機動戦士ガンダムSEED ASTRAY (1) 角川スニーカー文庫 (角川スニーカー文庫 0-61)

著者 :
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  • Amazon.co.jp ・本 (243ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044297015

作品紹介・あらすじ

「どんな依頼も遂行する。それが俺達傭兵だ」C.E.と呼ばれる新世紀。遺伝子操作された新人類と旧人類はついに開戦の火ぶたを切った。戦局が膠着状態に陥って11ヶ月。傭兵部隊の部隊長・叢雲劾は極秘裏に開発中だった最新鋭モビルスーツ「ASTRAY」を手にする。その時から、宇宙と地上を駆け抜ける青い機体の伝説が始まった!『機動戦士ガンダムSEED』の世界を舞台に繰り広げられる傭兵達の熱き戦い。

感想・レビュー・書評

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  • 『ガンダムSEED』熱が再燃。
    以前はキラとアスランの無敵のかっこよさにばかり夢中になっていたけれど、『SEED』ではや20年、『DESTINY』でも18年という月日が流れたことで、私も当時よりは(ほんの)少しは落ち着き、広い視野でコーディネーターとナチュラルが争いを繰り返す世界を、イライラしたキャラにも心を広く、そうやって観られるようになった……はず。
    そんな『SEED』の世界には外伝やOVAもあり、そちらの世界も楽しみたいという心の余裕が生まれたので、まずは外伝のなかから小説『機動戦士ガンダムSEED ASTRAY』を読んでみた。全2巻。

    〈ASTRAY〉とは外伝に登場する主役MS(モビルスーツ)の名称で、「王道ではない」という意味が込められている。
    〈ASTRAY〉シリーズでは小説以外にも漫画が数シリーズ展開されていて、本編アニメの『SEED』や『SEED DESTINY』の中で描かれなかった部分の裏事情が補完されるなど、見比べるのが楽しい作りとなっている。

    『SEED ASTRAY』の主人公は、機体〈アストレイ レッドフレーム〉に乗るジャンク屋のロウ・ギュールと、機体〈アストレイ ブルーフレーム〉に乗る傭兵部隊「サーペントテール」の叢雲劾(ムラクモ・ガイ)。
    アニメのはじまりでもあった大惨事、中立コロニーヘリオポリスの崩壊。地球連合のMSが極秘開発されていたことを知ったザフトがMS5機のうち4機を奪取し、その際の戦闘によってコロニーが崩壊してしまった数時間後、掘り出し物を求めてやって来たジャンク屋のロウと、新型MSの目撃者の抹殺を依頼された傭兵部隊「サーペントテール」の劾は出会う。
    そのとき依頼者の裏切りにより窮地に陥った劾は、ロウと協力してその場を脱出するのだけど、その際にふたりはMSを手に入れるのだ。
    ロウの赤いMS〈アストレイ レッドフレーム〉、劾の青いMS〈アストレイ ブルーフレーム〉、そしてもう一機飛び去った金色のMS〈アストレイ ゴールドフレーム〉の3機のMSによる物語が展開されるのが『SEED ASTRAY』。
    『SEED』では親友だったキラとアスランが思わぬ形で再会することになったあのはじまりのエピソードが、こちらのふたりの縁をも繋げることになった。

    私が“ASTRAY”を意識したのは、同じく角川スニーカー文庫の『ガンダムSEED』の小説を読んだとき。アニメでは30話「閃光の刻」。
    ニコルをキラに殺されたアスランと、アスランにトールを殺されたキラが雷鳴が轟く嵐のなか死闘を繰り広げたあの戦い。最後アスランの機体〈イージス〉がモビルアーマ形態で〈ストライク〉をクローでがっちりつかんで自爆装置を作動させたあのストーリー。
    なぜ死んだはずのキラが生還したのか。
    それが最大の謎だったのだけれど、それはジャンク屋のロウが助けたことだとわかった。ロウが非常用シャッターをこじ開けて、コックピットから負傷したキラをマルキオのところまで運んだのだ。
    それからもジャンク屋のロウは宙に上がったアークエンジェルらと接触し、補給や修理、たくさんのものや情報をもたらしている。
    それを知ったとき、SEEDの世界の広さに感動したものだ。

    なので、その展開をもう少し詳しく読めるかなとこちらの小説を読んだのだけど、ありゃ失敗。
    この小説の主人公は劾だった。
    ロウが主人公となっているのは漫画『ガンダムSEED ASTRAY R』のほう。そちらではユニウス・セブンの追悼慰霊のための事前調査に来ていたラクスが救命ポットで脱出した経緯や、ダコスタやバルトフェルト隊長などのプラントの面々も登場するらしいので、ぜひとも読んでみたい。

    とはいえ、こちらの小説も『SEED』と同じ時間軸でストーリーは展開されるので、ストーリー上で『SEED』の世界とすれ違う瞬間があったりして、面白く読むことができた。
    そのなかで、いちばんSEEDの世界とリンクした人物はMSアストレイシリーズの開発技術主任、エリカ・シモンズだったかもしれない。
    私はてっきり彼女は優秀なナチュラルだと思っていたのだけど、今回コーディネーターだと知った。本人は長い間そのことを隠していたわけで、私もまんまと彼女の演技に騙されていたのだ。
    そのエリカ・シモンズが最初はアンダーグラウンドの仕事を担うサハク家と繋がっていたこと。そして直属の上司であるサハク家のロンド・ミナ・サハクからオーブの代表首長の娘カガリ暗殺の任を受けていた……というストーリーには驚いた。
    一生懸命さが空回りして無鉄砲だけど、あんなにまっすぐなカガリを暗殺だなんて!
    そんなこと彼女にできるはずない。アニメで完成間近の〈ストライクルージュ〉を見つめる彼女の眼差しは、カガリのことをとても心配してるように私は見えたもの。
    アニメのエリカ・シモンズは語り口調からもクールで仕事ができる完璧な大人の女性だと思っていたので、こんな不安な一面を抱えていたなんて意外だった。
    でも上司を裏切れない。そんなエリカに劾が言うの。
    「必要なのは自分の気持ちを貫く意志だけだ。戦うための力は、ここに居る」
    といって彼は自分自身を指差す。
    自分が「居る」だなんて。自分を指差すだなんて。かっこよすぎるよ。本当に強い人しかできないよ。なんてったって彼はキラよりも強いといわれるような最強の傭兵だからね。
    「ミッション・コンプリートだ」

    ここには『SEED』の表舞台には登場しない、そんな人物たちがたくさんいる。
    劾やロウを筆頭に、外見が美しく整っているほかにはコーディネーター特有の優秀な身体能力を有していないイライジャは、「外見だけて中身がない」という苦悩を持っている。
    元ザフト軍の赤服であったがグゥド・ヴェイアは、戦いが嫌になり軍から脱走する。彼は地球連合軍の戦闘用コーディネイターであったのだけれど、心理コントロールの失敗で二重人格になっていて、彼の凶暴な人格を押さえつけることが出来るのは、ラクス・クラインの歌声だけだった。
    また同じく地球連合軍が作り出したコーディネイター、ソキウスたちは「ナチュラルのためになること」を最優先とした心理コントロールをかけられているのだけど、ここにはブルーコスモスのムルタ・アズラエルも関わっている。彼はソキウスの製造費用を少しでも回収するためにと、薬剤投与へと変更させる。その結果一部の脱走したソキウスたちを除いて、彼らは処分されたり薬物で精神を壊される。
    少年たちが戦いをとめようとしているときに、その周囲でも自分の意志で戦っていた人間が数多くいた。それが正しくても、正しくなかろうとも。

    〈ASTRAY〉。彼らの戦いは自分の道は自分で選ぶということ。それがたとえ「王道ではない」としても。

  • 外伝編になる本作品。正直SEEDより好きかも。(笑)劾かっこいいねぇ。

  • アニメ「起動戦士ガンダムSEED」のサイドストーリーという位置付け。テレビでは放映しきれなかったような話が満載で、読んでいくと謎がひとつひとつ解けていきます。

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