少女七竈と七人の可愛そうな大人 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044281052

感想・レビュー・書評

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  • なんだこの母親…最悪じゃん…と思ってしまったのだけど、母親だけでなく、登場人物みんなそれぞれの苦しみを抱えていて、愛を与えられなかったからこそ気づけるもの、見えるものも沢山ある。閉塞的な空間の息苦しさが苦手なので、ウッ…と思う部分もたくさんあったけれど、これはどこにいってもあるよなあ。
    七竈と雪風の会話のおかしさや、桜庭さんの紡ぐ言葉の美しさにサラサラ読めた。何度か読まないとダメかもしれないので再読は(そのうち)する。
    寒い時期に読めてよかった。

  •  途中まで、ただただ不条理にまみれた悲しい話かと思ったけど、終盤の七竈の急激な成長が印象的な、切ないけど美しい話だった。
     小説の形式として、語り手がどんどん変わっていくのは、この小説にすごい合っている気がした。話としても完成の高い、よく練られれいる話だと思ったし、桜庭さんの本の中でもかなり心に残る一冊だった。

     誰の生き方も、それなりに共感する。白っぽい丸から逃れようとする優奈にも、母親の呪縛に苦しむ七竈にも。優奈は、本当に欲しいものが手に入れらないことが明らかで、その現実から逃れるためにああいう生き方をするしかなかったのだろうな。優奈に向かって七竈が、自分の生きたいように生きるって宣言するところがかっこいいなと思ったし、急に成長したなーと思った。

     最初は、兄弟だという事実から頑なに目を背けていた七竈と雪風が、徐々にちゃんと向き合って、最後は別れを受け入れるにも成長を感じたけど、本当に切ない…。生きたいように生きるって、響きはいいけど背負っているものを捨てることでもあって、時にはエゴな我儘でしかないから、七竈との別れを受け入れる雪風も大人だよな。でも、お互いの想いを知っているのに、手を差し伸べることができないなんて悲しいね。

     狭い世界ではどうしても生きにくいことってあるよな。だからと言って、都会で消費されることがいいとは思わないけど。

  • まさに桜庭ワールドだなと思いました。独特の雰囲気。
    七竈が可哀想になる。
    雪風と兄妹だったなんてね。1番の理解者なのに。いや、だからこそなのかな。

    可愛そうな大人は7人。誰とは言わないけれど。

    みんな可愛そうで可哀想。でも誰より可哀想なのは七竈だと思う。
    不思議な読了感の作品でした。


  • 美しいかんばせを持つ少女、川村七竃が主人公。

    旭川の冬の美しい情景が浮かぶ、綺麗な文章でした。

    1「この世の果てだ。若くなくなってもずっと続いてゆく、女の人生。日常という名の果ては、なにやら、やわらかい。」

    雪風の母である、桂多岐。
    6人の子供を持ち、働かない夫の代わりに、毎日働いている彼女の光のない日常が、とても切なかった。

    若い頃にあった女としての光は、歳をとると消えてしまう。そんなもの悲しさがあった。

    2「頭がよすぎるものも、悪すぎるものも。慧眼がありすぎるものも、愚かすぎるものも。性質が異質で共同体には向かない生まれのものは、ぜんぶ、都会に紛れてしまえばいい。」

    都会に紛れてしまえばいい。七竃にとっては、魔法のような言葉だったと思う。
    人混みにいれば、誰も自分のことなど、見えていないように思えてくる。周りが気にならなくなる。
    都会とは、そういうところなのだ。

    3「つぎに町で会ったときには、すれちがっても互いにわからないほど、少年もまた変化しているのかもしれない。
    変化した自分こそが、そのあとの、唯一無二の自分なのだ。いまのわたしたちは永遠に消える。」

    七竃と雪風の別れ。
    唯一、分かり合えた友との別れ。
    いまの雪風とは、もう永遠に会うことはできない。
    時の流れが、容赦なく彼らを変えていってしまう。

    とても痛切でやさしい愛の物語だった。

  • ある日辻斬りのように男と関係を持とうと思った25歳の小学校教師。狂ったような季節の先に妊娠して、生まれたのはあまりにも美しい容姿をもった少女七竃。

    そのあまりに美しい容姿とは関係なく、本人はぼーっとしているというかちょっと理屈っぽいというかとにかく淡々としている。そんな七竃が関心を持つのが鉄道と、同じく鉄道を愛し、七竃に良く似た美しい少年雪風。

    やがて七竃はゆっくりと消費され美しくなくなってしまうことを目指して上京する。若い女は若くなくなると「若くない女」になるのだ。なんという恐ろしい話。

    でもなんとなく七竃はいつまでも美しい気がする。誰にもその実を食することを許さず、冬になっても赤い実を実らせたままただそこにある植物の七竃のように。

    少女から大人になっていく過程が上手くかけていると思いました。なんかめんどくさいんだ、この季節って。

  • 高2以来の再読。
    とても、前回よりか内容に深めることができました。

    七竈と雪風の愛の物語だと思うし、
    七竈がせまい世界からでようとする物語でもある。

    その中で、印象的だった文は「性質が異質で共同体には向かない生まれのものは、ぜんぶ、ぜんぶ、都会に紛れてしまえばいい」これは、梅木という女性の言った言葉ですが、

    せまい世界で、たった美しいだけでこんなにも息苦しく思うのなら、広い世界にでたほうがいい。ということだと解釈しました。

    共感しました。

    しかし、それをするということは雪風との別れもあるわけですから、なんとも儚い愛の物語だと思いました。

    2014.1.23 (2回目)

  • 久々に文学を感じた作品。
    桜庭一樹さんとはこういう小説を書くのかと。
    心を抉られるような切ない物語です。

  • 「辻斬りのように男遊びをしたいな、と思った。ある朝とつぜんに。」この書き出しのインパクトがとりあえずすごい。辻斬りかあ。うん、ある朝とつぜんそんなこと思ったら大変だけど、感覚としては理解できる。そして真面目な教員から一転してとつぜん辻斬りのように7人の男と寝た「いんらん」の母親から生まれた美少女・七竈が本作の主人公。

    桜庭一樹の作品は選り好みして読んでいますが、今まで読んだ中で圧倒的に好きだったのは「ファミリーポートレート」と「赤朽葉家の伝説」。いずれも母から連なる娘の物語。どうも、この人のこのテーマの作品が、私のツボにハマるようです。本作もとても良かった!

    美少女ゆえに生き難い少女七竈。彼女の唯一の理解者は幼馴染の同じく美少年・雪風のみ。鏡のように似ている二人がお互いに抱きあう淡い恋心とも自己愛とも兄妹愛ともつかないものは、もろくてはかなくてとても美しい。ファミリーポートレートを読んだときにも思ったけれど、きっと桜庭一樹は吉野朔美の漫画を好きなはず(笑)。「少年は荒野をめざす」や「ジュリエットの卵」と似た印象を感じました。

    大人たちはみな可愛そうだけど、七竈自身にとっては前向きな結末なのも良かったです。彼女がこの先幸せになれるかどうかはわからないけれど、彼女なら大丈夫なんじゃないかなあ、と思わせる強さがあったので。あ、あと犬のビショップが好きでした。犬視点の章は妙に癒されました(笑)。

  • あまり適切な表現ではなさそうだが、
    全体で、ひとつの景色になっているような話

    一面に広がる、薄情な白い雪
    そこに落とされた何者にも染まることのない、
    美しき七竈の実

    自身の小さな世界で生きる七竈が、
    大人たちに翻弄されながらも、
    懸命に前を向いて生きていく
    そんなお話

    自分としては、全てを理解するにはレベルが高すぎた作品・・・

  • 切ないというのかなあ、これは!?
    お母さんが意味わかんない(笑)
    でも、七竈と雪風がこれから違う道を歩いて行くことを応援したいです!!
    みすずちゃんの気持ちも辛いねえ。
    もしこんな状況になったらわたしも、キツイと思います。
    でもみすずちゃんにも、"先輩"がいなくなっても頑張って欲しいと思います♪

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著者プロフィール

1971年島根県生まれ。99年、ファミ通エンタテインメント大賞小説部門佳作を受賞しデビュー。2007年『赤朽葉家の伝説』で日本推理作家協会賞、08年『私の男』で直木賞を受賞。著書『少女を埋める』他多数

「2023年 『彼女が言わなかったすべてのこと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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