- Amazon.co.jp ・本 (527ページ)
- / ISBN・EAN: 9784048732314
作品紹介・あらすじ
精神科医・榊と患者の亜左美、そして臨床心理士の広瀬。それぞれの関係を博物館の謎と絡めて描いた、多島ミステリ決定作。
感想・レビュー・書評
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精神病の治療についての圧倒的なディテールが読ませる。2つの無関係なプロットの収束させる手際の良さも素晴らしい。でも多重人格は眉唾だなぁ。
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特長は精神病理学の圧倒的なディテール。
巻末の参考文献一覧を見れば、著者がいかにその分野を徹底調査した上で本書を執筆したかが伺える。
精神分裂病、境界例、解離性同一性障害など様々な患者と向き合い、適切な処置判断を下す上での医師の苦悩が伝わる。なんとも難しい世界だ。
クライマックスは物語中盤の展開。眉唾と一蹴できないリアリティを感じた。並行して進むサイドストーリーがリンクする終盤はやや駆け足で進み、着地の仕方も謎がスパッと解決したとは言いがたいが、読後感は良い。
週刊文春ミステリーベスト10 10位
このミステリーがすごい! 9位 -
多島氏の著作はいつも丁寧だ。ひとつひとつが丁寧に描写されていて、その登場人物ひとりひとりに寄り添ってストーリーを一緒に体験しているような錯覚に陥る。
この本では、精神科医とその患者の話と並行して、ある博物館の話も語られていく。その話は無くても十分物語として魅力的だなと思いながら読み進めていたが、その合間合間に語られていく博物館にまつわる話が見事にこの小説に色彩を添えていて、終盤、思わず沢村医師のように「ううむ」と唸ってしまった。
自分自身、精神病理に興味があるせいもあって、非常に入り込んで読めた。結局どうなったのか、ぜひ続きが知りたい小説。
素晴らしい傑作だと思う。
多島氏はまだ失踪中なのだろうか。無事の発見を心から祈りたい。 -
謎が残り、後味が悪い終わりかただった
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とても読みやすい文章でした。
複雑な人間関係、場面展開があるのに、情景を頭に描きやすかったので、こんなに膨大な出来事が、どうしてこんなに分かりやすくなっているのだろう…と、思いながら読了しました。
終わった後、離人症の原因のひとつと思われる児童虐待について、有名だけど、読みたい気持ちにならなかった「Itと呼ばれた子」を読むことにしました。 -
2015.2.8読了
精神病は病名の断定するのが難しく、誤診も多く、誤診による治療は危険でもあるということ。心の中って誰にもわからないし、自分にもわからないときがある。本人も医師も苦しい。とても考えさせられる一冊。ただ、平行していた博物館の謎は必要だった?(図書館) -
精神科医の榊は、病院の問題児である少女・亜左美を担当するが、前任者の下した診断に疑問を抱きはじめる。彼は臨床心理士の由起と力を合わせ、亜左美の病根をつきとめようとする・・・。
精神病に関する記述が非常に詳しく、現実的で、引き込まれるように読んでしまった。
ただ、並行して進む博物館の文化財の贋作疑惑との絡みがいまいちで、後半は非常にあっさりと話が進んでしまった感じが否めない。ちょっと残念。