さよならもいわずに (ビームコミックス)

著者 :
  • エンターブレイン
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (275ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784047266025

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  • 最も自分に近しい人が、突然いなくなる。
    予測していないことが、当然のことのように起こることに筆者は戸惑う。

    事実に対する違和感からこの世のことと受け止められない感情と、喪失感が混ぜ合わさった、妻を亡くした風景を切り取った、悲痛でいて、客観的にななめ上から自分を観察しているようなクールさがどこかにあるような、不思議な力のある作品。

  • 「最愛の家族と突然の別れ」どの家庭でも一度は考えたことがあるのではないか。
    心の準備ができないまま、話しかけても答えてくれない・反応してくれないのはなんとも辛い・・・

  • 漫画家にしろ小説家にしろ映画監督にしろ表現者達の業のなんという深さか。 えぐり込むように作者の内側をさらけ出したかと思うと、次のページではゾッとするほど客観的に突き放したような描写があったりと控え目に言っても異常である。 愛する人が居なくなった後に、時間が経ったとはいえ一つの作品として落とし込む事がなんで出来たのだろうか。 張り詰めた緊張感と虚無感、そして執着と愛情。 美しい物語であると同時に、とても「おそろしい」作品だと思う。 ラスト15頁に渡る展開に涙、訳も分からずに涙。

  • ある日突然逝ってしまった妻との別れは、作者の存在を根底からゆすぶるような衝撃をもたらした。その過程を詳細に描いたドキュメントだ。
    上野は様々なマンガの技法をパロディ化して作品を組み立てていく、アプロプリエーションを身上とするギャグ漫画家だが、リアリズムに徹することで孤独感が恐ろしいほどひしひしと伝わってくる。時として慟哭がリアリズムを超えてあふれでて、文字通りのシュールレアリズム的な表現に達している。
    作者は現在、次の生活を見出していることも暗示されている。別れにしっかり向かい合い、弔いのプロセスを経ることこそが、次の一歩を踏み出すための近道なのだ。それは同じような境遇の人にも、力強いメッセージとなるのではないか。

  • 突然妻を失ったギャグ漫画家が描く、異色のドキュメンタリー。上野顕太郎にしかできないかなしみの表現、悲哀の中にも笑いの心を忘れない漫画家としての矜持が垣間見えて、読み終えた後に清々しい気持ちが残る。
    作者はさよならも言わずに遠くへ行ってしまった奥さんに、漫画を通して別れの言葉を言えたのではないかと思う。

  • つらい時につぶやける名前があるのは素敵なこと

  • こちらはただ読んでいるだけなのだけど、愛する人を亡くした感覚や感情が、淡々と進む生活とは裏腹に生々しく伝わってくる。 気迫のある作品。

  • 1人の漫画家の愛と、愛する人を突然失った日々の記録。世界は色を失い溶ける。この作品は、作者でなくては描けなかった、そして描かなくては生きられなかったのだろうと思わされる。傑作というだけでは言葉が軽くなる、作者渾身の作。

  • 家族のピースが一つ欠けただけで、世界がグルッと変わってしまう恐怖が痛い位に刺さる。自責の念に囚われ、すぐに前を向くことは難しい・前進できない日常にもどかしさを感じながらも生きて行かなくちゃいけないのは辛い。死とは魂との別れ。「この体にキホはいない」今生きているうちに、伝えられるうちに精一杯やっていかなくてはいけないと思った。

  • ・「誰かが俺を狙撃してくれないか」
    大切な人を亡くした時に自分も思った事だった。
    ・電車の車輪が大きく描かれている場面も。自分も逝きたい。なのに後追いできない情けなさ生きている苦しさ。次の場面にただ真っ黒な塗りつぶしで表された作者が自分と重なり涙が出た。
    ・どうにもならない悲しみ どろどろと溶けていくような表現。人の形を留める事ができないくらいの絶望感。
    ・前向きに生きていこうという終わり方では無かったと思う。遺されたもの相手の死を受け入れるしかない。
    ・家族や恋人を大切にしようだとか妻が生きた証とか、そういうのを伝えたかった漫画では無いのではと思う。「心が裂ける音」ただそれを聞かせたかったのでは、と自分は思う。

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著者プロフィール

心底しょうもないネタをあらゆる技法を駆使し圧倒的なクオリティで描く、非経済的なギャグ漫画家。1983年「週刊少年チャンピオン」からデビュー。以後各誌で『朝日のようにさわやかに』『帽子男は眠れない』『ひまあり』『五万節』などを発表。2011年『さよならもいわずに』が文化庁メディア芸術祭で推薦作品に選出。1998年から「月刊コミックビーム」で『夜は千の眼を持つ』を連載中。近著に『ギャグにもほどがある』『いちマルはち』『暇なマンガ家が「マンガの描き方本」を読んで考えた「俺がベストセラーを出せない理由」 』など。

「2016年 『夜の眼は千でございます 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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