脳に棲む魔物

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制作 : 澁谷 正子 
  • KADOKAWA/角川マガジンズ (2014年5月31日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (374ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784047313972

脳に棲む魔物の感想・レビュー・書評

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  • ちょっとおどろおどろしさを感じる表紙写真でホラー小説か何かを想像してしまいそうだが、脳を侵すタイプの自己免疫疾患にかかった、ニューヨークポストの記者である著者の闘病記である。

    著者が「映画『エクソシスト』の主人公の少女が私の症状とそっくり」と評しているのを読めばお分かりかと思うが、想像を絶するほどの壮絶な症状の連続に、よくぞご家族は諦めず寄り添い、徹底的に原因の追求まで辿り着いたものだと思う。この病気が解明されたあとの発病だったことも幸運だったとは思うが、当時、まだ医療関係者にさえあまり知られていない病気だっただけに、本当にラッキーだったのだろう。
    また、壮絶な闘病のなか、周囲の人々が日記やビデオなどで記録をとり続けていたことも驚きだ。結果、当時の記憶が欠落しているという著者が、この臨場感あふれるスリリングな闘病記を書き上げることができ、こうして世にこの病気を知らしめる機会を作ることができたわけだ。

    著者もいうように、解明されたのが最近なだけで、病気そのものは必ずしも新しいものではなかったようだ。そう考えると、今までに何人の人が正しく治療を受けられないまま、悪化させたり命を落としたりしていたのかと暗澹たる気持ちにもさせられる。ひょっとして、今現在も、誤解されたまま正しい治療に結び着いていない人がいるかもしれない。著者が7ヶ月で仕事に復帰したことを思うと、その想像は恐ろしくすらある。

    現在は記者の仕事をこなしつつ、この病気をより多くの人に知ってもらうための啓蒙活動にも奔走しているらしい。
    再発の危険もそれなりにはあるらしいが、研究されてまだ年数が浅いこともあってまだまだわからないことも多いのだそう。
    著者の活動が実を結び、病気の解明が進んで多くの人が救われることを願う。

  • (No.14-17)  ノンフィクションです。

    内容紹介を、表紙裏から転載します。
    『マンハッタンでひとり暮らしをする24歳の新聞記者スザンナが心身に変調をきたしたのは、ある朝突然のことだった。
    最初は虫に噛まれたものと高をくくっていたところ、徐々に左腕がしびれそれが左半身に広がっていった。
    同時に、仕事への意欲を失い、部屋の片付けさえ出来なくなる。幻視や幻聴を体験した末、口から泡を吹き、全身を痙攣させる激しい発作を起こすまでになる。

    医師の見立てでは、精神障害ないしは神経疾患。てんかん、双極性障害、統合失調症の疑いをかけられるが、処方薬は全く効果が無く、検査でも原因を突き止められない。症状は悪化の一途をたどり、実の父親に誘拐されるといった妄想に悩まされ、病院から何度も脱走を試みる。
    医師たちが匙を投げかけた時、チームに加わった新顔の医師が精神疾患の疑いを否定し、最新の医療研究が明らかにした病因を提示して・・・・。

    人格を奪われ、正気と狂気の境界線を行き来した日々を、患者本人が聞き取り調査や医療記録、家族の日記などから生き生きと再現して全米に衝撃を与えた医療ノンフィクション。』

    著者は患者本人のスザンナですが、普通の闘病記録ではありません。なぜなら彼女にはその間の記憶が無いから。断片的な記憶は、本当に起こった出来事なのか妄想なのか分からないから。
    スザンナは多くの関係者の話を聞き、膨大な記録を調べ、自分が書いたものや家族の日記を読み、自身を映した長時間のビデオを見て、あるときは患者本人に、またあるときはインタビュアーとして、病気だったときのことを再構成して書いたのがこの本です。

    ほとんど一気読みでした。勢いよく読めたのは、ひとつにはこれを書いたという事はスザンナは治った、体のことは分からないけど少なくとも頭は正気である、と確信できていたからです。
    読んでいて前半はかなり悲惨なので、治るところまで早く行きたい気持ちにもかられました。

    それにしてもあまり知られていない病気になったとき、診断がつくまでの本人や家族の苦労は計り知れないものがあることがよく分かりました。
    最初にストレスだの飲酒が多かったせいだのなどと医師から言われた時には、本人たちはほっとします。病気じゃなかったんだ!と。
    でもそれは一時のこと。だってどんどん容態は悪化の一途をたどり、でもいろいろ検査してもどこにも異常はなく、検査結果だけ見れば「健康」になっちゃうのだから。そんなはずは無い、だってこんなに変になってるのに・・・。

    家族の苦労と負担はすごいものがありました。よく頑張ったなと感服します。だってスザンナはすでに正気を失って、家族や医療関係者に対しても全然協力的じゃない。まるで敵に対しているような態度をとったり。
    医師は仕事です。だから「スザンナさんはもう私の手を離れました」で終わらせることもあるわけで。お母さんは、じゃああの娘はどうなるの?とショックを受けながらも絶対に見放さない。

    私が好きなテレビ番組に、NHKの「ドクターG」というのがあります。経験豊富な総合診療医が、実際にあった症例を元に研修医とカンファレンスをする番組です。
    この本の真ん中あたりで登場したナジャー医師がやったことは、あの番組にでてきた総合診療医たちと同じだ!とビックリしたり感動したりしました。最初は検査しません。ともかく徹底的に本人や家族に話を聞く。患者の体に問いかける。ここを動かして、あれをやってみて、そしてその動きを観察する。
    ピンポイントでどこが悪いのかを押え、そこの検査をして確認する。
    ナジャー医師はスザンナの救世主でした。病気の原因を突き止め、ダルマウ医師という専門医に導いてくれたのです。

    原因が分かったからすぐに治るものではありませんが、患者にとって診断が確定して病名がつくということはとても重要なことなのです。戦う相手が分かるのは希望に繋がるから。

    ナジャー医師やダルマウ医師に救われたスザンナですが、スザンナによって救われた人たちもいます。
    スザンナは職場に復帰後、この病気のことを記事にしました。それを読んだテレビのプロデューサーから依頼されテレビにも出演しました。その記事やテレビを見てこの病気を疑い、救われた人がいるのです。

    スザンナは自身が発症した「抗NMDA受容体自己免疫性脳炎」を知ってもらう活動を行っています。この本を読んでさらにこの病気について知る人が増えるはず。すごい人だなあと感動しました。

    ノンフィクションですが、上質のミステリを読んでいる気もしました。

  • 世界衝撃ストーリーといったようなTV番組で紹介されるようなタイトルですが、これはノンフィクションである上に、病気そのものから、そして病気による脳神経損傷からの快復をめざして闘いながら患者本人が書き上げた本です。語られる症状の重さを読み進めると、この事実だけでも驚くべきことでした。

    病にかかる前の日々においても、自分にとって大切なことを持つことが、快復への希望を持ち続けるために重要なのだと認識させられました。

  • 発表当時は珍しかった、自己免疫性疾患が突然発症した女性の、ご本人による回顧録。
    こうした書物を読むときは、

    ・日本とは異なる保険診療/自由診療混合医療の国で起きた事である。
    ・書かれている内容は、現在また異なる基準で判定されたり、価値が変わったりすることがある。

    の2点に気をつけながら読みます。
    そして読み終えました。

    不幸な偶然が3個積み重なった人と、幸運な偶然が3個積み重なった人の差に想いを馳せざるを得ません。著者は後者でした。
    幸運その1.『ポスト』の正社員で、保険会社が診療費をカバーしてくれたこと。
    幸運その2.両親も、恋人も、経済的に自立しており、著者を支える余裕があったこと。
    幸運その3.然るべき論文を読み、自身の研究分野にもつねに情熱をもって取り組む医師に巡り合えたこと。

    幸運な偶然が3個積まれていなかったら、この本は世に出なかったし、著者は精神病と診断されて社会福祉給付を受けるしかなかったのではないか。
    それを想うと、今の日本でも、『ナニナニ障害』や『ナニナニ病』とされる人の何割かは、救えるのではないか。そうした事柄への気づきやすさを、持ち続けたいと思いました。

  • 妄想に取り憑かれたスザンナが、紆余曲折を経て世界で217人目の難病と診断され、さらにそこから回復するまで。

    ノンフィクション。
    表紙とタイトルのインパクトの凄さで手に取ってみた。
    自己免疫性疾患というのは何とも厄介な…。
    医学が進んでエクソシストとか癲癇とか双極性障害とか思われていた症状が正しく診断・治療出来るようになったのは素晴らしいこと。
    だけどやはり最後に患者を支えるのは愛情だと再確認。

  • 時間つぶしのため、たまたま入った新宿紀伊国屋1FLの新刊棚で手にした本。『脳に棲む魔物』というタイトルは仰々しいが、脳に障害を受けた人の性格が変わったのだろうと想像がつくネーミングだ。パラパラと読んでみて購入を決めた。帯にはNYタイムズのノンフィクションで1位になったとある。

    本のカバー裏の写真でみる、著者のスザンナ・キャハランはなかなかの美人。「こんな綺麗な人がどんな魔物に?」という興味も惹かれる。日本ではスザンナ・キャハランで検索してもあまり出てこないようだが、Youtubeなどで「Susannah Cahalan」でググると沢山出てくる。TEDのURLを付けておく。
    https://www.youtube.com/watch?v=bQvqAaOLBnw

    スザンナ・キャハランはワシントン・ポストの記者だ。そんな彼女はごくごく普通の生活を送っていたのだが、あるときからトコジラミが異常に気になったり、大切な仕事のインタビューで頓珍漢な質問をしたり、偏頭痛に悩まされたりし始める。そして最後は、全身を硬直させて、口から血の混じった泡を吹き出すまでの激しい発作まで起こす。

    当初、病院で検査を進めるも、原因は分からなかった。だが、彼女にとって幸いだったのは、その数年前に「抗NMDA受容体脳炎」が発見されていて、それを疑う医師・ナジャー先生に巡りあったことだ。この病気は、神経伝達物質であるグルタミン酸の受容体、NMDA型グルタミン酸受容体に自己抗体ができることよる急性型の脳炎だ。つまり、自分で自分を攻撃するようになり、脳内の神経伝達がうまくはたらかなくなるということだ。幸いなことに、この病気に気づいたナジャー先生の処置で、著者は徐々に回復に向かう。

    この本を読んでいると、つくづく「自分とは何か?」と考える。頭の回路が少し不調をきたすだけで、まったく別の人格になる。心配でしかたなくなる。一つのことにこだわる。そして、疑う。本当にちょっとした神経回路に不具合が生じるだけで、まったく違う自分が浮かび上がる。繊細な脳神経システムがシンフォニーを奏でるが如く機能しているときに、普段の自分がいる。でも、それって、本当に自分なのか。実は自分だと思っているものは、単に脳が作り上げた虚像ではないのか。そんな風にも思えてくる。

    だが、一方でこの本を読んでいて思うのは、そんな「自分」でも、大切なものがあるということだ。スザンナ・キャハランは、病気にかかり大変だった時期に、良心とボーイフレンドに助けられた。彼女の人生でとても困難だった時期に、「安心」と「意味」を与え続けてくれた。人は「安心」する場所が必要だし、そして「意味」も必要だ。

    この本を読むと、自分自身がいまここにいる「意味」を考えさせられる。

  • 「脳に棲む魔物」読んだhttp://www.kadokawa.co.jp/product/301404000029/ … 自己免疫疾患に苦しんだ著者自身によるノンフィクション。治療費1億に驚く(日本の皆保険制度は素晴らしい!)病名も原因も判らず治癒の希望もなく、ただ自己崩壊していく。病気がそこにあるのに医学は太刀打ちできない(つづく

    昔から存在している病気でもそれが認識されない限り病名はつかず治療できない。闘病記を新聞掲載したおかげでこの病気の存在が広く知られることになったのは、患者と家族にとっては救いだと思う。探究心や使命感が強い医者のおかげで医学の発展はあるのだ。怠慢な医者も多いけど!(つづく

    両親はともかく彼の献身ぶりに胸を打たれる。よく半年以上信じて介護したと思う。言語機能などアウトプットのレベルが低いと狂人/精神薄弱と思うまではいかずとも幼児扱いはしがちだけど内部処理は通常の場合があるから接し方は充分考慮しないと。これは外国語での会話でも同様だと思う(おわり

  • 一気に読めるミステリーを超えた一冊。

    これがフィクションではないということも驚きだが、
    この病を乗り越えた彼女が
    偶然にも物書きであり、
    のちに情報を集めて本書にまとめられたことは奇跡のようなものだ。

    既存のミステリーに飽きた人にぜひおすすめしたい。

  • ニューヨークポストの記者が自身の体験を書いた体験記です。
    著者は2009年に病気になるまでは、社交的で話し好きな有能な記者だった。しかし徐々に精神的におかしくなっていく。部屋にシラミがいるという確信が離れず、彼氏の部屋をあさったりし、徐々に仕事がうまく運ばなくなる。かかりつけ医や神経内科医へかかるが、異常なし。しかしついに痙攣発作を起こす。そしてニューヨーク大学に入院するが、その後幻覚などが出現し・・・
    前半は謎解きのようなホラーミステリーのような感じ。後半は、疾患から立ち直っていく姿。自身とは何か?のような哲学的話もあり、疾患の解説も含まれています。
    自身は、病気の間の記憶が曖昧のようで、様々な情報(病院のビデオなど)や、自身に浮かんだ心中を混ぜて、小説のようになっています。記者としての冷静な目も見られ、興味深く読める体験記です。目次にIVIGや脳生検などがあり、知る人は何かわかると思いますが、一般には知れれていない病気と思います。

  • 映画をみた。医師のたちばでみると、映画で途中から本人の独白がなくなった。その間は自分が失われていた、ということか。医師側からの苦悩はあまり描かれていない

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