遠まわりする雛 (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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本棚登録 : 9781
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044271046

作品紹介・あらすじ

省エネをモットーとする折木奉太郎は"古典部"部員・千反田えるの頼みで、地元の祭事「生き雛まつり」へ参加する。十二単をまとった「生き雛」が町を練り歩くという祭りだが、連絡の手違いで開催が危ぶまれる事態に。千反田の機転で祭事は無事に執り行われたが、その「手違い」が気になる彼女は奉太郎とともに真相を推理する-。あざやかな謎と春に揺れる心がまぶしい表題作ほか"古典部"を過ぎゆく1年を描いた全7編。

感想・レビュー・書評

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  • この作品を読んで、

    著作がこのシリーズを、

    そしてこの4人のキャラ達を、
    とても好きなんだろうなって、
    すごく感じました。

    私も同じくらい(恐らく少し下)に、
    このシリーズとキャラが好きです。

  • 〈古典部〉シリーズ第4弾は短編集でした。
    一話目は四月の終わり頃、まだ数回しか言葉を交わしたことがない奉太郎と千反田が、今ではとても懐かしく思えます。
    一年を振り返るような形で7つの話が進んでいきます。
    夏休みに四人揃って古典部の温泉合宿へ出かけたり、正月の伊原の巫女さん姿や千反田の晴れ着姿など、今回は学校以外の場所での四人の様子が見られて楽しかったです。
    高校生の日常の何気ない疑問をミステリー風に仕立てた作風には、若者らしい想像力や思いやりが感じられて、読後がとても爽やかです。

    中三から高校受験を経て高校生になって一年。
    恋愛模様も描かれていて、相手の意外な一面を知ったり、将来のことをすでに考えていたりと、この先の四人の成長が楽しみです。

  • 古典部シリーズの手が届かなくて痒かったところがギュッて書いてあってこれが読みたかったの!ってなるのと同時に、まだまだ距離の詰め方が古典部!って感じで歯痒い気持ちになった。
    いつもみまいなものすごい謎がある訳じゃないけど、どれも小さな謎を軸に古典部ワールド全開になるから楽しく読めた。

  • 〈古典部〉シリーズ第4弾読破しました!
    期末試験期間ということもあり、読書時間が極端に減ってしまって、ペースダウンしてしまっていましたが、やっと夏休みです。たくさんの本に触れる夏休みにしたいです。

    今作は、〈古典部〉の1年を描いた短編集でした。 特に好きだった話は、『心あたりのある者は』と表題の『遠まわりする雛』です。前者は推理のスピード感がすごく好みでした。後者では、最後に奉太郎が千反田さんに言いかけた言葉が個人的にはグッときて、次作への期待がさらに高まりました。

    〈古典部〉シリーズも残すところあと1冊となりました。最後までこの青春ミステリーを楽しみたいです!

  • 短編7作品だが、神山高校古典部のサブストーリーが描かれている。これまでの作品で各キャラクターを必要最低限理解しているものの、この短編集で更に深みが増す。しかし、無くても支障はないと感じる。

    総務委員会未承認の秘密クラブは神山高校の七不思議で、もしかして7作品はここから来ているのか?
    大罪を犯すでは、通常なら間違わないことを数学教師の尾道が間違ったことから始まる。最後に大罪の意味がわかる。それを大罪と言うなら、私も犯している。
    夏休みに温泉旅行に行く古典部一堂、伊原の親戚が経営する温泉宿の本館7号室、おや、ここでも7が出て来た。ますます7絡みが疑わしい。ちょっとホラーか?

    校内放送で生徒の呼び出しがある。なぜ教師は呼び出したのか?生徒は何をやらかしたのか?謎を千反田と折木が解いていく。
    元旦、神社の社に千反田と折木が閉じ込められる。2人の距離は縮まるのだろうか?
    バレンタインチョコに纏わる伊原と福部の話し、こちらも2人の距離は縮まるのだろうか?

    表題となった「遠回りする雛」、雛は誰のことだろうか?なぜ遠回りなのか?物理的な遠回りなのか、精神的な遠回りなのか、私の仮説は楽しめる結末を描かれているだろうか?

    高校1年間を時系列で古典部の4人が絆を強くしていく様子が上手く描かれている。そして、私の稚拙な予想(勘違い?)の「7」に関係するものは如何に。

  • 古典部の1年を描いた短編集。
    男の子ってずるいよね。
    奉太郎にしても里志にしても、プライドみたいな哲学みたいなものが厚い壁となって自分の前に立ちはだかってる。そして、それを乗り越えるべきではないと思ってる。これが青春なのか。
    えるや摩耶花のほうが先に大人になるんだよ、きっと。

  • 「遠まわりする雛」(米澤穂信)を読んだ。
短篇集。
    
あとがきにあるとおり、高校一年生の心の機微を時間の移り変わりと共に綺麗に切り取っている。

    読んでいてついクラスメイトみたいに『お前ら付き合ってんの?』みたいな軽口を飛ばしたくなる。
    
「心あたりのある者は」は確かにハリイ ケメルマンの「九マイルは遠すぎる」だね。
なつかしい。
読んだのはもう40年以上前だよな。
    
どれも大事件ではないが当事者にしてみればなかなか厄介な問題なんだから。
    
あー面白かった!

  • 古典部シリーズ4作目。
    7つからなる短編集。
    1年間にあった今までの事件以外が描かれています。
    なんだかんだ折木はいろいろなことをやっている感じ。
    みんあなどうなっていくのでしょう。

  • 古典部シリーズ第4段。
    基本的には今までのような日常系のミステリなのでが、これまで以上に青春のほろ苦さが描かれているような気がした。
    主人公を始め、登場人物たちは皆、自分の立ち位置をすでに決めているように見える。
    省エネ主義のホータローや気楽さを求める福部里志。
    でも彼らを含めた高校生は、これから先、多くの出来事に遭遇し、良くも悪くも変化していく。
    それが分かるのは大人になってからで、学生のうちはまだ気づかない。
    ただ、それこそが高校時代の楽しさでもある。
    自分もそうだった。
    どこかほろ苦い青春時代を思い出させてくれるような、そんな小説だった。

  • 古典部四作目。奉太郎とえる、里志と摩耶花の関係性が季節の流れとともに変化をみせる短編集。恋愛の話が好きな人は楽しめる。私はなんとなく全員の思考回路に現実感がなく、共感が薄かった印象。いつもの日常の謎なんだけど、ミステリとしてあまり唸るエピソードはなし。

  • 【再読】何回読み返しただろうか。このシリーズ、生産性のなさそうな会話が大好きなんだよなぁ。淡々としてるのに面白い。あと、それぞれの章の名前も好き。"あきましておめでとう"は、そういうことか!という大きな驚きじゃないけど、ちょっと笑ってしまう、好き。

  • 「古典部シリーズ」第4弾。
    『氷菓』から始まって、前作の『クドリャフカの順番』で文化祭も終了し、“文集”にまつわるお話も一旦、区切りがついたということでしょうか。

    今回は、春までさかのぼり、『氷菓』『愚者のエンドロール』『クドリャフカの順番』の間を縫う出来事や、文化祭終了後のエピソードも拾って、また春までの一年間を、短編で描いています。

    毎回、奉太郎の、人生哲学と言うか、人間心理の観察と言うか分析と言うか…とにかくこのくらいの年齢の知能の高い文系男子にありがちの、回りくどい(笑)モノローグからスタートします。
    中学からの友人である里志との、牽制し合い研鑽しあう、男同士の友情と…そして、苦手→気になる→信頼(?)、いいかんじ?…と変化していく、千反田えるとの日々が描かれています。


    「やるべきことなら手短に」
    春、部活動の勧誘ポスターで掲示板は花盛り。
    正体の分らない海賊版メモを追え!
    近道したつもりが回り道?

    「大罪を犯す」
    いやいや、大罪を犯すところだった。
    自分の大罪は“怠惰”が似合っている、とうそぶく奉太郎。

    「正体見たり」
    一人っ子の千反田は、きょうだいというものに、ほとんど幻想とも言っていい憧れを抱いている。
    温泉合宿で、奉太郎、湯あたりする。

    「心あたりのある者は」
    えっと、瓢箪から駒?
    韜晦する奉太郎。

    「あきましておめでとう」
    ドキドキエピソードと、友人の機転。

    「手作りチョコレート事件」
    キャッチボールで隠し玉?
    トムとジェリーみたいな、里志と摩耶花の関係。

    「遠まわりする雛」
    バレンタインの事件で、人間は心の中でどう考えているのか分らないものだと考察していた奉太郎だが、千反田と出会ってそろそろ一年、彼女の置かれた“旧家の跡継ぎ”としての立場と、濁りのない人格をだんだんと理解していく。

  • アニメの方を見てから原作を読みたいと何度も何度も思っていて、ついにアニメで描かれていた最終話のところまで読み終えることができて嬉しい。他の古典部シリーズもそうだが、文字を追っていると頭の中に奉太郎達が現れて活き活きと動く感じがして楽しかった。
    自分は読書の習慣がないから一度に纏めて読んでしまうことが多いが、これは短編集で自分の読み方にぴったりだった。どの話も短さとは反対にしっかり条件設定された濃いもので、時間を忘れて読んでしまった。キャラクターも、今まで色んなストーリーで描かれたのを読んで隅々まで知ったつもりになっていたから、意外な一面を見せられてひどく刺激になった。もう一度記憶を消して読み直したい。

  • 古典部シリーズ第4弾「遠回りする雛」今回は短編集。
    入学から2年生になるまでの1年間で起きたサブストーリー的な話が詰め込まれている。
    今回は推理云々というよりは、1年間での主要人物の心の動きを主に描いている感じの作品だった。
    奉太郎と千反田、里志と摩耶花、この2人の関係性が良く描かれている。
    特に奉太郎と千反田。最終的には色恋沙汰に発展するとは予想しているものの、これまでのストーリーではあまりそのあたりの心情的なものは描かれていなかったが、今回の作品で少しそのあたりの心情の変化が垣間見えた。
    次からは古典部4人も2年生に。新たな登場人物も現れるようで引き続き楽しんで見てみようと思う。

  • このシリーズ自体何度も読んでいて、遠回りする雛ももう何度目か分からないくらい読んでるけれど、何度読んでもこの物語は私の中にすっと入ってくる。
    自分の心の中の柔らかい部分に何度も触れてきてくれる。

    あとがきにも書いてらっしゃるけど、この作品はゆっくりと時間が進んでいく。
    大きく何かが変わるわけじゃない。
    でも確かに少しずつ他人ではなくなっていく。
    自分のことを知ってほしいと思う相手ができる。
    話したくなかったことを、話さなくてはならなくなる場面もたまには起きる。
    迷惑もかける。
    その一つ一つに青春がぎゅっと詰まっているように思う。

    自分が何かに迷ったとき。
    自分の中の大切なものを探すため、大切に思っていたものをまた見つけるために私はきっとまたこの物語に帰ってくる。

  • 再読。今までの長編をつなぐ短編集。ミステリよりも奉太郎たちの成長や関係性を綿密に描かれていて青春だなぁと。『あきましておめでとう』が好み。

  • 里志の気持ちってなんか分かる。古典部の今後の恋模様、わたし、気になります。

  • 題になっている、『遠まわりする雛』のラスト2ページが気になって仕方ない・・・。

  • 「しかし、どうしたことか。言おうと思っているのに、その実、ぜんぜん言える気がしないのだ。こんなことは初めてだった。そして、初めての経験は、これまで解き得なかった疑問を解く大いなる鍵となる。」(「遠まわりする雛」より)

    古典部たちの1年が7つの短編に分かれて登場。
    物語の中で、関係性が少しずつ、少しずつ変化していくさまが愛おしい。

    当然ながら春では、全くお互いどんな人間なのか手探り状態だったものが、夏、秋、と季節を経るごとに人となりが分かってきてだからこそ気づくこともある。ということが、短編を通してよくわかる。
    その様子が、いじらしくてとてもいいのだ。
    特に、最後の表題作は、にんまりしてしまった。
    とても良かった。

    「やるべきことなら手短に」
    「大罪を犯す」
    「正体見たり」
    「心あたりのある者は」
    「あきましておめでとう」
    「手作りチョコレート事件」
    「遠まわりする雛」

    【9/17読了・初読・市立図書館】

  • 古典部のメンバーの過ごしてきた日々が感じられる短編集。
    短編集とは言っても7つ話が収録されてるいるし、それぞれが「これって短編?」と思うくらいにしっかり充実した話なのでとても満足。
    古典部は今までもほろ苦い終わり方をする話は割とあったのだけど、今作には個人的に後味悪いなぁと思う作品もいくつかあった。
    特に「正体見たり」と「手作りチョコレート事件」は心が穏やかな時に読むのをおすすめします。
    私はカカオ95%のチョコレートをずっと食べてる気持ちになりました。

    あとがきにあったモチーフになってるって作品も読んでみたいなー有名すぎて読んだことのないミステリ作品の多いこと。

  • シリーズを短期間に続けて読んでるので、前作のクドリャフカと比べるとやや一本調子に感じるかな、という気がした。単体の読み物としては十分面白い。
    クドリャフカがあまりに印象的で芸術的で面白すぎた。

    前作まででも感じていたが、ちゃんと道中にヒントが散りばめられたミステリーで、推理の時にハッ!と思い出せる程度に印象に残す演出なのがうまいなーーと思う。プロ。

    あと、前作までの話と比べて今回の短編たちは真意が読み取りづらいというか、ん?何が言いたいんだ?とたまに立ち止まって読み返さないと分からない箇所があった。特にバレンタインの話。

    里志の独白部が、味わい深くてよかった。
    なにがなんでも勝つ!という方法から「面白い方法で勝たなきゃつまらない」と気づいて、じゃあ面白い方法で戦おう!と試したら自分にその素養がまるでないと気づいてしまったから、こんなにごちゃごちゃしたのかなと思う。多分里志が1番自分に失望してそうだし、自分のこと嫌いそう。

    でもこういう、悩みがドラマティックに解決にしない、みたいな話の方が好みなのでやっぱりこのシリーズが物凄く好きだなと思った。

  • なんとなしで図書館で借りて読みました。
    途中で「これシリーズ物じゃん」とやっと気づくほど前知識なしの状態でしたが、スルスルっと内容が入ってきて普通に楽しめました。
    ホータローの心境変化する描写が好きです。

  • 古典部シリーズ4作目。
    短編集でした。

    やらなくていいことなら、やらない。
    やらなければいけないことなら手短に。

    ホータロー達のやり取りはいつ読んでも興味深いですねぇ。

    今回は里志の事がとても気になりました。

  • 古典部シリーズ第四弾。
    短編七編。
    特に「あきましておめでとう」が面白かったです。
    エルちゃんとホータローくん、いい雰囲気。
    エルちゃんは天然なので真意は分かりかねますが、ホータローくんは、ね。
    古典部の活動は未だ謎だけど、楽しそうな部活です。

  • 里志とホータローの心情も少しだけ垣間見ることができて青春。ただ、里志の心の内は私には難しく、真意が掴めず・・このあたりは、また日をわ改めて読み返してみよう。第三弾までより仲間内での謎解きなので、日頃からそんなに謎解きしているなんて、そういう性分なんだな・・

    どれも題名がねじれてなくて、読みながらスンッと入って来るので好きです。

    ホータローは、大人との社交経験無いと言っていたけど、あんな立派に挨拶できれば充分よっ。

  • 古典部シリーズ。4人とも頭がよく、表現力豊かで、感性が鋭い。読んでいて、少し嫌になるほどに(笑)。
    たぶん、古典部シリーズを頭から順番にちゃんと読んだほうがより楽しめるんだろうな。
    話を追うごとに、千反田さんがますます可愛らしく、魅力的な女性だな…ということが際立ってくる。それは、折木くんと千反田さんの距離が縮まってくる、ということに比例しているんだろうな。

  • 「心あたりのある者は」が大変好きです。
    それにしても里志面倒くさいよ里志。
    そして理屈が良く分からない。こだわらないことにこだわってる時点で破綻しているような気がするけどどうなのかしら。
    折木さんと千反田さんは遠回りしすぎて一足飛びになってる。恋愛どうこうの前にそれ口に出してたらプロポーズじゃん。

  •  前三作を踏まえると、まさかここまで来るとは思わなかった短編集。
    表題作「遠回りする雛」の春めきっぷりが異常で、つまり、388ページの「ただ俺は、ひたすらに、これはしまった、これは良くないぞと思っていたのだ」が決め手で、終盤がもうドキドキして、もう春か!

  • 古典部シリーズ第4弾。古典部を過ぎゆく一年を描いた短編7作。出会ったばかりのぎこちない距離から一学期、夏休み、二学期、冬休み、三学期、春休みとそれぞれの人間関係、価値観、考え方が変化していく本作が古典部シリーズの中で一番好き。
    特に印象深いのは「手作りチョコレート事件」。里志が伊原のチョコレートを受け取ろうとしなかった理由も、チョコレートをバッキリ割った理由も分からない。ただ「こだわらないことにこだわる」ことにした里志は、自分のポリシーに雁字搦めになって、こうした行動に出るしか無くなってしまった。もう少し単純な思考でいいのでは無いだろうかとも思うけど、それが逆に思春期の曰く「難しいお年頃」が出てて良い。

    私が最初にこの本を読んだ高校生の頃は、この日々は際限なく続いて仕舞えばラクなぁと思っていた(今も学生だからあまり変わっていないかも?)けど、そうか、いつかはこの日々も終わるのか…。彼らと共に成長してきた私も距離感も価値観も変化して、それを巷では「大人になる」というのだろう。激変することもあれば緩やかに変化することもある。私はまだ緩やかで「遠回り」な変化を望みたいな…。ダメかしら…?

  • 半年ぶりくらいにこのシリーズの続きを読んで、古典部シリーズを読んだあとの感覚が、自然と戻ってきた。つまり、読み始めは、前作の方が面白いと思うのに、気づいたらどっぷりハマっている。
    特に今回は、いつもと形式が違った。一冊通してミステリーを解決していくのに対して、短い章でテンポよく、時系列としては1年間を通したものだった。
    奉太郎の性格といえど1年間を通して少しずつ距離感が近くなっていく感覚があった。
    作者のあとがきを読むと少し驚いた。

    以下引用
    本書の主役には時間を据えています。登場人物たちが出会ったばかりのぎこちない頃を別枠に取り、一学期・夏休み・二学期・冬休み・三学期・春休みにそれぞれ話を振り分けています。心変わりの理由を詳細に書いてしまえば、これはあとがきではなく自作解説になってしまいます。端的に言えば時間と和解できたということなのでしょう。一年を共に過ごせば登場人物たちの距離感は同じではいられません。いまの私は、その変化を描けていることを願っています。
    もっとも、彼らの距離感の変化は、激変というにはちょっと緩やかではあります。それゆえに本書の題名は『遠まわりする雛』となっています。


    内容については、里志がマヤカのチョコを砕いたことははじめは酷いと感じた。しかし、最後の最後に奉太郎を通してその気持ちが掴めた。彼らもまだ高校生で、気持ちを言語化できないことの描写が印象的だった。ましてや大人ですらそれは難しいと思う。
    「俺はこう言おうとしたのだ。「ところでお前が諦めた経営的戦略眼についてだが、俺が修めるというのはどうだろう?」。  しかし、どうしたことか。言おうと思っているのに、その実、ぜんぜん言える気がしないのだ。  こんなことは初めてだった。そして、初めての経験は、これまで解き得なかった疑問を解く大いなる鍵となる。  俺は知った。  福部里志が、どうして伊原のチョコレートを砕いたのか。  それは要するに、こういうことなのだ。」

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著者プロフィール

1978年岐阜県生まれ。2001年『氷菓』で「角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞」(ヤングミステリー&ホラー部門)を受賞し、デビュー。11年『折れた竜骨』で「日本推理作家協会賞」(長編及び連作短編集部門)、14年『満願』で「山本周五郎賞」を受賞。21年『黒牢城』で「山田風太郎賞」、22年に「直木賞」を受賞する。23年『可燃物』で、「ミステリが読みたい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「このミステリーがすごい!」でそれぞれ国内部門1位を獲得し、ミステリーランキング三冠を達成する。

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