壊れた脳 生存する知 (角川ソフィア文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044094133

感想・レビュー・書評

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  • 障害があるというマイナスイメージを、見方を変えて面白がる。工夫次第で前向きに障害と共存していける。筆者の楽観的な姿勢と行動力に、病気は違えど同じ障害者として学ぶべきところが大いにありました。

  • 著者:山田 規畝子[やまだ・きくこ](1964-) 医師。作家。
    解説:山鳥 重[やまどり・あつし](1939-) 医師。神経科学者。
    カバーイラスト:唐仁原 教久
    カバーデザイン:芦澤 泰偉
    定価: 880円(本体800円+税)
    発売日:2009年11月25日
    判型:文庫判
    商品形態:文庫
    ページ数:320
    ISBN:9784044094133

    ◆高次脳機能障害の苦しみに決して諦めない心で向き合う医師の、感動の手記。
     靴の前後が分からない。時計が読めない。世界の左半分に気が付かない。三度の脳出血で高次脳機能障害となった著者が、戸惑いながらも、壊れた脳で生きる日常を綴る。諦めない心とユーモアに満ちた感動の手記。
    https://www.kadokawa.co.jp/product/200906000033/

  • 三度の脳出血で高次脳機能障害となった、自身も整形外科医であった筆者が、その症状とはどんなものであるのか、という自身の体験を語り、また、社会や周囲が患者にどう接すべきであるか、などについて論じている。

    高次脳機能障害は、盲目や認知症などと違い、症状が周囲から見て分かりづらく、ただ単に少しトロい人、で片付けられがちであるというが、そのとき、実は本人の中で何が起こっているのか、筆者の体験談を通して、その一端を理解することができた。
    高次脳機能障害は、脳の機能の一部が脳出血等により働かなることにより、環境からの刺激による情報を統合して評価することができなくなるという。
    すると筆者のように頭頂葉が傷ついた場合であれば、周囲の世界の空間認識・・・遠近感、凹凸などが把握できなくなり、食べた後の食器をお膳の空きスペースに置いたり、階段を降りたりといった、普通の人には何でも無い行動が、非常に困難になるらしい。
    ダメージを受けた脳の部位の違いにより、人によってどんな機能が抜け落ちてしまうかというのもまちまちらしく、やっかいだ。
    筆者は、治療やリハビリに関わる人には想像力が必要だと論じているが、その通りだ。

    このように、自分にとてつもない変化が起こっているのに、他人事とも言えるような冷静さで症状について語る筆者がすごい。
    あまつさえ、高次脳機能障害について興味を深め、自分の症状を客観的に分析し、生活の工夫に生かしている。
    また、「普通の生活が最高のリハビリ」をモットーに、どんどん社会生活に飛び込んでいく姿勢も、なかなかできないことだと感じた。
    (周囲の遠近感や凹凸が消え、ただ平面的なパターンだけが見え、知らずにものにぶつかったり、落ちたりしそうな世界を一人で歩こうと、私なら到底思えない。)
    このように重篤な障害であれば、絶望に塞ぎ込み、戻ってこれなくなっても、いた仕方ないと思う。(実際、そういう時期もあったのだろう。)
    この先、重大な病気にかかったとき、筆者の病気に対する立ち向かい方を、思い出せたらと思う。
    たとえ、そうなってすぐにはそうできなくても、決して諦めず、明るく生きていく道を探したい。

    しかし、脳というのは、さらりと高度な情報処理をこなしているものだ。
    そして、私たちは、その脳のフィルタを通してしか、決して周囲を認識することはできないのだ。
    健康であればまず認識できないが、生きていく上で必要なものは、全て持っているという当たり前の事実に驚愕する。
    まさに筆者の息子さんが言うとおり、「何もできなくても生きているだけでいい」ということなのだ。

  • 「高次脳機能障害」についての本。
    著者は医師である自ら脳梗塞等何度か脳内出血を起こた高次脳機能障害を持つ方である。
    ある意味、医療の知識もあり、かなり恵まれた立場であると言う事で何とか社会的にも復帰し、子育てもあれているのであるが、自らの体験談は驚きの連続である。
    そんな風になるのかと思う反面、聞きかじりの脳の知識を考えると、なるほどそうなるのか、とも言える。
    明日は我が身かもしれない「高次脳機能障害」について知ることが出来き、またこの病気を通して脳の機能の一端を知ることが出来る本である。

  • とても勉強になりました。とにかく脳自身がいろいろ発達していくのが素晴らしい。自分がそうなった時に忘れないようにしないと、可能性があることを。

  • 医師であり当事者でもある筆者の、高次脳機能障害についての手記。

    脳が傷つくことによって、何が起こるのか。
    本書はその「内側」からしか知ることのできない世界について知ることができる、貴重な内容です。

    医学的見地から、ひとりの当事者としての視点から、「その時」のことと、この後の回復について、希望を感じられるような形で描かれていて、とても読みやすい一冊でした。

    高次脳機能障害の方と関わりのある方々にはぜひオススメしたい内容です。

    個人的には息子さんとのエピソードが涙なしには読めませんでした。
    ご自身も大変な中で、それでも育児と仕事を当たり前のこととして続けていらしたところに、同じく子育て中の母親として、深く尊敬の念を抱きました。

    支援者として果たすべき役割は、
    当事者の方が希望を抱けるようにサポートすることと、
    回復の可能性を信じること、
    だと思いました。

  •  脳に障害を負われた方の話。
     諦めないポジティブな部分に救われますが、多くの人は諦めてしまうような状態。いかに普通の生活が高度なことであり、ハンディキャップをお持ちの方に辛いのかがわかります。

著者プロフィール

1964年、香川県生まれ。東京女子医科大学卒。同大付属病院、香川医科大学(現・香川大学医学部)勤務を経て、山田整形外科病院院長に。37歳で3度目の脳出血を体験し、重篤な高次脳機能障害を発症。自分の症状や自前のリハビリ法などを綴った『壊れた 生存する知』が話題に。

「2011年 『壊れた脳も学習する』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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