遣唐使 阿倍仲麻呂の夢 (角川選書 530)

著者 :
  • KADOKAWA/角川学芸出版
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784047035300

作品紹介・あらすじ

帝国・唐の重臣閣僚となった阿倍仲麻呂。その非凡な才は新生国家としての日本を体現する知そのものだった──。仲麻呂の生涯を貫く夢と、ただ一首だけ残された歌「天の原」の謎を、日唐交流史を背景に鮮やかに描く!

感想・レビュー・書評

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  •  阿倍仲麻呂への王維の送別詩の序の解釈が載っているので読んだ。
     この注釈について、著者は、なにかたいした仕事をしているような口振りで書いているが、そんなに難しい文章だとも思えない。典故については、万葉学者の著者には難しかったかもしれないが、中国古典文学者にとって、そんなにたいしたものだったとは思えない。岩波文庫の王維選集にこれが省いてあるのは、小川環樹が読めなかったからではなく、長くて、いちいち注釈をつければさらに長くなってしまうだけだろう。
     高島俊男も長いからと省略していた。(「中国古典詩聚花8 友情と別離」)

  • 人物叢書の仲麻呂の後に読みました。
    人物叢書とは違う説もあり、また上野先生らしく叙情的な詩や歌の訳が読みやすく面白かったです。特に王維の仲麻呂への送別詩の章がなるほど圧巻。意外に天の原の和歌は伝承的な面からのアプローチがメイン。
    唐での仲麻呂に関しては人的ネットワークを重視しておりましたね。上野先生は科挙及第説だけど、科挙及第してない説の人物叢書でもその辺りが重視されてたような。やはり仲麻呂に対面的な人間関係構築の才能があったと思われる。
    仲麻呂を語る上で真備が必須(あるいは逆も)なのはこの本でも同様でしたが、やはりこの二人全然違うな!というのが色々読めば読むほど実感されますね。そもそも遣唐使がこのタイミングで無かったら全く接点が無かったかもしれない。
    天の原の歌に関しては、この歌の余白部分とそろそろ伝説の人に近い阿倍仲麻呂の人生とがセットになった時に増幅されるイメージが後世として語り継がれやすいものだったという気がします。
    仲麻呂や清河などの過去の遣唐使が後世同じ遣唐使発遣の際に贈位されたりしてるのは怨霊信仰のようなものだとありましたが、和歌で語り継がれるのもそれに近いと思いました。
    やはり遠い世界の伝承の中の人物のイメージのほうが強そう。

  • 1年間留学した身としては、まじですごい。言葉も文字も分からんし、周りに日本人がいないのに官僚まで上り詰めるなんて。えげつない。

  • 上野氏の著作を初めて読んだが、とても読みやすい。阿倍仲麻呂についてわかることとわからないこととを分けながら、しかし当時の状況がイメージしやすく、どんな人生だったか夢見られるようになっている。何度も読みたくなる本。

  • さいきん、近代以前の日本と外国との関係に対する興味がふくらみ、関連する本を読んでいます。
    この本は、西暦700年頃に生まれた阿倍仲麻呂の生涯を、万葉集の研究者が検証した一冊。
    中級貴族の家に生まれ、その学識により遣唐使に選ばれた仲麻呂。
    717年頃、唐に渡った仲麻呂は、その目的である学問をさらに重ね、科挙に及第したと言われています。
    唐の宮廷社会の中で人脈を作り、出世していく仲麻呂。
    皇帝の信頼も得た彼が、長い在唐期間を経て選択したのが「日本に帰る」ということ。
    しかしその彼に待ち受けていた運命は・・・。
    当時の「先進国」である唐に入り、李白、杜甫、王維といった一流の知識人たちと交流し仲間となった日本人がいたことに、今更ながら驚きました。
    科挙については以前、浅田次郎の小説でその過酷な受験の様子が描かれていたので、日本に生まれ育った人がどのような勉強をしたのかと、当時の様子を想像してしまいました。
    そして当時の日本という新しい国がいかに、唐という大国に学び国としての形を作ろうとしていたのかも、リアルさを持ってイメージすることができました。
    本書のクライマックスは、友人となった王維が、日本に帰る仲麻呂にあてた詩の解釈の部分になっています。
    その背景としてに、中国で政治を司る人々に何が求められていたのかが説明されているので、これまで理解できなかった、「歌を読む」という行為の意味がようやく、理解出来たように思います。
    小説と比べると読みやすさという点では割引が必要ですが、今の自分にとてもフィットした、知的好奇心に応えてくれた一冊でした。

  • 遣唐使を経て、科挙に及第、皇帝から寵愛を受けるまでの高級官僚になった阿倍仲麻呂。遠い昔にこんな日本人がいたことにまず驚くが、そんな遠い昔を史実を調査し続ける研究者(著者含む)たちの情熱に感嘆する。

  • 最近読んだ本のどこかで、
    阿倍仲麻呂と李白等の交流について
    ちらりと触れられていたので、
    改めてその生涯を知りたくなって読んでみた。

    阿倍仲麻呂と言えば、
    遣唐使として唐に渡り、帰国が叶わなかった人、
    ぐらいにしか覚えていなかったので、
    唐での活躍ぶりを知り、驚いた。

    そういえば、唐で重用されたと
    日本史の教科書にも書いてあった気がするが、
    これほどまでとは思っていなかった。

    そして、東の最果てから来た留学生が、
    皇帝の近くにまで出世することができるとは、
    唐帝国の国際性にも驚いた。

  • 中国の科挙で登用された文人官僚たちは、四書五経を初めとする基本書の暗誦をベースとする共通知のいわばパターン・ランゲージに支えられて、国政や文芸のコミュニケーションを行う共同体であった、という分析が面白かった。

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著者プロフィール

奈良大学文学部教授。著書『万葉文化論』(ミネルヴァ書房・2019)、論文「讃酒歌十三首の示す死生観—『荘子』『列子』と分命論—」(『萬葉集研究』第36集・塙書房・2016)など。

「2019年 『万葉をヨム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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