- Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
- / ISBN・EAN: 9784047033115
作品紹介・あらすじ
かつて妖怪は人里離れた闇にひそんでいた。しかし、闇が駆逐された近現代の都市空間にも怪異は存在し、妖怪は出現する。妖怪はなぜ現れ、何を人間に語ろうとしているのか。学校の怪談などのうわさ話や都市伝説からホラー小説に至るまで、メディアやマスコミの介在によって増殖した現代における怪異譚を、民俗学の立場から考察する。
感想・レビュー・書評
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2009年度 12冊目
『都市空間の怪異』
宮田 登 著
株 角川書店
角川選書 311
平成1311月30日
212ページ 1300円
『都市空間の怪異』を楽しむ。
いつもより角張った文章だと思っていたが、著者が亡くなられてから企画書やメモなどを元に、本書をまとめられたとのこと。
なるほど。
内容は面白かった。
辻占いは、現在の堺市が初めらしい。
安倍晴明が摂津の国と和泉の国の境の辻で占いを始めたのは最初とのこと。
それにしても 安倍晴明はあちこちに足跡を残して織るなぁと、感心する。
宮田登氏や本多勝一氏に度々出てくる『エンガチョ』と出てくる言葉は、私の時代或いは故郷では『ベンショ、ベンショウ。鍵 のんだ』だったな。
懐かしいな。
祟りという言葉は、タツから来ているそうだ。
感じに書くと、なるほど「立」に「示す」
日本人はこの祟りにはきわめて執着が深いそうだ。
祟りや執着といえば 私の場合はすぐに『鉄輪』を思い浮かべてしまうな(笑み)
世の男性諸君、女性を敵に回すのは、それ相応の覚悟を。
思いの外 怖いですぞ〜、なんちゃって。(笑み)
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正直に言って、宮田登という人がいなくなってしまったことが私は悲しい。最後まで未完な人だった。最後の最後の本となるのがこの本。まあ、そこに深い意味はないのだけれど。
彼のフォルクロアに対する深い関心には感動するし、その広い知識も素晴らしい。しかし、彼には後20年欲しかった。そう思う。
この本は彼の本の中でも相当に仕上がりがいい本だと思う。それは本人の意図を通す努力が最後に行なわれているからだ。本当に些細なことにまで興味を感じてしまう彼はいつも主張が薄れてしまうような文章を作ってしまう。そこが毎度難点だった。この本はそこが少し救われている。それは彼の深い友であった小松和彦さんの力が作用しているように思う。小松さんは主張のゆるがない文章をもって同じフォルクロアの世界を描いている。今回、本の末尾に小松和彦による文章が加えられている。これが世界をきちんと提示してくれているのが何よりもこの2人の関係を判らせてくれる。
確かに主張がきっちり描けないのは欠点である。でも、それを含めて私は宮田登という人の文章が好きだった。
どこまでも持ち上げられている柳田邦男の世代の陰にありつつ、深い仕事をしてきた人だと思う。