6枚の壁新聞 石巻日日新聞・東日本大震災後7日間の記録 角川SSC新書 (角川SSC新書 130)
- 角川マガジンズ(角川グループパブリッシング) (2011年7月9日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
- / ISBN・EAN: 9784047315532
感想・レビュー・書評
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今年3月11日の大地震で被災した石巻日日新聞。輪転機が水没したり、記者が津波で流され漂流したり、と何もできないはずの中、自身の翌日からなんと手書きの壁新聞を発行。地域紙ならではの気概に元気が出た。 あの地震の日、森達也「A3」オフ会に参加するため東京に行っていた私は、大学生の娘の最寄駅に着いたところで大きな揺れに遭遇。てっきり東京が震源地かと思ったくらいだったのだけど、(だって過去二回経験した新潟の地震よりずっと衝撃的な揺れだったのだもの。)
そのすぐ後に娘の部屋でテレビをつけ、東北のあまりの惨状に愕然・・。
そのまま、ほぼ2日間、正座してテレビを見続けたのですが、同じ映像をこれでもか、と悲惨さを強調するコメントと共に流すテレビに辟易してスイッチを切った後、新潟に戻っても、先月くらいまでテレビも新聞も封印しておりました。
知りたい情報、ではなくて、より刺激的で恐怖感を煽ったり、なんて気の毒な・・と言いながらも、自分の家や家族は無事でよかった、と思ってしまうような情報がただ怖くてたまらなかったからです。
その意味で、いったいあの時、何が起こっていたのか、を地元のジャーナリストの目でありのままの姿を綴ったこの記録は、私にとってとても貴重な一冊となりました。
前半は、社長自らが語る、「壁新聞を作るまで 作ってから」の六日間。電気も水もなく、もちろん食べるものもなく、それどころか、家族や記者たちの安否もわからないまま、目の前の事実を伝えなければならない、と手書きで壁新聞を作り、コンビニや避難所に貼りに行った日々。そして、私がうんうん、そうだよね!と思ったのは、紙面が限られていたことからという理由があったにせよ、いかに悲惨か、という情報よりも、支援の状況や、地域のここは大丈夫という明るい情報を中心に載せたことでした。ボランティアや炊き出しのお願い、など、地元民の力を募る記事もあり、まだまだ自分たちにやれることがある!と思わせてくれたことも大きいと思います。
後半は、記者1人1人が、時間と日にちを追いながら、あの時の自分はどうしていたか、を語っておられ、ジャーナリストとして、また、1人の人間として、そして、家族を持つ親として子としての気持ちを率直に教えてくれます。若い記者のエネルギーに驚き、ベテラン記者の思いに共感し、と、ようやくじっくりと地震を追うことができました。 -
東日本大震災の記憶を風化させてはいけないし語り継いでいかなければなりません。この本は、石巻日日新聞の記者達が震災後も「伝える使命」を持ち続けて闘った記録です。手書きの6枚の壁新聞はアメリカでも評価され展示されています。災害時の人間の力、希望を持つことの大事さを感じて欲しいと思います。
*推薦者(セ教)M.N
*所蔵情報 https://opac.lib.utsunomiya-u.ac.jp/webopac/catdbl.do?pkey=BB00328490&initFlg=_RESULT_SET_NOTBIB -
今回の震災では、Twitterなど新しい情報の発信・収集方法がクローズアップされた。
しかし、それらの方法が有効なのは被害の少ない地域に限られるし、使いこなせない者にとってはほとんど意味をなさないものになってしまう。
とにかく被災地では情報を得る手段があまりなく、それは石巻日日新聞社の記者たちも同じだった。
しかし、だからこそ「地方紙」としての使命を果たそうと、その時できる最大限の方法で情報を収集し、発信した記者たちに敬意を表したい。
また、その内容も、「正確なもの」「希望のもてるもの」としたことは、地域の住民への配慮であり、そうしたことができるのも地方紙ならではのことだと思う。 -
読むと心が締め付けられる感じです。父親の実家がこの新聞取っていたのを思い出した。
未曽有の震災の中で、正確な情報を伝えなければという使命感で、自らも被災者であるにもかかわらず、新聞発行の手段が使えなくなった状況の中で壁新聞というギリギリの手法で発行。その中でも葛藤があり、最初は避難所情報や炊き出しの情報、それから皆を勇気づけられるような記事、そして客観的に正確な情報を伝える記事と、書くスペースが限られた中で、今一番伝えなくてはいけないことを選んで伝えていた。復興までの道のりは長いが、自分ができることはこれからもしていきたい。 -
東日本大震災
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一躍有名になった壁新聞で乗り切ったということよりも、小さなローカル新聞社の社員1人1人の奮闘ぶり、輪転機を回せない悔しい思いが伝わってきた。
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978-4-04-731553-2 253p 2011・7・24 1刷
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東日本大震災の翌日から貼られた6枚の壁新聞が、1枚1枚カラー写真で載っている点に感動。水道や電気と同じように「情報もライフラインになる」ことを物語っている。大切に保存版として残しておきたいと思う。
先日、地元の大型書店さんが、この『石巻日日新聞』の実物を展示してらっしゃいました。
私は阪神・淡路の被災経験がある...
先日、地元の大型書店さんが、この『石巻日日新聞』の実物を展示してらっしゃいました。
私は阪神・淡路の被災経験があるからか、立ち止まってじっくり記事を読みたいけど、なんだか正視できないような感覚が残っていて、そのあと何回その本屋さんに行っても、ちらちら横目に見るだけで終わってしまいました。
伝えられることは限られているけど、伝えないといけないことがあるから動かなければいけない、ジャーナリスト魂の凄みですね。じゅんさんと同じように、今なら落ち着いてこの本も読めるかもしれません。
コメント、ありがとうございます。
Pipo_DingDongさんは阪神・淡路大震災あわれた方だったん...
コメント、ありがとうございます。
Pipo_DingDongさんは阪神・淡路大震災あわれた方だったんですね。今更ながらですけど、震災のお見舞いを申し上げさせてください。
私なんて実際の被害はなかったというのに、テレビも新聞も封印しなければならないほど「報道」に拒否感を持ってしまいました。実際に怖ろしい思いを体験された方には壁新聞の実物はまだまだ生々しい空気を漂わせていたものだったのでしょう、と想像いたします。
壁新聞を出さなければ、となった次第も、あの時の記者さんたちの動きも、とても納得のいく記述になっておりましたよ。
よろしければどうぞ、優れ物の読み物ですよ、とお勧めさせてください。