少女七竈と七人の可愛そうな大人 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044281052

感想・レビュー・書評

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  • 家族観がグラっとした


  • 美しさは田舎では特異でも 都会ではそこまで特異ではなくなる。
    美しさは消費される。
    若さは特別。老いると格が下がるだけ。

    お互い好きだったのに憎むべき母親と父親のせいで一緒にはいられなくなってしまった美しい少年と少女の話

    ゴージャスもとても良かった

  • この作家は、描写がいやに官能的です。
    ただただ美しく、しかし独特な臭気があり、刹那的で、ほんの少し非凡で、まとわりついてくる感じがします。
    時々は、それがいいんですけどね。

  • 大好きな桜庭一樹の、僕としては三作品目。
    この人の描く「少女」が僕は大好きです。どこかミステリアスで放って置けないかんじ。

    読み終わった。
    つかみどころのない不思議な作品。
    とりあえずこの本を読んだ人たちは、「かんばせ」という言葉を知って使いたがるんだろうなあと思った。僕も使う。

    サンボマスターの「さよならベイベー」が引用されていた。僕の好きなサンボマスターの僕の好きな曲が僕の好きな桜庭一樹の本に出てる。なんか、良いよね。

    解説を読んで、桜庭一樹が女性であることを知った。秋元康みたいに、少女の気持ちがよくわかる少し特殊な(オブラートに包んでいる)おじさんだと思っていたからびっくりした。それだけ。

    僕が一番共感した登場人物は、川村優奈だ。自分が根底の部分からダメで卑しい人間であることをとうに認めていて、抗う努力もせずにその振り分けられたカルマを全うする人生に興じている。そこには絶対的な諦めと、子供が何か悪さをした時に感じる高揚感に似たようなものがある。日陰者。指を刺され疎まれる者。他の色は混ざり合うと白に近づくというのに、少しでも混ざると途端に全体を覆いこんでしまう黒のように、大衆に混ざれないはみ出者。そんな存在に惹かれてしまう。川村優奈はそんな存在。

    「男たちと寝たくてしかたがないよ」
    「どうしてもふしだらな人間にならなければいけない気がした」

  • “辻斬りのように男遊びをしたいな、と思った。(p6)”という初めの一文に惹かれ、“わたし、川村七竈十七歳はたいへん遺憾ながら、美しく生まれてしまった。(p25)”という一話の初めの一文でさらに惹かれました。その文だけで、頭の中で色々な想像が広がりました。魅力的な文が多い作品でした。

    いんらんな母から生まれた少女七竈は、男たちから眺めまわされるほど美しく、親友はただひとり、同じく美しい少年雪風だけでした。

    もちろん私は平凡な女で、七竈のようなとくべつな少女ではなく、年を取ってかつて美しかったものになることを思いうきうきする気持ちなどはわからないのですが、共感できる気持ちもありました。自分自身とむきあって、自分の人生をなんとかしようとするところや、母をゆるす、ゆるさないで悩むところは、とくべつでなくても、とくべつすぎても、みんな変わらないのだと思いました。

    七竈と雪風のかんばせの美しさだけでなく、二人でいるときの哀しくも美しい雰囲気も伝わってきて、切なくなりました。

  • 感想が難しい話だった。急に、辻斬りのように男と寝てみたいと思った母雪奈が七人の男と寝た結果産まれたのが七竃。七竃の木は、七回竃にくべても燃えきらないくらい燃えにくいから七竃というらしい。

  • 2019年、32冊目は、桜庭一樹。

    「君がそんな顔に生まれてしまったのは、君の母がいんらんだからだ。母がいんらんなときに身ごもると、娘は美しくなってしまうんだ」美しいかんばせを持つ川村七竈。彼女はやはり美しいかんばせを持つ、幼馴染みの桂雪風だけを友とし、高校生活を送っていた。

    ハードカバーが出た時から、気になっていた一冊。予想していた内容とは異なるが、何だか、じわっと沁みる一冊だった。

    質感は、赤と白が異様に浮き立った、透明絵の具で描かれた水彩画のよう。物語に流れる時間は、手巻きの腕時計で刻まれるよう。そぅ、アナログな感覚の一冊。

    オッサンが忘れてしまった、青春の分岐点での甘酸っぱさ、やるせなさを想い出させられた。

    このレヴュー、表現が抽象的だが、そんな質感。こんなのばかりだと、あっという間に胸焼けおこしそぅだが、たまには、そんな頃を振りかえるのもイイだろう。

  • かんばせ。かんばせ。呪いのように何度も出てくるこの言葉。ひらがなで読んだときはピンとこなかったけれど、『顔』と書くそう。そんな、桜庭一樹の言葉選びが良い。

    平凡な家族の元に生まれ、平凡な街で平凡に育った優菜はある日突然、男と寝たい、と思い立つ。七回竃に入れないと燃えない七竈のように、七人の男と寝て、立派な炭になるのだと。

    そうして誰の子かわからぬまま生まれた美しい女の子は七竈と名付けられ、いんらんな母親を嫌いながら育った。

    自分の美しすぎるかんばせ。
    幼馴染の美しいかんばせの少年。
    すぐ旅に出てしまういんらんな母親。

    たくさんの葛藤の中、七竈は自分の存在理由を模索していく。

    一方で、七回竃で燃やした母親の心には、悲しくも美しい理由があった。

    物語を滅多に読み返すことはないのに、この本は半年に1度読み返してしまう。読み返すたびに、ファンタジーでもサスペンスでもないのに、その独特な世界観に恍惚としてしまう。
    本当の七人のかわいそうな大人は誰か、探しながら読んでほしい。

  • 作者の本が読んでみたくて探していた時に
    たまたま旅行予定の旭川が舞台の小説をみつけて
    読み始めた1冊

    初めての桜庭作品だったが
    とてもスラスラと読めた。

    だが、ビショップがむくむくと呼んでいるモノを
    子犬だと騙され続けて後で、あぁ・・・と納得したり
    途中で七竈に会いに来た東堂さんはナニモノなんだろう?
    ・・・結局ナニモノだったんだろう? と読み手が翻弄される1冊でもあった(笑)

    今まで好んで読んでいた小説とは違った1冊で
    また読んでみたら楽しいカモ、と思った

  • 「たいへん遺憾ながら、美しく生まれてしまった」川村七竃は、群がる男達を軽蔑し、鉄道模型と幼馴染みの雪風だけを友として孤高の青春を送っていた。だが、可愛そうな大人たちは彼女を放っておいてくれない。実父を名乗る東堂、芸能マネージャーの梅木、そして出奔を繰り返す母の優奈―誰もが七竃に、抱えきれない何かを置いてゆく。そんな中、雪風と七竃の間柄にも変化が―雪の街旭川を舞台に繰り広げられる、痛切でやさしい愛の物語。

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著者プロフィール

1971年島根県生まれ。99年、ファミ通エンタテインメント大賞小説部門佳作を受賞しデビュー。2007年『赤朽葉家の伝説』で日本推理作家協会賞、08年『私の男』で直木賞を受賞。著書『少女を埋める』他多数

「2023年 『彼女が言わなかったすべてのこと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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