シュガーアップル・フェアリーテイル銀砂糖師と緑の工房 (角川ビ-ンズ文庫)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044550448

作品紹介・あらすじ

王家が認めた砂糖菓子の作り手・銀砂糖師の称号を手に入れたアン。けれどその陰には、アンのために、ペイジ工房の娘・ブリジットに自らを売ったシャルの犠牲があった。シャルを取り戻すため、アンは工房へ乗り込むが、砂糖菓子職人の大派閥であるはずのペイジ工房は、なんと没落寸前。工房を立て直せたら、シャルを返すと言われたアンは!?個性的なペイジ工房の職人たちと、アンの新たな挑戦スタート!!待望の第四弾。

感想・レビュー・書評

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  • 前巻で陰謀に巻き込まれたため、シャルは羽をペイジ工房の娘、ブリジットに渡してしまった。シャルの羽を取り返すために、ペイジ工房の工房長代理であるエリオット(ブリジットの婚約者)に誘われてペイジ工房で働くことになる。しかし、3大派閥の一つであるはずのペイジ工房は着いてみると今にも倒れそうなほど経営が傾いていた…。
    4~6巻がペイジ工房編にあたるそうです。ラドクリフ工房よりはまともな人たちに囲まれて少し心安らかに読めますが、今回も苦難の連続なアン。まあ、才能ある人の安寧な職人修業なんかつまんないもんね。グレン工房は果たして立ち直れるのか!?シャルの羽は戻してもらえるのか!?というところが読みどころです。

  • シャルがアンの元に、、、。

  • なんだか、クセになりますね。
    一気に読んでしまいました。

    真っ直ぐな気質のアン。
    前作で無事に銀砂糖師になり、
    通常であればここからキャリアアップの一年に努めるべきところですが、
    自分だけの力で銀砂糖師になれたわけではないと
    シャルを追い、彼を自由の身にもどすべく、
    斜陽のペイジ派本工房へ職人頭として赴くことに。

    あんなことやこんなことがあって
    シャルを返してほしくば傾いたウチをなんとかしてよ
    って、大の大人が。
    まぁ、シャルは自由の身に戻れたわけですが
    この一冊のボリュームで何もかも丸く収まってしまうと
    どうしてもご都合主義が出てくるんでしょうね。
    工房長の娘ブリジットがこじらせたまま、次巻へ。

    なんだかんだ言いましたけど
    読みやすいし、お話自体も好きです。
    返却期限を待たずお返しし、
    続きをまた図書館で借りてきました。

  • “アンは驚いた。
    「そうか……。ほんとうに、そうよね……誰が?ていうか、どうやって……?」
    ――銀砂糖は最初に誰が作ったの?妖精が作ったって言われてるけど、妖精の誰が作ったの?どうやって!?
    見慣れた風景の前に突然、未知の扉が開いたようだった。
    銀砂糖は、最初の一握りの銀砂糖がなければ精製できない。けれど最初の一握りの銀砂糖も、銀砂糖がないとこの世に出現しない。銀砂糖は一体どうやってこの世に現れたのか。
    それはいいようもなく不可思議な事実だ。なにかの魔法か、奇跡か。人間が知らない、妖精の神秘の技法か。想像するだけで、心が躍った。
    「だから最初の銀砂糖には、得体が知れないものって意味もある。あなたは、ただ物珍しいから、期待されているだけよ。実力を買われたわけじゃない。そんな人に、なにができるの?」
    最後のブリジットの言葉は、嫌味だろう。くどくどしくて攻撃力に欠けるので、嫌味としては不出来だ。だが嫌味には違いない。
    けれどアンは、それどころではなかった。知らされた事実に興奮していた。
    「気がつかなかった、今まで!」
    「そうよ、だから」
    「よく考えればわかったことなのに。わたし今まで、考えた事なかった。ブリジットさん、最初に銀砂糖を精製した人は、ほんとうにどうやって精製したの!?」
    問うと、ブリジットは一瞬、なにを問われたのかわからないようにきょとんとした。しかしすぐに、かっとしたように怒鳴った。
    「わたしが知るわけないじゃない!?」
    彼女の怒声で、はっとする。
    ――あ…………。怒ってる。
    当然だろう。馬鹿にされたと思ったに違いない。
    「ご、ごめんなさい。つい」
    あせって謝ると、ブリジットの背後で、シャルがくっくと笑いだした。”

    どうしようアンがめちゃくちゃ格好いい。
    アンがシャルを助けるその言い分とか。キャットの親切を断った理由とか。
    彼女は本当真っ直ぐで折れることもあるけれど強いなぁ。
    シャルの心境の変化も楽しい。動揺とか葛藤とか。
    エリオットは結局、んー、良い人なのかな。中身が読めないけどそこまで悪人でもない。
    ブリジットと、幸せになってくれたらとても嬉しいのだけど。

    “「ほんとうに、無事でよかった。ありがとうシャル。いつも、守ってくれてる」
    力の弱いアンは、シャルと一緒にいれば常に守ってもらうしかない。それはわかっているし、甘えてはいけないと思う。でもシャルが嫌だと言わない限りは、自分からシャルのそばを離れることはできない。もし離れてしまったら、恋しくて恋しくて、どうにかなってしまう。
    ずっとシャルの優しさに甘えて、そばにいる自分の身勝手さを感じる。だからできるだけ、彼に負担をかけないようにするしかない。そしてただ感謝して、シャルがアンのそばにいてもいいと思ってくれる気まぐれが、ずっと続くように祈るしかない。
    シャルの羽を握ってひきとめるようなことは、アンにはできない。
    「待っててくれて、ありがとう。やっと羽を返すことができるね。シャル。あなたのもの」
    羽の入った袋を、アンは手を伸ばしてシャルの首にかけた。シャルは微笑んだ。すこしかがみこむと、両掌でアンの頬を包む。そしてゆっくりと顔を近づけた。
    「助けられたな」
    彼の吐息が、アンの唇に触れた。落ちかかる髪が、さらりとアンの頬に触れる。背すじがしびれるような艶がシャルの瞳にやどり、それに射すくめられて、体の自由がきかなくなる。
    「これでおまえは、自分の力で銀砂糖師になったと言える。胸を張って名乗れ。銀砂糖師と」
    しばらくなにかを迷うように、シャルは動かなかった。それから思いなおしたように、彼の唇はわずかに位置を変えてアンの額に口づけた。
    「銀砂糖師となったおまえに、祝福を」
    囁きは優しく、甘かった。
    アンは銀砂糖師になった。
    飾り蠟燭の炎が揺らめき、聖堂はやわらかな光に満たされている。この世にいるのはたった二人だけだと錯覚しそうなほどに、静かだった。”

  • アンを追い返すつもりで来たシャルが、アン自身が銀砂糖師を名乗るためにシャルを助けたいって聞いて、ならとめられない、待ってるって言いだすあの流れが好きだー!

    ペイジ工房の人みんないい人だし次も楽しみ

  • 前巻で銀砂糖師となったアン。
    シャルを取り戻すためにペイジ工房へ。

    今回は社会人の方が身に染みるかも。
    顧客が本当に求めるものとは。チームワークとは。

    素敵なお話でした。

  • アニメを見て続きが気になったので手に取った。シャルとアンのやりとりは、アニメよりずっとすっきり描かれている一方で、すっきりとした言葉運びからでる絶妙なロマンスの雰囲気にどきどきする。少女向けの小説は昔から好きなので、もっと早く読んでいたらよかった。地の文の決意と美しさに満ちたアンの気持ちも素敵。

  • シャルを取り戻すため、銀砂糖職人として胸を張って行けるようになるために落ちぶれているペイジ工房で働くことになったアン。
    素直になれないブリジットどうなるのか気がかりです。

  • シリーズ4作品目。
    前巻で、ブリジットにシャルが羽を渡したところで終わり、その羽を取り返すためペイジ工房へアンが行くところから。

    相変わらず、アンの一生懸命さとか真っ直ぐなところが読んでいて元気づけられる。
    そんなアンをシャルが見ていてくれるところがすごく好き。

    ブリジットは好きじゃないけど、なんというか…かわいそう。やりたいことがやれなくて家のために我慢するのはしんどいと思う。あの性格になったのはグレンさんのせいかな、とも思わないでもない。

    最後、ブリジットのところに来たのはアン達を襲った妖精だよね?
    なんか雲行きが怪しくなってきた。
    また次巻に続くようだし、続きが気になるところで終わり。

  • どんどんアンが受け入れられて、仲間を作るところがたのしい
    その一方でブリジットは血でしか評価されていないのが悲しい
    つけ込まれるよねぇ、、

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著者プロフィール

広島県出身。第7回角川ビーンズ小説大賞審査員特別賞受賞。『シュガーアップル・フェアリーテイル 銀砂糖師と黒の妖精』にてデビュー。温かく優しい読後感が持ち味で、登場人物の繊細な心理描写も高く評価されている。他著に「封鬼花伝」シリーズ、「箱入り王女の災難」シリーズ、「一華後宮料理帖」シリーズ、『ここは神楽坂西洋館』『仙文閣の稀書目録』などがある。

「2021年 『転生佳人伝 寵姫は二度皇帝と出会う』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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