THE WRONG GOODBYE ロング・グッドバイ

著者 :
  • 角川書店
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感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (591ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048735445

感想・レビュー・書評

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  • 残念ながら、個人的には次の展開をドキドキしながら頁を繰る、という作品ではなかった。
    気の利いた会話で独自の雰囲気を醸し出そうとしたのかもしれないが、全篇にわたってそれが気障な印象を残した。

  • 矢作俊彦氏のハードボイルド作品『ロング・グッドバイ』を読了。ハードボイルド作品は実はあまり読まないのだが、たまにはと思い購入した作品。600ページ近くある作品なので軽い文体なのだが結構時間がかかり読み終わりました。
    文体、横須賀ドブ板通り、米軍関係者との関係、世小浜中華街などなどまさしくハードボイルドな設定で笑っちゃうくらい徹底しているのがすごい。お暇なときに是非。

  • チャンドラー『The Long Goodbye』の、見事な本歌取り。
    なぜか好きにならずにいられない酔っ払いの飛行機乗りと、彼に犯罪の片棒を担がされる減らず口でへそ曲がりのディテクティブ、謎の美女アイリーンと、基本的な構造や登場人物はそのままに、矢作俊彦にしか書けない第一級のエンターテイメント政治小説になっている。
    20世紀最後の年の横浜を舞台にする本作において物語の鍵を握るのは、ベトナム戦争の時代に形作られた米軍内経済マフィアと国際政商/黒社会のネットワーク。湾岸戦争を経て米軍が民営化していく時代にうごめく巨大な利権の網とその中に囚われたかつての友人の姿を見届けた二村がその先に見すかすのは、もちろん、21世紀の「新しい戦争」でいっそうの変化を遂げていくアメリカの軍事と利権の網だ。
    チャンドラーの抒情に沈鬱な色彩がくわわった文章でつづられる、長い20世紀への間違った「さよなら」が、原作と同様、苦くて感傷的な余韻を残す。矢作俊彦、やっぱりすごい。

  • 知らぬ間に比べていた。そうするなといっても無理な話だ。題名がアルファベットで二文字しかちがわない。酒場で知り合った酔っぱらいがなんとなく気に入り、頼まれて車で送ったら事件にまきこまれていた。そんな出だしのあまりにも有名なハード・ボイルド小説があった。レイモンド・チャンドラーの『長いお別れ(原題は THE LONG GOODBYE)』だ。

    ハード・ボイルドに詳しい人なら、このタイトルを見ただけで、作者の意気込みが知れるといった代物。ダシール・ハメットと並び称されるハード・ボイルドの双璧チャンドラーの代表作のタイトルを少しひねって、THE WRONG GOODBYE。片仮名で表記すれば同名の『ロング・グッドバイ』だ。大先輩に敬意を表してのつもりか、あるいは挑戦状か。いずれにせよ、このタイトルを背にしたら最後、それなりの覚悟がいることは百も承知だろう。期待を持って読み始めた。

    『あ・じゃぱん』、『ららら科學の子』と、最近は少し変わったところで傑作と言ってよい作品をものしていた矢作が、久々にホームグラウンドのハード・ボイルドの世界に帰って書き上げた、神奈川県警の刑事二村永爾を主人公にした最新作である。

    酒場で意気投合したビリーは、もと撃墜王というふれ込み。ヴェトナム戦争当時の知り合いで今は台湾の実力者楊のお抱えパイロットとして危ない仕事をしている。ある夜、夜間飛行に飛び立つビリーに頼まれて、車で空港まで送ったのを最後にビリーは消息を絶つ。残された彼の車から死体が発見され、二村は窮地に追い込まれる。一線から外された彼に人捜しの依頼が舞いこむ。美貌のヴァイオリニスト、アイリーン・スーの義母が失踪したというのだ。横浜、横須賀の港町を舞台に、米軍基地に蔓延るカーキ・マフィアや基地を食い物にする組織との暗闘が始まる。

    「卑しい町を行く高潔な憂い顔の騎士」というのが、チャンドラー由来のハード・ボイルド小説のヒーロー像だ。二村永爾がその系譜を引いていることはいうまでもない。ただ、拳銃や酒の銘柄はそのままでも、車の種類はどうにもならない。ネットや携帯電話の話題は、古き良き時代との距離を感じさせずにはおかない。物語はノスタルジックな雰囲気の漂うホテルやバーを背景に描かれるが、彼の探しているものが何にせよ、今の時代には予め喪われている。街が卑しいのではない。時代が卑しいのだ。

    もう一つちがうのは人と人との間を行き交う空気の乾き具合。フィリップ・マーロウが歩いたのはロス・アンジェルス。砂漠に水を引いて創った人工の街だ。二村永爾のテリトリーは横浜、横須賀。ペリー来航以来アメリカ軍とは切っても切れない軍港の街である。中華街や基地、怪しげな人物と彩りには事欠かないが、そこは日本。警察機構の末端に位置する二村は、一介の私立探偵とはちがい、自分の意志ひとつで動くには制約が多い。やくざや業界人だけでなく、基地の街に生きる親と子、男と女の間にある人間関係のしがらみが湿った空気のように纏わりつく。

    それでも、つい読まされてしまうのは濃厚なセンチメンタリズムのせいだろう。いい歳をした男が、自分の信条に忠実であろうとして昇進試験も受けないストイックさ。たかだか酒場で知り合った酔っぱらいに感じた友情に殉ずる侠気。惚れているくせに女につれなくしてみせる恥ずかしくなるくらいの感傷癖。頻出する片仮名言葉に幻惑されさえしなければ、これが股旅物の世界に近いことは誰にでも分かる。

    絢爛たる比喩、機知に富んだ会話、気のきいた警句をちりばめた、チャンドラー節の日本での人気は高い。矢作の文体もまたチャンドラリアンのそれであることは論を待たない。しかし、ハメットをハード・ボイルドの正統と仰ぐ人にはチャンドラー嫌いが少なくない。感傷性の勝った文章に自己憐憫の臭いを嗅ぎつけるからだ。強きを挫き弱きを助けるのがヒーローだが、卑しい時代を行く騎士が暴くのは強者の不正ばかりではない。いきおい文章には正義が行われない世の中に対するルサンチマンが溢れ、自己憐憫にも似た色調が憂いを深くする。

    『長いお別れ』が愛された理由にテリー・レノックスという酔っぱらいの魅力がある。酒を飲むのに言い訳はいらない。が、気の合った友人の存在は酒を飲む最上の理由になる。ビリー・ルウに二村が感じたほどの愛着が感じられないのは、彼の酒の飲み方にあるのかもしれない。

  • チャンドラーの「ロング・グッドバイ」を読んだことのない人はたぶん楽しめないだろうし、読んだことのある人は物足りなく感じるだろうな。。(私は後者)

    マーロウも向こう見ずで突っ走るタイプだけど、二村さんは同じ突っ走るにしても、ちょっと投げやりな感がある。酒の飲み方も美しくはないなぁ。
    「long」と「wrong」の違いを最後にどう持ってくるのか楽しみにしていたのだけど、なんだかなぁ。。いまいち、ピンとこない。

    二村さんがもう少し魅力的だったらもっと楽しめたのだけど。でも、だから「wrong」になっちゃったんだな、と考えると妙に納得してしまう。

  • いつもすごく乾いた感じがする。
    お酒、飲みすぎだろ。

  • 再読。

  • 非常にタフな1冊。ハードボイルド。

    登場人物も多いし、ベトナム戦争のことが出てきたり、個人的に土地勘の全くない横須賀が舞台だったり・・・

    心して読まないと、内容が全然頭に入ってきませんでした。

    アメリカって、基本的に戦争をしたい国なんだな。それで金儲けする人が大勢いるから。結局この世は金で回ってるのか〜。

  • ハードボイルド。

    最後は結構すきだ。
    あと女の人のキャラ設定もいい。

    美女と勝利の美酒を味わうって終わり方よりこっちの終わり方が好きだ。

  • 2008/10/26購入
    2012/1/20読了

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著者プロフィール

1950年、神奈川県横浜市生まれ。漫画家などを経て、1972年『抱きしめたい』で小説家デビュー。「アゲイン」「ザ・ギャンブラー」では映画監督を務めた、『あ・じゃ・ぱん!』でBunkamuraドゥマゴ文学賞、『ららら科學の子』で三島由紀夫賞、『ロング・グッドバイ』でマルタの鷹協会・ファルコン賞を受賞。

「2022年 『サムライ・ノングラータ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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