無宗教こそ日本人の宗教である (角川oneテーマ21 C 164)

著者 :
  • 角川グループパブリッシング
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  • Amazon.co.jp ・本 (183ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784047101753

感想・レビュー・書評

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  • 日本人の宗教観から歴史、宗教について説明がされている。

    日本人が抱いている宗教への価値観、諸外国への関わり方など、宗教の歴史の知識以外にも感じることができるかと。

  • 島田裕巳(1953年~)氏は、東大文学部卒、東大大学院人文科学研究科博士課程満期退学、放送教育開発センター(現・メディア教育開発センター)助教授、日本女子大学教授、東大先端科学技術研究センター特任研究員等を経て、東京女子大学非常勤講師。宗教学者として、宗教に関連する一般向け書籍を多数執筆。
    私は新書を含むノンフィクションを好んで読み、興味のある新刊はその時点で入手するようにしているが、今般、過去に評判になった新書で未読のものを、新・古書店でまとめて入手して読んでおり、本書はその中の一冊である。
    章立て及び内容は以下の通り。序章:「無宗教」は恥ではない!、第1章:日本人は本当に「無宗教」と思っているのか?、第2章:日本人はなぜ「無宗教」なのか?、第3章:日本人はどうやって「無宗教」に至ったのか?、第4章:日本人はなぜ「無」に惹かれるのか?、第5章:「無宗教」は世界で大きな価値がある、第6章:世界の宗教も実は「無宗教」である、第7章:「無宗教」が世界を救う、補章:JUniverse(ジュニヴァース)の未来
    本書において著者が最も言いたかったことは、日本人はこれまで、自らを「無宗教」であると言うときに、コンプレックスや引け目を感じることが多かったが、20世紀の終わり頃から、世界各地で様々な宗教の原理主義化が進み、対立や抗争を繰り返して、世界平和を脅かすようになり(サミュエル・ハンチントンのいう所謂「文明の衝突」が現実化した)、そうした中で、日本人の無宗教であるが故の排他性の無さは極めて貴重で、世界平和のために大いに役立つものである、ということで、この主張については同感である。
    また、著者は、複数の宗教間で教義が異なるからといって、自動的に対立や抗争が起こるわけではなく、何らかの形でお互いの利害を犯すようにならなければ、暴力的な宗教対立に発展することはない、とも言っているが、これについても基本的に同意する。私の考えでは、現代において、多くの場合のきっかけとなるのは(経済)格差である。
    一方、著者は、日本人が「無宗教」であるという結論を導くために、「無神論」、「多神教」の概念や、神道、仏教、神仏習合、新宗教、等々にも話が及ぶのだが、個々の解釈・説明においては、結論ありきの我田引水的な部分もあり、腑に落ちないところがあったのは残念である。
    翻って2022年時点の世界を見ると(本書の出版は2009年)、米中対立の激化とロシアのウクライナ侵攻が、世界に大きな影響を与えており、これらが宗教対立によると言えるかはわからないが(前者は西方キリスト教と中華思想の宗教的対立と言えるかも知れない)、一方で、キリスト教世界とイスラム教世界の対立は依然続いており、著者の提起したテーマの重要性は変わらない。
    そうした中で、我々日本人には何ができるのか。。。私の考えでは、宗教に端を発する問題の最大のポイントは、排他的な一神教同士の対立にあるので、我々日本人が「無宗教」であろうと、「無神論」であろうと、「多神教」であろうと、自分たちの心の安寧を得ることはできても、世界各地の対立を収めることは難しい。
    著者は本書を次のように結んでいるが、その意味は深い。
    「日本人は、今、無宗教であることの幸福を認識し、そこから次のステップを踏み出していかなければならない。世界は果てしなく広がっている。それを限定されたものとしてとらえるほど愚かなことはない。無宗教は、信仰の対象ではない。それは世界そのものであり、私のなかにも広がっている。可能性はそこにしかないとも言える。まだ、無宗教についての考察ははじまったばかりなのである。」
    (2022年10月了)

  • 「宗教は?」と問われて「無宗教です」と答える日本人。新宗教を警戒し宗教という存在自体に一定の距離を置きたいのか?そして信仰心の無さにコンプレックスを持っているのか?無宗教か、多宗教か?世界的に見て、ちょっと特殊に見える日本(人)の宗教観が、実際どんなものなのかを問い直し、最後には宗教を通じた日本のグローバリズム論も展開する。
    《国家があてにならない状況のなかで、人々が頼れるものは宗教である。》本書からのこの引用が真ならば、逆もまた真なり。

  • ●無宗教と公言する日本人が、実は宗教に対して強い関心を持ち、ある意味熱心に宗教活動、信仰活動を実践している、、、56
    ●現代の日本人は、結婚式を神道で行い、葬式は仏教で行うことを、いいかげんで無節操なことだと、自嘲的に語る傾向がある。 しかし、そうした慣習の背景には、神仏宿合という、長い歴史を経て形成されてきた信仰のあり方がある。決してそれは、いいかげんなものでも無節操なものでもない。それは、日本人なりに、日常の生活に合う形で、独自に形を作ってきた信仰のあり方であり、卑下する必要は全く無いのである。76
    ●自分たちの宗教は何かと問われたとき無宗教と答えるしかないと感じながらも、無宗教だと公言することに、ためらいを覚え、時にはコンプレックスさえ感じてきた。 無宗教のいいかげんさを示す事として、良く引き合いに出されるのが、日本人の神道、仏教、キリスト教とのかかわり方である。 決して無原則にやっているわけではない。 一定の原則があり、異なる宗教のあいだでの役割分担が存在している。
    ★海外に行ったとき、よく宗教について聞かれた。なんと答えていいのか、答えに窮した。その時の事を、思い返しても、なるほど、自分でこんな感じで宗教を感じていたのかなと思う。基本無宗教といいながら、判ってもらえないので、その場しのぎで、仏教を言っていた。外人は宗教になると熱くなるからメンドクサイんだよね。
     ただ、無宗教の自分の現況を理解しても、この内容を外人にどう説明したらいいのだろうか。判ってもらえないだろうな。。。

  • 「あなたは宗教を信じますか?」 この問いに多くの日本人は、答えることができない。そして、自分は宗教に無関心だと思っている。しかし、無宗教は大きな価値のある宗教なのだ。無宗教、その「魅力と可能性」を初めて明かす!【「TRC MARC」の商品解説】

    関西外大図書館OPACのURLはこちら↓
    https://opac1.kansaigaidai.ac.jp/iwjs0015opc/BB40102082

  • 日本の特異性を見事につまびらかにしてくれている快書。仏教や神道の著作ではなく、一神教関係の著作を読んでから読むと面白さが際立つ気がする

  • 「宗教」と聞いて日本人の多くがイメージするのはキリスト教やイスラム教などの外国の宗教や、創価学会や天理教などの新興宗教であり、「あなたの宗教は?」と聞かれて答えに戸惑う人も少なくない。現代の日本人は自分たちを「無宗教」と呼ぶが、それは神や宗教を否定するものではなく、神道と仏教が混ざり合いながら生活に密着した独特の世界観を持った日本人の強みであるのかも知れない。「無宗教こそ日本の力!」、宗教学の第一人者がそう断言する。

  • 2009/12/18

  • 無宗教は、無神論とは異なって、神道と仏教を異なる宗教と認識しない多くの日本人のようなもので、自分が檀家になっている宗派以外を認めないというものではないという宗教観。

    片や世界を見れば、十字軍の時代から現代のテロに至るまで、一神教を信ずるがゆえの宗教戦争は終わっていない。

    こういう時代だからこそ、日本人の持つ無宗教的な宗教観こそが世界を救う!ってことを云いたいみたいです。

  • 無宗教と無神論は違う。。捉え方次第だろうが自分としてはそもそも同じだと考えたことは無いな。
    カトリックと仏教、神道とイスラム教、それぞれの共通点は興味深い。
    たしかに寛容な無宗教こそ平和への道だと思う。

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著者プロフィール

島田裕巳(しまだ・ひろみ):1953年東京生まれ。宗教学者、作家。東京大学文学部宗教学宗教史学専修課程卒業、東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。放送教育開発センター助教授、日本女子大学教授、東京大学先端科学技術研究センター特任研究員を歴任し、現在は東京女子大学非常勤講師。現代における日本、世界の宗教現象を幅広くテーマとし、盛んに著述活動を行っている。 著書に、『日本人の神道』『神も仏も大好きな日本人』『京都がなぜいちばんなのか』(ちくま新書)『戦後日本の宗教史――天皇制・祖先崇拝・新宗教』(筑摩選書)『神社崩壊』(新潮新書)『宗教にはなぜ金が集まるのか』(祥伝社新書)『教養としての世界宗教史』(宝島社)『新宗教 戦後政争史』(朝日新書)等多数あり。

「2023年 『大還暦 人生に年齢の「壁」はない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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