中空

著者 :
  • KADOKAWA
2.67
  • (0)
  • (3)
  • (28)
  • (15)
  • (2)
本棚登録 : 92
感想 : 17
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048732994

作品紹介・あらすじ

荘子の思想に従って人々が暮らす竹林の村、という特殊な環境で起こる奇怪な事件の"謎"と"解決"が伝統的な探偵小説の文法に則って語られる。第21回横溝正史ミステリ大賞優秀賞・受賞作。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 写真家の猫田夏海と自然観察者(ウォッチャー)の鳶山(とびやま)久志は、辺境にある竹茂村を訪れる。めったに見られない“竹の花”が見られるという話を聞きつけ、写真撮影のために訪れたのだ。竹茂という名の通り、集落の周囲には竹が生い茂り、住人は筍、竹細工に竹炭などを収入源として暮らしているという。
    一字性7世帯12人の住人達は、老荘思想の“小国寡民”を理想として暮らす。しかし、村にはかつて惨劇のあった経緯があった。やがて二人は、凄惨な連続殺人事件を目の当たりにする…

    Wikipediaによると、著者は奄美大島在住で日本鳥学会、日本鳥類標識協会に属する自然派作家。
    本書もまた、昨今流行りの“特殊設定”ではなく、自然にある材料を用いた素朴でシンプルな本格ミステリとなっている。良くも悪くも大掛かりなトリックではないだけに、“真相”のインパクトは薄い。
    登場人物の一人が、タイトルにもなっている竹の本質“中空”を語るくだりが印象に残った。竹は曲がりやすいし割けやすいので細工に向いている。それは竹の繊維がしなやかで強いから。なぜしなやかで強いからというと、“中空”だから。中心の支えがない分、周囲の繊維が協力し合ってしっかり支える必要がある。竹の本質は“中空”であること。では人間の本質は…?

    横溝正史賞 優秀賞受賞(2001年)

    《観察者シリーズ》
    1.中空
    2.非在
    3.桃源郷の惨劇
    4.密林
    5.樹霊
    6.物の怪
    7.憑き物
    8.生け贄

  • 鳥飼否宇のデビュー作にして、「横溝正史ミステリ大賞」優秀賞受賞作。人里離れた山奥の閉ざされた村、いまだに残る村独特の慣習、数十年に一度開花する竹の花と、お膳立てはばっちり。
    的外れの推理を披露するワトスン(=猫田さん)と、その後真相を語るホームズ(=鳶さん)という王道のパターン。老荘思想云々のくだりが難しくて、ちょっと手こずったけど、二転三転する推理、名前の叙述トリックは楽しめた。飄々とした鳶さんと、ちょっとヌケたところのあるネコさんのコンビがいいなぁ。一作目なので、まだ鳶さんのキャラが読みきれないけど。このシリーズ、他にもあるそうなので読んでみよう。

  • 気になっていた作家さん。今回やっと手にとることができました。初・鳥飼さんです。
    第21回横溝正史ミステリ大賞・優秀賞受賞作にして氏のデビュー作とのことです。

    数十年に一度開花するという竹の花。その写真を撮るために竹茂の集落を訪れた植物写真家・猫田夏海と自称プロの「観察者」鳶山久志。
    その竹茂村では皆「荘子」の教えに則り生活をしていた。20年前に凄惨な事件が起こり、現在は7軒の家族が住んでいる。
    竹の開花は凶事の前兆ともいわれているが、二人が訪れた3日目の夜、ついに殺人が起こる。そして続けて起こる第二、第三の事件。。。

    閉鎖的な村、過去の因縁、日本刀に怪しげな祭祀、世襲される家督などなど道具立ては横溝正史なのですが、横溝さんというよりは東川さんの印象でした。
    それはやっぱり飄々とした鳶さんと、明るく少しヌケたネコさん、しょっちゅう名前を間違える杉老人たちのキャラのせいでしょうか。
    場所も瀬戸内ではなく鹿児島で、薩摩弁がでてきますし。
    陰ではなく陽でした。楽しかったです。このトビさんとネコさんのお話は他にもあるみたいですので読んでいこうと思います。

    真相自体は強引ですが、推理の部分が二転三転して読みごたえありました。わたしはネコさんと一緒になすがままにされてしまいました。

    竹取物語の薀蓄については、高田崇史さんの『Q.E.D~竹取伝説』を先に読んでいたのでこちらはあまりうまく絡めていない印象でした。でも流罪の解釈などは面白かったです。

  • いかにもひと昔前の本格。巧妙な伏線、思わせぶりな伝説、村に隠された秘密、謎の一族。悪くはないが、意外さもない。着想は面白くも、粗が目立つといったところ。

  • 自分が荘子に関する知識が皆無なのであまり楽しめませんでした……ただ二転三転する推理劇の行方は気になりました。

  • 観察者・鳶山久志と植物写真家・猫田夏海のシリーズ。1作目。
    閉鎖的な村での連続殺人事件という内容は、定番ながら安心して読める。
    ワトスン役の猫田さんが、みんなの前で推理を披露したりと大活躍。舞台設定から難しい雰囲気になりそうだが、猫田さんのおかげでスラスラ読めた。

  • 4048732994 336p 2001・5・30 初版

  • 竹か荘子か絞るべき、所々に無為な思考が挟まる

  • 竹林と老荘思想

  • 竹林の七賢者になぞらえたサスペンス。中空っていう、宗教用語を用いたタイトルと、全体に漂うなぞめいた雰囲気がマッチしています。最後には、「ああ、そういうことか!」と納得します。

全17件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1960年福岡県生まれ。九州大学理学部卒業。2001年『中空』で第21回横溝正史ミステリ大賞優秀賞を受賞しデビュー。主な著作に「観察者」シリーズ、「綾鹿市」シリーズなど。碇卯人名義でテレビドラマ「相棒」シリーズのノベライズも執筆。2016年『死と砂時計』で第16回本格ミステリ大賞【小説部門】を受賞。

「2021年 『指切りパズル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

鳥飼否宇の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×