失はれる物語 (角川文庫)

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著者 : 乙一
  • 角川書店 (2006年6月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (381ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044253066

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失はれる物語 (角川文庫)の感想・レビュー・書評

  • 不思議でどこかせつなくロマンチックなホラー。
    頭の中の電話でつながる思いや、唯一残った右腕の皮膚感覚で奏でられるピアノの旋律、他人の負った傷を自分の体に移す痛み、子猫に寄り添う死者の魂、白く美しいマリアの指が語る真相…
    リリカルな描写にドキドキするのですが同時にすごくゾクッと背筋が凍ります。

    目には見えないけど確かに存在するものを具体化していて、実際に痛みを伴う感覚として伝わってきます。
    「Calling You」と「傷」が好きかな。

    表紙が反転された楽譜で、各話のタイトルが白紙の五線譜で、
    各章の区切りが4分休符と8分休符になっていて、デザインが素敵です。

  • 初☆乙一さんだ~!わくわく♪ と読み始めたら
    8篇のうち、2篇は娘と並んで号泣した映画の原作となった短編、
    もう1篇は、何かのアンソロジーで読んで
    「おお!乙一さんの他の作品、機会があったら読んでみよう!」
    と思った作品で、思わず自分の記憶中枢に
    「もっとがんばりましょう」のハンコを押したくなったりしましたが。。。

    人と接することが苦手な少女が頭の中に創り上げた
    架空の携帯電話に突然かかってくる電話、
    その電話が導く運命的な出逢いが切ない『Calling You』

    他人が痛い思いをするのを見ていられず、傷を我が身に引き受けてしまうアサトと
    不器用な優しさで彼を守ろうとする「オレ」の絆が
    『幸福な王子』の王子とツバメを思わせる『傷』

    知り合いの誰もいない土地に引っ越し、孤独に死ぬことを夢見る青年に
    亡くなったその部屋の元住人の幽霊と白い子猫が
    締め切ったカーテンを開けて風を入れ、否定してきた世界の一部となって
    生き続けることを決意させる『しあわせは子猫のかたち』

    などなど、乙一さんが用意してくれるちょっと不思議なシチュエーションが
    どれもこれも私好みで、うれしくなってしまいます。

    それにしても、『Calling You』にしろ、『傷』にしろ、たった50頁ほどの短編なのに
    「これを映画にしたい!」と思わせてしまうなんてすごいなぁ。。。
    またまた追いかけたい作家さんが増えました♪

  • 「Calling You」「失はれる物語」「傷」にはじまる、7編+αの短編集です。

    不器用で人と関わることがちょっと苦手な主人公たちが織り成す物語は、なんだか根底に寂しさとか優しさがあるような気がして、読んでいて何か慰められる思いでした。

    いちばんのお気に入りは、「しあわせは子猫のかたち」という短編。
    誰も信じられなかった青年が、引越しと同時に幽霊と白い子猫と不思議な共同生活を送るようになったお話です。
    泣きたくなるような温かい気持ちが胸に広がります。

    乙一さんの本はデビュー作しか読んだことがないんですが、ミステリー作家のイメージが強くて、「マリアの指」のようにミステリー要素が入った短編も読めるかと思えば、「ボクの賢いパンツくん」なんていうネタに全力で走ったかのようなユニークな短編も読めるし、お得に楽しめる1冊だった気がします。

    著者の持つ小説の色合いがなんだか心地よかったので、また読んでみたいところ。

  • 1話から涙腺崩壊。電車で涙拭いながら読んでました。ずるいですよね、泣かせる書き方だもの。何となくしっくりこないところもありますが、涙を誘わずにはいられない、死や痛みの物語。各話読み終えるごとに切なさや温かさを感じて、ぐっと唇をかみしめ余韻に浸る感じだった。まあ、穿った見方をすれば中二病っぽい。空想というか妄想のような世界で、孤独と人との関わりを行ったり来たり揺らいでいる不安定なお話。

    初読みの作家さん。別の作品を読んでみようかどうかは、微妙な感じですけどね、いろいろ見ると白乙一、黒乙一があるようで。白乙一が初めてで良かった。

    短編集ですが、一番のお気に入りは「しあわせは子猫のかたち」。幽霊と言っていいのか殺されてしまった前住人雪村サキとの奇妙な生活。そして、その奇妙な生活を失う喪失感と雪村サキの最後の手紙。辛さと優しさが入り交ざった、でもきっと何とかなる、大丈夫、と思うような読後感に涙ボロボロ。

    以下、それぞれの簡単な感想というかメモ。ネタバレです。
    「Calling You」しょっぱなにやられた。こんな設定ないだろ、と思いながらもドツボにはまってしまい涙腺崩壊。ベタな展開ですけどね。未来は変わらない、変えられないというちょっとタイムトラベル・タイムループ的な要素もありつつ。脳内の想像の電話でしか話したことの無い女性のために命を投げ捨てるその想い。未来の自分が、なりたい、憧れの存在だったというのは、ちょっと出来すぎか?「失はれる物語」植物人間状態になると恐いですよね。意識と生死。愛する人には幸せになってほしいし、縛られて欲しくないけど・・・愛するがゆえにわざと死んだフリというか動かないようにして。そして、その時の妻の反応が、ツライ・・・。果たして何年暗闇で過ごしたのか、考えると恐怖ですが。「傷」救われたような救われなかったような。シホにはちゃんと戻ってきてほしかったんですけどね。「手を握る泥棒の物語」本作の中では一番明るい?そんな簡単に泥棒しようなんて思うものか?なんて思うけど。最後はニヤッとしてしまう。「しあわせは子猫のかたち」個人的に本作では一番。幽霊のような雪村サキとの共同生活、そして最後の手紙。最後の手紙が温かい読後感をもたらしてくれる。村井の友人殺害、そして雪村殺害については、必要だったのだろうけど、あくまでオマケの話かなと思ってます。「ボクの賢いパンツくん」なかなかシュール「さらばだ」のセリフに、〆はトランクス派に成長したというところが面白く。この〆は男子にしかわかるまい。「マリアの指」やられた。まさかどんでん返しをかましてくると思っていなかった。絵面的にはなかなかホラーな感じですが、根底には愛があるというか、けっこう好きな作品です。最後に「失恋・・・?」で締められる。ガラスのような作品とでも言うのかな。鈴木恭介は異質な状況にクラクラしていたと思っていたら、ホルマリンという理由が準備されていて、妙に納得したり。なのに、爪の裏の糸くずの伏線回収は???あと、人を愛さないと思われた鳴海マリアが勉三さんもとい芳和さんを好きになった理由ってなんだったですかね?ちょいちょい謎なところが残ったままですね。「ウソカノ」嘘から出た真でも言おうか?こういう立ち直り方というか自立というか、そんなのも有りかな。がんばれよ、と応援したくなる読後感。安藤夏、アンドーナツ?想像でも現実でも、誰かがそばにいてくれればなんとかやっているいけるよ、なんて思わせてくれる。でも、彼女設定ノートがいかにも中二病っぽく(笑)

    基本的に短編集は好きではないのですが、こんなにいろんなお話がそこそこの分量で詰まっていて、楽しめたというとちょっと違う気もしますが、良い本でした。お奨めしたくなる本です。

    強いて気になったと言えば、犯罪者が逃げちゃって... 続きを読む

  • 表題作の他7作を収めた乙一の短編集です。
    いつもながら、設定の奇抜さと展開を楽しませてくれます。

    頭の中だけに存在する携帯電話でできた人の繋がりを描く「Calling You」
    他人の体の傷を写しとる能力をもつ少年を描く「傷」
    右腕の感覚だけを残して五感を失った男と妻の会話を描く表題作
    被害者と顔を合わせないまま手を握り合う「手を握る泥棒の物語」
    引っ越し先で見えない霊と声のない会話をする「しあわせは仔猫のかたち」
    轢死した美少女の指から彼女の死の謎を解く「マリアの指」

    傷をおった人、死んだ人に漂う儚さが横たわる作品群です。
    そこに、もうその人との将来を望むことができないなかで、
    読み終えるとほのかな救いや安堵が残ります。

    乙一をまた読んでみようと私に思わせる読後感は、
    この救いや安堵に後押しされています。

    といいながら、
    乙一の描くとことん落ちて救われない悲しみも読んでみたい。

  • 大好きな乙一さんですが、その作品の中でもこちらは群を抜いてお気に入りです。短編集ですが、どのお話も心に響きます。
    タイトルでもある「失はれる物語」は、主人公の気持ちになると本当に辛い。最後の決断は涙なしでは読めませんでした。はたして自分がもし同じ立場になったとしたら、と思うと怖くて怖くて。とてもじゃありませんがそのような決断はできないかもしれません。映像化は出来ない、本でしか味わえないお話だなと思いました。
    逆に「しあわせは子猫のかたち」は奇妙でもありなぜかほっこりするお話でこちらも大好きです。

  • 乙一の短編集

    Calling you
    ★★★☆☆
    時間軸の違う相手へ電話できるという能力を持った女の子が主人公。
    よくまとまっているのだが、過去を変えたときの現実の振る舞いかどうなるかというSFなら最初にやっておくべき定義がなく混乱した。
    またプロットが甘いため、いくつも無難に危機を回避できる方法があったはずなのに感動を作りだすためにわざわざリスクのある方法をとる人物たち、という見方ができてしまって興醒めしてしまった。

    失はれる物語
    ★★★★☆
    交通事故で視覚を含む体の自由を奪われ、右腕の肘から先の痛覚しかなくなった男の話。
    全編を通してそら寒い恐怖感が支配する。


    ★★★★☆
    手を触れるだけで他人の外傷を自分に移すことができる少年とその親友の物語。
    キリスト教の教えに「愛とは許すこと」とあるが、それがこのお話のテーマになっている。

  • はじめての乙一。たしかこれ、中一の春に読んだ。まだ文庫本が出てないときで、ハードカバーを買った。持っている乙一の、唯一のハードカバーだったりする。読んだときの感想は、「このひとやばい!」だった。大好きな本屋さんでこれを見つけて読んだ時は、運命だと思った。おもいっきり表紙に惹かれて買ったんだけども。もうそれから乙一の虜で。あの不思議な文章…、やっぱりこのひとやばい。

  • しまった。面白い・・・。表題のとおり、なにかを失う(っている)物語の切ない短編集なんだけど、感覚的に受け入れてしまう。

  • 短編集です。表題の失はれる物語が悪い意味で
    心に残ってます。こんな現実ってあるのかな
    こんな辛いことって……
    自分のことじゃないのに自分の身にふりかかった
    ことのように思えてぶるぶるした。

  •  初めてまともに読んだ乙一さんの作品がこれだったのはちょっと失敗だったかなあ……と反省したくなってしまう本。
     乙一と言われて期待するようなものものしさはなく、それでもやっぱり「人と関わることが苦手」な人が主人公で。
     多分、この描写の生々しさは、乙一さん自信がそうなんじゃないかなって思ってしまいました。
     ここまでこういう主人公の共通点が続くとね。
     ただ、最後のページの初出見ると、結構いろいろな雑誌に書いていたのが最後にまとまってこの形になったのだから、乙一さんとしては無意識だったのかもしれない。こんなに主人公の形が似通ってしまうのは。

     でもやっぱり、作者さんの傾向ってあるよね。
     そして、この人は誰も「裁かない」人なんだなって思いました。
     例えその人が真犯人でも、あっさり逃げることを許しちゃうんだ。
     まあ、逃げたからって何になることもないし、真相が闇の中だからって、乙一さんが書く物語では、誰も楽にならなかったんですけど、やっぱりなんていうか。優しいんだろうな……っていうのが一番の感想かな。

     まあ、それで作者と読者が納得するなら、それが一番いいと思おう。

  • 頭の中で作り出した携帯電話で、北海道に住む男の子と電話をする「Calling You」。

    事故のせいで右腕の肘から先だけの感覚しかない男性の物語「失はれる物語」。

    父親からの暴力のせいで自身も暴力的になってしまう少年と、
    他人の傷に触れただけでその傷を自分の体に引き受ける不思議な能力を持つ少年・アサトとの交流を描いた「傷」。

    自分のデザインした時計を売り出したくて泥棒をしようとする男は、
    部屋に空けた穴から壁越しにいる女性の腕をつかんで会話することになってしまう「手を握る泥棒の話」。

    周囲との交流を拒む青年が引っ越した先で感じたのは、
    先日殺されてしまった前の住人・雪村の霊的な雰囲気だった「しあわせは子猫のかたち」。

    ボクと賢いパンツくんの不思議な交流を描いた「ボクの賢いパンツくん」。

    鈴木恭介は、電車に轢かれた亡くなった鳴海マリアの指を拾ったことから、彼女を殺した犯人を見つける「マリアの指」。

    彼女がいると周囲に嘘をついていたのは自分だけではなく池田君もだったと知り、それから2人で協力してお互いの嘘をカバーしあう「ウソカノ」。



    数年前に初めて読んだ時に受けた衝撃のおかげで内容をほとんど覚えていました。

    読み終わって、どの話も誰かを、何かを失う話だなと思いました。

  • 短編でここまで引き込ませるのはさすがだと思いました。
    表題作の「失はれる物語」は本当に切なさというか苦しさがしばらく尾を引きますが一番好きでした。「傷」は映画KIDSの原作です。
    色んな物を失って、それでも前を向くお話ばかりです。乙一さん、さすがだなーと思いました。
    乙一さんの作品をもっと読みたいと思います。

  • 1calling you
    2失はれる物語
    3傷
    4手を握る泥棒の物語
    5しあわせは子猫のかたち
    6ボクの賢いパンツくん
    7マリアの指
    8ウソカノ

    相変わらずあざとい。
    悲しいものがたりにもっていって切なくさせようとしているのがすごくわかるのだけど、やっぱり悲しいし切ない。
    お気に入りは4と5と7。
    伏線の張り方というかどんでん返しの方法がだんだんとわかってきてしまうのだけど楽しく読めた。
    そしてキャラクターそれぞれに自分を見つけてしまう。

  • 喪失の物語達。人は失くしてからじゃないとその大切さに気が付かない。

  • 綺麗な乙一の短編集
    どれも面白かった
    一番好きなのは「しあわせは子猫のかたち」

  • 初めての乙一さんの作品。「Calling You」から読みやすく、物語に引き込まれます。細かな伏線が回収されたときの爽快感はかなりのもの。また、絶妙な余韻を残す終わり方に想像を掻き立てられました。感動の物語から不思議な話、ミステリーまで幅広く収録されており、最後まで飽きることなく読めます。お気に入りは「手を握る泥棒の物語」「しあわせは子猫のかたち」。

  • 「Calling You」「傷」にデジャブを感じましたが、大学生の時に大学生協でたまたま買った『きみにしか聞こえない』に収録されていたからのよう。時間が空いて、なんとなく買ったのよね。「傷」再読のわりにほとんど印象になかったのですが、主人公とアサトの繋がりにじわり。シホの行動は、分かってしまうなあ。「手を握る泥棒の物語」オチが好き。恋愛?な感じに惹かれました。「しあわせは子猫のかたち」主人公と幽霊と子猫の穏やかな日常とことばはないのに築かれていく信頼関係がツボ。雪村の口調が男らしくてちょっと驚きました。

  • 最近「暗いところで待ち合わせ」で、
    白い方の乙一に再燃してしまって手に取りました。

    乙一の描く目に見えないモノの存在。
    例えば幽霊だったり、特殊な力だったり。
    それがなぜかとても心地良くて、深い愛を感じずにはいられなくて
    引き込まれてしまいます。

    既に多くのレビューでお勧めされていますが、
    「Calling You」と「しあわせは子猫のかたち」がイチオシです。

  • 失っては手に入れて、手に入れては失って。それでも主人公らは、自身で乗り越えていきます。切なさやら寂しさやら、
    だけどどことなく安堵の気持ちやら、いろんな思いがごっちゃになり、一編読み終える度に大きなため息が出ました。「傷」「しあわせは子猫のかたち」が特に印象的でした。

  • 短編集なので色々な話が楽しめる。

    表題作「失われる物語」は、切なすぎる!
    悲しい、切ない、もどかしい、そんな気持ちにさせられる。
    愛する人を思って、自分を押し殺して愛する人の幸せを願う。
    自分が主人公の立場だったとしたら、どんなに愛する人の為でもここまで出来るだろうか?
    深く考えなくても、わかる。出来ない。
    この話のあとに、主人公がどうなるのか想像しても切ない。
    主人公の立場から書かれた話だったけど、妻の気持ちも考えさせられる。
    私が主人公だったら、自分を押し殺し通す事なんて出来ない。
    私が妻の立場だったら、望みが無くても反応し続けて欲しい。
    主人公の人生や、妻を思う気持ちの全てを伝えられていない事、愛するがゆえの切ない話です。

    独身時代に読んでも切ない話だと思って、印象に残りました。
    結婚して、大切な人が出来てから思い出して読み返してみると、耐えられない程に悲しくて切ない話でした。
    読んでて心が折れそうになる、心が疲れる。それくらいの切なさです。

    でも、そんな切ない話をこれだけ綺麗に短くまとめ上げてる乙一の文章はやっぱり好きです。黒乙一にはない、人間味あふれる話でした。

  • 表題作「失はれる物語」を含む、八作品収録の短編集。

    ほぼ初となる“白乙一”作品でしたが、「素晴らしい」の一言に尽きます。

    とにかくどの話も切なくて、美しい。“黒乙一”ばかり読んでいたけれど、個人的には白乙一の方が好みかも。

    特に好きな話は「Calling You」。涙なしでは読めないほど切ないのに、不思議と読後には心地よさが残る。

    基本的にどの話も素晴らしいので、まずは手に取って読んでもらいたいです。今まで乙一を避けていた人にもオススメ♪

    「マリアの指」は、少しだけ過激な表現が含まれているので要注意。

    評価は4.5つ星です☆

  • 乙一さんといえば私は真っ先にZOOとか私の死体を思い描いてしまうけれど、こういう話も好き。一色変わった愛情が心地よい。涙というより雨なイメージです。

    ▽Calling You 
    ドラえもんにありそうな脳内電話器を使えるようになった主人公たちの話。確定した、避けることもできる死に向かって着実に進んでいく静かさが好き。好きな人に生きてほしいと嘘をつくリョウと、結局彼女を守ったシンヤ。最期の電話のシーンは何度読んでも胸につく。

    ▽失はれる物語 
    題材も物語も好き。乙一さんらしい。事故で右腕以外の感覚を失った夫と、指書きで語りかける家族の話。夫の判断は正しかったのかな。妻はどちらのほうが幸せだったんだろう。「ごめんなさい。ありがとう」をどんな気持ちで言ったかは、肉声と筆圧とどちらが伝わりやすかったんだろう。

    ▽傷
    思い出も相まってぼろぼろ泣いてしまった。他人の傷を引き受けることのできる能力を持つアサトとぼくの話。ばかみたいな感想になってしまうけれど、アサトがぼくに傷を移してくれて本当によかったと思う。たとえ他人の痛みがわかるからってそれを代わりに受けようと思うのは駄目だ。絶対に釣り合わないから。

    ▽手を握る泥棒の物語

    ▽しあわせは子猫のかたち
    乙一さんらしい。この世にないものが、まるで存在しているかのように静かに確かに息している感覚がすごく好き。鈴の音や菜園の色色が浮かぶ。強烈な生の風景の中で、幽霊と暮らす不思議さというかなんというか。猫かわいい。

    ▽ボクの賢いパンツくん

    ▽マリアの指
    シュールな存在感を持つマリアが線路上で轢死した。遺書から自殺だと判断された。かき集められた断片からは指が一本欠けていた。
    ホルマリンにみちみちた瓶を振って、中の指をじいっと見つめている少年を思うだけで不思議な気分になる。シックホルム症候群のくだりは結構好き。

    ▽ウソカノ

  • ビザールな味わいの乙一だけど、この作品集には、温かみも感じるのだ。
    ある意味、ハートウォーミングな短編集。
    キモかったり怖かったりするのに、つい先を読んでしまう。

    乙一の小説には難しい言葉は出て来ない。彼には、多くの読書体験があるわけではないらしい。小説家にしては文芸的なボキャブラリーが少ないのだろう、日常で普通に使われる平易な言葉で書かれていることが、かえって生々しさ・リアリティを増幅させるのだ。
    ちょっとした描写にぞっとさせられることが多々ある。

    頭の中で想像したケータイに、ある日呼び出しが入るという不思議な物語、「Calling You」に心を打たれた。

    それにしても次から次によくこんな変なアイデアが浮かんでくるよなあ…

  • 細かい点で突っ込みたい所はあったけれど、世界観はしっかり味わえる。「しあわせは子猫のかたち」が好き。

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失はれる物語 (角川文庫)の作品紹介

目覚めると、私は闇の中にいた。交通事故により全身不随のうえ音も視覚も、五感の全てを奪われていたのだ。残ったのは右腕の皮膚感覚のみ。ピアニストの妻はその腕を鍵盤に見立て、日日の想いを演奏で伝えることを思いつく。それは、永劫の囚人となった私の唯一の救いとなるが…。表題作のほか、「Calling You」「傷」など傑作短篇5作とリリカルな怪作「ボクの賢いパンツくん」、書き下ろし最新作「ウソカノ」の2作を初収録。

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