雪蟷螂 (電撃文庫 こ 10-3)

著者 :
  • アスキー・メディアワークス
3.81
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本棚登録 : 1416
感想 : 162
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048675239

作品紹介・あらすじ

涙も凍る冬の山脈に雪蟷螂の女が起つ。この婚礼に永遠の祝福を-。長きにわたって氷血戦争を続けていたフェルビエ族とミルデ族。その戦に終止符を打つため、ひとつの約束がなされた。それは、想い人を喰らう"雪蟷螂"とも言われるフェルビエ族の女族長アルテシアと、永遠生を信仰する敵族ミルデ族長オウガとの政略結婚だった。しかし、その約束の儀は、世代を超えて交錯する人々の想いにより阻まれる。果たして、山脈の地に平和は訪れるのか。そして、極寒の地に舞う恋の行方は…。『ミミズクと夜の王』『MAMA』に続く"人喰い物語"最終譚。

感想・レビュー・書評

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  • 設定も良かったし話の流れもキャラクターも好き。ただ、薪が乏しく暖房に必要で貴重だろう雪国の山の中で火葬にするのか(チベットとかでは木が少ないから遺体燃やせないし、土が凍って掘れないから土葬にもできないし宗教にもよるんだよ葬式って)、というのと、アルテシアの気持ちが唐突に思えたのと、トーチカの魅力が伝わってこないとこが不満というのと、やはりちょこっと展開が読めたというか、ものすごいまーるく収まったなあ、という気持ちが少しだけある。
    魔女の喋り方もちょっと好きでなかったかも。
    あと、1箇所オウガとガルヤの名前が混同してて間違えてたとこがあった。←他の方のレビュー見たら2箇所だったらしい(;´Д`)大事なとこ!そこ大事なとこ!
    「射れー!」って言葉にモヤついたのもこの本だったろうか。別の本だったろうか。射るの命令形って私もちょっとパッと浮かばないけどなら「射(う)て」とか「放て」でええのかな。
    細かすぎるかもだけど細部はおろそかにしたらいかんと思うよ。

  •  この話を読んで、強烈に感じたのは。

    「私にはこれは書けない」

     ということだけだった。

     いや、わかってるんだよ。ちゃんと! プロの作家さんと自分を比べるのがおこがましいなんてことはさ。
     でも、そういうのじゃないんだ。
     そういうことではなくてね。

     人が書くものには“におい”がある、と思うんだ。
     アホみたいに本を読んできた僕だから何となく感じることなんだけど。
     そこのいは確かに「作者」が存在していて、少なからず、自分が投影される。
     それは「個性」になったり「文体」になったりして現れる。それは時として、登場人物の性格や、行動に反映されたりする。

     そんで、この小説を思った時に、思ったのが。

    「僕じゃこうならない」

     ってのだった。

     というよりも、それだけのショックを受けるだけの圧倒的衝撃があったのだけれど。

     僕には、(言葉は悪いと思うけど)こんな遠回りな愛情表現なんて想像もつかないし。
     こんだけの熱情を持つ余地もない。

     それが「いい」とか「悪い」とかではなく。
     それが「僕」なんだ、ただそれだけの話。

     文章がきれいなのは、(僕の中では)当たり前。
     そんなもの、下手な(あくまでも下手な、だ)二次創作ならいくつでも書ける自信はある。

     そうじゃないんだよ。
     僕は、ここ数年で、一人になって。
     一番欲しかった自分の思いのままになる生活を手に入れて。
     経済基盤を手に入れて。

     物事を飛んでもなくシンプルに考えるようになったんだ、ということに気が付いた。

    「書けない」って思った時に、僕は当然のように「なんで?」って考えた。
     だって、僕は考えざるを得ない生き物だから。

     そしたら気が付いたんだ。
     僕がとんでもなくシンプルな考え方をすることになったことに。

     元々、極端な性格をしていた僕だったけれど。
     今は本当にもう。
    「黒」か「白」か。
    「yes」か「no」か。

     本当にそれくらい極端なものの考え方をしている。

     でもさ。
     それで一番びっくりしたのは。

    「なんて、僕は周囲に甘やかされてるんだ」ということ。

     だって僕は。
     僕の本当に持ってるものを、誰にも否定されてない。
     みんな、笑って受け入れてくれる。
     こんなに右か左かしかないのに。
     誰も止めないんだよ!

     信じられない!
     そんな、馬鹿な!

     僕が今まで欲しくて、欲しくて、欲しくて、欲しくて、欲しくて、欲しくて、たまらなかったものが、手の中にちゃんとあるってことなんだよ!
     ああああああ! みんな、本当に優しい。
     こんな僕を受け入れられるってすごい!

     そして、そうやって言いたいことを言えるようになった僕は。
     今までみたいにひねくれたものの味方をしなくてよくなってしまったから。

     僕の書くものは、もう、今まで見たいに曲がらない。
     そして、曲がらなくなった僕の登場人物は。
     複雑な思考を持ち得ないんだろう。

     それがよかったのか、悪かったのかは知らない。
     でも、本当の僕はこう! 過去に戻ることは出来ないから。
     これから書けるものとこれから生まれてくるものと、共に歩もうと。
     この本を読んで、本当に思った(苦笑)

     幸せって難しいよね!

     全然、本の内容の話と関係ない話をしてごめんなさい。
     でも、これが僕の感想だから。
     ちょっと残しておきたかった。


     本の内容は。
     かっこいいお姫様の話でした!(ざくっとしすぎだ)

     難しいことはうまく説明できないから。
     読むといい!

  • 前二作に比べると少し読み応えがないような…
    全体的にまとまりきってない印象がありました。

  • 話も面白かったし、絵も綺麗で星五つをあげたいところですが、アテルシアの相手でであるトーチカに魅力が感じられなかったのと、詰め込みすぎた感を感じたので星四つ。上下巻とかにして、もう少しゆとりを持って書いた方が良かったのかなと思ったりもする。
    切ない『恋』と『愛』の話。
    最後は幸せになれたから良かった。

  • いづきさんの人喰いの話、第三作目。
    「好きだから食べたい」という話。

    甘くないのにどこか切なくて凛とした冬と雪の冷たさ。
    そんな相変わらずの綺麗な世界観でした。

    一つの話の中で3つの恋が描かれているのですが、過去に焦点が当たりすぎていて、肝心の主役が薄くなってしまったような…。
    この世界観が好きなだけにもっとじっくり読みたかった。
    トーチカいいキャラなのになぁ。一人称が僕だぜ?そうきたかーって思った…もっと内面が読みたかったです。

    ”人喰い”で今度こそカニバリズム的なものがくるかと思っていたら、直接の食べる表現はありませんでした…。
    グロテスクなものが苦手な人でも全く問題ないです。
    「あなたを食べる」って究極の美だと思うのにな。
    比喩ではなく頭からばりばりと食べてほしい。そんなぐちゃぐちゃで狂った世界の綺麗さを想い描いている。

  • この『雪蟷螂』という作品は、
    同じ作者の書く「人喰いシリーズ」と云われるものの
    第三弾、最終章に当たるらしい。

    読み終えいざレビューを書こうとして初めてその事を知ったけれど、
    前の2作を読まないと分からないという事は無かったように思う。
    (他の方のレビューを拝見すると、これが最初で良かったようにも思える)

    「想い人を喰らう」と云われる一族と、
    その一族と長い間敵対していた一族との政略結婚。

    あらすじに記載された「想い人を喰らう」という言葉だけで、
    によによと期待を膨らませてしまって、
    気づけば本屋のレジの前にいそいそと並んでしまっていた。

    「想い人を喰らう」。
    異常とも言える深すぎる愛の形の終演には、
    どうしても死がまとわりついて離れない。
    「死が二人を分かつまで」とは愛の誓いに使い古された言葉、
    けれど「想い人を喰らう」愛は、同時に死のおとないがある。

    この作品の舞台は、極寒の凍土。
    作品全体に貫かれる雪氷の厳しさと白さが、
    この作品のテーマである「想い人を喰らう」、
    儚くも美しい、狂おしいほどの愛を、よりいっそうに引き立てる。

    深すぎる愛は異常性もあって恐ろしい、
    でも時に、憧憬の念すら呼び起こすのは何故だろう。

    死にものぐるいの、死すら厭わぬ程の激情。
    そういったものに身を焦がすことが非現実的に思われてしまう、
    そんな世の中だからこそ、逆に憧れてしまうのかも知れない。


    (以下余談)
    テーマも、それが描かれる舞台の選定も、文章の質も
    ものすごく好みで、文句なしで★5を付けたいところ。
    ここで★4にしたのは、「想い人を喰らう」というテーマが、
    主人公ではなく脇役で語られたことを起因とする。
    激情に狂う主人公を見たかった。

  •  物語だから当然なのだけど、上手く組まれたレールの上を走っている感じ。
     私は読み終わった後に「ああ面白かった」じゃなくて「うん。まあ、そうだよね」と思いました。読ませる文ではあるけれど何か一味足りない印象ですね。

  • 寒さ厳しい山脈を居とする部族の双頭、蛮族と呼ばれる戦いを好むフェルビエと、呪術を操り死人狂いと呼ばれるミルデ。長きにわたりいがみ合い戦をしていた2部族の戦の終結のため、フェルビエの族長の娘、アルテシアは前族長同士の盟約によりミルデの族長に嫁ぐことが決まっている。

    愛する男を噛み殺すほどの激情をもち「雪螳螂」との異名を持つフェルビエの女でありながら、子供の頃からの運命を冷静に覚悟を持って受け入れ、アルテシアは彼女の影武者であったルイと近衛隊のトーチカのみを連れて婚礼相手のもとに向かうが、ミルデの族長オウガはアルテシアに開戦をつげる。

    婚姻を無効にしないために奔走する中で、ただの部族間の未来のための盟約に見えた婚姻に、親世代も含めた両部族の間の複雑に絡み合った想いがこめられていることが見えてきて…。登場するすべてのフェルビエの女性がそれぞれの形の雪螳螂で、ちゃんと自分の愛を貫ききるのが切なくもかっこよかったです。

  • お友達がお勧めしていたのを見て読みました。熾烈な戦を長きに渡り繰り広げてたフェルビエ族とミルデ族。戦を終わらせるために、極寒の山脈に平和を築くために取り交わされた政略結婚。その裏には憎しみと言うには生ぬるい、愛と言うには激しすぎる、交差する激情があった。運命の輪は複雑な文様を描いて廻り始める。とても面白く読みました。何より文章が素敵で好みでした。極寒地が舞台ですが、読んでいてその寒さを直に感じるくらい。タイトルも秀逸。他の作品も読んでみたいです。

  • 高校生の時に買って読んで、それ以来ぶり。誰かに貸して手元から無くしてしまったので、買い直した。
    かろうじて結末は覚えていたけれど、それと関係なく、途中で胸に刺さるものがあって、やっぱり好きだなと思った。

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著者プロフィール

1984年、石川県金沢市出身。金沢大学文学部卒業。『ミミズクと夜の王』で第13回電撃小説大賞・大賞を受賞し、デビュー。その後も、逆境を跳ね返し、我がものとしていく少女たちを描き、強固な支持を得ている。

「2022年 『雪蟷螂 完全版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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