- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784044191207
感想・レビュー・書評
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本棚整頓中に手に取って再読。
小泉八雲ことラフカディオ・ハーンの葬儀の日、しがない挿絵画家「私」は赤坂の紀伊國坂で三流怪談作家のくもはちと出会う。
くもはちは初対面の「私」の顔をやや不作法にしげしげと眺め、こう言った。
「ひょっとして君はのっぺら坊なんじゃないかい?」
大塚英志の「偽史」シリーズのひとつとして書かれたこの作品。
作者が「『ヘナチョコ』なシリーズ」と言うだけあって、『木島日記』などに比べると陰惨な感じがなく軽やかな印象。
くもはちによって「むじな」と名付けられた、元人間ののっぺら坊の一人称で語られる事件の数々。
近代(明治)・民俗学・妖怪と、個人的ツボ要素が満載でたまりません。
ハーンの生霊に憑かれたと思い込む夏目漱石や神通力を使う松岡國男(後の柳田國男)、少女に魂を抜き取られ蒲団で悶える田山花袋など、当時の文士たちが絡むあたりもおもしろい。
大塚作品の通弊と言うか『摩陀羅』以来の伝統と言うか、2005年の文庫版発売以降、完結している気配がありません。
むじなが「関東大震災の当日、浅草凌雲閣のエレベーターに消えるそれらしい姿を見たのが最後」と語るように物語のラストは設定されてるようだけど…
大塚作品はそれぞれが関連しているのも特徴だけど、これも『サイコ』とかに繋がる作品群のひとつなのかな。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
三文怪談作家の「くもはち」とのっぺら坊の挿絵画家むじなが活躍する妖怪ミステリの短篇集です。
各短編には夏目漱石、柳田國男、田山花袋、コナン・ドイルまで出てきます。
「怪談と十五銭」と「蜂蜜と外套」が面白かったです。
「怪談と十五銭」では2人は小泉八雲の怪談の舞台である紀伊國坂で出会います。
そして、その日行われる八雲=ラフカディオ・ハーンの葬儀を取材して怪談に仕立てるために葬列にもぐりこみます。
2人はハーンの雇った探偵に見張られていると悩む帝大教師の夏目金之助に出会います。
夏目先生がおもしろいんですよ。
怪談コンビが明治を疾り、謎を明かしていきます。
2人のキャラクターが魅力的です。 -
この本はなんと言ってもキャラ設定が面白かった。
八雲も柳田も花袋も更にはドイルにホームズまで、まるで本当に居たかのように書かれているのだ。
そして最後まで読むとハッとして、もう一度読みたくなるような作品でした。 -
民俗学者シリーズ最後の犠牲者wは小泉八雲。のっけから故人なのであんまり扱われてもないのですが。ナチュラルに日本に生息する妖怪ネタです。最後は妖精事件とか(ネタバレ回避)とかあさっての方向まで行きますが。表紙デザインは京極さん。タイトル見にくい。
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明治!妖怪!!
今の私をときめかせる2大キーワードです。語り手が「のっぺらぼう」とゆぅファンタジックさ。意表を疲れました。それでいて、漱石、柳田國男、田山花袋、コナン・ドイルと豪華メンバーの登場。柳田好きとしては、彼が出てくるたびドキドキワクワクしていたり。 -
「多重人格探偵サイコ」などで知られる、漫画原作者・大塚英志氏の小説。
三文怪談作家で隻眼のくもはちと、のっぺら坊の挿絵画家むじなのコンビが明治を舞台に、妖怪や現実の文豪たちと関わりながらさまざまな謎に巻き込まれ、それを解決していくという妖怪ミステリー。
この人は、他にも「木島日記」といったような民俗学をテーマとした小説を書いているが、この作品も同じようなテーマで描かれている。
ただし、この作品はかなりゆるめな感じ。
それは、主人公二人のキャラクターによるものだと思う。
現に主人公の一人は、のっぺら坊なのであるが、そのことはあまり重大なことではないかのような話しぶりである。
まあ、これに関してはひょっとしたら続編などもあるのかもしれないが。
それにしても、私はなにか飄々としたキャラクターが昔から好きである。 -
××××が壮大なネタバレ!なことにまったく気づいていませんでした。最後になってやっと「あ、そういえば、気にしてなかったけど…そのまんまじゃん!」と気づく始末。
民俗学×文学者×妖怪ファンタジー。大塚英二の書いた民俗学モノの中では一番とっつきやすいかな。著名な文学者と妖怪である主人公たちの会話のテンポがよく、話も一話一話が短いのもあってだれずに読めて面白い。「布団」のお話がお気に入りです。