GOSICK VIII 下 ゴシック・神々の黄昏‐ (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 2089
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044281243

作品紹介・あらすじ

監獄"黒い太陽"に幽閉されていたヴィクトリカは、母コルデリアの身代わり計画により脱出。ロスコーとともにソヴュールを離れて海の彼方へ。徴兵された一弥は、彼女を想いつつ戦場の日々をひたすらに生き延びてゆくが、ある日の敵襲で…。アブリルに、セシルに、グレヴィールに、古き世界に大いなる喪失と変化が訪れる。その先に待つものは?そしてヴィクトリカと一弥に再会の日は…!?大人気ミステリ、感動の完結編。

感想・レビュー・書評

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  • 好き勝手書きます! ネタバレ注意です!

    いやあ、堂々の完結‼読もうと決めてからほぼ一年、「GOSICK」をついに読了し終えました‼ 感想は二巻までくらいしか書いてなかったけれど、やっぱり最終巻で込み上げるものがあったので、書き残していこうと思います。


    そもそも、この本に出逢ったのは「GOSICK」という名前の響きだけででした。失礼ながら作家さんのことも、どんなジャンルかも、あげくの果てには読書自体にまったくと言っていいほど興味がなかった時期でありまして、正直なぜ本を読もうと思ったのかすらうろ覚え・・・・・・・。でも、そんな中で手にした一冊が、まさかこんなに大きな感動を呼んでくる存在になるとは・・・・・・・。数多とある本の中で、一生にあるかないか、そのくらい運命的な本でした・・・・・・‼


    さて、私事は置いておいて、肝心の内容なわけですが、最初の頃はどちらかと言うとミステリーよりも久城とヴィクトリカの絡みを楽しみにしていました。文体も文学的というよりは砕けた小難しくない、とてもフランクな感じで、言うなればあまり考えずに、(異国情緒溢れる描写が素晴らしかったのもあると思いますが)雰囲気だけで楽しんでいました。


    それが、この8巻に向かうにつれどうでしょう、「戦争」という、重く暗い出来事へと進んでいくではありませんか‼ 仄めかされていく「次の嵐」に、本を読む手が緊張していったのを覚えています。なんなら、当時の人みたいに「戦争起こるな‼」なんて叫んでいたかもしれません。すっかりソヴュール小国がある世界感にのめり込んでいましたね。


    そしてついに来てしまったその時 ―――書き忘れていましたが、ここまでにも、久城とヴィクトリカは勿論、そのほか様々なキャラクター(私は特にグレヴィールが好き)たちの関係性や心境が深堀されていきます―――

    「戦争」という無慈悲を前にして、引き離される久城。

    父親に兵器――物として扱われ、監禁され、エメラルドグリーンの瞳から輝きを失っていくヴィクトリカ。

    そんな腹違いの妹を見て、2つの感情に懊悩するグレヴィール。

    久城を想いながらも、元気を装うことにするアブリル。

    ヴィクトリカにできたことは少ないと後悔し、それでも久城とヴィクトリカをつなげてくれた最高の教師であるセシル。

    ・・・・・・・と、「戦争」を軸にした話が進んでいき、また、それらがとてもリアルに描かれていて(空襲に怯える町の様子や、瑠璃や母の久城を戦地に送り出すことへの苦しさ、などです)当たり前ですが無駄なシーンなんてなかった! どのエピソードも、そしてどのキャラクターも大切な登場人物だった! そのことがより理解できます。


    ちょっと脱線してしまったので話を戻すと、最初はあくまで「ヴィクトリカかわいいなあ」ってラノベ感覚で読んでいたのが、後半でガラッと変わったのがすごいということです。かわいいイラストが表紙の「GOSICK」もあるらしいですが、その内容はものすごく文学的なんです。
    何度も言うようですが「戦争」がカギになっていて、1924年という時代設定だったりなんなり、作者の桜庭さんが伝えたかったのは、やはりこの「戦争」を忘れないことだったのではないのかと、ミステリー小説と分類されていながら思うのです。
    私は勿論戦地に行ったことなどありませんし、ましてこれから死にゆく人の手なんか握ったこともありません。それも、まだ幼い15、6歳くらいの年齢でなんて。戦争によって命が散るとはなんて残酷なんだろう(これは殺人でもそうです)。戦争によって離れ離れになり、文通は愚か、連絡すらできない人達は、なんて寂しい思いをしたのだろう。私は学生ですが、このような思いになっては、泣きだしそうになってしまいました。


    それでも、いつしか嵐は過ぎ去ります。過ぎ去った先にあるのは未来の風です。
    久城はヴィクトリカの紫の指輪を、ヴィクトリカは久城から貰ったペンダントを、母狼コルデリア・ギャロを喪ってしまいますが、長いときの末に再会するのです! 

    そして、「怪物」と恐れられ続けてきたヴィクトリカが、ある一つの答えに辿り着く―――それこそが、『愛』だったのです。
    人形でも、ビスクドールでも、狼でも、人の心のない怪物でもない、人間のヴィクトリカが、他でもない想い人の久城と唇を重ねるシーンは、まさにこのシリーズの「最大の謎」が解決した瞬間であり、と同時に、未来へと進む、ヴィクトリカと久城の新たな物語の始まりでもあったわけなのです‼


    ・・・・・・・とまあ、感想なのか何なのか分からなくなってきましたが、一言でいうのなら「私の人生を変えた素晴らしい本でした‼」この本を見つけた自分と、何よりも作者の桜庭さんには、感謝しかない・・・・・・・。

    もともと嗜虐的なフィクションを好み、バッドエンドものとかイヤミスものの小説を好き勝手読んでた私にとって、本当にこの本が与えた影響は計り知れなかったです。ひねくれてたのかもしれません。眩しすぎてみたくなかったのかもしれません。ですが、愛を手に入れるべく奔走した久城とヴィクトリカを見て、純粋にこの素晴らしいハッピーエンドを、二人の輝く愛の感情を見届けることができて、私の中の何かが変わった気がしました。


    私も、久城がヴィクトリカに逢いに行くために螺旋階段を必死でのぼったり、戦争を必死に生きたように、大切なものをずっと思い続けられるような、そんな人間になりたいです。

  •  「勇気を、勇気を持とう。不屈の、勇気を……。最後の瞬間まで、生を、未来をあきらめない。我々は生きるのだッ──!」

    上巻で別れ別れになってしまった二人。
    ヴィクトリカは母、コルデリアの手引きで監獄を脱し、新大陸を目指す船に。
    徴兵された一弥は前線でただひたすらに生き延びてゆく。
    二人は再会できるのか…?


    これで最後のゴシック、Ⅷの下、完結編。
    ヨーロッパの小さな国に東洋からやってきた「春来たる死神」九城一弥と、いにしえの生き物たちの末裔、欧州最大の知性「灰色狼」ヴィクトリカ・ド・ブロワとの、謎と冒険と、愛の物語。


    ああ、終わってしまったなあ。と感慨にふけってしまいます。
    ずいぶん長いことかかって、一時は作者に忘れられたかとも思われたゴシック。終わるとなると寂しい。
    でも、良い終わりだったと思います。
    暗い時代を生きていく子供たちが、否応なしに大人へと変化していく様子を見ているのは辛いけれど、希望のある描き方が好きです。

  • 読み終わったよーーーーー!!!!キャラクターがみんなだいすきになった…ブロワ侯爵でさえも。悲しいなって。シリーズの感想語り出すときりがないんですが、いろんな本をたくさん読んできたひとだからこそ書ける物語だなあと思った。とても深みがある。たとえるなら、おもちゃ箱…宝石箱…って考えてたんだけど、要素がこれでもかと並んでるわけじゃなくて、あちこちに散りばめられて、全体の要素を崩さずに魅力を増してるから、宝石があちこち散りばめられた、うつくしい、ビスクドールかな。

    ヴィクトリカをまるで人形のように描くときの毎回の描写すきなんだけど、まさにそれ。見惚れるほどうつくしくて、可愛らしくて、こわくて、知性と歴史とかなしさとをたたえている、精巧で生きているような物語。
    やっぱり世界一の作家さんだなあと、思い直しました。

  • 上巻の感想にわたしは、未来へ続く一筋の光は誰かの犠牲の上に見えてくるのかなと書きました。でも、それは間違いでした。誰も犠牲などにはなっていないのです。皆それぞれが自分の意志のもと大好きな人に精一杯の愛を与えたのでした。たとえそれが命を落とすことになったとしても。
    戦争は何もかもを灰にしてしまいました。それでも、愛する人を求め、また出会うために生きぬいた彼らがいました。世界中を地獄へと変えてしまった嵐でさえ、人が人を愛するということを焼き尽くすことはできませんでした。
    戦場から一弥が瑠璃へしたためた手紙を読めば、この物語が伝えたかったことが全て集約されているような気がします。
    感動の完結編で間違いありませんでした。

  • もはやミステリでもなんでもないのだけれど、シリーズの完結編としては完璧なのではないかと思う。
    ド直球の戦争モノになっていたが結局どことどこが戦ったのかに関しては、巧みに?はぐらかされている感はあった。沈む旧大陸と勝利する新大陸・たぶん戦火を免れているパリ・でもドイツのポーランド侵攻が戦火のはじまり…
    ただ、あくまで主題は戦争と少年少女なのだから、別にそこはどうでもいいのであると思う。

  • 個人用読書メモ


    ・ヴィクトリカは突然幽閉、久城は日本へ強制帰還となり、ついに二人は離れ離れとなってしまう。久城はヴィクトリカへの置き手紙-自宅の住所-を書き、それを受け取ったヴィクトリカは自分の体に刻み込む。
    ・二人の別れと同時に、二度目の嵐がやってきた・・・第二次世界大戦の開戦である。どの国がどちらサイドなのかは明記されていないが、古き力-魔法- vs 新しい力-科学-の戦いである。
    ・アルベールは、ヴィクトリカの頭脳を現代で言うAIとして利用し、戦局の予想・国王への助言を行い、ソヴュールの政治的実権を掌握しつつあった。
    ・コルデリアと一人のブライアンが身代わりとなってヴィクトリカを助け出し、もう一人のブライアンがヴィクトリカを日本行きの船へと乗せる。
    ・ヴィクトリカは命からがら日本へとたどり着き、自身への刻印をたよりに久城家へと行く。
    ・一弥は東南アジアで出征。激戦に巻き込まれ負傷・・・生死は不明。
    (空白の数か月)
    ・いよいよ終戦。一弥も生存しており、傷を負いながらも帰還。そして、いよいよヴィクトリカと一弥は再開するのであった・・・


    長編シリーズもいよいよ終結。最終巻の二度目の嵐は今までと違って非常に作中の時間の流れが速く、少々物足りなかった。特に一弥が瀕死になってから終戦までは一分で片づけられてしまっていて、少々納得がいかなかった。

  • GOSICK8 下巻
    ヴィクトリカを殺そうとするブロワ。その企みに気づいたコルデリアが身代わりとなる。ヴィクトリカは赤毛とともに船で日本へ。
    牢獄の影響で、金髪は銀髪になってしまった。旧社会の生き物は海を渡る時に息絶えてしまうということだが、ヴィクトリカちゃんは生き延びる。
    自分の体に彫った久城の住所。そこで瑠璃に会い、戦場へいった久城を待つことに。
    ある日、帰国した久城。離れまいよ。
    初恋が実る話は良い。

  • 読む順番を間違えちゃった、このシリーズだけど、これでやっと新大陸に繋がるのだね、君。ちゃんと2人が再会出来て本当に良かった。

  • グレヴィールが、最後にやってくれました!
    とうとう妹を認め、助け、自らも自分で道を切り開こうとする。素敵な男性になりました。

    そして、まさかの1番グッときたのは、アヴリルとフラニーのところ。悲しい別れ。ここに持ってくるか。

    最後にヴィクトリカと一弥が再開するところはわかっていたけど、やっぱそしてそれでもすごく幸せな気分になりました。一弥がヴィクトリカを妻とか読んじゃうの、かわゆす。

    ストーリー的には、オカルトチックな存在がなんけたくさんいるの?よくわかんない部分もでてきて????って感じだったけど、まぁ、そこらへんはどーでもいいっちゃいいので軽く飛ばしました。最後で求められた結末にたどり着いたので良しとしましょう。

  • 世界大戦のさなか、ヴィクトリカも九城くんも自分の運命と戦い、ただお互いにまた会える事だけを願い、生き抜いた巻でした。コルデリアの愛と最後の言葉はヴィクトリカにも確実に届いた事でしょう。最後まで見送り死を選んだブライアンもまた愛の人。アルベールは出来ればもう少し悲惨な報いを受けて欲しかったかも・・・。グレヴィールの優しく、滑稽な妹愛に癒やされつつ、ラストでようやく再会が叶い愛を口にする2人に思わず目頭が熱くなりました。でもって・・・「僕の妻なんだけどね」ってそうですが、そうなりましたか。RED読まなきゃ!

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著者プロフィール

1971年島根県生まれ。99年、ファミ通エンタテインメント大賞小説部門佳作を受賞しデビュー。2007年『赤朽葉家の伝説』で日本推理作家協会賞、08年『私の男』で直木賞を受賞。著書『少女を埋める』他多数

「2023年 『彼女が言わなかったすべてのこと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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