悪行の聖者 聖徳太子 (角川文庫 し 43-1)

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  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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  • Amazon.co.jp ・本 (394ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043944675

感想・レビュー・書評

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  • もっと悪い聖徳太子が読みたかった。
    前半、面白かったが、後半がちょっと…
    どうしても黒岩重吾さんの聖徳太子と比較してしまうので、奇抜な設定でもアリだったかも。

  • 学校の社会の授業で習った聖徳太子は何だったんだろう?
    そもそも聖徳太子って名は使われていなかったのか?。
    10人の話を同時に聞き分ける等の超人的なところも宣伝効果を狙った政治戦略だったとは。
    日本の歴史上の人物に「偉人」や「天才」は多くいるが「聖人」と聞いてすぐに頭に浮かぶ唯一の存在と思っていた聖徳太子のイメージが変わった。彼も普通の人と変わらない人間で男だったわけだ。

  • 面白かった!
    久々の歴史小説、楽しかった。

    歴史小説の面白いところは、史実をもとに隠された秘密や経緯が、作者の想像力(創造力)によって、ものすごく壮大に、あるいは、逆説的に描かれたりして、「そういうことだったのか!」とか「そうきたかー!」的な、一種の感動的な発見があるところだと思う。

    その意味では、この小説、最高だった。
    「血ぬられた手で仏を求めて彷徨する、聖徳太子の光と影を見事なまでに描ききり、古代史小説に新生面をひらく傑作の登場」!
    「近親相姦の果てに産み落とされ、叔父・崇峻天皇を我が手にかけ、殺生と偸盗と邪淫の三悪に染まりつつも、この国を仏教によってまとめようとする、悪行の…いや、逆説の聖者である」

    ・実は、聖徳太子は(摂政の地位を利用して)わざと天皇にならなかったのではない、なれなかったのだ
    ・なぜなら、彼は、用明天皇と推古天皇の実の兄妹の間に生まれた「犬畜生」の子供だったから
    ・母:間人と仲が悪かったのも、聖徳太子がもつ気持ち悪い霊力が原因ではなくて、同じ夫(用明=橘豊日)をもちながら、自身の子として育てざるを得なかった嫉妬からくるものだった
    ・その用明天皇は、実は、間人の実弟であり、のちの崇峻天皇にあたる泊瀬部によって毒殺された
    ・その泊瀬部に崇峻暗殺をけしかけたのは、蘇我馬子
    ・蘇我馬子と推古天皇は、叔父と姪の関係だけでなく、愛人関係にもあった
    ・泊瀬部を暗殺したのは、東漢直駒(やまとのあやのあたいのこま)とされるが、小説のなかでは父の仇てして聖徳太子が手を下したとなっている
    ・聖徳太子と刀自古は、後世は不仲だった
    ・真の仏道に目覚めた聖徳太子が、自身で斑鳩宮(法隆寺)を焼いた
    ・聖徳太子と竹田皇子(推古天皇の子供)は仲が悪かった。
    ・竹田皇子は、実は戦で死んだわけではなく、蓬莱の山にこもって導師となった
    ・実は、菟道貝蛸妃は聖徳太子の実兄にあたり、二人は許されない関係で姻戚関係を結んでしまった(だから子供ができたとき、彼女は自害した)
    ・馬子蝦夷父子と聖徳太子は昔から相容れない関係にあった


    作者の経歴もおもしろい。
    農業版勘定奉行のIT会社を経営するかたわら、趣味で「古代ロマン小説」家の肩書き。
    日本古代史で有名な小説家といえば黒岩重吾さん。この分野では、異分野からの新星。

    あとがきの縄田一男さんのコメントもよかった。

    いやしくも人民のリーダーであるならば、己の手を血で染める覚悟がなければ、一国の政治は覚束ない。然るに、我が国のリーダーの体たらくといったらどうだ。(中略)本書は、古代史を材にとりつつも実は現代小説なのである。

    …笑

    無理やり感が否めないけどね笑。
    いいあとがきだった。

    続編があるらしいので、是非読みたい。

    あと、八木荘司さんの古代史が気になる。小説だったら読みたいな。

  • 推理優先の感じ。
    厩戸皇子の心の動きがしっくりこない。
    先入観があるせい?

  • 聖者とか呼ばれている人も、普通の人間と同じように悩むんだなぁと。

    人間なんて生まれた時点では、みな同じはず。
    そこからどうやって生きて、体験したこと、感じたことから洞察し自分にフィードバックできるかが、その人をより人間らしくできるのだと思う。

    そう考えると、聖者と呼ばれる人ほど、経験から学び取ることが多いのでは、と。

    この本の聖徳太子像は超人ではなく、人に近い。そして、悩んでいることも現代の人に置き換えられるから、共感もできる。
    #ここまでどろっどろの家庭もないかもだけど。

    1500年前のことで、フィクションの部分も多いんだろうけど、これも解釈の一つしてはとても面白いです。

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著者プロフィール

1942年、新潟県生まれ、長岡市在住。早稲田大学文学部卒。農業関連のIT企業を経営する傍ら小説家を志し、2000年『日輪の神女』で古代ロマン文学大賞を受賞しデビュー。現代的な解釈で古代史を読み解く古代ロマン小説を意欲的に執筆。作品は他に『虚空の双龍』などがある。

「2019年 『万葉集をつくった男 小説・大伴家持』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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