今昔奇怪録 (角川ホラー文庫 す 3-1)
- 角川書店(角川グループパブリッシング) (2009年10月24日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
- / ISBN・EAN: 9784044094096
感想・レビュー・書評
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本書は、大学講師であり
怪談専門誌『幽』を中心に活躍する著者による初の短編集。
町会館の片隅で、ふと目にした『今昔奇怪録』
どうやら、町で起きた不思議な事件を記録した本らしいが
軽い気持ちで読み始めた若夫婦の周りでは、
次第に不思議な出来事が起こりはじめる(表題作『今昔奇怪録』)
圧倒的な取組み成績で人気を博したが
熱狂的なファンによって殺された伝説の力士
彼の死をモチーフにしたアトラクションを舞台にした『釋迦狂い』
愛娘を次々に疱瘡で失った豪商。
彼の悲しみに追い討ちをかけるかのように、娘の墓が荒される。
遺体の頭だけが持ち去られ、巨大な墓石すら動かす凶行を
人々は、死者の屍肉をむさぼる疱瘡婆の仕業と噂するのだが・・(『疱瘡婆』)
実話系、時代物、サイエンス系・・・と
まったくタイプは異なるものの、
巧みな構成と繊細な人間観察に裏打ちされた珠玉の5編を収めます。
どの作品も、類書にはない魅力を放ちますが、
個人的にとりわけ印象深いのは
被験者、観察者、干渉者、体験者という
何らかの実験を行っている4人の独白で描かれる『狂覚(ポンドゥス・アニマエ)』
次第に明らかになる実験の目的もさることながら、
じわじわと迫りくる恐怖の正体にとても驚き
読後しばらくの間、冷や汗が引きませんでした。
怪談の定石を踏まえつつも
独創的な設定・展開を惜しげなく披露する本短編集
怖さはあるものの、過剰な暴力や残虐さとは無縁ですので
怪談・ホラーファンに限らず
一人でも多くの方に読んでいただきたい著作です。 -
非常に面白かったがなくした。売ったっけ?