くもはち 偽八雲妖怪記 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044191207

作品紹介・あらすじ

三文怪談作家の「くもはち」と、のっぺら坊の挿絵画家「むじな」。二人が出会ったのは小泉八雲の怪談の舞台である紀伊國坂だった。その日行われる八雲=ラフカディオ・ハーンの葬儀を取材して怪談に仕立てるのだ。葬列にもぐりこんだ二人は、ハーンの雇った探偵に見張られていると悩む帝大教師、夏目金之助に出会う。その監視者の意外な正体とは-。(「怪談と十五銭」)くもはち、むじなの怪談コンビが明治を疾り、謎を明かす。妖怪ミステリーの傑作短篇集。

感想・レビュー・書評

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  • 明治時代を舞台に、売れない怪談作家の「くもはち」と、彼の専属絵師でのっぺら坊の「むじな」が、明治の文学者たちと交流しつつ奇妙な事件を解決していく物語。

    第1話は、イギリス留学中にフェアリーに憑かれた夏目漱石を助け、その代償に、くもはちが依頼されているラフカディオ・ハーンを題材にした怪談小説を聞いてもらう話。

    第2話は、鏡石こと佐々木喜善から買った河童についてのネタを利用して怪談を書こうとするくもはちが、後の柳田国男とともにその話の舞台となった村を訪問する話。

    第3話は、くもはちが博文館から、女弟子の霊に憑かれた田山花袋の除霊を依頼される話。

    第4話・第5話は、日本を訪れたアーサー・コナン・ドイルの依頼で、フェアリーの国へと通じる扉を探す話。物語の終盤で、くもはちの正体が明かされることになります。

    明治の文学者たちの意外なキャラクター設定が楽しめます。

  • 本棚整頓中に手に取って再読。

    小泉八雲ことラフカディオ・ハーンの葬儀の日、しがない挿絵画家「私」は赤坂の紀伊國坂で三流怪談作家のくもはちと出会う。
    くもはちは初対面の「私」の顔をやや不作法にしげしげと眺め、こう言った。
    「ひょっとして君はのっぺら坊なんじゃないかい?」

    大塚英志の「偽史」シリーズのひとつとして書かれたこの作品。
    作者が「『ヘナチョコ』なシリーズ」と言うだけあって、『木島日記』などに比べると陰惨な感じがなく軽やかな印象。

    くもはちによって「むじな」と名付けられた、元人間ののっぺら坊の一人称で語られる事件の数々。
    近代(明治)・民俗学・妖怪と、個人的ツボ要素が満載でたまりません。
    ハーンの生霊に憑かれたと思い込む夏目漱石や神通力を使う松岡國男(後の柳田國男)、少女に魂を抜き取られ蒲団で悶える田山花袋など、当時の文士たちが絡むあたりもおもしろい。

    大塚作品の通弊と言うか『摩陀羅』以来の伝統と言うか、2005年の文庫版発売以降、完結している気配がありません。
    むじなが「関東大震災の当日、浅草凌雲閣のエレベーターに消えるそれらしい姿を見たのが最後」と語るように物語のラストは設定されてるようだけど…
    大塚作品はそれぞれが関連しているのも特徴だけど、これも『サイコ』とかに繋がる作品群のひとつなのかな。

  • 三文怪談作家の「くもはち」とのっぺら坊の挿絵画家むじなが活躍する妖怪ミステリの短篇集です。
    各短編には夏目漱石、柳田國男、田山花袋、コナン・ドイルまで出てきます。
    「怪談と十五銭」と「蜂蜜と外套」が面白かったです。
    「怪談と十五銭」では2人は小泉八雲の怪談の舞台である紀伊國坂で出会います。
    そして、その日行われる八雲=ラフカディオ・ハーンの葬儀を取材して怪談に仕立てるために葬列にもぐりこみます。
    2人はハーンの雇った探偵に見張られていると悩む帝大教師の夏目金之助に出会います。
    夏目先生がおもしろいんですよ。
    怪談コンビが明治を疾り、謎を明かしていきます。
    2人のキャラクターが魅力的です。

  • ハードカバーで読んだけど文庫が出たので買った。
    偽小泉八雲とのっぺら坊の伝奇(?)。
    時代設定が明治でうちの会社の創業者の名前が出てた。
    民俗学やら当時の怪しい風俗が満載なので大塚英志らしくて面白い。
    思わず柳田國男の「遠野物語」を図書館で借りてきた。

  • この本はなんと言ってもキャラ設定が面白かった。
    八雲も柳田も花袋も更にはドイルにホームズまで、まるで本当に居たかのように書かれているのだ。
    そして最後まで読むとハッとして、もう一度読みたくなるような作品でした。

  • どうしてなかなか面白かった。明治の時代、四流の文士と絵描きが名だたる文豪と関わる妖怪事件に巻き込まれる。ワトソン役はのっぺらぼう。
    明治という余裕があった時代の雰囲気がいい。

  • 笑止千万。いいコンビ。
    ホラーかと思ったけど・・・ファンタジーだった!?

  • 民俗学が大好きなので。
    ズバリ、ストライク。
    面白いです(^^)/が、やっぱり大塚英志って
    理屈っぽいナァと。
    理論的にすすめるから民俗学を少しかじってたりすると、ストーリー途中でネタばれ的に最後がわかってしまったりして。
    なので☆三つです(*^^*)

  • まだのっぺら坊になって間もない「むじな」は、後に相棒となる怪談作家の「くもはち」と出会い、共に小泉八雲の葬列へと参加する。
    それは、やがて明治期の文学家たちをめぐる数々の奇妙な厄介ごとに2人が関わっていく最初の事件であった……

    いままでの民俗学物2作品、『北神伝綺』『木島日記』と比べてずいぶんと軽いというか、読みやすく重苦しさを感じない作品。
    前2作が昭和の大戦中が舞台だったのに対して、今作が明治という比較的自由な時代を描いたせいもあるだろうけど、内容の濃さと胡散臭さは前2作にも引けをとらないと思う。
    2人の仲のよさにもむひひってなります。最初に別れのシーンをちらつかせるとかずるい。たまらん。

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著者プロフィール

大塚 英志(おおつか・えいじ):大塚英志(おおつか・えいじ):1958年生まれ。まんが原作者、批評家。神戸芸術工科大学教授、東京大学大学院情報学環特任教授、国際日本文化研究センター教授を歴任。まんが原作に『アンラッキーヤングメン』(KADOKAWA)他多数、評論に『「暮し」のファシズム』(筑摩選書)、『物語消費論』『「おたく」の精神史』(星海社新書)、他多数。

「2023年 『「14歳」少女の構造』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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