ある島の可能性

  • 角川書店
3.99
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感想 : 23
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  • Amazon.co.jp ・本 (430ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784047915435

感想・レビュー・書評

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  • 同一的な人物が2つの隔たった時で、物語は進んでいく。
    入れ子構造だ。モチーフもいつもながらの性と宗教。主人公はコメディアン。語りは露悪と感傷が入り混じっている。コメディアンだからだろうか、老いの重さがひときわ切実に伝わってくる。二重構造にすることで、老いが乗り越えてはいけないものであることも暗示している。最後の「ある島の可能性」の章の荒涼さは本当にひどい。本を閉じればおしまいではなくて、こびりついて離れない荒涼さだ。ボードレールをちゃんと読もうと思った。

  • ウェルベック2冊目。これも強烈。
    (以下、ネタバレには気を付けていますが序盤のクライマックスには触れてしまっています)

    芸能の世界で寵児となり、放埓な日々を送る主人公、ダニエル。いろいろな偶然からある宗教団体に接近していく。そこでは、DNAの複製を通じた永遠の生命が真剣に研究されていた。

    物語は、ほぼ現代の「ダニエル‐1」(第一世代)と、その数千年先のダニエルの複製にして遺伝的はるかに発達したネオ・ヒューマン「ダニエル―24」(24代目)と「25」の考察が交互に進む。未来では人間は感情も完全に安定し、ただ第1世代が残した記録を読み返す日々を送っている(おお、村上春樹の「ハードボイルド・ワンダーランド」の世界)。

    ダニエル‐1側の性描写がとにかく激しく、電車の中で読みながら「違います、純文学です」というオーラを必死に出したが意味があったかは分からない。

    そんなことより圧巻なのは、CNNのヘリが飛び交う中、教祖が実際に「復活」するシーン。さらに息を呑むのは、DNA再生技術は実は未確立のままで、にもかかわらず「いずれは実現する」ということを信じる信者たちが自分の遺伝子を登録したのち、自ら老衰した身体を「終了」させていくという展開。
    科学の時代の「死後の世界の信じ方」がこれだと・・・。

    これ以上はポリティカリー・コレクトに紹介する自信なし。必読に値する本とだけ言っておきたい・・・

  • 孤独な手記だった。

    ダニエル25が愛犬フォックスとただ旅を続け、無に近い個体性のない精神状態となっていく場面に唯一幸せを感じた。
    しかし、そんな愛の対象も失い「ただ存在しているということが、すでに不幸」なのだと自らに結論づけるのが印象的。

    本来「ただ存在するだけで、常に幸せ」という状態に達することを目指すネオ・ヒューマンだが、結局は人間(旧人類)が滅んだ後の彼らというのは、人類の晩年を永遠に生き続ける存在のように思えた。

    センチメンタルでとても正直だと言われるダニエル1に、作者が重なった。
    感受性とありふれた優しい気持ちとが文章から時々零れてきて、この作者が好きだなと思ってしまう。

  • 2016 1.30

  • 読後の充実感は、久しぶり

  • 村上春樹に身も蓋もない社会観察と皮肉まみれのギャグセンスを足した様な内容だった。大変面白かった。

  • 醒めた視点の主人公からみた世界の話。それと遺伝子工学の産物であるネオヒューマンからの人類の世界の話でもある。設定的によくわからないが次第に全貌がわかってくる構成になっている。視点に突っ込み反発し同情していくのを要求される、思想を読む小説。やはりテーマは「愛」『素粒子』には及ばないなと読んでいて思ったが終わりごろになってああこれは別の凄いものを見せているなと感じた。SF小説というよりは、仕掛けや概念をSFから借りただけで、これは文学だ。

  • 【粗筋・概要】
    2000年後の未来。クローン技術の発展により永遠の命を手に入れたネオ・ヒューマンたち。彼らは、オリジナルの遺伝子コードを厳密に複写して生み出され、オリジナルが書き残した人生記を読み、それに注釈を加えていく。この物語は、フランス人のコメディアン・ダニエル1の人生記とそのクローンであるダニエル24とダニエル25の注釈によって構成されている。

    【感想】
    初めて読んだウエルベックの小説。なかなか面白かった。この小説自体読み返そうとは思わないけれど、この作品よりも面白いと云われている『素粒子』を読んでみたいとは思った。

    「そして人間の真の目的、望みのあるかぎり人間が自発的に求めつづけてきた目的が、もっぱらセックス方面にしかないという真相は、隠しようのないものになった。」(P290)というダニエル25の注釈を読んで、確かにそうだなと思った。少なくとも、主人公のダニエル1と私に限って云えば、正しい指摘だ。

    この作品では実在の有名人が多く登場するが、エロヒム教が「アメリカのビジネス界で集中的にキャンペーンを行った結果、まずスティーブ・ジョブスが改宗した」(P319)というところが、一番ウケた。

    2008年2月26日読了

  • オリジナルと何世代かあとのクローン?が交互に語って物語りは進むのだけれど、そういう構成っておもしろいと思うし、物語の設定自体もすごくおもしろく思ったのだけれど、うーん、私にはなんか読み進み難かった。

  • 面白い話だ。ただ二冊目のミシェル ウエルベックだけど、やっぱり読んでるとちょっと嫌な気分になる。それが消えない。

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著者プロフィール

1958年フランス生まれ。ヨーロッパを代表する作家。98年『素粒子』がベストセラー。2010年『地図と領土』でゴンクール賞。15年には『服従』が世界中で大きな話題を呼んだ。他に『ある島の可能性』など。

「2023年 『滅ぼす 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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