温室デイズ

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (203ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048735834

作品紹介・あらすじ

教室に紙飛行機が飛びはじめる。始まりの合図だ。もうすぐ崩れだす。でも、教師はまだ気づかない。日本の平和ボケは、学校の場でも存分に発揮されている。生温い方法では、もう追いつかなくなってしまうのだ。「今なら、なんとかなるはずだよ」。私は祈るような気持ちで崩れていく学校を見ていた…。この温室のどこかに、出口はあるのだろうか-。ふたりの少女が起こした、小さな優しい奇跡。ひりひりと痛くて、じんじんと心に沁みる。『幸福な食卓』の気鋭が贈る、とびきりの青春小説。

感想・レビュー・書評

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  • 自分が思うより自分のことは分かっていなくて、自分に向けられた言動は、その人が思うより自分に染みている。みたいな学生時代のおはなし。

  • 優しそうなタイトルの本だが、中学校でのイジメの苦しい話。
    戦うのは、逃げるよりもつらいけど。まだ、あの場所でがんばれる。主人公の心が強すぎて気持ちが理解しきれない部分もあった。

  • 中学校での学校崩壊の中での、女子生徒二人のそれぞれの戦い。教訓やハウツーのようなものはなく、単に読み物として落とし所に興味を抱き最後まで一気に読めた。
    自我の目覚めによる両親との確執や受験、とても繊細でいて感情の抑止は出来ない、難しい年頃だと思う。表題のとおり過度に保護された、現実社会に出るまでの猶予期間のよう。
    取り巻く大人たちもそう大して当てにはならない。その中であるべき理想を掲げて戦う女子に感慨を覚えた。

  • 2019(R1)10/13
    中学校という、簡単には抜けられない“温室”の中でいじめと戦い抜くみちると、みちるを助けてあげられない罪悪感から“温室”から逃げた優子の、2人の視点から描かれる日常生活での戦いと成長の物語。

    今時、みちるのように戦い抜く子なんているのかなあ?とツッコミを入れつつ、優子も斉藤くんも、それぞれがそれぞれの考え方で逃げずに立ち向かっていった結果、何かが少しだけ変わった。それはほんの些細なことだけど、実は大きな一歩だった。

    “温室”は一見居心地がよさそうだが、外界との接触がない故に、一度問題が発生すると、自浄作用が働きにくい。
    そんな中での、みちると優子と斉藤くんと、そして瞬くんに、読む人はいろんな思いを抱くことだろう。そして瀬尾まいこのメッセージをいろいろに解釈するだろう。
    僕は、この作品を「学校内の社会的弱者への応援歌」「『弱者よ、自ら立ち上がれ!』と背中を押す物語」と単純に括りたくはない。学校内の問題なんて、そんなに単純じゃないから。いじめまで発展しなくてもスクールカーストは確実に存在し、中学生はその中で自分の立ち位置を必死で探しながら生きている。それは、時に辛いことの連続かもしれないが、でも、「まんざら悪いことばかりではないよ。」と、瀬尾まいこは背中を押してくれている気がする。あえてそこでストップしている。だから、物語の重さの割に、読後感がすっきりするんだと思う。

  • 読みやすい内容で
    量も多くなく、すぐに読めました。


    個人的にはもうひと盛り上がり欲しいところ。


    でも実際の生活って
    こんなものなのかも。



    優子のお母さんの言動が
    一人の娘としても
    一人の母としても
    気をつけなければと思わせる内容でした。

  • これまでの瀬尾まいこさんとはちょっと違う。
    でも、「前向き」という芯は一緒。

    不器用な人がいっぱい。
    しんどいこともいっぱい。

    でも、乗り越えた先には幸せもいっぱいやってくるよ。

  • 主人公は、中森みちる
    通うのは宮前小学校
    学校は荒れいじめがある
    学校一の手がつけられない不良の伊佐瞬と幼馴染のみちるは
    一目置かれていじめられない
    いじめに加担することはないが黙認している状況に
    チクチク心が痛む生活を送っていた
    前川優子はいじめられ転校していった子

    そんなみちると優子は
    同じ中学に入学して友だちになる
    そして、どんどん荒れていく学校でまたいじめが。。。
    いじめられる子、不登校の子、保健室に通学する子
    彼らを取り巻く環境や社会のしくみ
    彼らの心の様子をビビットにでもセンサーを殺して行きていく様子を
    生々しく灰色に描いた作品

  • 瀬尾まいこさんの本って、テーマは重いけど何故か暗い気持ちにならずに読める。
    登場人物が不自然にふざけているわけでもないのに不思議。
    いつも熱中して読めるので、見かけてつい手に取ってしまった。

    学級崩壊やいじめのお話。

    まず、色々な戦い方があるんだなあって思った。
    ・小学校時代、いじめる側だったみちるは正攻法で戦おうとしていじめられてしまう。
     そして、いじめ続けられても学校に行く。
    ・小学校時代、いじめられる側だった優子は、教室から外に出る。
     そこから色々経て、伊佐くんのカウンセリングをしてみちるを助けようとする。
     (ただカウンセリングをどうつなげたかったかは謎。。)
    ・小学校時代、一度不登校になった斎藤くんは、自ら「有能なパシリ」になる。
     他の誰かが「パシらされる」のを防いだり、いじめられてるみちるにも自然に話しかけて良い存在になる。
    何か出来事があったときに、人によって対処が違うのは、それぞれの持ってる背景が違うからなんだなあ、、と気付かされる。
    自分と同じ対処を人に求めちゃいけないよなと、目的は一緒でも、その人にあった手段が色々ある。

    あとは、みちるのお父さんと、吉川先生の愛にグッときた。。
    自分が親になったのもあるが、みちるのお父さんの涙のシーンには泣いてしまった。
    いじめたやつは許せない、そして子供には辛い思いさせたくない、逃げて欲しい。そう思うよなあ。
    吉川先生の、覚悟を決めたところ、強いなあ。。って思った。強い人は穏やかなんだ。ミチルへの想いが素敵だなあって思った。
    みちるのお父さんと、吉川先生は、本人の気持ちの描写があったわけではないのに、行動や会話から溢れる愛情を感じた。すごいなあ。

  • いじめられている中学生といじめられてはいないが学校に行くことが嫌になった中学生ふたりの視点から語られる温室デイズ。
    荒れてはて窓ガラスは何枚もわれ、話は聞かない、暴行けんかは当たり前、それでも学校という枠に守られている学校生活の中で、いじめられる側の視点、大切な友達を守れないかった自分に嫌気がさし、逃げてしまったものの視点から描かれる。

    瀬尾まい湖さんの作品はバトンを初めてよんで、引き込まれ、本作2作目だけど、残酷なことも良いことも感動てきなところもフラットな表現で書くところがすてきだなと思う

    ただこの作品は嫌だからにげちゃったーっていう子と、嫌でも逃げない、ここしかないと動く子がいるからとても対照的で印象深かった
    強いそうに見せるだけの先生と弱くて頼りなくていつも生徒にいじめられている先生でも、結局生徒の目線でかんがえて弱音吐いたって守ってくれる話してくれる気づいてくれるっていうことが大事なんだなと思った
    ふたりの親も、子供の考えてるのーあなたのためよー愛情いっぱいよーっていう母親と男手一つで育てあげて弱音なんか吐くな、強くいろと育ててきた父親、
    前者の方が良い親にみえても、子供の変化にすぐ気付いてあげられる気持ちを汲み取ってあげられる親が子供にとっては大事なんだなと感じた

    対照てきな登場人物がいることで、どっちがいいとか悪いとか本の中では描かれてはいないけど、こういうところを汲み取ってあげる必要があるんだなと思わせる部分が多かった
    さらっと読めて良かった

  • 荒れ始めた中学の雰囲気を良くしようとして、いじめられ始めたみちる。
    友だちのみちるがいじめられ始めても何もできず、教室に行かなくなる優子。

    学校とは何のためにあるのか。

    小学校時代にいじめを経験した彼女たちの、中学でのいじめに対するそれぞれのリアクション。

    ----------------------------------------------------

    みちると優子の視点が交互に入れ替わるスタイル。

    そんなこと言ったら自分からいじめられにいくようなもんだよ!と思うくらいストレートなみちるは、
    小学校のときに優子のいじめに加担したことを後悔していて、それに対する贖罪としていじめに立ち向かってるようだった。

    不良の伊佐君から告白を断った優子は女子たちに疎まれ、いやがらせを受け始める。いじめが悪化する前に、目立った行動をしたみちるがいじめられ出したため、優子はいじめられなくなる。そして優子は教室に行くのをやめる。

    大切なものだけは譲らずに生活してるんだなあ、と読んでて思った。

    みちるは自分がいじめられることで、小学生のときの罪滅ぼしをしているようだったし、実際に優子を守った。
    優子は自分の価値観にしたがって行動していたし、伊佐君は不良として引き下がれないプライドもあったんだろう。自主的にパシリをする斉藤君は彼なりにクラスを変えようとしていた。
    やる気のないスクールサポーターの吉川だって、花壇を守るためにナイフで不良を脅した。

    ひどい目に遭わされているみちるに、無理しなくていいと言える吉川がすごくよかった。

    いじめられたり、ひどい目に遭うんだったら、教室に行かなくていいし、
    学校なんか行かなくても学ぶことは出来るんだから、そういう選択肢を先生がもっと教えていい。教えるべき。


    不良の伊佐君がみちるを助けてあげればいいのに、と思いながら読んだ。
    いじめはダメなことだけど、なくなることなんてないよな。
    死ぬほどの苦しみ、悩みだったら、逃げていいと思う。

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著者プロフィール

1974年大阪府生まれ。大谷女子大学文学部国文学科卒業。2001年『卵の緒』で「坊っちゃん文学賞大賞」を受賞。翌年、単行本『卵の緒』で作家デビューする。05年『幸福な食卓』で「吉川英治文学新人賞」、08年『戸村飯店 青春100連発』で「坪田譲治文学賞」、19年『そして、バトンは渡された』で「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『あと少し、もう少し』『春、戻る』『傑作はまだ』『夜明けのすべて』『その扉をたたく音』『夏の体温』等がある。

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