三日間の幸福 (メディアワークス文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
4.11
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  • (11)
本棚登録 : 7078
感想 : 413
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  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048661690

作品紹介・あらすじ

どうやら俺の人生には、今後何一つ良いことがないらしい。寿命の"査定価格"が一年につき一万円ぽっちだったのは、そのせいだ。未来を悲観して寿命の大半を売り払った俺は、僅かな余生で幸せを掴もうと躍起になるが、何をやっても裏目に出る。空回りし続ける俺を醒めた目で見つめる、「監視員」のミヤギ。彼女の為に生きることこそが一番の幸せなのだと気付く頃には、俺の寿命は二か月を切っていた。ウェブで大人気のエピソードがついに文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • ブクログさんのお薦め本です。

    「いなくなる人のこと、好きになっても、仕方ないんですけどね」
    どうやら俺の人生には、今後何一つ良いことがないらしい。寿命の”査定価格”が一年につき一万円ぽっちだったのは、そのせいだ。未来を悲観して寿命の大半を売り払った俺は、わずかな余生で幸せを掴もうと躍起になるが、何をやっても裏目に出る。空回りし続ける俺を醒めた目で見つめる「監視員」のミヤギ。
    彼女の為に生きることこそが一番の幸せなのだと気付く頃には、俺の寿命は二カ月を切っていた。ー文庫うらすじより



    なんで、クスノキはミヤギと会えなくなる最後の三日間だけ残して残りの三十日間まで売ってしまったのかと思いました。
    なぜ、二人が会えなくなってしまう最後の三日間なのに、タイトルが『三日間の幸福』なのか最後にわかりました。
    納得のラストでした。


    でも、クスノキは、残りの三十年の人生が三十万円の価値しかないと言われたときは(本当は30円だったのですが)相当ショックだったろうと思います。
    クスノキは最後は幸せだったと思うけれど、私も残りの自分の人生の価値がどのくらいあるのかと考えてしまいました。
    前半のクスノキのようなことにはならないようにしたいと願いました。

  • 人の価値は金銭評価できるか。
    誰しも道徳の授業などで一度は聞いたことがある問いでしょう。
    もし仮に、これからの余生を売ることができたとしたら、そこにはいくらの値がつくのだろうか。万か億か、はたまた兆か。
    これはそんな人生を諦めた”僕”と監視員ミヤギとの儚くも美しい物語である。
    人の価値は平等である、とある者が言ったとしても、これについて普遍的な同意は得ることは到底できない。学業に優れている者、運動神経が良い者、芸術や音楽の才に恵まれている者など、社会にとって正の影響を与えている者は、そうでない者と比べて社会的に明らかに優遇される。ここでの価値の指標は、社会への客観的な貢献度なのである。
    しかし、上のような才能は、それが活かされる環境に置かれて初めて開花する。つまり、それを活かすも殺すも社会の在り方によって左右されるところが大きいということだ。
    家庭環境や交友関係、社会情勢などあらゆる要素によって人の才はその芽を閉ざす。それゆえに、人の価値は不平等に平等なのだ。
    本作は、軽い切り口ながらラストにかけて人生の価値について感動とともに語りかけてくれる。
    そして読後には、恋愛は純粋な自己犠牲であると言わんばかりの美しさにカタルシスを感じざるを得ないだろう。

  • かなり面白かった。昔から気になっていたので購入。なぜ三日間なんだろう?とずっと謎だったけど読み終わったとき、ふさわしいタイトルだと思いました。
    ただ、最後の終わり方がちょっともやもや。

    • マメムさん
      初コメです。
      ちょっともやもやは分かります(^_^;)
      アフターストーリー的なものを求めがちなのは、読書あるあるかもですね^_^
      初コメです。
      ちょっともやもやは分かります(^_^;)
      アフターストーリー的なものを求めがちなのは、読書あるあるかもですね^_^
      2024/03/15
    • うたえながさん
      マメムさん!コメントありがとうございます!アフターストーリーがあったらもっと面白くなりそうですよね( ^^)
      マメムさん!コメントありがとうございます!アフターストーリーがあったらもっと面白くなりそうですよね( ^^)
      2024/03/16
  • 爽やかで心地良い恋愛小説といった具合ですかね。
    本作『三日間の幸福』は『恋する寄生虫』にも似て、淡く切ない恋愛小説ですが、『恋する寄生虫』よりも爽快な読後感でした。三秋縋さんの特徴を少しは理解できてきたかもです。

    あらすじと感想です。
    十歳の時に天才では?と自覚した主人公クスノキは、ある幼馴染と十年後も売れ残っていたら結婚しようねと約束し、それを信じて時を過ごすも、なんとも自堕落な大学生へと変貌します。
    世界にも日常にも絶望したクスノキは、とある店で自分の『あるモノ』を売ってしまいます。そして、『それ』を売ったことを機に女性と出逢うのですが、そこからクスノキの人生は急展開を遂げる。

    といった流れでしたが、なるほど、それで『三日間の幸福』なのですね。とても美しい展開だと感じました。また作中の「相手にされない真実より、楽しまれる虚構の方が、ずっといい。」という言葉が妙に奥深く刺さりました。何故かは、是非お手に取ってみて下さい♪

  • 十歳の俺たちに向けて、学級担任である二十歳代の女性教員は、こんなふうに問いかけた。

    「何よりも価値のあるものだと言われたりしている『人間の命』は、実際の金額にすると、いくらくらいのものだと思っていますか?」(愚問です…。)

     一人のお利口さんが、手を挙げていった。「サラリーマンの平均的な生涯賃金は二億円から三億円ほどだと、普通の人は…。」
    (以下省略・冒頭より一部抜粋)

     いかにも生命保険会社が、保険料算定の基礎に使われそうな意見です。

     学級担任はこのとき、「正解はない」と言ったが、正解らしきものは存在した。(物語上の正解です)

     クラスで虐められていた男女二人の子どもが、もし十年後に売れ残っていたら、一緒になろうと約束したという。

     主人公は十年後、二十歳になった俺は貧困大学生、その日の食事にも困っている。
    ある日、寿命を買ってくれる店があるという情報を得て訪れた。
    買ってくれるものは、「寿命・時間・健康」だと受付で聞き、寿命を売ることにした。
    余命から何年分の売却か?と、査定額を聞き驚愕したが、一発逆転の可能性は低いと考えた上で将来を悲観し余命を三カ月残し売ってしまった。そのかわりあなたに監視員がつき、人生の終末を見届けるという。余命の生き方で人生が変わることもある、という。さらに物語は進行していきます。

    今が正に余生の転換期かも知れません。だからこそ子どもたちの将来の夢や、今の自分の生き甲斐を求めたいです。過去の事跡を悔いてもしょうがない。寧ろ失敗が多い人ほど、「人生の教訓」が豊かだと思う。でも、学ぶ努力は必要だと思います。

    あとがきに、著者は「後悔や嘆きが深ければ深いほど、世界はかえって残酷なくらい美しくなるのではないでしょうか。(中略)
    作品を通して命の価値だとか愛の力だとかについて語ろうという気は、更々ないのです。」と書いています。

    読書は楽しい。

  • 寿命を売った大学生クスノキと彼を見守る時間を売った監視員ミヤギ。
    寿命30年より価値ある一ヶ月と最後一捻りある展開が見事。

  • 「三日間の幸福」の本当の意味が分かると、
    おお、素敵でないか…と思った。

    この本の、終盤のクスノキみたいに、
    幸せを純粋に感じられたら、人間欲張りすぎず幸福に生きられるのにな、と思った。

    ストーリー的には面白かったけれど、クスノキとミヤギの関係が最後までくすぐったい感じでしっくりこなくて…星4つで(^^)

  • 寿命を1年1万円で売ってしまった男とその監視員の物語。僅かな余生で幸せを掴もうと努力するが上手くいかない。男は余生の使い道を模索するが...。

    最高の物語。もう、三秋縋さんのファンになりました。「恋する寄生虫」も然りだけど、特殊な条件のある恋の描きかたが本当に素晴らしい。最初は主人公が可哀想に思ったけど、後半は本当に幸せそうで読んでいる方まで幸せが伝播してくる。お互いを思い合う優しい気持ちで満たされた。

  • '23年9月19日、読了。ebookjapanの電子書籍で。三秋縋さんの作品、二作目。

    とても、素晴らしかったです。

    読了後、フィクションなのを承知で…ただただ、主人公二人の幸せを、願っていました。

    僕は、残り少ないであろう自分の人生を、光り輝くものにできるのだろうか…

    さあ、前を向いて、また次の本を読もう!

  • 寿命を買い取ってもらったら、なんと残りわずか30年しかなくて、しかも一年につき一万円にしかならなかったクスノキの、最後の3ヶ月のお話。
    冒頭の道徳の授業が、宮沢賢治の銀河鉄道の夜を彷彿とさせる。

    「ひょっとしたら、いつかいいことがあるかもしれない」という浅はかな期待だけで生きていくつらさは、私にも分かる。生き地獄というかすでに余生というか。もしも寿命を買い取ってもらったら、なんて妄想はよくしたなぁ。
    自分のいるべき場所はここじゃない、自分の本当の人生はこんなもんじゃない、という無力さはほとんど呪いに近くて、私たちから生きるエネルギーをじわじわと奪っている。
    監視員であるミヤギに見張られながらの、彼の余命3ヶ月の過ごし方はとても楽しそうだった。
    会いたかった人に会いに行って現実を思い知らされたり、無意味な自動販売機の写真ばかり撮影したり。
    それらを経て、ようやく見つけた生きる目標。
    無為で悲惨な30年より、名を残せる有意義な30日間より、彼が選んだ三日間。それが彼にとっての幸福だったということだ。命の価値だとか愛の力だとかではない。ただ終わっていく世界の、絶望の淵で最後に見つけたものの美しさが示唆されている。

    三秋縋さんの感性がまるごと好きだ。人生に対するスタンスがそっくりそのまますべて分かるので、読んでいてどんどん深みにはまっていってしまう。

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著者プロフィール

WEBで小説を発表していた作家

「2015年 『僕が電話をかけていた場所』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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