激安食品の落とし穴

著者 :
  • KADOKAWA/角川学芸出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784046533395

作品紹介・あらすじ

298円の弁当、3パック57円の納豆……。なぜ、安い価格で食べ物が提供できるのか? そこには、第一次産業からの買いたたき、水増し、添加物による代替など、日本の食文化を脅かす「罠」が隠されていた――。

感想・レビュー・書評

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  • タイトルから、激安食品の安全性云々の話かとおもったのですが、良い意味で裏切られました。安さのみを追求せずに、適正価格の「佳い食材」を選んで買える、賢い消費者になりましょう、という趣旨でした。それが生産者やメーカーを守ることにつながり、自分達に返ってくる、と。
    物価上昇の昨今、正直「できるだけ安いものを買いたい」と思うのですが、その意識を持ってスーパーの棚を見るようにしたい。

  • 「激安食品の落とし穴」
    山本謙治著 KADOKAWA

    「食べ物の価格を適正価格で提供しないことは、社会悪である」

    良いお弁当を製造・販売して成功している「知久屋」


    納豆
    大粒の納豆が小粒の納豆よりも断然、豆のよい香りや味わいがあっておいしく感じる。
    納豆や豆腐といった商品群を日配品という。基本的に毎日食べる習慣のあるもので、鮮度が急激に落ちやすいのがそれにあたる。
    なぜ表側と裏側を見せるかというと、納豆菌の発酵が全体に回っているかどうかを見るからです。よい発酵状態だと、全体が白い菌に覆われています。うまく発酵できていない場合、裏返すと納豆菌の白いのが回ってないんです」
    余裕があれば150円以上の価格帯の商品をセレクト


    豆腐
    どの部分で安い豆腐を作るためのコスト圧縮するのだろうか。
    「それはもう、凝固剤です。通常のニガリを用いて固められる量の倍以上を固められる凝固剤を使うのです」
    「強力な凝固剤を使って薄い豆腐を固めれば、価格を三分の一にすることが可能です」
    「充填豆腐はね、薄い豆乳でも凝固剤を入れたら固まるというものです。だからまず原価が安いんですね」
    一丁で200円前後の価格が適正



    餌に何を食べさせるかで黄身の色や風味、成分などは大きく変わる。ちなみに輸入コーンを使わず、国産の餌を100%食べさせているたまごは薄いレモンイエローだ。それどころか、最近話題の、資料用のお米を食べたせたたまごは白色に近い。味も全く違い、色が淡いほどあっさりした感じで、別のおいしさがある。「米卵」というような表記があればぜひ買って普通のたまごと味比べをしてみることをお薦めする。
    卵の賞味期限は生食できるとして、3週間。加熱して食べるのであればもっと長い。
    青森県藤崎町「トキワ養鶏」(著者お薦めの養鶏場に「2種類のたまごを注文して見た! さて、味は???)
    たまごの販売価格は昭和28年に224円だったのに、2012年の平均価格は179円と、むしろ安価になっていたのである。

    一般社団法人 日本鶏卵生生産者協会/社団法人日本養鶏協会の意見広告
    卵の未来を、助けてください。 
     卵が生食できる。実は世界でも珍しいことなのです。これは日本の鶏卵生産者の品質管理が優れている証拠です。しかし今、生産者の経営状況がとても悪化しているのです。
     卵の卸売価格は、昭和20年代よりも安いのです。
     現在の卵の卸売価格は、なんという60年前よりも安いのです。
     そのため採算割れを起こし、鶏卵生産者たちはどんどん
     廃業に追い込まれています。
    世界トップレベルの衛生管理が、
    危機に直面しています。
    サルモネラ菌や鳥インフルエンザなどの病原体から卵を守るため、徹底した衛生管理を行なっています。
    しかし厳しい経営環境は、こうした管理システムの維持を脅かしかねません。
    卵がた生で食べられない。そんな時代を阻止したい。
    (略)
    私たちの苦しい現状と熱い思いを、どうかぜひご理解ください。


    以下、「ハム・ソーセージ ー それ、本当に「肉」ですか?
    に続いていくが、膨大な量になってしまうので、とりあえず、これでアップ。

  • ・激安食品は食生活,文化,業界に”悪貨は良貨を駆逐する”を引き起こす.

    ・食品企業の利益追求で横行する化学調味料や添加物とは言わないものの実質それに当たる行為は人々に本当の食材の味から遠ざけるだけでなく,”美味しさのインフレ”を引き起こす.

    高い食品には高い理由があるのではなく,安い食品にも同様に安い理由がある.
    激安な食品には裏がある.激安なのではなく値段相応なだけ.
    -> 本物の食品とそうでない食品は食べ比べてみたいな.今度やってみよう

    三百円のコンビニ弁当,100円台のハンバーガー
    食品の減価率はだいたい30%

    マックのハンバーガーは客寄せ.(つまりサイドメニューやドリンクで儲けを取る)
    ->マックに行く時はハンバーガー系をいくつも注文しよう.

    スーパーの惣菜も客寄せが狙い.+食材ロスの回避
    納豆:日配品,スーパーが主戦場.しかしスーパーは日配品は安く売りたい

    豆腐の激安を可能にするのは凝固剤(ニガリではないナニか)

    卵:黄身の色の濃さは栄養価や鮮度をあらわさない.何を食べているか.だけ.パプリカやコーンで簡単に着色できる.ー>そういう卵を作って優良誤認

    ハム,ソーセージ.
    タンパク質でかさを増しりリン酸塩で凝固 亜硝酸塩(着色.防腐)

    コンビニのメンチカツ:
     肉ではなく植物性タンパク質で量を確保.味がしないので濃いソースや添加物で味付け.もはやメンチカツ的なナニか 

  • 食の価格の妥当性。
    消費者として知識を持って対応しているので驚きは少ないがやっぱりという感じ。
    どの項目も丁寧。コンビニ惣菜のシェアを占めるヤマザキには今後も注目したい。

  • この本を読んで食べてみたいと思った食品
    ①弁当屋「知久屋」の弁当。化学調味料など一切不使用。自社製品だそう。
    ②本醸造醤油「巽」(梶田商店@愛媛)
    ③米酢「富士酢」(飯尾醸造@京都府宮津市)

    安い食品にはワケがある。なぜ安いのかを分かって食べるなら問題ない。必ずしも安い=お得ではないことを知るべき。

    商品を適正価格で買う。安い食品ばかり買っていれば、スーパーなど小売業は安いものばかり置くようになる。ゆえに、ちゃんとした材料を使って食品を作っている(価格は高め)企業が潰れる。

    安い酢は少ない米から酢を作り、アルコールを足している。

  • 適正な価格で食品を購入することがどういう意味をもつのかということがとてもわかりやすく説明されている。NHKの朝のラジオでやまけんさんのコーナーを聴いていて興味をもった。今まで食品添加物に関する本など何冊か読んだことがあるが、食品の背後にある流通、生産者の事情などに深く踏み込んでいて消費者としてあるべき姿を意識させてくれる良書。

  • ヤマケンさんのとっても食べ物について考えさせられる本。会うときはよー食う人だなあの印象が強すぎるけど、いつもいろんなことを教えてくれる人であることを読んで思い出した。

  • やまけん氏のブログとほとんど同じ主張だが、2015年時の細かい数値データを元に検証しなおしている。食料生産者の苦しい状況がよくわかる。提案されている解決策については、家計の問題もあり、全面賛成はしづらいが、違いがわかる消費者になって本物の食品を買おう、ということなのだろう。

  • 14

  • 安いにはそれなりの理由があると思っていたが、なるほどそういうことかと理解できる一冊。ちゃんと良いものを知った上で、選択していきたい。

  • 安過ぎるのには必ず理由があるし、その理由は誰かが苦しめられているか自分達が損をしているかの2択である。
    食品関連の本は他にもいくつか読んだけど各食材別の状況を説明している本はこれが優秀だと思う。よく見かけるソーセージとかハムの原材料がわけわからん謎とか、納豆がやたらと安く叩き売りされている原因だとか知らなかったけど重要な事実ばかり。
    日本でも良いものにはその価値に見合った正当な価格を支払う感覚を身につけるべきだ。それは食品に限った話ではなくて、良い仕事にはそれだけの給料を支払っていかないと自分たちが困ることになる。アメリカで医者や看護師が酷使されてる状況から学ばないと。

  • 納豆やハムなどスーパーの特売になってしまうような食品の裏側はどうなっているのかを真面目に解説。またまともな業者も紹介。
    納豆はPBとNBの駆け引きを使って量をとらせて価格を下げさせていて製造者が疲弊してきている。ハムはインジェクションとリン酸塩で1.5倍に水増し。唐揚げも同様。ハンバーガーの肉は工場で使った肉の余りを寄せ集めた端肉。美味しくて、まともな食品はそれなりにコストがかかるが、現状は下がるばかりで製造者も裏技を使って対応するしかなく、沢山の業者が店をたたんでいるのが現状と著者は訴える。

  • 食品のトレーサビリティに対するヨーロッパと日本との意識の違いにハッとさせられた。

    納豆に関しては、某大手の採算度外視な価格設定に太刀打ちできず泣かされる中小経営者の「いいものを作っても売れない」という嘆きを耳にしたことがあったので、問題の深刻さを改めて感じた。(私自身は納豆苦手でゴメンナサイ(>_<))

    いわゆる激安スーパーには行ったことがないけれど、たまに『なぜこんな値段で売れるのか?』と疑問に思うことはある。青果であれば、よからぬ輩が畑から盗んだものでは?とか、最近なら汚染の危険性が高いものかも…とか。理由の定かでない激安食品には警戒心が働く。
    ダイコーの廃棄カツ横流し問題発覚の後、それでも「激安弁当をなくさないで」という声が何件も寄せられたという報道に接し、信じがたい思いがしたけれど…… 安全性を犠牲にし、生産者やメーカーを泣かせることも厭わないほど生活に余裕のない人が増えていることの表れだとしたら、エシカルな購買活動の実現など遠い夢になってしまう。

    と、嘆いてばかりでは進展がない。
    まっとうな仕事でおいしく安全な食品を世に送り出してくれている業者さんを応援すること。そして、本書のような話題を出して世間に問題意識を広めること。できることをできる範囲でがんばろう。

  • 佳い食。良いでも善いでも好いでもなく、あえて佳いを使った作者の真意は。良いではなんだか素朴な印象を受ける。安全で美味しく、何より安いものを希求する古典的な消費観と親和性がある。善いはまさにエシカルな食を指し示す。しかし食の文化的な側面、食べて楽しい気持ちを蔑ろにしているかもしれない。好いではあまりにバブル的欲望が渦巻いているし、どうしたものか…と思考したかは定かではないが、これを読むと確かに佳い食を目指すべきであり、そのために消費者として出来ることはあると思える。問題意識の根がしっかりしている一冊。

  • 安い食品が数多く出回っているけれど、安いのは理由があって、その理由がえげつない・・・これを読むと、もう安い食品が買えなくなりそう。ただ、髙ければ良いというわけではもちろんないけれど、私はそれなりの値段のものの方を選びたいと思うようになった。
    良い調味料を選ぼうとか、良い油を選ぼうとか、聞くけれど、その理由も詳しく書かれています。

  • 昨年わりと近場に激安スーパーが開店した。確かに安い。豆腐なんか一丁29円。セールではなくいつもの値段だ。これってどうなの?ここまで極端な安値だと「まあうれしい」とはちょっと思えない。これを作ってる人は一体いくらもらっているのか。なんらかの業界的からくりがあるのだろうけど、どこかで誰かが酷い目に遭っていることは間違いないだろうと思ってげっそりする。

    本書ではさまざまな食品について、激安価格の仕組みやその問題点について説明されている。豆腐も出てくる。弁当・ハンバーガー・卵・惣菜・調味料…。消費者の「もっと安く」という際限のない要求に応えるべく、メーカーやスーパーが激安食品を作り出していく実態は、そら恐ろしいほどだ。こんなことが続くはずがない。続いていいものではない。

    値上げのニュースでは必ず、「困ります」という消費者の声が取り上げられ、野菜なんかの値段が下がると「安くて嬉しいわ~」と喜ぶ人の姿がテレビに映る。これって思考停止じゃないだろうか。食品に限らず、ものには「適正価格」があるはずだ。過剰サービスも同じだと思うが、互いの首を絞め合うようなやり方がどんどん広がっていることに暗澹とした気持ちになった。

    少し救われるのは、至極真っ当なやり方でおいしい食品を作っているメーカーが紹介されていること。贅沢品ではなく普段使うもので、決して安いわけではないものが、きちんと支持され商売として成り立っているのを見ると、ほっとする。

  • 安いものはなぜ安いのか、その実態が書かれている本という意味では貴重。ただしその事実を示す以上のことはないため、そういった内容を期待するのであればもっとがっつりとしたジャーナリストの本を探すべきか。
    個人的な過去に読んだ本で言えば「フードトラップ」あたりか。

  • 子どもが出来て、ある程度気をつけているつもりだったがショックな事がいくつもあった。。無添加と思ったらそんなカラクリが…
    著者の言うとおり、知らない、事で色々な弊害がある。
    どうしても値段は大切なファクターではあるが可能なものはもう少しよいものをつかってもいいのかも。

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著者プロフィール

1971年、愛媛県に生まれ、埼玉県で育つ。1992年、慶應義塾大学環境情報学部在学中に、畑サークル「八百藤」設立。キャンパス内外で野菜を栽培する。同大学院修士課程修了後、(株)野村総合研究所、青果流通の(株)シフラを経て、2005年、(株)グッドテーブルズ設立。農産物流通コンサルタントとして活躍中。ブログ「やまけんの出張食い倒れ日記」。著書に『日本の「食」は安すぎる 「無添加」で「日持ちする弁当」はあり得ない』(講談社)など多数。

「2022年 『エシカルフード』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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