「子育て」という政治 少子化なのになぜ待機児童が生まれるのか? (角川SSC新書)
- KADOKAWA/角川マガジンズ (2014年7月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
- / ISBN・EAN: 9784047314375
作品紹介・あらすじ
2013年に話題となった神奈川県横浜市の待機児童ゼロ達成。実はこれにはウラがあった-。保育所の補助金や児童館、学童保育、そして予防接種ひとつをとっても、すべて国会や地域の議会で決められる。子育てと政治は密接な関係にあるのだ。子育ての現場を長年取材してきた著者が、「子育てとそれに対する政治の対応」を多くのデータを交えながら検証し、日本の子育てを考える。保育新制度の中身と問題点にも触れる関係者必読の書。
感想・レビュー・書評
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◯保育施策を自身の体験も踏まえながら批判的に展開している。
◯1つ1つの思いは最もであり、印象的な個別ケースも多いのだが、根本的な解決を示しているわけではない。
◯政治によって解決される部分は大であるが、表題の内容が、結局のところ選挙で首長を選ぶ点だとすると、場合によっては四年がかりであり、待機児童対策に必要と主張された即効性という意味ではもう少し説得力が欲しい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
親の便利は子の不便
待機児童ゼロは数字のマジック。
→根本的に「カウントのルール」がないので自治体によって、発表の数字に内容は全く異なる
保育を受ける側、する側、どちらにも大きな問題があり、その問題の影響を受けるのは常に子どもである。
潜在保育士はたくさんいる。賃金が悪すぎる。
わかりきっている問題だったのに、この何十年も話は進んでいない。むしろ後退していた。
やっと動き出しそうなのがこの数年。 -
保育園に勤めている保育士も是非読むといいと思った。預かる保育士側は、こんな小さな子どもが親から離れて朝から晩まで頑張らなければならない、そんなにしてまで働かなきゃいけないのか!?という目で保護者を見ていることは結構ある。しかし、保護者側も簡単に子どもを預けているのではないこと、保育園に入る入らない以前にこの時代の子育てがどんなに大変なのか…ということまで考えなければならない。
今の日本の子育てがこどもにとってよりよいものになるようにしていきたいと思う。 -
自分が将来子供が欲しいと考えているので、現実を知るにつれて読み進めるのがとても辛かった。
サブタイトルにもあるように「少子化なのになぜ待機児童が生まれるか」ということについて具体的に書かれていた。保育園の経営の事情や、待機児童ゼロという言葉の裏の真実など。子どもの権利、学ぶ権利、貧困などさまざまな問題が浮かび上がり、読んでいて絶望的な気持ちになる。
あー、結婚して子供生みたいよー。 -
「日本死ね」の2年前に書かれた、自身の体験と取材を織り混ぜた本。
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「日本死ね!」のブログが話題となった今年前半。
匿名だからと首相が言えば、皆が猛抗議。
確かに現実を直視しているとは言えない発言だった。
しかし、この待機児童問題は当事者になってみなければわからない問題でもあるだろう。
本書は高齢者に比べ、後手に回される若年層、なかでも「子供」(幼児)のための政治について考察したものである。
私自身も待機児童の親となった時期があった。
夫婦揃ってフルタイムで夜勤あり、双方の親の援助なし、これだったら満点でしょ、入れるって!と、思っていたのが間違いだった。
満点なのは当たり前で、あとは1点ずつの加算を積み重ねていかなければならないのだ。
それに気づいたのは「不承諾通知」が来てからだった。
絶句、顔面蒼白。
どうすんのこれ、仕事戻れないじゃん。
しばし呆然とし、必死で大学時代に学んだことを思い出す。
行政不服審査法に基づいて60日以内に......いや、待て、とりあえず事業所内保育所に通わせよう、たぶんそこならなんとかなる.....
そして事業所内保育所に預け、その後公立保育園の内定をもらい今に至るが、私のようなパターンは相当恵まれているし、事業所内保育所があるならそっちにそのまま通わせろよ、という意見も出るかもしれない。
でも、そうやって親同士で争ってなんになる?
そもそもなぜこんなに保育所に入れないのだ?
その内容は本書に譲るとして、保育園に入れないという問題は火急の課題である。
本書で指摘されるように、子供の一年は大人の一年とは違う。
ちんたら議論した挙句やっぱり反対が多くて無理でした、じゃ済まされないのだ。
票欲しさに選挙の時だけ公約にあげて、在任中にはやらない(昼寝をする時間はあるのに)なんていうのは言語道断。
事の重大さを政治家の皆さんは分かっていらっしゃいます?
とはいえ、政治家ばかり糾弾するのも違う気もしている。
私たちはどれだけ未来を考えてきたのか。
「今」が大事と言うのと「今だけ」が大事とでは全く意味は異なる。
そんな余裕ないよ、そうかもしれない。
子供嫌い、それも結構。
でも、いつか私たちは必ず老いるし、子供が嫌いでも5年後には子供が、孫がいるかもしれない。
その時になってから考えるのでは遅いのだ。
権利の上に眠っていたのは誰だったか。
三歳児神話なんて、嫉妬なんて、「かわいそう」という言葉だけで責任を取らない大人なんていらない。
必要なのは現状把握、そして予算、行動。
自己責任というのなら、地域の子供を見守ってください。
それが社会責任です。
今この国に必要なのは、子供達の権利を保護すること。
彼らが幸せでいられること、それが本書を含め、親たちのただ一つの願いなのだ。 -
「親があきらめた瞬間から、保育の質はどん底へ落ちていく。保育の質が落ちた果てにあるのは、保育事故だ。だから、親は絶対にいい環境をあきらめてはいけない」(4章末)の部分に勇気づけられました。
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「保育園落ちた日本死ね」の騒動の背景が痛いほどよく分かる
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私の家庭は、私が働き妻が専業主婦なので、世間で話題になっている待機児童問題とは無縁だったのだが、世の中の人々はそれぞれのライフスタイルがあることや、女性の能力を育休後に発揮させる意味でも、保育所は必要とされる分は増えるべきであると思う。この本はそんな育児の現場の実体を紹介してくれていて、参考になったし、社会で騒がれている理由もよくわかった。この本は課題の提起という意味ではいいのだが、じゃあどうすればいいの?政治に文句を言えばいいわけ?ともう少し改善策の提案みたいなものがあって良かったのではないかと思った。