いまだ人間を幸福にしない日本というシステム (角川ソフィア文庫)

  • 角川学芸出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044094447

作品紹介・あらすじ

自分たちの人生はどこかおかしい。この漠然とした不満を、驚くほど多くの日本人が感じているのはなぜか-。アメリカの疵護と官僚独裁主義に甘んじてきた日本社会の本質を、予言書のごとく喝破したベストセラーを大幅加筆&改稿。どうすれば、私たちは本当の民主主義を手にできるのか?小泉改革、金融危機、民主党政権、東日本大震災等を経て、いまだ迷走し続ける、説明責任なき政治の正体を抉り出す。

感想・レビュー・書評

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  • <目次>
    第1部  よき人生をはばむもの
     第1章  偽りの現実と社会の檻
     第2章  巨大な生産機構
     第3章  停滞する社会の犠牲者たち
     第4章  民主主義にひそむ官僚独裁主義
    第2部  日本に運命づけられた使命
     第1章  日本の奇妙な現状
     第2章  説明責任を果たそうとしないバブルの張本人
    第3部  日本人はみずからを救えるのか?
     第1章  さらなる変化に見舞われた世界
     第2章  不確かな日本の新時代
     第3章  日本民主主義の可能性

    <内容>
    なかなか衝撃的な1冊。種本は1994年という古さだが、2012年に第3部をほぼ書き下ろしのようにして文庫化したもの。一瞬の風だった民主党政権、東日本大震災後の状況を踏まえているが、ターガード・マーフィーの『日本~呪縛の構図』と似たような分析がされている。こちらはオランダ人ジャーナリストだが、外から見た日本は、官僚が牛耳っている世界で政治家はその官僚にいいようにコントロールされ、うまくコントロールできない(例えば小沢一郎のような)政治家はアメリカなどと排除のキャンペーンを張られてしまうらしい。官僚の縄張り主義、前例主義は江戸時代から続くらしいが、こうした本を続けて読むとこちらが洗脳された気がする。訳が読みにくいのでやや手こずるが、官僚の思いもよらぬ形で、日本を変えるキャンペーンが若者あたりから生まれないか、と思うのであった。

  • 外から見た日本の政治体制、それに追随する国民を洞察した一冊

  • 日本社会の本質をついたとされるベストセラーの加筆された一冊。とはいえ、かなり前の著書のため、現時点での評価はなかなか難しいものです。
    民主党への政権交代、東日本大震災、冷戦後の世界情勢といったものを踏まえた内容になっていますので、現在とは異なっている点と、根底に流れているものと見極めることが必要な気がします。
    日本は、戦後復興の中で進められ、結果構築された体制からなかなか脱却できておらず、そのため、官僚の独裁、中枢における説明責任の欠如、社会の政治化が進み、改善されていない現状を指摘します。そしてこれを打破するためには、政治化の存在の重要性とそれを選ぶ国民がいかに関心を持つようにするかを提言しています。
    この提言の部分はもう少し具体的なものを聞いてみたかった気がしますので、物足りなさがあります。説明責任や政治家がどうすべきかといった部分は理想としては理解できるものの、ではどこから手をつけるべきだと著者が考えているのかは、もしかすると他の著書を参考にする必要があるかもしれません。
    また、以下の3点は、何となく気になった部分です。

    ・自滅に進む機構の原因は、無関心と無能さ
    ・アメリカに依存し続けることの危険性
    ・日本の政治家がもっと関心をもつべきなのは、原子力エネルギーに代わる動力源として、太陽光エネルギーの技術の開発を進めること

    ▼日本国民が完全な市民としてふるまえないのは、市民に必要な知識が与えられていないからだ。官僚や経済機構の役人たちが日本を実際にどのように管理しているかは、たてまえの陰に隠されているのでわからない。日本の市民たちの明日、そして遠い将来に影響をおよぼすようなきわめて重要な事柄が、おおやけに議論されることはない。
    ▼成熟した大人の日本人は、たとえひどいあつかいを受けようがそれに甘んじて、静かに耐えながら、他者をもそのようにふるまえるかどうかで評価するのである。「しかたがない」とあきらめることを大人になった証拠と見なすのは、この国の長い伝統なのである。
    ▼権力者たちは現実を正確に伝えれば、現状に変化が生じるのではないかと恐れている。特に官僚は自分たちの機構が強化されるのでないかぎり、どんな変化が生じるのではないかと恐れている。彼らがいまの地位にとどまるためには、国内状況の安定がなによりも重要だ。国や地域を問わず、官僚が現状維持に最大の努力をするのはそのためだ。かなり官僚化の進んだ日本では、現状維持を望む傾向はことのほか強い。それにはどうしても現実を偽って伝え続けなければならない。おもて向きは民主主義国である日本が、なぜいまだに官僚たちにがっちりと牛耳られているのかは、日本の市民がつねにみずからに問いかけるべき一番重要な問題のひとつである。
    ▼日本の問題とは、皮肉にも、戦後、日本がなし遂げたふたつの偉業が原因となって生じている。戦後の日本を築き上げた人々は、その規模の壮大さと影響力の深さにおいて、以前の海外の権力者たちには決して真似できないほどの成果を上げた。
    ①工業製品を生産するための体制の構築。機構同士がいく重にも結びついた、これまで世界のどこにも存在しなかったほどの効率を誇る体制。
    ②産業規模の拡大をつねに最優先課題とし、それに反対できないような社会の構築
    ▼社会のほぼ全体が政治システムに組み込まれている、ということだ。そして日本はまさにそうなっているのである。我々はこれを社会の「政治化」と呼ぶことにしよう。
    ▼企業が個人の家庭生活の質や人格形成にこれほど大きな影響を与えた国は、日本をおいてほかにない。
    ▼重要な点は、民主国であれば大抵はそなわっているはずの、物事を変化させるようなメカニズムが日本には欠如していることだろう。というよりそうしたメカニズムが未発達だと言うべきなのだろう。変化のメカニズムとともに、もうひとつ民主国には欠くことのできなものがある。それが説明責任である。日本の政治システムの大きな問題は、だれも日本でなにが起きているかについて「説明責任」を負う者がいないことである。

    ▼ヨーロッパなどの他諸国であれば、本来、政治的な影響力の強い中産階級が占めるはずの重要な位置を、日本では企業が占めているのだ。
    ▼第二次世界大戦後、日本では政治的に重要な中産階級が存在しない代わりに、それを成文法や不文律といった規定によっておぎなおうとする政治文化が発展した。そのために、ますます官僚に対して政治支配がおよばなくなっていった。
    ▼日本になにが必要かははっきりしている。それは文民と政治によって軍を管理する、ということだ。実に多くの理由から、政治的な説明責任の中枢が必要だ、ということだ。
    ▼日本にとってなによりも必要な、政治的な説明責任の中枢を築けるのは政治家だけである。なぜなら読者が選ぶのは彼ら以外にはいないからだ。だからこそ読者は、政治家たちがどのような立場にあり、どのような役割をになっているか、真剣かどうか、彼らが日本のシステムという根本的な現実を認識しているかどうか、そして国民に対して責任感があるかどうか、といった事柄に、なによりも関心をもつべきなのである。


    <目次>
    第1部 よき人生をはばむもの
     第1章 偽りの現実と社会の檻
     第2章 巨大な生産機構
     第3章 停滞する社会の犠牲者たち
     第4章 民主主義にひそむ官僚独裁主義
    第2部 日本に運命づけられた使命
     第1章 日本の奇妙な現状
     第2章 説明責任を果たそうとしないバブルの張本人
    第3部 日本人はみずからを救えるのか?
     第1章 さらなる変化に見舞われた世界
     第2章 不確かな日本の新時代
     第3章 日本民主主義の可能性

  • 2018年11月読了。
    オランダ人ジャーナリストによる日本及び日本人についての論考。
    My News Japanの渡邉さんがこの本のオリジナル版(1994年刊)を学生時代に何度も読んだとのことだったので、新宿紀伊国屋書店の棚で見かけた時に即購入。

    数多刊行されている「日本ヨイショ本」に辟易されている方には是非一読を薦めたい。ただ文庫版初版が2012年なので、最新の政治情報がベースではない。この著者ならば今の政治状況について何を言うか、恐ろしくもあり、楽しみでもある。

  • 【由来】


    【期待したもの】


    【要約】


    【ノート】

  • 外国人研究家から見た日本の問題点を浮き彫りにした本書。

    「ここが変だよ、日本人」と外国人に唐突に言われても「そりゃあ、何も知らない外国人だからね。」ってなもんで、まともに取り合おうとしない。けれども彼の指摘は圧倒的な裏付けによって、強い説得力を帯びた論理である。多分日本人が気づかなかったこと、気づいていながら「まあ仕方ない。」と我慢する、波風立てないようにするという、謎の美学の元闇に葬られてきたことが、一切遠慮することなく記されている。(実はこの「まあ仕方ない。」とする日本人の美学こそ、個人的にはもっとも可笑しな日本人の性質だと思ったりもする。)

  • 日本社会というシステムの中に民主主義が欠落しているという指摘は、忘れてはならない一つの視座を提示してくれている。本書で示唆されているいくつかの予見が今の世の中に顕在化しつつある点からも、稀代の名著の内の一つだと思う。

  • 『いまだ人間を幸福にしない日本というシステム』

    著者 カレル・ヴァン・ウォルフレン
    訳者 井上実
    カバーデザイン 國枝達也

    【メモ】
    ・著者のサイト
    http://www.wolferen.jp



    【書誌情報+内容紹介】
    定価 967円(本体895円+税)
    発売日:2012年12月25日
    レーベル:角川ソフィア文庫
    版型:文庫判
    ページ数:336ページ
    ISBN(JAN):9784044094447

    日本を不幸にする「元凶」は、何も変っていない!
     米国の庇護と官僚独裁主義、説明責任なき行政システム――。日本社会の本質を喝破した衝撃作に書き下ろしを加え大幅改稿。政権交代や東日本大震災などを経て、いまだ迷走し続ける政治の正体を抉り出す!
    https://www.kadokawa.co.jp/product/321206000185/

  • 概要: 日本の政治経済システム批判。
    感想: 言ってることがあってるように感じられる部分もあるが、決めつけが多く根拠が明らかでない。読む価値なしと感じた。

  • フォーリンアフェアーズ側からの視点。明治時代に江戸幕府が倒され、明治維新が起こってからは日本はおそらくもともとの国とは違う国なのかもしれない

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著者プロフィール

ジャーナリスト。1941年、オランダ・ロッテルダム生まれ。「NRCハンデルスブラット」紙の東アジア特派員、日本外国特派員協会会長等を務め、世界の各紙誌に寄稿している。

「2012年 『いまだ人間を幸福にしない日本というシステム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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