キャラクターメーカー6つの理論とワークショップで学ぶ「つくり方」 (アスキー新書 62)

著者 :
  • アスキー・メディアワークス
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048700047

作品紹介・あらすじ

ライトノベルやまんが、アニメに登場する「キャラクター」は、作品の成否を決定づけるだけでなく、商品として消費され、あるいは二次創作に使用される。そのようなキャラクターは、どうやってつくれば魅力的になるのか?古今東西の物語理論を自在に応用し、「私」が反映されたキャラクターをつくりだす決定版マニュアル。

感想・レビュー・書評

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  • 移行対象 ティディベア、ライナスの毛布

    属性の抽象化して書き直す 
    ex. ピノコは「奇形腫」から取り出された生身の体がブラックジャックによってつくられたプラスチックの外殻の中に入っている→主人公の本当の体は別の容れ物に入っている。
    ピノコは外殻は幼女の姿をしているが自分では大人の女性だと思っている→主人公は本当の自分としての「内面」と「外面」の間にギャップを抱えている
    抽象化とは、キャラクターの中に含まれた「主題」を取り出す手続き

    ウラジミール・プロップ「昔話の形態学」
    民話には、定項と可変項とがあります。話・例ごとに変わる可変項は、登場人物たちの呼び名(と、それと共に変わる属性)です。(話・例が変わっても)変わることのない定項は、登場人物たちの行為です。つまり、機能です。以上のことから出てくる帰結は、昔話は、しばしば、相異なる人物たち(変項)に同一の行為(定項)を行わせる、ということです。この帰結は、私たちに昔話を、登場人物たちの機能(という定項)に基づいて研究しうる可能性を与えてくれます。
    「欠如」(もしくは、その直前の「加害」)から民話のストーリーは動き始める
    不均衡な状態があり、「欠如」したもの「過剰」なものも均衡に向かう形で物語は進行する(アラン・ダンデス)
    神話というのは「秩序」と「反秩序」とでもいうべき対立があって、いわば両者の「闘争」でるとまず考える。そしてそのような神話においては、主人公と敵とはそれぞれ対立する「秩序」に立っていると考えられる。つまり主人公から見て「反秩序」は敵から見れば「秩序」なわけで、問題なのは、この「対立」がどうやって生まれるか、ということ。
    一方を「微をつけること」で「そうでないもの」の所在を証明することができる。
    ex.国民とは何か、と議論するより非国民と誰かを罵った方が、日本人とは何かを考えるより中国人や韓国人に当たり散らした方が簡単だということ。

    主人公は自分から動かないもの
    主人公の役割は、出発する、贈与者というキャラクターも申し出を受ける、結婚するの3つ(プロップ)
    探索者型主人公と被害者型主人公
    グレマスの行為項モデル
    物語とは、「主人公」が「誰か」から「対象物」をどこかに届けてくれと頼まれて、「誰か」がそれを邪魔し、「誰か」がそれを助けてくれる
    つまり、主人公の行動開始は頼まれるか巻き込まれるかという受け身であって最初から主体的であるわけではない
    主人公に何らかの「欠落」や「聖痕」を与えることで物語を発動させる原動力はもたらされる。しかし主人公はすんなりと旅立ってくれない場合もある。その場合、「物語の文法」は主人公を嫌々ながらでも「出立」させるための幾人かのキャラクターをまさに受け身である主人公に関与させることになる。
    物語と通過儀礼が同じプロセスを持つ→分離ーイニシエーションー再生(ジョセフキャンベルの単一神話論)
    はじまり「普通の」状態ー分離の儀礼ーどっちつかずの状態ー統合の儀礼(象徴的な死)ーおわり「普通の」状態 (エドマンド・リーチ)
    「出立」のプロセス(ジョセフキャンベル)
    ①冒険への招命②招命の辞退③超自然的なるものの援助(贈与者)④最初の境界の超越(境界守)⑤鯨の胎内
    「贈与者」と「呪力のある助手」の違いは物語の進行中の主人公と行動を共にするか否か
    ハリウッド映画におけるキャラクター(クリストファー・ホグラー)=ユング心理学の「元型」
    ①ヒーロー②賢者(贈与者)③門番(境界守)④使者(依頼者)⑤変化するもの(魔性の女?)⑥シャドウ(敵)⑦トリックスター(いたずら者、道化、境界をあっっさり超える)
    ②③④のキャラクターが受け身の主人公に介入する必要がある

    物語とは主人公が対象に向かっていくという運動がまず基本にあって、そこに援助者と敵対者の二類型のキャラクターが介入して成立するということ

  • 自分が観てきた作品に重ねてみると面白い。

  • こういう本が新書として出版されるほどキャラクターを作る=物語を創作するというニーズがあるのかぁという気分になった。

    日本人はキャラクターにしか反応しないとはYMO全盛期を振り返った細野晴臣の発言だが、それを踏まえると日本はキャラクター立国なのだな。

    個性に乏しい国民性だからか?

  • 2011年11月より登録してあったが、積読になっていた。
    2017年1月18日水曜日にフォトリーディング&高速大量回転。

  • 古書店にて。本文やワークショップよりも6頁程度の〈あとがき〉が一番印象深かった。サンプリングと順列組み合わせで成立可能なポストモダン的キャラ造形にモダンな「私」を代入する技術論。小林秀雄に言及しつつ、「私」を「なし崩し」に語ることで芸術や文学っぽく見せる私小説に対し、「類型」という人間の固有性や実在と相反するものを経由することで「私」を語る表現を選択したマンガのキャラ。ダイスを振ってパラメータを与えられたキャラにむしろ「私」が色濃く反映してしまう事態等々。あと、初版のせいか誤字脱字が目立ったのが少々残念。

  • 物語を書く上で設定されるキャラクターを作るということを主眼に大学の講義を本にしたもの。

    ダイスで振ってしまってもそこに作り手の意図が混じるとそれだけで特徴的なキャラクターが作られたりするってことがわかりやすく説明されている。

    勿論大学講義らしくちょっと難しい説明的なものも大半を占めているが、ワークショップだけやればキャラクターは作れる。

  • 2014年7月30日読了。大塚英志による、まんがのキャラクターを創造するためのワークショップの書籍化版。日本の小説に顕著な「作者→私」の自意識の主人公への混入を批判しつつ、戦前から手塚治虫に連なる記号の組み合わせによるキャラクター造型・キャンベルらの神話研究に基づくストーリー構成とキャラクターの役割分類・スティグマ(欠落/過剰)の付与による物語のドライブのさせ方、などの議論は非常に興味深く読んだ。「ランダムメーカー」なる、ダイスなどでネタを自動生成する表が各章に添付されているが、落語の三題噺ではないが「マンネリねたの使いまわしによるありがちなキャラクター」創造を脱するには、運をダイスに任せて無理やりにキャラクターをひねり出してみる、というのも重要な創作の技法なのだろうな。

  • キャラクターの出発点はアバター

  •  キャラクターというのは、物語をドライブするために欠かせない、いちばんポイントになるところ……と思っていたのだが、この本はそれを「マニュアルで半ば自動生成しうる」と言い放つ。そして、たとえ「ダイスの目」で決めてしまったキャラクターにさえつくり手の「私」は投影されているのだと主張する。
     これは大塚が神戸芸術工科大学の講義でやっていることを下敷きとしている本で、実際に生徒の作例が出てくるのだが、これがわりと説得力がある。マニュアルでできてるはずなのに、マンガやラノベの1本や2本、これで描けそう……って思える説得力。
     とはいえ、これは「キャラクター」だけを論じる本ではなくて、やはり大塚流の「物語論」をベースにしているものではある。むしろ「キャラクター」だけが一人歩きする風潮に異を唱え、「キャラクター」は「物語」と不可分な関係にあるということを前置したそのうえで、「キャラクター」と「物語」をどう相互作用させていくか……という実践論になっている。
     たとえば第5講「自分からは何もしない主人公を冒険に旅ただせるためのいくつかの方法」では、ロシアの民俗学者ウラジミール・プロップの物語論を利用して、「受け身」な「被害者型主人公」(……ま、シンジくんだよね)の動かし方を解説している。この、自分からは動かない主人公を、どうにかして動かそう……としているうちに物語ができていくという説明はなかなかおもしろい。むしろ、〈きちんと躊躇することで初めて「出発」の一歩が踏み出せる〉と言われると、へぇと思う。
     すごくスリリングに読めるんだけど、通して読んだあとで振り返ると、なんかつるっとダマされたような気がしてくる本でもある。ナットクするには、自分でも実作してみるしかないんだろうなぁ。

  •  物語論を創作に応用しようという一連の試み。

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著者プロフィール

大塚 英志(おおつか・えいじ):大塚英志(おおつか・えいじ):1958年生まれ。まんが原作者、批評家。神戸芸術工科大学教授、東京大学大学院情報学環特任教授、国際日本文化研究センター教授を歴任。まんが原作に『アンラッキーヤングメン』(KADOKAWA)他多数、評論に『「暮し」のファシズム』(筑摩選書)、『物語消費論』『「おたく」の精神史』(星海社新書)、他多数。

「2023年 『「14歳」少女の構造』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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