作家とは何か ――小説道場・総論 (角川oneテーマ21 B 118)

著者 :
  • 角川グループパブリッシング
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  • Amazon.co.jp ・本 (207ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784047101869

感想・レビュー・書評

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  •  400冊以上の著作をもつベテラン作家が、「職業としての小説家」の内実を明かした一冊。『小説道場』という単行本の第2部「総論」を独立させ、大幅な加筆訂正を施したものだ(ちなみに、『小説道場』の第1部「実践編」も、『小説の書き方』と改題されて同じ新書から出ている)。

     カバーには、「たった二時間でわかる作家になるための基礎知識」という惹句がある。企画意図としてはそういうことなのだろうが、読んでみると、ハウツー書としてよりもむしろ読み物として面白い。
     というのも、「そこまで書いていいんですか?」と心配になるほど赤裸々に、“小説家業界”の舞台裏が明かされているからだ。

     たとえば、ゴーストライターが書いた小説の存在について、次のようにあっさりと認めている。

    《小説では、作者の技量が衰えても、贋作ということはないが、ゴーストライターによる作者の意志や了解による作品はある。これは作者の意志に基づいているのであるから贋作とは異なるが、読者を欺く偽書には違いない。》

     “ギョーカイ噂話”として「誰某の小説はゴーストライターに書かせている」などと語られることはあっても、第一線の作家が大っぴらに「ゴーストの存在」を認めるのは珍しい。

     もっとスゴイのは、作家に対する出版社の「部数保証」について明かしているところ。

    《一人の作家の巨大ベストセラーが、出版社の浮沈にも関わるということになれば、その作家の発言力が強くなるのは必至の成り行きである。作品の売れ行きが下降した後も、巨大ベストセラーの余韻は残る。出版社としては、またいつミリオンセラーを出すかもしれない潜在能力を秘めている作家を、売れ行きが落ちたからといって掌を返すように冷たくはあしらえない。
     そのような場合、発行部数を保証して、作家をつなぎ止めようとする。つまり、実際には七、八万部しか印刷しなくとも、作家の手前、十万部発行したことにして、その分の印税を支払うのである。これを「部数保証」と言う。架空の発行部数分の印税を支払っても、返本の山を抱えるよりは、出版社にとってダメージが少ない。》

     角川書店は文芸誌も出しているのに、そこが出している新書にこんなことを書いてだいじょうぶなのか? あの『噂の眞相』がいまもあったなら、「森村誠一が暴露した小説業界のタブーに、文壇激震!」という記事にしたことだろう。

     また、森村自身のデビュー当時と現在を引き比べて、いまどきの新人がいかにシンドイ立場に置かれているかを説明するくだりも興味深い。

    《私が作家としてデビューしたころと比べて、現在は作家登竜門の新人賞は多い。どんな新人賞でも倍率は百倍以上である。その難関を突破して、作家としてデビューしても、生き残るのは一~二%である。
     登竜門が増えた分だけ作家の使い捨ても増えている。我々の新人時代は、売れなくても切られるということはなかったが、今日ではデビュー後三冊出版して、おもわしくなければ引導を渡されるそうである。》

     ほかにも、編集者・出版社・作家・読者のタイプ別分類とか、皮肉たっぷりのぶっちゃけ話が随所で炸裂。小説家志望者のみならず、一般の小説読者が読んでも面白い本になっている。

  • つまんない本だったのですが、「編集者を選ぶことの重要性」「短編だけでなく長編も書けるようになる必要」など、あとで思い出して意外と参考になることが書いてありました…。

  • 繰り返しの内容が多い。
    特別な発見がなく(推測の範囲内ばかりで)退屈な内容だった。

  • もっと気位持って「作家をナメンナ」というところを書いても良かったのでは。

  • カテゴリーを新書にしようか迷いましたが、あえてこっちに。著者の作家論で、時々出てくるエピソードにニヤリとさせられました。色々な意味で参考になりました。

  • 新書コーナーを見ていたらふと目に付いたので借りてみた1冊。
    小説家志望ではないので、ふーんといった感じでの読みであったが、
    森村誠一氏のことについて、少しでもふれることができたのはよかったかなと。

  • 森村誠一さんって、私より年上の方向きというようなイメージだったのですが、この本はすごく読みやすかったです。印象に残った言葉は「人間の欲を書かないと人間味のない小説になるが、それだけでは足りない。それを超えたものからは良い芳香がする。それこそ芸術性というものだ。」というもの。いろいろな本を読んできて、感覚的にわかるなーと思いました。

    村上龍さんの「14歳のハローワーク」ではないけれど、若いうちに様々な職業の中身(理想と現実のギャップ、働いている人から見た向き不向きなど)を知ることって大切な気がしました。

  • 読書と作家の分類が面白い!

  • 作家の何たるかを説く解説書。
    なるほど。と思う点がたくさん。

  • ちょっと私には辛気臭かった。
    折をみて読み直し予定!

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著者プロフィール

森村誠一
1933年1月2日、埼玉県熊谷市生まれ。ホテルのフロントマンを勤めるかたわら執筆を始め、ビジネススクールの講師に転職後もビジネス書や小説を出版。1970年に初めての本格ミステリー『高層の死角』で第15回江戸川乱歩賞を受賞、翌年『新幹線殺人事件』がベストセラーになる。1973年『腐触の構造』で第26回日本推理作家協会賞受賞。小説と映画のメディアミックスとして注目された『人間の証明』では、初めて棟居刑事が登場する。2004年に第7回日本ミステリー文学大賞受賞、2011年吉川英治文学賞受賞など、文字通り日本のミステリー界の第一人者であるだけでなく、1981年には旧日本軍第731部隊の実態を明らかにした『悪魔の飽食』を刊行するなど、社会的発言も疎かにしていない。

「2021年 『棟居刑事と七つの事件簿』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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