明治のお嬢さま (角川選書 441)

著者 :
  • KADOKAWA/角川学芸出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784047034419

作品紹介・あらすじ

鹿鳴館で踊った母をもつセレブの令嬢たち。明治後期に社交界デビューしたお嬢さまが、自分の才能や個性を生かせる道は限られていた。身分が高いほど束縛され、結婚相手も家格の釣り合いで決められてしまう。そのお嬢さまが頼れる武器は「美貌」。社会の矛盾に悩み、「良妻賢母」という理想に縛られながら、美を求めてお嬢さまたちは涙ぐましい努力をする。女性誌や新聞記事から明治のお嬢さまの本当の姿を明らかにする。

感想・レビュー・書評

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  • 明治時代の家族・皇族といった上流階級に属する女性について書かれた一冊。当時の上流階級の女性がどのような価値観の中で生き、どのような生活を送っていたのかを知ることができる。また、上流階級の女性についてのみならず、それを説明するにあたって当時の世情なども書かれているので、大変勉強になる。当時世間での、女性や結婚、家庭に対する価値観の違いを、読みながら現代と比較するのも面白い。また、世間の美人像の変化や女性の容姿の変化もこのあたりの時代なので、苦心し様々に工夫している様を想像するのも面白い。
    本書には、当時の写真も数多く載っているので目でも楽しめる。

  • 出身高校も、短大も明治時代からの女学校からの流れを汲んでいるので興味深く読みました。
    成金の男性は富が有れば美貌の令嬢と結婚出来る。男性には妾が許され妻は籠の鳥。女性を物視する時代に生まれなくて良かったと思いました。

  • 私は明治時代に生まれなくて、本当に良かった。
    自由な恋愛も許されず、旦那は妾を持ったり娼妓と遊び歩いても当然なのに、女の不倫は姦通罪で逮捕されるとか、ありえない程の男尊女卑。
    でも、女が人として扱われるようになったのなんて、人類の歴史の中でもほんの最近のこと。。。まだ女が人間扱いされていない地域だってたくさんある。
    そんな世界では、到底生きていける気はしないな。

    この本で、一番驚いたのが、妾を蓄える、という意味の「畜妾」という言葉・・・。ちくしょう、と読むそうです。
    同じ家の中に、妻と妾が同居!とか、女中として雇っておいて主人が手を出す(拒む権利ないんだよね・・・?)とか、お給料を払って妾にする、しかも10代の女の子を!とか、そんな一方的なハーレムを堂々と作れたんだから、現代の男性たちがぶつぶつ文句を言うわけだ。

  •  明治時代、士農工商が解消し、四民平等の世の中になったとはいえ、皇族、華族(旧大名、公家、富豪など。公・侯・伯・子・男爵)、士族、平民の階級が。ノンフィクション作家の黒岩比佐子さんが、華族の令嬢たちの生活の様子を再現しました。「明治のお嬢さま」、2008.12発行。広大な御殿、部屋数は70、使用人は150人・・・。嫁探しの授業参観は面白いです。九条節子は在学中に皇太子(大正天皇)の妃に。驚きは華族の70%が妾持ち(家系の存続、財産の継続)。明治天皇も皇后の他に5人の典侍(側室)を。大正天皇以来側室なしに。

  • 明治後期の上流階級の若い女性、具体的には1880-1890年代生まれで明治末頃までに結婚した女性の生活を、新聞や雑誌から読み解いた本。
    彼女たちの生活では、結婚が最重要な目標だった。冒頭で紹介される、結婚を「あがり」にした双六が象徴的。10代後半は適齢期、学校は嫁選びの場。結婚で中退することが珍しくないため「入学時の人数の何分の一しか、卒業生はいなかったのである(p50)」。
    女性たちは、より良い縁に選ばれるべく美容に工夫を凝らし、着物やアクセサリーを買う(第7章)。色白でほっそりした病的な美が理想とされた(p41)。では美人が一番得かといえば、一方では美人コンテスト入賞を不品行と見なされ退学処分になった1908年の事件(p53)もある。つまり本音とは別に、公の場で美人を競い合うこと自体は芸妓など玄人の女性のすることで、はしたないとする考え方があったことを著者は指摘する。
    つまりこの時代、女性は素人と玄人にはっきり分断されていた。本書は前者のうちでも特殊な階級の女性をテーマとしているため「くろうと」側の知識には深入りしないものの、第4章で触れられる妻妾事情が、ある意味では両者の接点だといえる。
    そういえば以前、遊郭に関する本([ https://booklog.jp/item/1/4391108895 ]と思うが、確かでない)で読んだ逸話を思い出した。上流階級の男性が、婚約者とのデートの後、高まった情熱を解消するため遊郭へ来る。婚約者は良家の令嬢だから婚前にみだりがわしいことはできないというモラルの一方で、玄人女性との関係はモラルに反しないのだ。
    そういう社会で、女性かつ上流階級という二重の規範に縛られて生きた「お嬢さま」の生活は、現代人の目から見るととんでもなく窮屈で、羨ましい気持ちは起きない。けれども水中にいる魚が水の存在に気づかないように、当事者にはそれが当たり前で、その中でも現代の女性と同じように、メイクや食べ物や流行の話題にはしゃいでいたのだろう。

  • 1880年から90年代生まれの明治のお嬢様に関して、女性誌や新聞記事から本当の姿を明らかにした一冊。束縛され、生き方を決められ…明治の女性の姿を見ると、本当の日本はこう、とか称賛されたり昔は良かったのにと嘆かれる意味が分からなくなる。ホント、一部の男性のみのためにある社会。今の世の中のほうが全然いいから。こんな世の中とか歌う人も多いけど!

  • 今も昔も、女性は変わらないということですかね。

  • 興味を持ち続けられるように書かれていて、最後まで楽しめた。

  • 面白かった。

  • 鹿鳴館で踊った母をもつセレブの令嬢たち。社会の矛盾に悩み、「良妻賢母」という理想に縛られながら、美を求めてお嬢さまたちは涙ぐましい努力をする。女性誌や新聞記事から明治のお嬢さまの本当の姿を明らかにする。

    今では噴飯ものな驚くべき社会でした、明治。
    えらく窮屈な時代ですが、いつの女性も美しくあろうとするのは変わらないのですね。

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著者プロフィール

1958年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部卒。ノンフィクション・ライター。図書館へ通い、古書店で発掘した資料から、明治の人物、世相にあらたな光をあてつづけた。
『「食道楽」の人 村井弦斎』でサントリー学芸賞、『編集者 国木田独歩のj時代』で角川財団学芸賞、『パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い』で読売文学賞を受賞。
他の著書に『音のない記憶』『忘れえぬ声を聴く』『明治のお嬢さま』など。10年間で10冊の著書を刊行した。惜しまれつつ、2010年没。

「2018年 『歴史のかげに美食あり 日本饗宴外交史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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