耳で考える ――脳は名曲を欲する (角川oneテーマ21 A 105)

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  • Amazon.co.jp ・本 (207ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784047102057

感想・レビュー・書評

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  •  解剖学と音楽界の権威の対談である。異なるジャンルの2人が、目や耳といった感覚器のしくみや理論を展開していく流れはひきつけられるものがたくさんあった。(まとめれてませんが・・・)

    ・ 視覚と聴覚では処理時間がずれる。映像よりも音楽が先にとびこむ。 視覚にないものは時間。聴覚にないものは空間。よって「時空」という概念が生まれる。

    ・ 人間は本能的に行動しないで、脳で行動する。脳のルールが「言葉」によって作られる。それは自然には意味のないものである。よって作られた「都市」は「脳化」社会と言える。 

    ・ 言葉で表現できない感覚「クオリア」。しかし現代人の感覚は落ちている。知識として残らない、覚えてもアウトプットできないは排除されがち。言葉で説明できない物を表現するために芸術がある

    ・ 耳はものを聴く以前に、自分の体の動きを把握する運動系の要素が強い。感覚器は二重構造になっているが、松果体もヤコプソンの器官も退化傾向にある。しかし、三半規管は退化できない。古い感覚器が耳だけは非常に強く残っている。脳から聴覚は古いところに直接届いているので、情動に強く影響する

    ・ 「ハーモニー」は響き、空間的把握。時間軸上のリズム。「メロディー」は時間と空間の中の記憶装置である。

    ・ 聴覚系が本来持っているのが、論理性である。そして脳は視覚に騙されやすい。疑問文は論理の基本。個性はからだにあり。

    ・ 日本人には構築性がない。 空気が変われば、感性が変わる

    ・ 情報化(ものを書く、ものを作る)と情報処理(言ってること、書いていることを上手にまとめる)ことである。言葉で動くのは人間の気持ちだけ。互いの関係をもっと豊かなものにするために言葉を使うべきだ。

    ・ オリジナリティとは、新しい共感を発見すること。独創性を過ぎると理解されないし、手前に転ぶと大衆性になってしまう。その綱渡りがアート。

    ・ 現代人に欠けているのは自分の利益にならないことを受容するという考え方。与えられた素材がどんなものであれ、それで我々は作品を書かなきゃならない。自分の一生は、自分で描ける最大限の作品である。

    ・ 現代人は生きているという感じが見えていない。自然に入っていくことが感覚のバランスを取り戻すこととなる。

  • 言葉は世界を豊かにするものと唯脳論者が言う。そこが魅力

  • 共感性と創造
    他者、時代、音…共鳴→ミラーニューロン、対話、リズム
    ・オリジナリティは共感性の中にある

  • 売れる、売れないの話、興味深かったです。
    売れる音楽というのは、共感性というものが強いから売れるのだといいます。それで、共感性ばかりが強ければいいのかといえば、それは作り手としても、芸術作品という観点からしても、そうではないんじゃないかと、久石さんも養老さんも疑問を持っています。僕もこの意見には賛成で、共感性だけではなしに先見性や説明的なものや新しい概念が含まれているほうが、たとえ売れなくたって価値は高いと思いますし、大体、売れるものだから価値が高いかと言えばそうじゃないでしょう。よく売れる安いハンバーガーがあったとして、その価値は否定しませんが、それに至高(あるいはその近辺)の価値があるとはいえないのに近いような気がしました。

  • こういう対談ものは結構好きです。
    文明批判みたいな内容もありますが、全体的にエピソードが面白かった。

  • タイトルからもっと音楽に特化したものかと思っていたけど、そんなことなくて日本社会の様々なことに触れていた。
    養老さんの白熱具合に久石さんが少し引いてる感じがおもしろかった。

    脳化の箇所で自分もほんとに「ああなれば、こうなる」って考えてばっかで、そら色々つまらんわと思った。

    田舎と自然との触れ合いの重要性は十分にわかった。それでも、僕は田舎に参勤交代はしたくないけど。

    にしても、音楽だけじゃなくて普遍的な所からとても示唆に富んでいて目から鱗やったなー

  • 学者と芸術家の融合♪
    耳で考える、
    って言葉では終わらない内容なので、
    理性派も本能派も読んでみることを
    オススメ♪

  • [ 内容 ]
    わたしたちはなぜ“耳”の重要性を忘れてしまったのか?
    聴覚の持つ神秘の力を、第一人者が問う。

    [ 目次 ]
    第1章 なぜ人は音楽で感動するのか
    第2章 感性の土壌
    第3章 いい音楽とは何か
    第4章 意識は暴走する
    第5章 共感性と創造
    第6章 人間はみな芸術家

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

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    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
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    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • もっと音楽に特化したものかと思いきや、日本社会など様々な切り口から対談している。面白い。

  • 養老先生の本の中で個人的にはベスト!

    後半の「呪いのことば」のところはまさしくその通りだと思ったし,久石さんのその表現の仕方,養老先生との感性のリンク,読んでいて引き込まれる本だった。

    すばらしい。

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著者プロフィール

養老 孟司(ようろう・たけし):1937年神奈川県鎌倉市生まれ。東京大学名誉教授。医学博士(解剖学)。『からだの見方』でサントリー学芸賞受賞。『バカの壁』(新潮社)で毎日出版文化賞特別賞受賞。同書は450万部を超えるベストセラー。対談、共著、講演録を含め、著書は200冊近い。近著に『養老先生、病院へ行く』『養老先生、再び病院へ行く』(中川恵一共著、エクスナレッジ)『〈自分〉を知りたい君たちへ 読書の壁』(毎日新聞出版)、『ものがわかるということ』(祥伝社)など。

「2023年 『ヒトの幸福とはなにか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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