遠まわりする雛 (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044271046

感想・レビュー・書評

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  • 「古典部シリーズ」第4弾。
    『氷菓』から始まって、前作の『クドリャフカの順番』で文化祭も終了し、“文集”にまつわるお話も一旦、区切りがついたということでしょうか。

    今回は、春までさかのぼり、『氷菓』『愚者のエンドロール』『クドリャフカの順番』の間を縫う出来事や、文化祭終了後のエピソードも拾って、また春までの一年間を、短編で描いています。

    毎回、奉太郎の、人生哲学と言うか、人間心理の観察と言うか分析と言うか…とにかくこのくらいの年齢の知能の高い文系男子にありがちの、回りくどい(笑)モノローグからスタートします。
    中学からの友人である里志との、牽制し合い研鑽しあう、男同士の友情と…そして、苦手→気になる→信頼(?)、いいかんじ?…と変化していく、千反田えるとの日々が描かれています。


    「やるべきことなら手短に」
    春、部活動の勧誘ポスターで掲示板は花盛り。
    正体の分らない海賊版メモを追え!
    近道したつもりが回り道?

    「大罪を犯す」
    いやいや、大罪を犯すところだった。
    自分の大罪は“怠惰”が似合っている、とうそぶく奉太郎。

    「正体見たり」
    一人っ子の千反田は、きょうだいというものに、ほとんど幻想とも言っていい憧れを抱いている。
    温泉合宿で、奉太郎、湯あたりする。

    「心あたりのある者は」
    えっと、瓢箪から駒?
    韜晦する奉太郎。

    「あきましておめでとう」
    ドキドキエピソードと、友人の機転。

    「手作りチョコレート事件」
    キャッチボールで隠し玉?
    トムとジェリーみたいな、里志と摩耶花の関係。

    「遠まわりする雛」
    バレンタインの事件で、人間は心の中でどう考えているのか分らないものだと考察していた奉太郎だが、千反田と出会ってそろそろ一年、彼女の置かれた“旧家の跡継ぎ”としての立場と、濁りのない人格をだんだんと理解していく。

  • アニメの方を見てから原作を読みたいと何度も何度も思っていて、ついにアニメで描かれていた最終話のところまで読み終えることができて嬉しい。他の古典部シリーズもそうだが、文字を追っていると頭の中に奉太郎達が現れて活き活きと動く感じがして楽しかった。
    自分は読書の習慣がないから一度に纏めて読んでしまうことが多いが、これは短編集で自分の読み方にぴったりだった。どの話も短さとは反対にしっかり条件設定された濃いもので、時間を忘れて読んでしまった。キャラクターも、今まで色んなストーリーで描かれたのを読んで隅々まで知ったつもりになっていたから、意外な一面を見せられてひどく刺激になった。もう一度記憶を消して読み直したい。

  • 古典部シリーズ第4弾「遠回りする雛」今回は短編集。
    入学から2年生になるまでの1年間で起きたサブストーリー的な話が詰め込まれている。
    今回は推理云々というよりは、1年間での主要人物の心の動きを主に描いている感じの作品だった。
    奉太郎と千反田、里志と摩耶花、この2人の関係性が良く描かれている。
    特に奉太郎と千反田。最終的には色恋沙汰に発展するとは予想しているものの、これまでのストーリーではあまりそのあたりの心情的なものは描かれていなかったが、今回の作品で少しそのあたりの心情の変化が垣間見えた。
    次からは古典部4人も2年生に。新たな登場人物も現れるようで引き続き楽しんで見てみようと思う。

  • このシリーズ自体何度も読んでいて、遠回りする雛ももう何度目か分からないくらい読んでるけれど、何度読んでもこの物語は私の中にすっと入ってくる。
    自分の心の中の柔らかい部分に何度も触れてきてくれる。

    あとがきにも書いてらっしゃるけど、この作品はゆっくりと時間が進んでいく。
    大きく何かが変わるわけじゃない。
    でも確かに少しずつ他人ではなくなっていく。
    自分のことを知ってほしいと思う相手ができる。
    話したくなかったことを、話さなくてはならなくなる場面もたまには起きる。
    迷惑もかける。
    その一つ一つに青春がぎゅっと詰まっているように思う。

    自分が何かに迷ったとき。
    自分の中の大切なものを探すため、大切に思っていたものをまた見つけるために私はきっとまたこの物語に帰ってくる。

  • 再読。今までの長編をつなぐ短編集。ミステリよりも奉太郎たちの成長や関係性を綿密に描かれていて青春だなぁと。『あきましておめでとう』が好み。

  • 里志の気持ちってなんか分かる。古典部の今後の恋模様、わたし、気になります。

  • 題になっている、『遠まわりする雛』のラスト2ページが気になって仕方ない・・・。

  • 「しかし、どうしたことか。言おうと思っているのに、その実、ぜんぜん言える気がしないのだ。こんなことは初めてだった。そして、初めての経験は、これまで解き得なかった疑問を解く大いなる鍵となる。」(「遠まわりする雛」より)

    古典部たちの1年が7つの短編に分かれて登場。
    物語の中で、関係性が少しずつ、少しずつ変化していくさまが愛おしい。

    当然ながら春では、全くお互いどんな人間なのか手探り状態だったものが、夏、秋、と季節を経るごとに人となりが分かってきてだからこそ気づくこともある。ということが、短編を通してよくわかる。
    その様子が、いじらしくてとてもいいのだ。
    特に、最後の表題作は、にんまりしてしまった。
    とても良かった。

    「やるべきことなら手短に」
    「大罪を犯す」
    「正体見たり」
    「心あたりのある者は」
    「あきましておめでとう」
    「手作りチョコレート事件」
    「遠まわりする雛」

    【9/17読了・初読・市立図書館】

  • 古典部のメンバーの過ごしてきた日々が感じられる短編集。
    短編集とは言っても7つ話が収録されてるいるし、それぞれが「これって短編?」と思うくらいにしっかり充実した話なのでとても満足。
    古典部は今までもほろ苦い終わり方をする話は割とあったのだけど、今作には個人的に後味悪いなぁと思う作品もいくつかあった。
    特に「正体見たり」と「手作りチョコレート事件」は心が穏やかな時に読むのをおすすめします。
    私はカカオ95%のチョコレートをずっと食べてる気持ちになりました。

    あとがきにあったモチーフになってるって作品も読んでみたいなー有名すぎて読んだことのないミステリ作品の多いこと。

  • シリーズを短期間に続けて読んでるので、前作のクドリャフカと比べるとやや一本調子に感じるかな、という気がした。単体の読み物としては十分面白い。
    クドリャフカがあまりに印象的で芸術的で面白すぎた。

    前作まででも感じていたが、ちゃんと道中にヒントが散りばめられたミステリーで、推理の時にハッ!と思い出せる程度に印象に残す演出なのがうまいなーーと思う。プロ。

    あと、前作までの話と比べて今回の短編たちは真意が読み取りづらいというか、ん?何が言いたいんだ?とたまに立ち止まって読み返さないと分からない箇所があった。特にバレンタインの話。

    里志の独白部が、味わい深くてよかった。
    なにがなんでも勝つ!という方法から「面白い方法で勝たなきゃつまらない」と気づいて、じゃあ面白い方法で戦おう!と試したら自分にその素養がまるでないと気づいてしまったから、こんなにごちゃごちゃしたのかなと思う。多分里志が1番自分に失望してそうだし、自分のこと嫌いそう。

    でもこういう、悩みがドラマティックに解決にしない、みたいな話の方が好みなのでやっぱりこのシリーズが物凄く好きだなと思った。

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著者プロフィール

1978年岐阜県生まれ。2001年『氷菓』で「角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞」(ヤングミステリー&ホラー部門)を受賞し、デビュー。11年『折れた竜骨』で「日本推理作家協会賞」(長編及び連作短編集部門)、14年『満願』で「山本周五郎賞」を受賞。21年『黒牢城』で「山田風太郎賞」、22年に「直木賞」を受賞する。23年『可燃物』で、「ミステリが読みたい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「このミステリーがすごい!」でそれぞれ国内部門1位を獲得し、ミステリーランキング三冠を達成する。

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