現場の動画を目を逸らさずに視聴しました。おそらくその動画は動物愛護的観点に偏った編集がされていて、外国の特に残酷なものであったと思いますが…。あとはお肉を食べられることに感謝を忘れないようにしようと思います。

    個人的な話ですが、わたしの幼少期に母は移動販売業をしており、顧客の中にたまたま屠畜場で働く人がいて、学校を終えたわたしの送り迎えのついでに仕事のため2、3回ほど屠畜場へ母はわたしを連れて行きました。そこでわたしは初めて吊るされた大きな枝肉を見て、「本当にあの『牛』が『お肉』になるんだ」と悟ったことを読後に思い出しました。そして今思えば母は屠畜業に対する差別がなかったのかもしれないと気づき、今更ながら母を尊敬しました。

    日本の屠畜場は世界に比べて衛生面ではトップクラスであり(その分めちゃくちゃスタッフさんが働いてくれている)、日本産の肉を食べられていることはとてもありがたいことだと改めて感じました(ま、食肉偽装という別の問題はあるでしょうけれど…)。

  • ーー屠畜という仕事のおもしろさをイラスト入りで視覚に訴えるように伝えることで、多くの人が持つ忌避感を少しでも軽減したかった。(p.461 あとがきより)

    2007年初版、2011年に文庫化されて以来、すでに14版。筆者の目的は十分に達せられているように思える。何せ、面白い。そして、職人さんへのリスペクトが溢れている。
    雑誌『部落解放』の連載だということを知らずに読んだので、のっけから「白丁差別」の話が来ることに「?」となったけれど、読んでいるうちに「なるほど」と腑に落ちた。けれど、冒頭に引用したように、本書の焦点は「屠畜の面白さ」。さまざまな国や文化によって違うこと、共通すること、そしてなにより肉は美味しいということ。美味しい肉になるまで、大変な手間がかけられているのだということ。
    知らなかったなぁ、ということが満載だった。自分の中の忌避感にも向き合わざるえなかった(私はどうしても馬肉が食べられない)。食文化への偏見、職業への偏見にも向き合わざるをえなかった。アニマルウェルフェアや動物愛護にどうして自分が胡散臭さを感じてしまうのかについても考えることができた。臭いものには蓋をして生きている自分を感じざるを得なかった。

    屠畜への忌避感ゆえか、アニマルウェルフェアの観点からか、畜産が非経済的で環境負荷が高いとするSDGsの観点からかはよくわからないけれど、バイオ肉や代替肉の研究は盛んなようだ。それの行き着く先はユートピアだと研究者と企業は言い、ディストピアだと『オリクスとクレイク』(マーガレット・アトウッド)は言う。本書を読んで思うのは、人間の本性を受け止め損ねたらディストピアコースなんだな、っていうこと。芝浦屠場の移転話も持ち上がっているみたいだけれど(今はどうなんだ?)「そんなにこぎれいに暮らしたいのかあ。」という筆者の感想に同感。人間は生きもの。人工物のクリーンさが理想?除毛して、除菌して、除臭して、視界から消して??生き物を殺して食べている、お肉大好きな生き物だという事実も抹消??生存に必要な範囲を超えた「清潔」を徹底追及して、生きものやめて、一体、何になるつもりなのかしら???クリーチャー????

    • workmaさん
      「そんなにこぎれいに暮らしたいのかあ。」

      内澤さんの著書は多分ほとんど読みました。それらを読んで思ったこと…
      自分たちの食も...
      「そんなにこぎれいに暮らしたいのかあ。」

      内澤さんの著書は多分ほとんど読みました。それらを読んで思ったこと…
      自分たちの食も生活も、誰かが手を汚してくれて、血と汗の結晶に、支えられていると思います。自分も、過去に畜産業務をしていたことがあり、そのことは今も誇りです。

      畜産や農業など、匂いや鳴き声など、昨今非難されがちなのが心が痛みます。
      動植物や生産者にに対する尊敬の念、「命をいただく」という謙虚な姿勢は忘れちゃいけないと、自戒をこめて。
      2021/06/05
  • 肉を食べるということは、命を奪うことであるの当然ことである。それを知って肉を食べて生きているわけで、
    屠畜(または屠殺)に焦点をしぼって、
    日本を含めた世界各国の屠畜のやり方や、
    屠畜に対する意識を読めておもしろかった。
    もともとは「部落解放」という本に連載されていたそうで、
    日本での「穢れ」という意識についても言及されている。
    また、アニマルウェルフェアという、家畜の人権みたいのについても考えさせられるが、
    もちろん僕自身はこれからも肉を食います。

  • ひー
     角川書店で本を出してゐる作家のブログで、編集の人から変なもの、 「盲点」や「黒人」へ
    「これまずくないですか?」
     と言はれたとか言ふのがあったが、なんかこの本は出とるな。
     屠畜をあからさまに蔑視する朝鮮人、その態度を「清々しい」といふ著者、外圧に負ける食犬文化と抵抗する犬鍋業者、屠畜を犯罪と言ひきるインド人、屠畜文化がない沖縄からやってきてさういふ異文化に接触する人、などが描かれてるのだが。

  • 世界の食卓に並ぶ肉の背景を取材した作品。

    殺して食べるからには残さず美味しく食べなくちゃね。
    肉を食うからには一度は真剣に考えたいこと。

    恥ずかしながら、日本も含めて多くの国で屠畜業が差別の対象になっていたことすら知らなかった…

    普通にこの仕事をする人がいるから美味しく肉が食べられると思っていた。

    あれこれ可哀想だと騒ぐなら食うな!食べたいなら美味しく残さず食べる!
    個人的にはそう思ってきたし、これからもそのつもり。

  • 自分が見てたようで、見えてなかった世界が分かった。
    自分の目で、屠畜の現場をみてみたい、やってみたいってすごい思った。

    それなしには、命の重さだとかを子どもたちに伝えられない気がする。

  • 世界各国の屠畜の現場を見て歩いたイラスト付きの本。
    差別のあるところと無いところが国によって異なる。
    肉を食べる前に「動物」を屠ることになるが、その行為そのものが「タブー」となっているのがいまの現状。

    それを表面に出しているのが本書である。「オチャラカ」という表現がいいかどうか分からないが、著者の軽い文章が重たいテーマを明るくしてくれている。

    この次は著者の「飼い喰い」を読んでみようと思う。

  • 当たり前のように食べている肉。
    家畜→肉。頭ではわかっている。漠然としたイメージはあるけど、そのプロセスを具体的に知る機会はなかなかない。
    そんな、ある意味「タブー視」されている部分に切り込んだのが本書。

    イラストも文章も明るく、著者の純粋な好奇心を感じられる。それに引き込まれてずいずい読める。
    家畜がどうやって肉になっていくのか、ブラックボックスと化している部分が、よくわかる。そして数々の肉料理。
    国による屠畜や、それに従事する人たちへのイメージ、偏見、差別にも触れている。
    屠畜従事者が差別されている国もあれば、とくになんとも思わない、という国。尊敬されている国、色々だ。

    僕は日本で暮らしていて、今までとくに屠畜に対して差別感情のようなものは持っていなかったので、「日本で差別されている…」などの描写には、正直「?」だったが、差別する/しないの前に、まったく触れる機会を与えられておらず、そのような人々が見えないようになっていたのだと、今更ながら気づかされた。そういう歴史を進んできた国で育ったのだと。

    屠畜を知るきっかけがこの本でよかったと思う。

  • 日本については、芝浦屠場については本当に詳しくて、また肉だけではなく内臓や革鞣しまで追っている。東京が全国一の海外からも呼び声高い豚革の生産地、というのは意外でしたが、考えてみれば全国一豚を消費しているのだから頷ける。BSE検査で分解されていく一頭を追うための手間にはひたすらに頭が下がる。私たちが安心して肉を食べられるのは業者さんの尽力による、ということを肝に銘じたい。
    韓国も屠蓄は歴史的に最下層の白丁と呼ばれる人々が担ってきたが、朝鮮戦争で階層意識はぐちゃぐちゃになってしまい、今は皆ゼロから、という意識がある、とのこと。しかし、エリート意識の高い結婚観のため屠蓄に関わる人はどうやら壁がありそう。
    バリ島は島が豊かなので、基本おおらか。一人前の男は豚は捌けて当然‥‥でも苦手なら他の人がやってくれる、この大らかさはすごいな。見習えたらどれだけ幸せになるか。
    イスラム世界の屠蓄については国の差も当然あるようだが、根元的に我々とは理解の解離があるような感を受ける。これが第三世界なのか、と頭を抱えたくなる‥‥屠殺という職業を面向きは肯定しながらも彼らに敵意を向けたり、あるいは隠さず吐き捨て蔑む人々。なんなんだろうな‥‥。
    チェコのザビヤチカは伝統の豊饒祭だからいいというのは良く理解出来るが、大型の屠蓄場となると残酷と動物愛護団体のTV版組を見ている一般の人は言う。取材していないからその是非を下せないというなら何故書いたと読む方は思ってしまうが(笑)
    モンゴルの遊牧民の屠蓄が一番しっくりくる。可愛がって育て、客人の歓迎のためつぶす。これ以上素晴らしい考え方ってない。
    アメリカは機械化により中産的な職業だった屠蓄は最悪と言われるまでになった。そこを統括する人々はやはり明るくてたくましいが、下は書かれてはいないが違法就労外国人だろうな‥‥カオスな社会だ。そして南北差別がはっきり覗けるのもすごい。
    各国の歴史的文化的考察はちょっと浅い感じがしました。世界と言っても資金的に無理があったらしく、部分的。でも発売したら思ったよりうけたから続編書くよ、と言ってくれてるので楽しみにしています。

  • おもしろかった。世界の様々な国で家畜がどのように食肉として処理されているかを突撃レポートしている。「関心のあるものを見て作者大興奮」という本なので、屠殺や部落差別について掘り下げたくなったら、また別の専門書を。そのよいきっかけになる本だと思う。

    登場する肉料理がとてもおいしそう。とりあえず焼肉定食を食べに行ってきた。

  • 角川で文庫化されてたので買った。何カ所かの本屋でチェックしたのですが、特に丸の内丸善ではかなりの売れ行きと見ました。
    何でそんなことチェックするのかというと、最近読んでいる『本の雑誌』に内澤さんが「黒豚革の手帳」という連載を持っているからです。(ミステリーの連載ではなく皮革装丁が趣味のルポライターの身辺雑記)

    倒錯する。雑誌というのはコミュニティなんやなぁと思います。
    肝心の中身は、特にイスラム圏と、日本の芝浦屠場の屠畜ルポは詳細で、今まで全く知らなかったことばかり(私が不勉強なせいもある)の濃い内容。屠畜の過程や方法だけでなく、そこで働く人たちへのインタビューもボリュームたっぷり。
    心臓が動いてる状態でないと放血できない、とか言われてみればそのとおりなのに、そうか、生きたまま頸動脈切るんだよな、とか初めて考えた。
    ちなみに日本では豚は炭酸ガスを使って仮死状態にし、牛は電気銃を使って打額して仮死状態にした上で頸動脈を切る。
    肛門や食道をいかに早く結紮し、正肉に内蔵の中身を触れさせないかという工夫とか、知らなかったことオンパレード。肉食いまくるくせに屠畜を知らずとは(ましてや忌み嫌うとは)どういうこっちゃという筆者の主張ももっとも。
    若干、露悪的かなぁとか考察弱いなぁとか思うところはあるものの、それを措いても十分読む価値はあると思います。
    特に最終章で、狩猟でとったキジと小ガモを、紙袋に突っ込んで山手線に乗って持って帰り、たった一人で自宅風呂場で屠畜するルポは、短いけれど前半のちょっと浮ついた感じが一掃されるので一読の価値あり。
    他の章でウキウキしていた内澤さんが苦悶しながら(『許してくれえという気持ちをはじめて、ようやくはじめて味わった』)、やり遂げた後の感想も深い。

    『殺すのはほんの一瞬だ(ヘタくそだと時間がかかる場合もあるが)。しかし殺した死体と一対一で向き合って、食える肉にするまでの時間は、はるかに長くて、しんどいものだったのだ。やはり私には屠殺じゃなくて屠畜ということばがぴったりくる。』

  • 昨年宮崎で起こった口蹄疫のこともあり、屠畜という分野を「他の人よりかは多分知っている状態」である自分を戒めたくて読んでみた。

    文章としてはどうかなーと感じる部分も多々あった。差別問題に関する記述が所々でてきたが、これはどうも蛇足だった感がする。(差別問題を取り上げるな、という意味では決してなく、扱うなという意味でも決してなく。)もっと別の所で掘り下げてもよかったのではないかなと。屠畜という行為そのもののこと、差別や文化の否定に関することと分けて読みたかった気もする。

    世界の屠畜文化の描写はとても分かりやすく素晴らしかった。文化として肯定/否定する姿勢や、家畜の擬人化などの問題はどこにでもある問題で考えていかないとなぁと思わされる部分もあった。

    「畜産王国」で育ってきたこと、子どもの頃から「屠ること」について高齢者から聞かされてきたこともあり、私自身にはこの本を読んで肉が食べれなくなったとかいうことはない。むしろ見えにくかった裏側が見えてよかったと思う。

    モンゴルの章や、殺すという単語とは別に「切る」などの意味で言葉を分けている点など、前述した口蹄疫の問題を改めて考えさせられる内容も多くあった。私の中ではまだ口蹄疫は終わった問題ではないので、結びつけて考えさせられて、勉強になった。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「分けて読みたかった気もする」
      文庫になる前の出版社が解放出版社だから、或る程度は仕方無いのかも。考えようによっては、色々な問題点を知る切っ...
      「分けて読みたかった気もする」
      文庫になる前の出版社が解放出版社だから、或る程度は仕方無いのかも。考えようによっては、色々な問題点を知る切っ掛けになると言えるのかも。
      早く続編が出ますように!
      2012/09/19
    • macochiさん
      nyancomaruさん。コメントありがとうございます。確かに、考え方でとらえ方が違ってきますね。一方的に否定ばかり考えるのは、思考停止にな...
      nyancomaruさん。コメントありがとうございます。確かに、考え方でとらえ方が違ってきますね。一方的に否定ばかり考えるのは、思考停止になりかねませんね。ご指摘ありがとうございます!
      2012/09/25
  • 世界の屠畜事情。
    突撃取材という感じで、いろいろな国へ行って、何でも見て、食べちゃうバイタリティは素晴らしいし、異文化はとても興味深い。
    でも、職業差別云々について、頻繁に触れてくる割には、とりとめのない話に終始した感じなのが、残念。
    しかも、差別されてる側の人に、なんで差別されてるんですかね?って聞いてしまうのは、あまりにも無神経だなと思った。

  • これぞ名著としかいいようがないのだが、誰にでも薦められるかというといささか躊躇する。「知って」おくべきことか否か、受けとめ方は千差万別。僕個人は知りたかったし知って良かったと思うが、それが万人に当てはまるとは思っていない。ただこの本に対する評価は揺るぎなく、こんなに懇切丁寧なイラストと記述でわかりやすく楽しめるルポは稀であろう。

  • おもしろい。知らなかったことが盛りだくさん。だけど、自分の目で確認するだけの度胸も胆もないものだから、イラストで充分です。捌かれた後のお肉と料理の紹介が豊かすぎて、新鮮なホルモンを食べに行きたくなります。

  • インタビューだけでなく、自分でちゃんとやるとこ好感もてる!




  • ・私が食べているお肉が生きている動物からどのように作られているのか


    ・屠畜場の重要な役割
     動物には病気や不衛生な個体がおり安全に屠り食肉にするには技術や設備が整う屠殺場が重要な役割を担っている。日本で獣畜(牛豚馬羊山羊)を勝手に解体してはいけないのも食中毒や病気の蔓延を防ぐためである。ただ少し前の沖縄では羊と山羊は捌けたらしい。

    ・屠殺やその職に関わる労働者に対する国毎のイメージや考え方

     面白いなと思ったことが国や宗教によっては屠殺にとても肯定的な考えがあること。
     例えばバリのヒンドゥー教徒の考えにお供えとして殺された植物や動物は位が上がり天国に行けたり生まれ変わったらより良い身分になれるとされている。人間の食事も人間へのお供えとそれるので屠殺は良い行為である。
     他にもモンゴルの遊牧民はそもそも食は他の生命の犠牲に成り立っているとしてる。
     屠殺という職業に関しても一部の宗教的には神様への生贄やお供えとして動物を屠ることが多々あるためその技術は良いものとされている。

    ・韓国や中国での犬食文化
     

  • 世界を旅しながら屠畜について考えられる本
    イラストが結構沢山あって状況がイメージしやすく
    お肉メインのお手軽世界旅行ができる

    日本の場合だけでなく海外での事例も食文化に触れながら
    生き物をつぶすことについて知れる

    なかなか屠畜なんてテーマで世界旅行する人は居ないだろうけど
    ひとつのテーマを持って世界を回るのって楽しそう

    読後感がクレイジージャーニー観たあとみたいな感じ
    あと読んでると色んなお肉食べたくなる


  •  世界各国の屠畜事情、どのような動物をどのような事情でつぶして食肉に仕立てるか、屠畜に関わる職業とそれらへの差別はどうなっているのか、などに取材した内容。
     著者の「差別とはなにか」「『動物をつぶす』ことが『残酷』とはどういうことか」という疑問への真摯な姿勢と、屠畜という職業への愛が伝わってくる本だった。
     「食育」に興味のあるかた、また「食べること、食べられること」に関心のあるかたにおすすめしたい。

  • 食べるために動物の命を奪い解体する。人が生きるために必要な行為が時と場所により差別される。世界の屠畜を取材、豊富なイラストで解説した作品。

    詳細なイラストと装丁が何より魅力の一冊。あまりに細かく老眼には少々厳しい。

    臭いもあれば血もある現場、通訳ガイドかみ怯んでも筆者は全く平気である。

    日本から韓国、モンゴル、アメリカなど世界を取材、良質のノンフィクション。

  • なかなかしつこく屠殺について調べていて、興味深く読んだ。
    しかし、この本も相当前の本だから、今は事情も変化しているんだろうな。
    ちなみに、私は、著者と同じく、屠畜と動物愛護は別物だと思うし、肉食べてる以上、屠畜には敬意を払うべきといつも思ってる!

  • 世界の”屠畜”模様のレポート。
    元は、被差別部落の職業差別レポートだったはずだけど、
    いつの間にやら、屠畜レポートに。
    家畜を食品にする、難しくてありがたい職業だけど、
    宗教、文化、食生活、政治で、いろんな立場に。
    とにかく、お肉食べる時は「いただきます」を
    ちゃんと言いましょう。

  • 内容は良いのだが、イラストが小さすぎで見づらいのが非常に残念。分割掲載とかしてくれればいいのに。

  • 高野秀行さんの著書に度々名前があがり、とても気になっていました。
    家畜とスーパーで並んでいるお肉はどうしても別物となっている現在。
    家畜がどのようにしてお肉となるのか。
    実はとても興味がありました。
    内澤さんは世界中の屠畜中を見て周り、スケッチし、インタビューし、そして食べる!
    どうしても屠る現場を見ると食べられない人が居ることも想像出来ますが、家畜は食べてこそと言うか。
    上手く言えませんが、とても考えさせられます。
    お肉はもちろん、お魚もおろせない私にとって、家畜とお肉がひとつに繋がらないと言うか。
    もやもやしてものがすっきりした気分です。
    ~なんである。
    内澤さんの語り方、癖になります。
    イラストも味かありますね。

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著者プロフィール

ルポライター・イラストレーター

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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