定本物語消費論 (角川文庫 お 39-2)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (342ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044191108

作品紹介・あらすじ

1980年代の終わりに、子供たちは「ビックリマンチョコレート」のシールを集め、「人面犬」などの都市伝説に熱狂した。それは、消費者が商品の作り手が作り出した物語に満足できず、消費者自らの手で物語を作り上げる時代の予兆であった。1989年に於ける「大きな物語」の終焉を出発点に、読者が自分たちが消費する物語を自分たちで捏造する時代の到来を予見した幻の消費社会論。新たに「都市伝説論」を加えて、待望の文庫化!巻末に'80年代サブカルチャー年表を付ける

感想・レビュー・書評

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  • アカデミックではないかもしれないけど、かなり面白い。

    「ビックリマンチョコレート」に見られるような、商品やモノではなく、その背後にある「大きな物語」が消費されるという形態。

    実際子供たちが皆そういう思考回路でシールを集めていたかは疑問だが、この概念自体は凄く面白いし、かなり惹かれました(笑)


  • おいおい、
    AKIRAの世界さえ追い越した2021年でも、
    89年に書かれたこの本の内容のあれやこれやを、バリバリ現役でやってるんですけど。

    なんならコロナとかいうB級映画みたいな糞ストーリーで世の中狂っちゃってるんですけど。

    シムシティの自然災害でも、
    もうちょっと現実味があるくらいだ。

    、、、さて、内容ですが、
    ビックリマンが何故ヒットしたのかを口火に、
    都市伝説、宗教、漫画、アニメ、時事ネタ、人間心理、マーケティングetc..
    サブカル、オカルト系の話が語られている本書。

    資本主義経済がもたらした、
    爆速的消費社会。

    売れりゃ何でもありのルールの中、
    モノは簡単に消費され、
    そしてまた複製され、その価値を擦り減らすのに対し、
    流行り廃りのサイクルは、
    モノの価値と反比例するように、
    バブルの中を忙しく回っていた。

    天皇が崩御し平成に年号が変わった時、
    坂本龍馬がいたなら綺麗さっぱり洗濯して、
    一からやり直すきっかけになっていただろうか。

    バブルが弾けた今でもそのサイクルは止まる事を知らず、
    僕達はすれ違う街並みを眺めることしかできない。

    全人類明日はどっちだ時代のミスター子供達が、
    約束のネバーランドを夢みても、
    仕方のない事かもしれない。

    そう、そんな令和という年号にもちょっと慣れだした昨今、
    物語の要素を「世界と趣向性」という分かりやすい抽象化を用いて説明してくれる本書は、
    現代という虚構世界を紐解く鍵になるはずだ。

    世界とは、歌舞伎や浄瑠璃の専門用語で、
    いわゆる世界観というやつらしい。

    その世界観をどういう切り口で表現するかを、
    趣向性という。

    これは、あらゆる物語の核であり、
    ヒット作が何故ヒットしたかの理由でもある。

    ヒット作はどれも、
    世界観がずば抜けて広大なのだ。

    それは物語の受け手に、
    想像の余地を残す。

    そう言われれば、
    ビックリマンも、
    エヴァンゲリオンも、ポケモンも、
    社会現象にまでなった物語は、
    世界観のポテンシャルが底なしだ。

    さらに言えば、そういうヒット作の根幹には、
    大体神話や民間伝承が端を発しており、
    ハリウッド映画なんて神話の法則に基づいた王道プロットで構成されていることが殆どだ。

    つまり聖書まじ人類史上最強のヒット作だなって話です。今なら無料だしなー。

    逆に言えば、
    そんな世界観を提示できれば、
    人生というゲームで勝ちまである。

    そういうゲームの一例として、
    人面犬があった。

    結果的にガセだったらしいが、
    世間は一瞬賑わったらしい。

    一つの虚構を言語化して世間に投げ込めば、
    幽霊の正体見たり枯れ尾花方式で、
    みるみるウチに膨れ上がり、
    都市伝説となる。

    あったらいいなが揃ってるのは、
    人間心理として正しく、
    故にナフコは正しいのである。
    Q.E.D.証明終了。

    文明が高度化すれば、
    より虚構を貪る。

    面白ければ、
    真実も虚構も関係なく、
    より面白い方に傾く。
    嘘から真が出る。

    実態の無いモノに価値が付き、
    人々は伽藍堂に狂喜乱舞する。

    それは少し、怖い事だ。

    目を見てありがとうを言われるのに金を払うのは、遠回しなボケにしたってタチが悪い。

    行き過ぎた虚構は、
    宗教に近い。

    宗教が悪いのでなく、
    宗教への妄信、盲信がいけないのだが、
    尊師アレルギーを忘れて、
    また偏った思想が暴発したりしないだろうか?

    そんな要らぬ心配をしてしまう。

    とまれ、
    異界を求めるのは現実逃避でなくともある事だし、謎が無ければ人生は虚しい。

    そうは言っても、
    「人生:コロナ編」の作者よ、
    そろそろ終わりにしろよ!

    カタチ変えてしまうぞ!

    あぁでも、
    終わりにされたら、
    僕達も終わるのか。

    もぉマヂむり、転生しよ

    ps.
    夜中に人面犬を見かけたら、
    恐らく僕です。

  • サブカルチャーはどこへいく。

    物語を消費していくという話は少しわかった。でも、この論が書かれた頃から、また少し違う方向に進んでいるので、新たな考えも知りたい。

    縮小再生産を繰り返し、加速させ、喜んでいるうちに、失われているものがあるのだろう。

  • 表紙が可愛い。あと、ビックリマンシールを集めたくなる。

    そんなことは置いといて、面白かった。ただ、拡張性は無かった。というのは恐らくこれが元々出版された89年、つまり僕が生まれた年以後、ここで論じられている手法や概念というのが広く流通され、その下で育ってきたために取り立てて新鮮味を感じ無かったということ、また東浩紀や宇野常寛といったような批評家の批評形式に若干の慣れがあるので驚きも少なかったと言える。

    ただ、狙わずして80年代の反原発運動等の見解も読め、震災以後の原発を巡る国内の政治的行き先に思いを馳せることとなった。


    表紙が可愛い。

  • 大塚英志はやっぱり面白いなあ

  • 定本 物語消費論 (角川文庫)

  • 最初はおもしろかったが途中から漫画ブームを読む解くみたいな感じになっていて民俗学から離れてしまっていたのがちょっともの足りなかった。そういや「子供流離譚」なんてのも読んだよな。

  • ビックリマンチョコ世代(当時7歳とか)の自分には なんとなく記憶にある流行やワードばかりで、その考察は読んでいて懐かしく興味深いものばかりだった。インターネットが存在しない時代の この手の本はとても面白い。巻末の年表が最高。

  • 20050501

  • 貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
    http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784044191108

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著者プロフィール

大塚 英志(おおつか・えいじ):大塚英志(おおつか・えいじ):1958年生まれ。まんが原作者、批評家。神戸芸術工科大学教授、東京大学大学院情報学環特任教授、国際日本文化研究センター教授を歴任。まんが原作に『アンラッキーヤングメン』(KADOKAWA)他多数、評論に『「暮し」のファシズム』(筑摩選書)、『物語消費論』『「おたく」の精神史』(星海社新書)、他多数。

「2023年 『「14歳」少女の構造』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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