今昔奇怪録 (角川ホラー文庫 す 3-1)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
3.36
  • (5)
  • (8)
  • (15)
  • (4)
  • (1)
本棚登録 : 121
感想 : 22
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044094096

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 日本ホラー小説短編賞を受賞した「今昔奇怪録」を含む
    計5作のホラー短篇集。

    現代ホラー、古典ホラー、科学(SF?)ホラー、実験的意欲作など
    同じホラーでもバラエティに富んでいて
    飽きさせない作りになっている。
    どの短編も水準が高くて、あっさり読めるけどハズレがない。

    ■疱瘡婆
    江戸時代に只野真葛によって書かれた「奥州波奈志」に登場する
    妖怪を題材にした話だけど、これが一番怖かった。

    最初は、空き家に住んでいた猫の祟りかと思っていたけど、
    その後疱瘡婆の仕業かと思い直し、
    最後にああ、そういうことだったのねと。
    人間が一番怖いというお話だった。

    ■狂覚(ポンドゥス・アニマエ)
    祟りがあると思われている幽寂庵という屋敷で
    実際に祟りはあるのか被験者が体験していくのを
    干渉者・観察者・統括者の3人が観察していく
    というストーリーで、実験的な作品。

  • 本書は、大学講師であり

    怪談専門誌『幽』を中心に活躍する著者による初の短編集。


    町会館の片隅で、ふと目にした『今昔奇怪録』

    どうやら、町で起きた不思議な事件を記録した本らしいが

    軽い気持ちで読み始めた若夫婦の周りでは、

    次第に不思議な出来事が起こりはじめる(表題作『今昔奇怪録』)


    圧倒的な取組み成績で人気を博したが

    熱狂的なファンによって殺された伝説の力士

    彼の死をモチーフにしたアトラクションを舞台にした『釋迦狂い』


    愛娘を次々に疱瘡で失った豪商。

    彼の悲しみに追い討ちをかけるかのように、娘の墓が荒される。

    遺体の頭だけが持ち去られ、巨大な墓石すら動かす凶行を

    人々は、死者の屍肉をむさぼる疱瘡婆の仕業と噂するのだが・・(『疱瘡婆』)


    実話系、時代物、サイエンス系・・・と

    まったくタイプは異なるものの、

    巧みな構成と繊細な人間観察に裏打ちされた珠玉の5編を収めます。


    どの作品も、類書にはない魅力を放ちますが、

    個人的にとりわけ印象深いのは

    被験者、観察者、干渉者、体験者という

    何らかの実験を行っている4人の独白で描かれる『狂覚(ポンドゥス・アニマエ)』

    次第に明らかになる実験の目的もさることながら、

    じわじわと迫りくる恐怖の正体にとても驚き

    読後しばらくの間、冷や汗が引きませんでした。


    怪談の定石を踏まえつつも

    独創的な設定・展開を惜しげなく披露する本短編集


    怖さはあるものの、過剰な暴力や残虐さとは無縁ですので

    怪談・ホラーファンに限らず

    一人でも多くの方に読んでいただきたい著作です。

  • 非常に面白かったがなくした。売ったっけ?

著者プロフィール

朱雀門 出 (すざくもん・いづる)
二〇〇九年「今昔奇怪録」で第一六回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞。実話怪談では『第七脳釘怪談』をはじめとする「脳釘怪談」シリーズほか。共著に「怪談五色」シリーズ、『京都怪談 神隠し』など。

「2022年 『怪談四十九夜 合掌』 で使われていた紹介文から引用しています。」

朱雀門出の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×