- Amazon.co.jp ・本 (366ページ)
- / ISBN・EAN: 9784047035096
作品紹介・あらすじ
伝源頼朝・伝平重盛・伝藤原光能像は、足利直義・同尊氏・同義詮像だった。では、神護寺三像は、いつ、なんのためにつくられたのか。三像の「大きさ」に着目した著者は、絵絹や肖像の大きさを比較し、面貌の肖似性を確かめ、ついに夢窓疎石と直義の『夢中問答集』の記述に到達。三像が「互の御影」になぞらえて対の肖像としてつくられ、神護寺に安置されたことを論証する。三像の数奇な運命から南北朝内乱期の歴史を描き出す。
感想・レビュー・書評
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神護寺所蔵の3つの大きな肖像画(「源頼朝」像、「平重盛」像、「藤原光能」像)をめぐっては、古くからその作者や作成時期、肖像の人物について疑問が呈示され、特に近年はこれを南北朝期に作成された足利直義・尊氏・義詮像とみなす「新説」が市民権を得つつあるが、本書はその新説の集大成と言える内容で、美術史学ではともかく、少なくとも一般史学においては一連の論争に終止符を打った著作と評価しうる。画像の内容・様式から鎌倉初期の作品ではありえないこと、1345年の「足利直義願文」の内容から直義の発願により神護寺に肖像が納められたことが確認できることなどは、米倉迪夫ら既出の研究を追認しているが、本書オリジナルの研究成果として、足利直義がなぜ神護寺に肖像を安置させたのか、その政治的・宗教的理由と背景を明快に示したこと、なぜこれらの肖像が治承・寿永内乱期の人物画像として伝来したのか、整合性のある仮説を提起したことは重要であろう。神護寺三像の「真実」の追求にとどまらず、観応擾乱期の政治史に見直しを迫っている点も見逃せない。
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歴史学者による神護寺三像に関する研究結果をまとめた本。神護寺三像については、以前から学会でも描かれているのが源頼朝なのかどうかで論争になっていたが、本書は、緻密な研究結果を論理的、学術的かつわかりやすくまとめている。結果、絵は源頼朝でないことがほぼ確定的であることがわかった。説得力があり、とても興味深い内容であった。
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教科書などで「頼朝像」と思い込んで来た絵が実は足利直義であったとする大変面白い本。同じテーマで米倉迪夫「源頼朝像 沈黙の肖像画」を読んだ時も知的好奇心が掻き立てられましたが、本書は美術史的アプローチではなく、絵画史料論から、絵絹、大きさなどに切り込んでいき、数多の文献を渉猟し、大胆に推理した仮説を展開するもので、スリリングな好奇心の渦の中に巻き込まれます。いや〜、面白い本でした。
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出口治明著『ビジネスに効く最強の「読書」』で紹介
伝源頼朝像、伝平重盛像、伝藤原光龍像は別人だった――。様々な謎を歴史的に推理。 -
京博の「京へのいざない」に行き、神護寺の伝頼朝・重盛像を見たので興味本位で読んだ。元々足利尊氏と直義であると言われていることは知っていたが、どうしてなのかは分からなかったが、この本を読んで分かった。直義の願文がちゃんとして残っていたことと絵の描き方やら図面の大きさを考えれば鎌倉時代ではなく南北朝時代になるということそして等持院の彫像と酷似しているからという。これらのすべてを列挙するとこれらが足利家の肖像画であることが事実だと分かるんだが、新説に批判的な美術家だけでなく所蔵しているお寺さん自体が頼朝と重盛だと言い張っているからこれからも伝頼朝扱いされるんだろうな・・。
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非常に良かった。
分量は多かったが、平易な内容で記述されており分かりやすかった。
作者も述べていたように、徐々に核心に迫っていく展開のため最後まで楽しく読めた。
一つのテーマに絞って、真実に迫っていく。
歴史関係の本は、テーマが広い著作ばかりなので新鮮であったが、非常にぉ面白かった。
評価は★5だが、100点満点なら100点をつけたい1冊。 -
最後の数章が面白く、★3つと相成った。
ただ全体的に平板な記載で知的興奮に満ちているという感じではない。
しかしこの肖像画論争、どこか的外れな議論に満ちている気がする。
何年もの間「常識」が固まると、周りが見えなくなる典型ってことかな。