症例A

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 23
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  • Amazon.co.jp ・本 (527ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048732314

作品紹介・あらすじ

精神科医・榊と患者の亜左美、そして臨床心理士の広瀬。それぞれの関係を博物館の謎と絡めて描いた、多島ミステリ決定作。

感想・レビュー・書評

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  • 精神病の治療についての圧倒的なディテールが読ませる。2つの無関係なプロットの収束させる手際の良さも素晴らしい。でも多重人格は眉唾だなぁ。

  • 特長は精神病理学の圧倒的なディテール。
    巻末の参考文献一覧を見れば、著者がいかにその分野を徹底調査した上で本書を執筆したかが伺える。
    精神分裂病、境界例、解離性同一性障害など様々な患者と向き合い、適切な処置判断を下す上での医師の苦悩が伝わる。なんとも難しい世界だ。
    クライマックスは物語中盤の展開。眉唾と一蹴できないリアリティを感じた。並行して進むサイドストーリーがリンクする終盤はやや駆け足で進み、着地の仕方も謎がスパッと解決したとは言いがたいが、読後感は良い。

    週刊文春ミステリーベスト10 10位
    このミステリーがすごい! 9位

  • 以前に努めていた病院で境界例患者を自殺させてしまった精神科医の榊
    榊は新しい病院で精神分裂病と診断されていた亜左美という患者を受け持つ

    臨床心理士の広瀬由起と治療にあたり、診断をしていく中で亜左美は以前と同じ境界例ではないかと疑い始めるが由起が解離性同一性障害ではないかと訴える
    最初は聞く耳もたなかった榊だが実際に由起の師匠である岐戸先生のところへつれていかれると・・・

    前半はこの亜左美の治療の話ともうひとりの登場人物の博物館学芸員江馬瑶子の話が平行して始まる
    江馬は博物館の展示品が実は偽者ではないかという疑いを持ちその真実を追っていく
    いつこの二つの話が絡み合うのか期待させながら進み亜左美の正体とういう点で結びつく

    多重人格の話は「催眠」とか「ISORA」みたいにホラーチックな話が多い中そういうのではなく患者が実際に多重人格なのかそうでないのかとういう精神科医目線で進んでいく
    激しいシーンなどはないがたんたんとストーリーが進みながらも博物館の謎がとけていく様や治療で亜左美の診断に悩んでいく様子に読みながらひきこまれてくる

    ラストはこれからの治療に決意する榊で終わってしまうがもっと続編を読みたくなる
    たぶんこの倍以上の物語になると思うが

    多島斗志之は自分的に当たり外れが大きい
    「症例A」と「海賊モア船長の遍歴」は圧倒的におもしろいけどあとはいまいち
    「症例A」は2読目

  • ミステリとしては確かにどうかなというところはある。
    後半があまりに急ぎすぎというのも激しく同意。
    でも、久しぶりに読み応えのある物語だった。

    4/5くらいまで読んだところで、残りこんだけでちゃんと終われるの?
    やっと本編に入った感じなんだけど!
    これ前編にして後編が欲しいよ!
    と思った。

    物語では2つの場面が交互に語られ、やがてリンクしていく。
    一般的には考えられないほど良心的な医療を実践している精神病院の医師と患者の治療の話と、国立博物館に潜む謎の話。
    それぞれに興味深い展開をしていくが、なんといっても前者の描写がすごい。

    精神病の病名の特定がこんなに難しいとは。
    神経症、分裂病、境界例、…

    症状の微妙な差異を誤診すると致命的な結果を招く。
    治療もとんでもなくナーバスだ。

    そして、精神分析やDIDに対する日本医学界の現状認識。
    どこまでも慎重に正当的主張をする医師に対し、同じくらい、それ以上に慎重に客観的に診断したからこそ反論できるもう一人の医師。
    そして変わる医師。

    面白かったというしかない。

  • 多島氏の著作はいつも丁寧だ。ひとつひとつが丁寧に描写されていて、その登場人物ひとりひとりに寄り添ってストーリーを一緒に体験しているような錯覚に陥る。
    この本では、精神科医とその患者の話と並行して、ある博物館の話も語られていく。その話は無くても十分物語として魅力的だなと思いながら読み進めていたが、その合間合間に語られていく博物館にまつわる話が見事にこの小説に色彩を添えていて、終盤、思わず沢村医師のように「ううむ」と唸ってしまった。
    自分自身、精神病理に興味があるせいもあって、非常に入り込んで読めた。結局どうなったのか、ぜひ続きが知りたい小説。
    素晴らしい傑作だと思う。
    多島氏はまだ失踪中なのだろうか。無事の発見を心から祈りたい。

  • 謎が残り、後味が悪い終わりかただった

  • とても読みやすい文章でした。

    複雑な人間関係、場面展開があるのに、情景を頭に描きやすかったので、こんなに膨大な出来事が、どうしてこんなに分かりやすくなっているのだろう…と、思いながら読了しました。

    終わった後、離人症の原因のひとつと思われる児童虐待について、有名だけど、読みたい気持ちにならなかった「Itと呼ばれた子」を読むことにしました。

  • 2015.2.8読了
    精神病は病名の断定するのが難しく、誤診も多く、誤診による治療は危険でもあるということ。心の中って誰にもわからないし、自分にもわからないときがある。本人も医師も苦しい。とても考えさせられる一冊。ただ、平行していた博物館の謎は必要だった?(図書館)

  • 擬人化された性格の増殖。

  • 精神科医の榊は、病院の問題児である少女・亜左美を担当するが、前任者の下した診断に疑問を抱きはじめる。彼は臨床心理士の由起と力を合わせ、亜左美の病根をつきとめようとする・・・。

    精神病に関する記述が非常に詳しく、現実的で、引き込まれるように読んでしまった。

    ただ、並行して進む博物館の文化財の贋作疑惑との絡みがいまいちで、後半は非常にあっさりと話が進んでしまった感じが否めない。ちょっと残念。

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著者プロフィール

1948年大阪生まれ。広告代理店に勤務。1982年、小説現代新人賞を受賞し作家デビュー。主な作品に、『海賊モア船長の遍歴』『クリスマス黙示録』『仏蘭西シネマ』『不思議島』『症例A』などがある。

「2021年 『多島斗志之裏ベスト1  クリスマス黙示録』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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