青の炎

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (397ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048731959

作品紹介・あらすじ

光と風を浴びて、17歳の少年は、海沿いの道を駆け抜ける。愛する妹と母のために-。氷のように冷たい殺意を抱いて。人間の尊厳とは何か。愛とは、正義とは、家族の絆とは-。熱き感動を呼ぶ現代日本の『罪と罰』。日本ミステリー史上、燦然と輝く永遠の名作、ここに誕生。

感想・レビュー・書評

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  • 貴志祐介さんの作品は今回が初読みだった。

    『青の炎』
    17歳の少年櫛森秀一は、母友子と妹遥香の3人暮らし
    ところが10年前に結婚して別れた友子の元夫曾根隆司が家に居座るようになり傍若無人な態度で平穏な暮らしを脅かしていく。
    秀一は大切な母と妹を守る為に、冷酷な殺意を青の炎のごとく静かに燃えたぎらしていく。

    物語は秀一目線で進んで行く。
    普段どおりの高校生活を送る一方で、殺人を周到に計画して実行していく様子が臨場感がありハラハラと読み手を引き込んで行く。また高校生という設定から、計画の未熟さや良心の呵責が垣間見れ、それが余計に事態の切迫度と相まって胸が苦しくなるようだった。

    伏線とは少し違うが、犯行計画の綻びが散らつく中で、不覚にもやはり完全犯罪は難しいと改めて感じた。
    また犯行後の秀一の心理描写が実にリアルで逼迫しており、犯罪者となることを読み手が体感出来る感覚は背筋が寒くなる思いがした。

    そして改めて思った。
    人を殺めて得られる幸せなど存在する筈がない。

    曾根が末期癌で余命僅かだと知っていたら…
    犯行計画前に秀一がそれに気付いていたら…
    遥香が実父について真実を知った事をもっと早く打ち明けてくれていたら…
    ほんの少しの歯車の掛け違いで、犯行は未然に防げたのではないかと思うと何ともやり切れない気持ちになった。
    一方で、秀一の犯行が分かった後でも変わらない紀子や大門の友情には心打たれた。

    ラストは想像どおりの結末となってしまった。
    そうするしか友子と遥香を守る道が無かったのだから仕方ないのだろうか…
    秀一には、紀子との束の間の幸せな時間を、もっともっと享受出来る道があったのではないだろうかと嘆かずにはいられなかった。

    読後は、まるで一本の映画を観た後のような疲労感が漂った。
    殺人を犯した主人公の犯行動機に同情する一方、命の尊厳について考えさせられる作品だった。

  • 文庫版がカドブン夏推し2023に選ばれています。

    秀一は高校2年生。10日前に母の前夫が戻ってきた。酒を飲んで働こうともしない。身の危険を感じた秀一は母、妹の遥香を守るため、前夫を殺そうと決意するが…。

    江ノ電に沿ってロードバイクで通学する秀一。
    キラキラした海や爽やかな風を感じます
    24年前の作品のせいか、秀一の紀子や遥香への想いや会話が昭和のおじさんっぽく感じられます。その一方で今も昔も変わらない高校生の友情にじーんときます。(山本警部補ナイスジョブ!)
    ロードバイク、ナイフの知識、計画のための試行錯誤など、細かく描写されています。
    高校の英語のことわざ、国語の授業の『檸檬』『こころ』、物理の公式、化学式をからめてくるところに技ありです。

  • 最愛の母と妹の為に高校2年生の秀一は殺人を計画する。
    倒叙ミステリー。高校生が考えつくとは思えない凄いトリック。でもあちこちに子供らしい気持ちの揺れも…
    読み応えありました。

  • かなり前に読んだ本。
    少年の心情が丁寧に描かれていたように思う。
    再読するにはきつい、重い話だなあ、と思い出す。
    時間が経って、細かいところがおぼろげになることはあっても忘れることはないタイプの小説。

  • 作者である、貴志祐介氏の作品を読むのは2度目だが、この作者は、追い詰められる人間の心理的描写や、殺人の動かし難い動機を書くのが上手いと感じた。2人目の幼馴染はともかく、1人目男への殺人動機は動かし難いものであり、殺人までの心理描写は読んでいて辛いものがあった。主人公は周囲の人間関係にも恵まれており、人柄の良い人物であったことがわかる。だからこそ、切ない。

  • 辛ぁ…
    家族の為に戦った最高に良いやつの秀一がなんでこんな目に会わなきゃいけないんだよ…
    というのが率直な感想
    殺されても仕方ないような人間はいますよほんとに
    逃げ場の無くなった理不尽に知恵で戦った秀一
    行動がどんどん裏目に出ていくのがやるせない
    闇へ闇へと落ちて行く
    計画を遂行出来るのか、本当にやるのかという所と警察の追求、事実への葛藤に中盤以降はずっと気持ちが落ち着かなかったです
    しかし読後がこれほどやるせないというか胸くそ悪いというか…
    一度火をつけてしまうと、瞋りの炎は際限なく広がり、いずれ自分自身をも焼き尽くす
    忘れないでいたい言葉でした

  • 母と妹と平穏に暮らす高校生・秀一が、家族を守るために完全犯罪を目論む。一般的なミステリと違い、犯人の視点で物語が進むのが面白い。
    母子家庭で育った主人公が、唯一の男として自分が家族を守らなくてはと思い詰めていく姿が痛々しい。一貫して重い話だけど、クラスメイトとのやり取りや同級生への恋心など、高校生らしい一面に救われる。
    いわゆる倒叙ものなので、犯人の心の葛藤やじわじわと追い詰められていくところが醍醐味だし、ハッピーエンドはあり得ないのは分かっていたけれど、ラストはやっぱり切ない。

  • うーむ

  • 思いやりと狂気は紙一重 一気に読み進められた 所々爪の甘さが感じられるところは高校生らしい

  • こんなに頭がいい高校生がいるだろうか。
    綿密に計画を立てて、準備して、実行して…読んでいるこちらもつい力が入る。

    誰も救われないのが悲しい…

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著者プロフィール

1959年大阪生まれ。京都大学卒。96年『十三番目の人格-ISOLA-』でデビュー。翌年『黒い家』で日本ホラー小説大賞を受賞、ベストセラーとなる。05年『硝子のハンマー』で日本推理作家協会賞、08年『新世界より』で日本SF大賞、10年『悪の教典』で山田風太郎賞を受賞。

「2023年 『梅雨物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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