砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない A Lollypop or A Bullet (角川文庫)

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著者 : 桜庭一樹
  • 角川グループパブリッシング (2009年2月25日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (201ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044281045

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砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない A Lollypop or A Bullet (角川文庫)の感想・レビュー・書評

  • 「ぼく、おとうさんのことすごく好きなんだ。…好きって絶望だよね」頭のおかしい美少女「海野藻屑」と、リアリストの「あたし」の物語。ぺらぺらの本なんだけど、死にたいくらい衝撃的でした。なんだ、これは!冒頭からすでに誰が死んでしまうか分かってるんだけど、祈ってしまう。悲しいし切ない本です。読んだあとに何かを学べるかと言ったら何もないです(えー!)。誤解を恐れずに言おうと思う。自分を慕う子どもを殺す親は、絶対に許されない。どんな事情があっても、これがまだ子どもを持ったことがない小娘の戯れ言だとしても、子育てにどんな苦労があったとしても、許されない。わたしは親になったことはないけど子どもだったことはある。誰にでもある。是非読んで欲しいです。

  • 生き残れた者だけが大人になれるということに、ずっしりと重さを感じました。
    始めは、藻屑の突拍子なキャラクターに惑わされたけれど、多感な二人の少女が、子供時代を生き抜こうとする姿に胸が熱くなりました。
    藻屑は生きる気があったのかと、担任は言ったけれど、少なくとも、最後になぎさに見せたあの笑顔は、信じていいものだと思います。
    藻屑もなぎさと一緒に幸せになって欲しかった。

  • すごい繊細。すごい切ない。
    なんて脆くて儚いのだろう。
    でも、中学生の刹那的な無敵感がたまんない。

    のっけで、海野藻屑は父親に虐待されていてバラバラ殺人…という
    最悪の結末が明かされているのだけど
    そこへ至るまでの、少女二人が実弾と砂糖菓子の弾丸の応酬が
    命を削るようで辛く痛々しい。
    人魚としてふるまう少女の心に深くついた傷を思うと、
    そうせざるを得ない現実にこちらが打ちのめされそうです。

    藻屑は殺され、なぎさは実弾を手にできない。
    少女ってのはなんて無力なんだろう。
    友彦の存在が支えになるなぁ。

  • この話のタイトルは「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」ですが、私はこの話を読んでいる間、海野藻屑の砂糖菓子の弾丸が世界を撃ちぬくことを願っていました。どうしようもなく悲しい結末が知らされているからこそ、願わずにはいられない。とても不思議で、なのに現実的で、美しく甘い悲しい話だと思います。桜庭さんの小説はどれも素敵な雰囲気を持っていますが、私はこの作品の雰囲気に一番魅了されてしまいました。大好きです。

  • 寂れた鳥取の田舎町。


    芸能人を父に持つ
    13歳の美少女転校生・
    海野藻屑(うみのもくず)の
    バラバラ死体が発見されたニュース。


    物語は
    事件が起きる
    1ヶ月前にさかのぼる。


    主人公は
    中学2年で13歳の
    山田なぎさ。

    父を早くに亡くし、
    美貌の兄は引きこもりに。

    貧困から抜け出すために、
    中卒で自衛隊入隊を考える
    現実的な少女。


    自分を人魚の姫だと言い嘘ばかりつく
    お金持ちの転校生・海野藻屑を
    なぎさは本能的に避けながらも
    いつしか友情のようなものが生まれて、
    友達になる2人。




    なぜ藻屑は
    無惨な死体となって
    殺されねばならなかったのか?


    犯人は誰なのか?



    読み進めるうちに
    海野藻屑の
    隠された「真実」を知らされるだけに、
    不幸な結末を辿る過程が
    読んでいて本当にツラいです(>_<)



    貧しさから脱出するため、
    なぎさが必要とするのは実弾。


    ここで言う実弾とは、
    生活を支えるお金になる
    実体のある力のこと。


    なぎさから見れば
    藻屑が語る
    嘘で塗り固めた物語は、
    空想的な砂糖菓子の弾丸。


    いくら語ったところで
    金にならない
    役立たずなもの。


    しかし徐々に藻屑の境遇や
    彼女のおかれた状況が分かるにつれて、

    嘘つきの美少女・藻屑は、
    自分の運命と戦うために
    威力のまるでない
    砂糖菓子の弾丸を
    『撃ち続けるしかなかった』ことが
    明らかになります…(≧∇≦)



    自分も施設で育ち
    16歳までは
    金や力がすべてだと考えて生きてきたので
    なぎさの苦悩は痛いほど解る。


    だけど空想したり
    妄想することは
    決して砂糖菓子の弾丸なんかじゃない。

    戯言やファンタジーを信じる勇気を持つことこそが
    悪意の拡散を抑止し、

    諦めの鎖を絶ち切る
    武器になるんだと
    生きる中で
    自分は学びました。




    思春期にこの小説と出会えた人が羨ましい。

    自分の核となり
    その後の生き方を左右していたと思うから(^_^)



    役に立たない弾丸を撃ちまくっていたのは
    藻屑だけじゃない。


    誰の胸の中にも
    砂糖菓子のテロリストは
    眠っている。



    傷だらけの思春期を送った
    すべてのティーンエイジャーだった人へ。

  • 私の男に続いて桜庭さんの2冊目。海野藻屑の存在感がすごい。異常なアンバランスの連続で何が真っ当で、何が美しさなのか分からなくなる。健全じゃないのに純粋な、またまたインパクトのある1冊だった。

  • 同じように「実弾」を持たない13歳の山田と藻屑。
    片方は生き延び、片方は解体されて死んだ。
    二人の差異は、砂糖菓子の弾丸に頼っているかどうかという点。
    だけどこのほかに二人の違いをもう一つ上げるとすれば、藻屑より山田の方がより大人だったという点です。

    私は日ごろから「大人は何でも知っているわけじゃないし、子供より優れているというわけではない」ということを理解したとき、子供は大人に近づくんだと思っています。
    主人公の山田は、父を亡くし傾いて行く生活を目の当たりにして、大人に頼るんじゃなくて自分が何とかしようと思った=早く実弾を手に入れようとしていた。
    山田はより大人に近かったから助かり、藻屑は子供のまま、砂糖菓子の武器にこだわったから死んだんだろうなぁと思いました。

    山田は大人に近かったのと同時に、頼る者は自分より年上の人しかいないというのも解ってた。だから最後、兄と一緒に山に登った。
    兄が膠着状態(山田の言う「神」状態)から抜け出したのは、妹を守りたかったことを強く思いだしたから……。
    ロリポップを握り締めたままの子供でもいい。年上に頼れば、まだ道は開けたかもしれない。
    ストックホルム症候群の話が話中に出ていましたが、果たしてそれだけかな。
    私は藻屑と藻屑父の間に恋愛関係(と藻屑が錯覚するような)を彷彿とさせる関係が結ばれていたんじゃないか…みたいなことまで考えちゃいました。

  • ネットで不特定の誰かに薦めたい作品ではあるが、リアルで知り合いに薦めたくはない作品だと思いました。

  • 読み終わった後、苦しくなった。まだ未成年の自分がいくら主張したところで、それはヘンテコな武器でヘンテコな弾丸をぽこぽこ打っているだけのものでしかないのだ。子供は親がいないとどうすることもできない。無力だ。

  • 本文の一ページ目がエピローグになっていて、結末がすべてわかるんだけど、後半からあのエピローグがうそだと良いなあと思わずにはいられなかった。
    『私の男』もそうだったけど、この人の書くものは「父親との血の繋がり」というのが大きなテーマになっていると思う。
    「好きって絶望だよね」という言葉で自らへの暴力さえも肯定した娘の愛情は、ほんとうにストックホルム症候群のまちがった感情なのか。
    その心にあるものがほんものかにせものかなんて、だれにも決められない。
    でも生きるためにその判断が必要だったのに、藻屑は死んでしまった。
    「生き残った子だけが、大人になる。」という当たり前の真実が、ぐっと胸にのしかかる。
    私たちは、生き残ったから今を生きられるのだ。

  • うーむ、イタイ小説だった。でも、内容の割に読後感が悪くなかったです。解説にあった浄化(カタルシス)ってやつなのかな。表現が何かと綺麗なせいか?
    最後になぎさがありきたりな生活を手に入れたのは、大人になれた、大人になってしまったという一つの救いなのかも。

    正直なところ、藻屑もなぎさも花名島も兄の友彦も誰も感情的に理解できないというかシンパシーを感じることはなかった。自分が13歳の時にこんな繊細な感覚はなかったし。だけども、小説に入り込んでしまった、読者という傍観者としてだけど。

    担任の先生はどうしようもない嫌な奴だと思っていたのですが、最後の悔しさの告白には胸を打たれた。折角保護しようとしていたのに・・・悔しさがこちらにも移り涙が。先生もサバイバーだったのかも、というのは〆として良かった気がします。

    初めに新聞記事による結果事実があり、そこから、結末までの1か月間を追っていく体裁です。倒置法的な構成とでも言いましょうか。読み進めながら、もしかしたら何かどんでん返しでも?と思わなくもないけど、予想通りというべきか予定調和というべきか、どんでん返しもミステリーもビックリもなく、哀しい結末に向かうだけ。

    物語の舞台は鳥取の片田舎。鳥取市内に3年ほど居た身としては、変なところで親近感を感じたりして。でも境港に山はないから、まあ、架空設定ですわね。

    障碍の話も結構ドキリとした。虐待により股関節が開かずと左耳が聞こえない。なぎさは後になって知る。パッと見わからない障碍だと、本人がそれを申告しないと周囲の人はわからんもんね。後からその事実を知り、それまでの行動に合点が行った時、ショックが大きいよね。有川浩さんの「レインツリーの国」が思い出されました。

    生き残った子供だけが大人になっていく・・・大人になる物語、という意味では化物語シリーズと被るような気もしなくはない。特に同年代の撫子の話、囮物語なんてね。

    砂糖菓子の弾丸。最初に金平糖をイメージしてしまったから、なかなか離れられないんだけど、でも小説の中でいう砂糖菓子の弾丸はもっとお砂糖グレーズベッタリなケーキっぽいのかな。当ってもべっちゃりつぶれてしまう甘苦い砂糖菓子。
    『もうずっと、藻屑は砂糖菓子の弾丸を、あたしは実弾を、心許ない、威力の少ない銃に詰めてぽこぽこ打ち続けているけれど、まったくなんにも倒せそうにない。』うう、子供も辛いな、なんて思うこと自体がおこがましい大人なのかな。

    実弾と砂糖菓子の弾丸。リアリティと虚構。綱渡りのような生き方とも言えないような、ある一時の話。切ない話。

    桜庭さんは初読み。あとがきではこの本を短期間で書き上げたとありましたが、すげーなの一言。

  • 桜庭一樹さんの描く少女って、何でこんなに惹かれるのでしょうか。少女たちが魅力的で、だからこそ、とても苦しくなりました。

    語り手山田なぎさと転校生海野藻屑は、二人とも、中学二年生の少女です。そして二人とも、“不幸”でした。山田なぎさの不幸は“海野藻屑とは比較にならないぐらい平凡でありきたりでよくある貧窮”ですが、二人には“一つの共通点”がありました。それは、“十三歳ではどこにも行けない”、“自分で運命を切り開く力は”(p136)ないことです。

    “子供はみんな兵士で、この世は生き残りゲームで”、“藻屑は砂糖菓子の弾丸を、”なぎさは“実弾を、心許ない、威力の少ない銃に詰めてぽこぽこ撃ち続けているけれど、まったくなんにも倒せそうにない”(p139)のです。

    “生き残った子だけが、大人になる。(p188)”そんな当たり前のことを、思い知らされました。

  • 読書好きでちょっと狂気的な趣味を持つ子が当時一番好きだった本。
    おもしろくってこわかった。
    こういう形もあるんだと、衝撃だったと思う、中学三年。
    ただ、あの子の書いた書評というか紹介はグッドクオリティだった。と思う

  • 何年か振りの再読。
    海野藻屑という名の、それだけで親からの扱いが想像できる中2の少女が、バラバラの遺体で発見された新聞記事で、物語は始まる。藻屑はなぜ殺されたのか、主人公の目を通して語られていく。

    主人公は、彼女のクラスメートで唯一の友人でもある少女。引きこもりの兄を抱えた貧しい母子家庭に育ち、中卒後はお金を稼ぐために自衛官になることを決意し、あえて心に蓋をして日々を過ごしている。
    厳しい現実と向き合っている彼女が切望しているのは、実弾(お金)だ。

    一方の藻屑は、家では父親からの深刻な暴力にさらされる日々。おそらく、歪んだ愛情に心身ともにがんじからめにされていたのだと想像される。たかが13歳、無力で太刀打ちできるはずもない。
    学校で繰り返す嘘と奇行は、砂糖菓子の弾丸であり、藻屑の悲鳴であり、SOSでもある。未来には徹底的な破滅しかないことがわかってはいるけれど、何とか助かってほしいと願わずにはいられなかった。

    作者は、この無残でやりきれないストーリーを、さらさらとした文章で進めていく。最初はラノベとして発表されたそうだが、今では高い評価を受けて代表作のひとつとなっている。粗削りだけれど、キャラクターも秀逸で、ぐさぐさと胸をえぐる強烈な印象を残す作品だ。

  • 奇妙だと思った藻屑は綺麗な人間だった。

    私は、藻屑は綺麗な人間だと思った。綺麗で気高く………だけど、愛に飢えてるどこにでもいる女の子で人間だった。

    虐待を受けた子供の古典的な姿が書かれていたと思う。作者さんはとても上手に書いてくれたと思う。


    イメージは海。夜の海岸。紺色のような黒のような少し青い夜の海の水。雨。厚い灰色の雲。雨に濡れそぼった森。読んでて頭の中にパッと浮かんだ。

    安心ってなんだろう?藻屑となぎさの疑問は私も一緒になんだろう?と考えた。
    安心ってなんだろう?その通りだと思う。私も安心がわからなかった。藻屑もなぎさも無意識に安心を探しているのだろうと思った。

    美しい藻屑像は簡単に想像できた。だけど、あんまりにも呆気ない終わり方だった。友彦も何かに苦しんでいた事が嘔吐により暴露された。泣きじゃくるなぎさが本当の十三歳らしさが現れた気がした。この本に出会えて良かった。勧めてくれた先輩に感謝。

  • 初読みです。
    率直に言って、合わない。背景にあるのが虐待だから、
    そういうのが好きじゃないというのもある。
    ただ、言葉の遣い方が面白い。
    話のテンポがいいのか何なのか、眉間に皺を寄せながらも、
    スイスイ読めてしまう。困った本だ。
    初っ端に新聞記事として結末が書かれている。
    そこに向かって話が進んでいくから、その過程で
    あぁ~とかウワッとか思うわけ。
    しかも誰もが経験している痛過ぎる思春期。
    抱えているのはジレンマではなく理不尽さ。
    なんだか色んなものが重なり過ぎていて、疲れた。

  • この小説は、思春期特有の暗さ、切なさ、悲しさ、繊細さ、を感じた。
    主人公は、海辺の町に住む引きこもりの兄のために
    実弾を求める中学生の山田なぎさ。
    なぎさのクラスに転校してきた砂糖菓子の弾丸を打ち続ける、海野藻屑。
    美人で自分が人魚だと嘘をつく藻屑の抱えている、暗い部分を知り
    なぎさは思い悩む。

    つらい現実から逃れるために人魚だと嘘をつく藻屑を思うと
    「好きって絶望だよね」 この一言がとても残ります。
    中学生の時くらいが一番砂糖菓子の弾丸を打ち続け、
    戦い抜いぬき、生き抜いた人間が大人になるのだと思った。

    目次

    第一章 砂糖菓子の弾丸とは、なかよくできない

    第二章 砂糖菓子の弾丸と、ふたりぼっち

    第三章 砂糖菓子の弾丸とは、もうあえない

    単行本版あとがき

    解説 辻原登

  • 冒頭部分で、悲しい結末は想像できた。
    実際、読み飛ばしたい箇所もあるのである。

    しかし 
    物語が、残酷で残虐で暗い重い方向へすすんでいっても
    不思議と 読むのをやめよう とは思わなかった。

    子どもが大人になるまでの時間は結構長い。

    見守ってくれる誰かの愛を感じて、
    安心して、子どもたちが成長できますように・・・。

  • 好きって絶望だよね
    人魚は卵をぷちぷち生む
    ロリポップでは十三歳では世界と戦えない。お昼前に読む小説ではないが、惹きつけられて離さない青春文学作品です。

  • 題名と表紙に惹かれて。砂糖菓子の弾丸をもった少女とそれを嫌う少女。中学生の不安定な感情が、中途半端な仕掛けや嘘が、ありのまま伝わってきて、一気に読み進めました。推理するようなミステリーではないのですが、結末がわかっているからこその、どうしようもない、変わることのない結末へどのようにして物語が展開されるのか、ページをめくる指がすこし重くなるような猟奇さは、題名からは想像もつきませんでした。砂糖菓子(ロリポップ)じゃ戦えない。サバサバしてどこか人生に諦めている主人公に好感がもてました。貴族万歳。

  • 冒頭にすべての結末が掲げられた状態で語られる、二人の少女の一ヶ月は、どうしようもない人生の未来に対して抵抗することすら諦めた藻屑の毎日と同じで、
    子どもの頃に読んだ人魚姫の童話は、どの本で読んでも悲しい結末だったことを思い出したりして、
    何とかして彼女たちは幸福にならないかなと、読者である僕が結局、砂糖菓子の弾丸を撃ちつづける読書だった。

  • その後の桜庭一樹の要素があちらこちらに。
    父不在の世界で少年少女がどのように生きて(歪みながら生きて)いくかを、多くの作品で考察している。
    今回は、砂糖菓子の弾丸では、子供は世界と戦えない、という結論。
    藻屑の奇矯さを、語り手の強さがやがては包み込む予感を見せるという段階にとどめている。
    感動的。

  • 中学生の山田なぎさは、母と引きこもりの兄との3人暮らし。徹底的なリアリストで、早く世の中を渡っていくための「実弾」を手に入れなければならないと考え、中学を卒業したら自衛隊に入るつもりでいる。なぎさの通う中学校に、海野藻屑(うみのもくず)という珍名を持つ美少女が転校してきた。地元出身の往年のスター・海野雅愛の娘だという。彼女は人魚を自称するなど虚言癖を持つ、ちょっと変わった少女だが、なぜかなぎさに近づいてくる。最初はためらいながらも藻屑と仲良くなるなぎさ。そのうちに、藻屑が父親から虐待され、足や耳に障害を持っていることを知り――。

    「後味の悪い本」としてよく書名を聞くので気になっていたのだが、あらすじにあまり惹かれず手をつけずにいた。読んでみたら衝撃を受けた。あまりにも重くて悲しい。

    あらすじを書き始めたら上記のようになったが、本当はもっと短くまとめられる。「中学生の主人公が、同級生のバラバラになった遺体を発見するまでを描いた物語」だ。決してネタバレではない。なぜなら、そのことを書いた新聞記事の文面がこの小説の1ページ目だからだ。最初にいきなり、海野藻屑という少女がバラバラになって殺されるという事実を突きつけておき、その後で藻屑が転入してきた場面に移る。この時点で、「この子は殺されるんでしょう?何で?誰に?どうして?」という疑問がまず生じる。そして、藻屑の不思議なキャラクターに、どういうわけがあるのかという2つ目の疑問が生じる。ここでもう既に、この世界に取り込まれている。

    実際には藻屑は普通の女の子で、虚言癖も自分を守るための「砂糖菓子の弾丸」にすぎない。実弾を持たない子供と、サイコパスの父親の歪んだ愛情が生み出した悲劇。突きつけられる現実は救いがなく、ただ悲しい。

    いい小説を読むと、(良い意味でも悪い意味でもどちらでもいいが)必ず人物に惹かれる。本書も、藻屑という不思議な少女に惹かれてやまないのだ。短い物語なのに、人物を際立たせられるのは無駄な表現がないからだろう。分厚くても何も心に残らない本もあれば、こんなに薄くても衝撃を与える本もある。

  • 冒頭1ページ目で既にバッドエンド不可避な主人公に、
    徐々に感情移入し心惹かれていく辛さ。

    嘘であってほしかった…。

  • 好きになるのは呪いだ。どんなに苦しくても、辛くても、絶対に消えることがない。どうやったってわすれることなんてできない。13歳の女の子がそれと戦うのは早すぎたのか、最初から手遅れだったのか。

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砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない A Lollypop or A Bullet (角川文庫)の作品紹介

その日、兄とあたしは、必死に山を登っていた。見つけたくない「あるもの」を見つけてしまうために。あたし=中学生の山田なぎさは、子供という境遇に絶望し、一刻も早く社会に出て、お金という"実弾"を手にするべく、自衛官を志望していた。そんななぎさに、都会からの転校生、海野藻屑は何かと絡んでくる。嘘つきで残酷だが、どこか魅力的な藻屑となぎさは序々に親しくなっていく。だが、藻屑は日夜、父からの暴力に曝されており、ある日-。直木賞作家がおくる、切実な痛みに満ちた青春文学。

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