室町幕府崩壊 将軍義教の野望と挫折 (角川選書 496)

著者 :
  • KADOKAWA/角川学芸出版
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784047034969

作品紹介・あらすじ

3代将軍足利義満の時代に全盛期を迎えた室町幕府。その50年ほどのち、重臣による将軍謀殺という前代未聞の事件が起きる-。この前期の室町幕府、4代義持、6代義教の時代に焦点を当て、室町殿と有力守護層たちとの複雑で重層的な関係から室町時代の政治史を読み直し、幕府崩壊の一大転換点となった義教謀殺=嘉吉の乱に至る道筋を実証的に跡付ける。

感想・レビュー・書評

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  • 室町幕府将軍足利義教期前後の政治情勢を、当該期の最新研究を網羅しながら、主に「満済准后日記」「看聞日記」「建内記」などの同時代日記を駆使してそのあらましを描く。
    実はこの書名が本書のテーマと思って読んでいると結局最後まで、「室町幕府崩壊」や「義教の野望」に関する内容はほとんど見えてこないのに等しく(おそらく「学級崩壊」のような使い方なのであろう)、書名が「将軍義教期の室町幕府体制と動向」などとした方がまだしっくりくる。自分は途中から書名は忘れることにして読んだ。(笑)また、テーマ別に分類しすぎているきらいがあり、時系列が乱されることが多いので、よほど年(和年号だが)を意識していないと、各出来事の関連性がわかりづらい著述構成になっている。
    足利義教が義満子息で義持兄弟の中から「くじ引き」で選ばれたという逸話は有名であるが、青蓮院門跡・准后・大僧正にして天台座主経験者という聖界頂点に君臨した人物が、将軍になり宿老が次々と他界した後に、「自分を見て笑った」とかそんなことまでを取り上げて多くの人々を処罰したという「万人恐怖」の専制政治者になるとは予期せぬ成り行きだったことだろう。性格破たん者の独裁者のイメージが強い義教だが、そもそも兄である将軍義持が宿老らに遠慮?したことで「くじ引き」当選した義教の目指した方向が、宿老をはじめとした大名家跡つぎ介入などによる大名家勢力削減政策を取ったことはある意味、必然的帰結であり、政治の皮肉ともいえる。これから粛清しようと企んでいたという赤松家の宴に、のこのこ出かけていって反対に謀殺され「犬死」といわれた義教の自信過剰ぶりをもう少し詳しく描くと面白かったように思う。
    義持期の「上杉禅秀の乱」や義教期の「永享の乱」をはじめ、九州や後南朝勢力との戦闘などの「動乱の時代」に、義教擁立から「嘉吉の乱」に至るまで専制者として君臨しようとする政治過程はなかなか面白い。
    「上杉禅秀の乱」とそれに連動した弟・義嗣逃亡事件の背後に実は、宿老のほとんどが加担していたという話と、「嘉吉の乱」での赤松討伐をなかなか行わない様から多くの大名加担を疑われたという話は、本書の背景における好対称を示している。
    宿老らに逆らえず偉大な父・義満へのファザー・コンプレックスのイメージが強い義持だが(笑)、側近である富樫満成に調査させた義嗣逃亡事件が実は黒幕が宿老たちであったと突き止めた途端、女性問題で逆に処罰してしまう(逃げたが、何もしないからと安心させて出頭してきたところをとっ捕まえた)話や、赤松家跡目相続問題に介入して、側近で傍流である赤松持貞を跡つぎにしようとして失敗し、またもや女性問題にかこつけて自殺に追い込む「とかげのしっぽ切り」の様はやはり性格が非常に悪い一家だと思わせ面白かった。(笑)
    政治のぎすぎすした側面と、生々しく進行していく過程が味わえる一書です。(笑)

  • くじ将軍について、まじめな本を読んでみた

  • ちょっとタイトルからは離れすぎてしまった感じを受けた。副題は内容そのまんま。

    「幕府」の崩壊について目立った記述があったのか記憶に残っていない。

  • 室町幕府の第6代将軍である足利義教(1394-1441)を扱った書物。この人物は当初は出家して僧侶となっていたが、前代将軍の足利義持の死去を受け、何と石清水八幡宮でのクジ引きで後継の将軍に選出された。慌ただしく還俗、元服、将軍就任したが、そんな経緯では権力基盤が脆弱なのは容易に想像が付く。そこで足利義教は、意に沿わない者たちの領主を没収したり、理由をつけて討ったりする恐怖政治を敷いたと言われる。本書はそのような足利義教の恐怖政治的な権力基盤の成立、そしてその結果としての赤松満祐による弑逆(嘉吉の乱)に至る足取りをたどったもの。

    足利義教をたどる前に、本書は足利義持について語っている。特に、足利義満の残した膨大な権力基盤の上に、足利義持が何を継承し、何を継承しなかったかが書かれている。一言でいえば、足利義持は足利義満の時代から続く気骨ある家臣たちに支えられていた。管領の斯波義将、畠山満家など。しかし、称光天皇の迭立に反対する後南朝勢力に与するものがいたり、上杉禅秀の乱への対処での内紛など、その権力基盤は脆弱だった(p.47)。こうした脆弱な権力基盤は、より弱体化した形で足利義教に受け継がれていった。

    著者は足利義教の権力基盤の確立の道のりを、家臣たちに対してのみならず、様々な観点で検討している。南朝皇胤の断絶を含む公家・朝廷に対するもの、僧侶時代に天台座主であった人脈を活かした寺社勢力に対するもの、永享の乱・結城合戦における鎌倉公方に対するものなど。なかでも、後花園天皇の迭立に当たっては、足利義教は積極的にリーダーシップを発揮し、自身の権力を印象付けようとしている(p.112ff)。着目点の面白さとしては、文芸が権力基盤の維持に果たした役割が挙げられよう(p.156-162)。連歌会や勅撰和歌集の撰修に当たって、誰を会のメンバーに加え、誰を加えないかによって、幕府の政治には参加しない家臣たちとのバランスを取ったり、競争心を煽ったりしている。

    足利義教の専制的な恐怖政治は、家臣の個々の家の家督問題に介入する形で確立されている(p.193)。著者は有力家臣たちの具体例をいくつか検討し、その様を明らかにしている。嘉吉の乱の直接の原因が、赤松満祐の討たれる前に討つという動機にあったため、この恐怖政治の手法は足利義教自身の最期に直結している(それにしては、なぜこの手法を足利義教が取ったかについての検討はない)。恐怖政治への移行、足利義教の「暴走」を、著者は永享三年の大内盛見の敗死とその後の九州内乱に見ている(p.182-185)。もともと将軍専制の理念があったのだが、もっとも頼りとしていた大内盛見が亡くなり、その他の有力家臣が九州内乱に対して有効な手立てを打てない体たらくだったことが、足利義教を専制に駆り立てたとしている。

  • まだそこまで知識ないのだが読んでみた。
    室町幕府崩壊というタイトルからイメージするものと、実際の内容では差があったのだが、そこは知識がなかったからだなぁと読了した現在では思う。
    いわゆる「くじ引き将軍」義教を中心に、彼が立ち向かっていた様々な問題を前代から読みときつつ、彼の時代までの幕府の政治機構・形態について考察。

  • 足利義教に関する研究論文集。
    満済准后記を中心に資料から引用して極めて精緻に論じている。

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著者プロフィール

1949年、長崎県生まれ。九州大学大学院博士課程中途退学。福岡大学名誉教授。文学博士(1985年 九州大学)。専門は中世日本の政治と文化。著書に、『太平記の群像』『闇の歴史、後南朝』『室町幕府崩壊』(角川ソフィア文庫)、『足利尊氏』『足利直義』(角川選書)、『南朝全史』(講談社選書メチエ)、『戦争の日本史8 南北朝の動乱』(吉川弘文館)、『後醍醐天皇』(中公新書)、『増補改訂 南北朝期公武関係史の研究』(思文閣出版)など多数。

「2023年 『足利義満』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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